ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 75】老騎士のお友だち

ベラヌールからもらってきた種を植える作業は、女中たちに断られて頓挫した。

おれは可能性は低いと知りつつ、最後の望みをかけてティメラウスの部屋へ向かった。

 

 

ティメラウスは我が国の1番の重臣だ。

親父からの信頼も厚い老騎士には、他の臣下たちよりも立派な控室が用意されている。

 

控室の重厚な扉の前に立ったおれは、ノックをしようとした手を止め、耳をすませた。

くぐもっていて話の中身までは聞こえないが、部屋の中から誰か数人の話し声がする。

室内はかなり賑やかなようだ。

 

 

こんなじいさんのところに来客か?

不審に思いながら扉をコンコンとノックすると、室内の話し声は消えて静かになった。

 

しばらくすると扉が細く開いて、隙間からティメラウスが顔をのぞかせた。

 

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「ああ、どなたかと思えば殿下でしたか。ごあいさつにも伺わず申し訳ありません。

 両騎士団の活動を見守り、先ほどムーンブルクより戻ってまいりました」

 

 

おれだとわかって警戒を解いたティメラウスの背後に、1人の男の姿が見えた。

まんじゅうをつぶしたような顔、小さいが鋭い眼光がおれをとらえている。

 

「リ、リオス?! てめえ、なんでこんなところにいるんだよ!」

 


 おれの声を聞いて、リオスの隣からティアがぴょこんと顔をのぞかせた。

 

「ティア? おまえまでなんでここにいるんだよ? こんなとこでなにしてんだ?」

 

ティメラウスの部屋の中にいる意外な人物たちにおれは思わず大きな声を出した。

 

 

「まあまあ、殿下。とりあえず中にお入りください。私からご説明します」

 

ティメラウスはおれを招き入れた。

 

 

ムーンブルク城再建の初日、久しぶりに再会したティメラウスとリオスは再会を喜び、

それまでの近況をお互いに伝え合ったのだそうだ。リオスがムーンブルク城のがれきで

風雨をしのぎながら細々と暮らしていたと知ったティメラウスはリオスをあわれみ、

サマルトリアへと招いたのだという。

 

 

「使用人の部屋が余っていましたからね、そこで寝泊まりしてもらうつもりでしたが

 どうやらこの部屋が気に入ったようで、私が戻ったら入り込んでいました。はははっ

 部屋のカギは掛けてあったんですが、この大盗賊の前には無意味でしたね」

 

ティメラウスは特に困った様子も見せず、楽しげに笑っている。

 

 

「勝手に鍵を開けて部屋に入り込んだだと? 大問題じゃねえか!」

 

おれはリオスに食ってかかろうとしたが、ティメラウスがおれを止めた。

 

 

「私なら良いんですよ、殿下。じじい1人にこんな立派な部屋は広すぎますからね。

 それにリオスは意外と気が利く奴ですから、近くにおいて損はないですよ」

 

「だ、だけどよ…」

 

 

「私の部屋以外を勝手に開けることは断じて許さないときつく言い聞かせました。

 リオスも固く約束してくれましたよ。こいつは約束を破るような男じゃありません。

 それに、こんな大きな部屋に1人でポツンといるよりも、誰か話し相手がいた方が

 にぎやかで良いですから。だから、どうぞリオスの滞在をお許しください。殿下」

 

ティメラウスはペコリと頭を下げた。

 

 

「別におまえがそれでいいっていうんなら、おれも文句は言わねえよ。けどな、リオス

 ここで許されたからって、調子に乗って城の中を勝手にあさるんじゃねえぞ!」

 

「へへっ、わかってますって。あっしはその辺はわきまえられる男ですから」

 

おれとティメラウスの会話をニヤニヤしながら聞いていたリオスは、おれの言葉に

得意気な様子でえへんと胸を張った。

 

 

「ところでティア、てめえはなんでこんなところにいるんだよ?」

 

おれはさっきからリオスにくっついてニコニコしているティアに声をかけた。

 

 

「あたしはリオスさんがティメラウスの部屋に入ろうとしているところで会ったのよ。

 カギを開けてどこでも入れるなんて素敵だわ。それに女盗賊ってカッコイイでしょ?

 それで、リオスさんの弟子にしてもらおうと思って。今は投げ縄を習っているのよ」

 

習っているというティアの言葉どおり、リオスとティアの手には縄が握られていた。

 

 

「ったく! サマルトリアの王女さまが盗賊になってどうするんだよ。城がつぶれるぞ。

 リオス、てめえも妹に余計なことを教えるんじゃねえぞ」

 

「へへっ、わかってますって」

 

 

本当にわかっているのか? リオスとティアの2人は顔を見合わせてヘラヘラしている。

 

 

「そう言うおにいちゃんこそ、なんでティメラウスの部屋に来たのよ?」

 

ティアの質問にぎくりとして、おれは手にしていた麻の小袋を慌てて背後に隠した。

 

 

「あー! 今、何か隠したでしょ!」

 

ティアが目ざとく見つけて追及してくる。

 

 

「な、なにも隠してねえよ!」

 

やべえ。ティアに知られたらすぐに王妃にも筒抜けだ。リオスはともかく、種のことを

ティアにだけは知られたくない!

 

 

後ろにまわした手にパシッとなにかが当たる感触がした。次の瞬間、おれの手からは

麻の小袋が消えていた。

 

シュッと音を立てて、縄と共に麻の小袋がリオスの手におさめられるのが見えた。

 

 

「リオス! てめえ、このやろう! なにするんだ!」

 

おれは声を荒らげたが、リオスは平然とした顔で小袋をそのままティアに渡した。

 

 

「ん? なにこれ? 何かの種に見えるわね。どうしたのよ、これ?」

 

麻の小袋を開けて中身を確認したティアが、キョトンとした顔で聞いてくる。

 

 

「ちっ! 花の種だよ」

 

「花の種? なんでおにいちゃんが花の種なんて持ってるのよ?」

 

「いちいちうるせーな、おまえは。別にいいだろ。ベラヌールでもらったんだよ」

 

「なんでそれをここに持ってきたの?」

 

「ぐっ! そ、それは...。 ティ、ティメラウスにこの種を植えてもらおうかと思ってよ」

 

 

「えっ?!」

 

おれたち兄妹のよくある会話を微笑みながらのんびりと聞いていたティメラウスは

いきなりおれから自分の名前が呼ばれたことで驚きの声をあげた。

 

 

「殿下。おそれながら、私は花のことにはまったく無知なただの老いぼれですぞ。私に

 種を植えろと言われましても...」

 

 

「そうよ、おにいちゃん! ティメラウスの言うとおり、頼む相手を間違えてるわよ。

 お花のことはお母様に頼めばいいわ。あたしが今から行って頼んできてあげる!」

 

 

「いいよ、行かなくて!」

 

おれは部屋の外に駆け出そうとするティアの前に立ちふさがった。

 

 

何が何でも止めてやる!絶対に扉を開けさせるものか!

 

だが、おれの背後で扉はひとりでに開いた。

シュルシュルと音を立てて縄がリオスの手に巻き取られていく。

 

 

「またおまえかよ、リオス! ふざけんじゃねーぞ!」

 

おれがリオスを怒鳴りつけている一瞬の隙をついて、ティアはおれの脇をすり抜けた。

 

 

「リオスさんありがとう♡」

 

ティアは振り向きリオスにウィンクすると、そのまま部屋の外へと駆け出して行く。

 

 

「あっ、おい! こら待て!」

 

おれは慌ててティアを追いかけた。

 

 

ティアは弾むように軽快に走って行く。

 

「リオス! 覚えてろよ!」

 

おれの叫び声が廊下に空しく響いた。

 

 

 

ティメラウスの部屋には意外な2人。リオスとティアがいました ( *´艸`)

 

サマルトリア攻防戦では共に国のために戦い、カインと一緒に古の旅の扉を抜けて

敗走する悪魔神官デヌスを先回りして追いつめたティメラウスとリオン。

カインの知らない間に2人には熱い男の友情が芽生えていたようですねヾ(*´∀`*)ノ

 

 

カインがムーンブルク王の遺骨を修道院に運ぶためにムーンブルク城を訪れたときに

偶然リオスと再会したんですが、すべてリオスの作戦だったんでしょうね (^_-)-☆

 

カインに一緒に復興作業を手伝うと約束して、その流れでティメラウスとも再会し

ティメラウスに取り入って、上手くサマルトリア城内に入り込もうと ( *´艸`)

 

 

ゲームブックを読む限りではティメラウスの私生活は謎ですが、たとえ高い地位や

立派な控室があっても、老人が1人ぼっちでいるのは寂しいですからね。

リオスというお友達が出来たのは、ティメラウスにとっても良いことでしょう♪

 

 

そして、初対面のときから「リオスさんを家来にしよう」と気に入っていたティア。

 

リオスがティメラウスの部屋へ侵入したのを目撃して、すっかりファンに ( *´艸`)♡

「女盗賊」という響きに憧れて、リオスの弟子にまでなっちゃいました ( *´艸`)

 

可愛い弟子が出来て気を良くしたリオスは、弟子のためにカインから麻の小袋を奪い

弟子のために背後にある重厚な扉を開けてやるという大サービスっぷり ( *´艸`)

 

 

カインは新たな友情と新たな師弟関係にすっかり翻弄されちゃいましたね (;´∀`)

 

 

さて、麻の小袋を奪い取り王妃のもとへ走るティアをなんとか食い止めたいカイン。

ティアを止めることは出来るのでしょうか? そして王妃の登場はあるのでしょうか?

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ