ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 69】真相

ムーンブルク再建の作業を終えてそのまま食事を楽しんだおれたちは、おれのルーラで

ムーンペタへとやって来た。

 

 

虹色の光が薄れ、ムーンペタの町が見えるようになるとナナはすぐに駆け出した。

 

「ナナ?! どうしたんだよ、そんなに急いで。待って、送っていくよ!」

 

王子が慌てて声をかけると、ナナは「ううん、1人で大丈夫よ」と言って走って行く。

 

おれは王子たちに先に宿屋へ行ってくれと言い残してから、急いでナナを追いかけた。

このまま帰してしまいたくなかった。

 

 

「ナナ!」

 

おれが声をかけると、ナナは雷に打たれたようにびくんとその場で立ち止まった。

おれはゆっくり近づいてナナの隣に立つと、ナナの顔を静かに見つめた。

 

「お、おまえも今日は疲れただろうからよ、ゆっくり休めよな。また明日会おうぜ」

 

なんと言えばいいのかわからなかったが、とりあえずそれだけは伝えた。

 

「あ、ありがとう。あなたこそ、今日は疲れたでしょ? 王子と一緒に早く休んで。

 また、明日会いましょう。… じゃあ… おやすみなさい」

 

ナナは赤い顔をしながら早口でそれだけ言うと、教会に向かって早足で歩き出した。

 

そのまま教会の中に入ってしまうのかと思いながら歩いていくナナを見守っていると、

教会の入口で立ち止まったナナはおれの方を見て、胸の前で小さく手を振った。

 

つられて思わず手を振り返すと、ナナはかすかに微笑んで教会へと消えていった。

 

 

ナナの気持ちはよくわからねえが、一応は立ち止まっておれの話に応えてくれたし

教会に入る前には手も振ってくれたんだから、嫌われてるってことはなさそうだ。

 

きっと照れ臭かっただけだろうと結論づけて、おれは王子たちのところへ戻った。

ナナを追いかけたときよりも、足取りが弾んでいるのが自分でもわかった。

 

 

 

宿屋に入ると、王子に用意されていた部屋は確かにベッドが2つあり広々としていた。

ナナと最後に会話が出来た安心感もあって、ふぅ~とおれはベッドに倒れ込んだ。

 

「ははっ。今日のカインは、朝から大忙しで大変だったよな~。お疲れさま」

部屋に入るなりベッドに寝転がったおれに、王子がねぎらいの言葉をかけてくれた。

 

おれはその体勢のまま、朝からの出来事を王子に話して聞かせた。

 

近くの草原にみんなが集まっていたところへ、ナナが馬に乗って来たときのこと。

王妃の遺骨が見つかり、ナナに知らせて一緒に西の修道院まで運んだときのこと。

王と王妃の遺骨、ムーンブルク兵の遺骨が安置室に置かれて供養できたことなどだ。

 

王子は真剣な顔でおれの話を聞いていた。

 

 

「そうか。今日のナナは、朝から驚いたり喜んだり悲しんだりして大変だったんだな。

 それなのに、ぼくが困ったときはデルコンダル王の説得までしてくれたんだね」

 

「まあな。確かにナナは大変だったと思うけどよ、おまえもよくがんばったと思うぜ。

 デルコンダル王と同盟を結んだだけじゃなく、あんなに仲間もつくったんだからよ」

 

「ううん。ぼくなんて全然。こんなに上手くいったのは、みんなのおかげだよ」

王子は恥ずかしそうに謙遜する。

 

 

「いや、おまえはがんばったよ。立派な王様になった。もっと自信もっていいんだぜ」

 

「きみが言ってくれると、不思議と自信が湧いてくるよ。ありがとう、カイン。

 これでローレシアに人が戻ってくると良いんだけど…」

 

王子の言葉におれは跳び起きた。

 

 

王子は平然とした顔をしている。

 

「… おまえ、まさか知ってたのか? ローレシアの人口が減っていること」

 

「ぼくが『破壊神を破壊した男』と呼ばれて恐れられて、

 ローレシアから人がどんどん逃げ出していったんだろ?

 うん、知ってたよ」

 

 

なんてことだ。王子は、ローレシアから人が急激に減っていることだけじゃなく

自分が『破壊神を破壊した男』と呼ばれたことまで知っていたというのか…

 

おれはわかっているつもりで、王子のことを理解していなかったのかもしれない。

 

『破壊神を破壊した男』なんて呼ばれていると知ったら、こいつはひどく落ち込んで

ショックのあまり、壊れちまうんじゃないかと思っていたのだ。

 

知っていたことを誰にも気づかせないくらい、こんなに平然としていられるなんてな。

 

 

「いつ、知ったんだよ?」

 

「かなり前になるよ。最初は若い兵士たちの態度がなんだかおかしいなと思ってね

 サイラスに聞いてみようとしたんだけど、サイラスもぼくを避けている感じでさ...

 それで大司教様のところに行ったんだ」

 

王子に聞かれたら答えないわけにはいかない。だが、自分の口からはとても言えない。

サイラスが王子を避けていた気持ちは、おれにもよく理解できた。

 

 

大司教様は『王様に言えるのは私しかいませんね』って言って教えてくれたんだ」

 

「ショックじゃなかったか?」

 

「『破壊神を破壊した男』ってこと? 最初に聞いたときはものすごくショックだった。

 ぼくが命を懸けて戦ってきたのはなんだったんだろうって虚しく思えたりしてね。

 もうなにもしたくないと思ってしまうほど、本当にショックだったんだ」

 

「気持ちはわかるぜ」

おれにはそれぐらいしか言えなかったが、おれの言葉を聞いて王子は微笑んだ。

 

 

「でもね、ぼくがショックで落ち込んでるのを見て、大司教様に叱責されたんだ。

『ここで王様がしっかりしないでどうするんですか!』ってね。大司教様は言うんだよ

 父上と母上が今もお元気でいられるのは、ぼくが王様の務めを果たしているからだ。

 もし、国王の務めを放棄すれば、父上も母上も一気に悪くなってしまうだろうって。

 それに、サイラスが必死で耐えながらぼくのために青の騎士団を守り続けているのに

 ぼくが逃げ出してしまったら、ローレシアはどうなると思っているんだってね。

 大司教様の言葉で目が覚めたよ」

 

「それで、なんでもないって顔して今までやってきたってことか」

 

「父上と母上のため、サイラスや青の騎士団のため、なによりローレシアのために

 ぼくは国王として踏ん張って、がんばらなきゃいけないって思っていたところにね

 カイン、きみが訪ねてきたんだよ」

 

デルコンダル王と一緒にムーンブルクに来いよと話をしにいったときのことか。

 

 

「きみを見たとき『ぼくにはカインとナナがいる』って思えたんだ。

 カインたちはなにがあってもぼくの味方でいてくれるってね、すごく安心できた。

『カインとナナは、ぼくの心の支えだ。きみたち2人が

 いてくれれば大丈夫だ』ってきみを見たとき心から強く思えたんだよ。

 きみがムーンブルクデルコンダルと同盟を結ぼうぜ』って言ってくれたからさ

 それがどんな結果を生むかわからなかったけど、やってみようって思ったんだ。

 いざというときのカインは、本当に頼もしく見えるからね」

 

ラダトームあたりの旅の思い出が頭に浮かんだのか、王子は楽しそうに笑った。

 

 

デルコンダル王に『ロトの印のステッカーを渡せ』なんて変だなと思ったんだよ。

 でも、きみはいつもどおり自信満々だし、めずらしくサイラスも同意しただろう?

 それで、信じてみよう。カインならきっと上手くやってくれるって思ったんだよ。

 やっぱりカインを信じたぼくに間違いはなかったね!」

 

王子の言葉に、思わず泣きそうになった。

だが、ローレシアに凱旋してこいつが泣いたとき、さんざんからかったのはおれだ。

そのおれがこんなことで感動して泣いたとなったら、それこそ面目丸つぶれだぜ!

おれはまばたきして必死で涙をこらえた。

 

 

「へっ。おれの言うとおりにしてりゃ、間違いないんだよ」

おれは精いっぱい軽口をたたいた。

 

「ははっ。その言葉、なんか風の塔で聞いたような気がするな。懐かしいや」

 

「ああ、確かに言ったな。あのときは結局、おれの言うとおりにして、風の塔から

 3人揃って落ちそうになったけどな」

 

 

風の塔でおれの意見を受け入れて右に進んだ結果、背後から杭が出た壁に迫られ

急に開いた壁の先に飛び込んだら、そこは塔の外だったことは今でも忘れられねえ。

 

おれたちは風の塔での珍道中を思い出し、2人で顔を見合わせて笑った。

 

 

 

王子の名誉回復の巻~ヾ(*´∀`*)ノ

 

以前、このブログで王子のことを天然のお坊ちゃまにしすぎたと反省した私... (;´∀`)

王子の名誉を回復する手段はないかと考えて、今回の「真相」を思いつきました。

 

王子は『破壊神を破壊した男』と自分が呼ばれて忌み嫌われていることも知ったうえで

真摯にローレシア国王としての務めを果たし続けたというわけです (´;ω;`)

 

自分を尊重して愛してくれる両親のため、国を守ろうとしてくれる臣下のために☆

 

そんな王子の『心の支え』が、共に旅をしてきたカインとナナ

「カインとナナがいるからがんばれる」この言葉はカインの支えにもなりますよね☆

 

どんなときも絶対に味方でいてくれる存在がいるのは、ありがたいことですね♡

私も大切な人にとって、そんな存在でありたいな~♡ と思います (*´ω`*)

 

 

冒頭にあったカインとナナの会話については、実は後づけで書きました (;´∀`)

最初は「ナナが恥ずかしがって走り去ってしまう」という展開にしていたんですが

 

ムーンブルク再建初日の夜の話は今回で終わりなので、気まずいまま離れるのは

翌日以降の2人を考えるとあまり良くないよな~と思って書き足しました。

 

自分の気持ちが暴露されて気まずいのに、「ゆっくり休めよ」「また明日会おうぜ」

こんなセリフを言えるカインはやっぱり素敵だよな~と自己満足しています ( *´艸`)

 

ナナはまだ動揺してて早足で逃げちゃうんだけど、このままじゃ良くないよねって

教会の前で立ち止まって、小さく手を振るところは可愛いですよね(自画自賛中☆)

 

 

さて、長かった1日も終わりです。

(読んでくださったみなさま、本当にお疲れさまでした。ありがとうございます!)

 

次回からは新展開ですよ~☆

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ