ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 70】王子の成長

おれは王子と一緒にムーンペタの宿屋に泊まり、王子が『破壊神を破壊した男』

呼ばれていると知りながらも、一国の王として自国を守り続けていたことを知った。

 

王子の責任感と精神力の強さに感銘を受けながらも、おれはベッドに寝そべりながら

いつもの調子で王子をからかいつつ、旅の思い出について語り合っていた。

 

王子もおれと同じ体勢で話をしていたが、そのうち2人とも眠ってしまったようだ。

気がついたときには朝になっていた。

 

 

おれたちは眠い目をこすりながら『出会いの酒場』の食堂で朝食をとることにした。

 

2~3人用の小さな丸テーブルに案内され、運ばれてきたパンやスープを食べていると

 

「おにいちゃーん」

「おにいちゃーん」

 

元気な声と共に、ティアとリーナがおれたちのもとへ勢いよく駆け寄ってきた。

 

 

「2人とも、おはよう」

王子は笑顔で2人を迎え、自分のそばに駆け寄ってきたリーナの頭をなでてやった。

 

「おねえちゃんがね、おにいちゃんたちもムーンペタにいるって言ってたから来たの」

「せっかくみんなでムーンペタにいるんだから、一緒に朝ごはんを食べましょうよ!

 ここまで走ってきたんだから」

 

ティアとリーナは息を弾ませながら、代わる代わる話している。そんな2人の後ろから

ナナもゆっくりと歩いて来た。

 

 

「一緒に食うのはもちろん構わねえんだが、それならおれたち席を移動しなくちゃな。

 このテーブルに5人は狭いだろ」

 

もっと他に広いテーブルが空いてないかと、おれはあたりを見まわした。

 

「あたしはここでいいわ」

ティアはおれのひざの上に乗って来た。

おれたちの様子を見て、リーナもマネをして王子のひざの上に乗った。

 

 

「お、おいっ! まったく、しょうがねえな。おまえもよ、一応は王女様なんだからよ

 もっと礼儀正しくしろよな。それにやけに重いぞ。おまえ、太ったんじゃねえか?」

 

「まぁ! おにいちゃんったら、ひどいわ。あたしは今『成長期』なのよ! それにね

 重いと感じたとしても、レディに向かって『太った』なんて言っちゃダメなのよ!」

 

「うん? どこにレディがいるんだ?」

おれはわざとらしく、あたりをきょろきょろしてやった。ティアがぷーっとふくれる。

 

 

おれたちのやりとりを見て王子とリーナが笑っている。ナナも同じように笑いながら

近くにある空いていたイスを持ってきて、おれたちの隣に座った。

 

ナナが座ったこともあって、席は移動せずにこのまま5人で食事をすることになった。

 

 

おれはボーイを呼び、ナナの朝食とチビ2人にもなにか用意してもらうよう頼んだ。

ボーイは笑顔で応じると、ティアとリーナにニッコリ微笑みかけて厨房へと向かった。

 

 

ボーイが去って行くのを見て、ティアはテーブルに置かれたパンに手を伸ばした。

 

「あっ。おい、それはおれのパンだぞ」

 

「なによ。おにいちゃんったらケチね! おなかすいてるんだもの。パンの1つぐらい

 もらってもいいじゃない。いちいち文句を言うなんて、おにいちゃんも小さいわね。 

 心が狭くてケチな男はモテないってお母様が言っていたわよ!」

 

「おまえこそ、パン1つでギャーギャーうるせえな。もう、わかったよ。食えよ」

 

ティアはパンを食べ、おれがひと口しか飲んでいないスープにまで手を伸ばした。

 

 

「おいっ、スープまで飲むなよ!」

 

「うるさいわね。新しく注文したんだから、あとからきたやつを飲めばいいじゃない。

 おにいちゃんはおなかをすかせたか弱い妹が可哀想じゃないの? あたしたちはゆうべ

 疲れてなにも食べずに寝ちゃったから、おなかがペコペコなのよ。そんな可哀想な

 妹に向かって食うなって言うの? わかったわよ。おにいちゃんが食うなと言うなら

 もう食べないわ。そして食べなかった結果、おにいちゃん想いのけなげなあたしは

 ひもじい思いをしながら悲惨な最期を遂げるのね… なんて悲しい物語なのかしら」

 

おれはため息をついた。

まったく。わが妹ながら、口の達者さではおれをはるかに超えているかもしれねえな。

 

 

「わかった、わかった。好きなだけ食えよ」

 

おれがそう言うと、ティアとは違い王子のひざの上でおとなしく座っているリーナが

急に心配そうな表情になって、あたりを不安げにきょろきょろ見まわした。

 

 

「ん? どうしたの、リーナ?」

 

王子がうつむいてリーナに尋ねた。

 

「サイラスのおじちゃんに聞かれていないか心配になったの。おにいちゃんたちが

『わかった、わかった』って2回繰り返してお返事しているのを聞かれたら、また

 おにいちゃんがサイラスのおじちゃんに叱られちゃうんだもん。おにいちゃんは

 昨日もおじちゃんに叱られちゃったんでしょ? おねえちゃんに聞いたわ」

 

 

おれはキッとナナをにらんだ。

 

「昨日の夜はなにがあったのか教えてくれって2人にせがまれたから話しただけよ。

 なによ、あたしが悪いって言うの?」

 

「おまえ、こいつらにおれたちの悪いとこばっかり話してるんじゃねえのか?」

 

「いいとこがあれば言うわよ」

 

「似たようなこと前にも言われたけど、いいとこがないみたいな言い方すんなよな。

 以前は『今まではいいとこなんてないと思ってた』みたいに言われたけどよ

 長い付き合いなんだから、今ならいくらでも言えるだろ『カインおにいちゃんは

 とても優しくて、すごくカッコ良くて、世界一ステキな人だわ』ってな!」

 

「あら、ごめんなさいね。あたしって、思ってもいないことは言えないのよ」

ナナはおれを見てふふっと笑った。

 

「こいつめっ!」

おれが笑ってナナをなぐるマネをすると、ナナも楽しそうな笑い声をあげた。

 

 

そこへ、ボーイがナナたちの食事を運んできた。ティアが目を輝かせて見ている。

 

ボーイが下がると、入れ替わりにサイラスが大股でおれたちのところへ歩いて来た。

 

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「王様。青の騎士団の編成がありますので、私はそろそろローレシアへ戻ります。

 ご準備いただき王様も私とご一緒に…」

 

サイラスは、王子を一緒にローレシアへ連れて帰ろうとしているらしい。

おれは手をあげてサイラスを制した。

 

 

「待てよ、サイラス。王子も一緒に連れて帰ろうって言うんじゃねえだろうな」

 

「ええ。デルコンダルとの同盟締結も無事に完了できましたし、王様には私どもと

 ご帰還いただこうと思うのですが」

 

「おまえ、よく考えろよ。昨日、王子はあれだけたくさんの『仲間』が出来ただろ?

 あいつらは今日『仲間の王子』と一緒に作業するのを楽しみにしているはずだぜ。

 それを『同盟締結が完了したからさっさと帰っちまった』なんてことになったらよ、

 あいつらがどれだけがっかりすると思ってんだよ。今、おまえのするべきことは

 王子と一緒に帰ることじゃねえ。3日後に備えて騎士団の部隊を編成することと

 王子のため『ロトの印のステッカー』を準備することだ。自分の本分を忘れるな!」

 

「しかし、私が帰ったら王様の護衛は…」

 

「へっ。今や王子は世界最強なんだからよ、護衛なんて必要ねえよ。それに…」

おれは言葉を切って王子を見つめた。

 

 

「王子は、おまえが思っているよりよっぽど成長してるぜ。しっかりと自分で考えて

 自分の行動に責任が持てる立派な王様だ。おまえも1番近くにいる臣下なんだからよ

 王子のこと、もっと信頼してやれよ」

 

王子がおれを見て嬉しそうに笑った。

 

おれの言葉を聞きながら、サイラスは王子の周りにいる1人1人の顔を見まわした。

ナナやティア・リーナも、おれの言葉にしっかりとうなずいてくれた。

 

 

おれたちの真っ直ぐな視線を受けて、サイラスはふう~と大きく息を吐いて言った。

 

「かしこまりました。わが国王を信頼して、私1人でローレシアに戻ることにします。

 ただ、私と一緒に来た青の騎士団の3人は、こちらで王様に同行させてください。

 3人には自由に雑用を申し付けて構いません。もし、王様になにかありましたら

 すぐに3人から連絡が入るように整えておきますので。よろしくお願いいたします」

 

サイラスはおれたちに深々と頭を下げた。

 

 

やれやれ。自分は帰るとしても、お目付け役はどうしても残しておきてえってことか。

まあ、それぐらいはしょうがねえだろう。

 

おれはあきれ顔で王子を見た。

王子も苦笑いしながらうなずいている。

 

「わかったぜ、サイラス。おまえの望みどおり、あの3人はこき使ってやるからよ

 おまえもさっさと帰って『ロトの印のステッカー』の手配でもしろよな」

 

 

 

 

当初の予定では、ガラッと話を変えてまったく別の新展開を予定していました。

時間についても、ドラマなどでよくある「1週間後…」みたいな感じで ( *´艸`)

 

ただ、カインとナナがちょっと気まずいまま離れてしまっているのが気になったのと

『3日間は全員で作業した後、青(と緑)の騎士団が引き継ぐ』と予定が決まったら

サイラスはすぐにローレシアに帰るだろうけど、じゃあ王子は? と考えちゃって。

 

あと、ミリアや他のメンバーもほったらかして「1週間後」になると、逆にその間の

出来事を説明するのが めんどくさい 大変になるので、翌日の話を書きました (*´ω`*)

 

翌日の話は1話で終わらせる予定だったんですが、朝食の場面だけで長すぎる… (;´∀`)

長くなりますが、みなさまにはまた根気強く読んでいただけると嬉しいです (^_-)-☆

 

 

昨夜は照れてギクシャクしていたカインとナナ、すっかり元の調子を取り戻しました。

ラダトーム入城のエピソードを思い出しつつ、イチャイチャさせてみましたよ ( *´艸`)

 

あと、ティアがまくしたてるのが可愛くて大好きなので、今回はカインを相手にして

おにいちゃんを言い負かすティア姫を書いてみました(書いてて超楽しい (≧∀≦)♪)

 

昨夜の王子との会話を通して、あらためて『王子は立派な人格者』だと認めたカインが

王子をいつまでも子ども扱いするサイラスに「本分を忘れるな!」と言ってやったのは

書いていてとても爽快でしたヾ(*´∀`*)ノ

 

予告したとおり、次回は1話で終わる予定で終わらなかった続きを書いていきますね☆

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ