ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 50】友好の証

デルコンダル王の説得に成功したおれは、サマルトリアに帰って一晩ゆっくりと休み

翌日、朝から意気揚々とローレシアへやって来た。

 

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王子に話をする前に、まずはサイラスに会っておれの作戦について話しておこう。

おれはサイラスを呼び出した。

 

「カイン殿下! これはこれは。ようこそお越しくださいました」

 

サイラスはおれの前に小走りでやって来ると、その場でサッとひざまずいた。

数日前に会ったときより動きは俊敏になっていた。痩せこけた頬は若干まだ痛々しいが

目の下のクマは消え、皮膚にも張りが出て、顔色もずいぶん良くなっていた。

 

「少しは元気になったようだな、サイラス。作戦が上手くいく目処が立ったからよ、

 おまえにもぜひ協力して欲しくてな。今から王子に面会して話をする予定なんだが

 おれの計画が順調に進むように、おまえからも王子を説得して欲しいんだよ」

 

「なんと! たった2日で成功する目処が立ったのですか? さすがはカイン殿下。

 本当に驚きました。国王のあの忌まわしい呼び名を払しょくできるのであれば

 何なりとお申し付けください。私はいかなることでもご協力いたします」

 

サイラスの表情はパッと明るくなり、目を輝かせておれを見てきた。

 

おれはサイラスに、昨日はデルコンダルへ行き、王様を説得してきた話をした。

 

ムーンブルクにみんなが集まったとき、ローレシアデルコンダルの王様も来て

 同盟関係を結ぼうぜって言ってきたんだよ。どうやら王子の話はデルコンダルにも

 伝わっているみたいだったがよ、なんとか説得して来てもらえることになったぜ」

 

「はぁ、ローレシアデルコンダルの同盟関係の締結ですか? それは確かに

 良いことではあると思いますが、それと国王の異名との間にどんな関係が…?」

 

不思議そうな表情を浮かべるサイラスに、おれは策について最初から話し始めた。

 

「もともとはデルコンダル王の発言がきっかけだ。あのおっさんは言ったんだよ。

 王子は屈強だが純朴でおめでたい性格で、恐れるには値しないってな」

 

「な、なんたることか! その発言は、わが国王に対する侮辱ですぞ!」

 

サイラスがカッと顔色を変えたのを見て、おれは慌てて言葉を補った。

 

「まぁ、待てよ。サイラス。あのおっさんはおれに関してもこう言ってたぜ。

 サマルトリアの王子は、頭はキレるが虚弱体質で使えないってな」

 

そこまでひでえことは言われていないが、サイラスの手前、話を盛って伝えた。

 

「な、なんと...。それはカイン殿下への侮辱にもなりますぞ!」

 

「まぁまぁ、あのおっさんはあんな奴だからよ。おまえもそんなにカッカするなよ。

 ローレシアとも敵対してたんだし、褒めちぎったら逆におかしいだろうが」

 

「ま、まあ、確かにそうですね。多少の暴言は受け流しましょう。で、その

 デルコンダル王の発言と今回の作戦は、どう結びついてくるのでしょうか?」

 

さて、ここからが重要だ。おれは軽く咳払いをして話を続けた。

 

「会って確信したが、デルコンダル王は王子を警戒している。あの異名のせいでな。

 悪名が飛び交う国王が治めるローレシアと、果たして同盟を結んで良いのだろうかと

 今でもずっと考えていると思うぜ。その心理を逆に利用するんだよ」

 

サイラスは神妙な顔をして、おれの話に耳を傾けている。

 

「今はまず第一に、デルコンダル王の警戒を解かなければならねえ。

 ローレシア王は自国の脅威にはならないと、あのおっさんに思わせるのが大事だ。

 あいつの警戒を解くため、5日後の同盟締結の場で、王子からデルコンダル王に

『あるもの』を渡して欲しいんだ」

 

「『あるもの』とは?」

 

おれはサイラスを手招きして、近寄ってきたサイラスに耳打ちした。

 

「そ、それは… まずいのではないでしょうか?

 同盟締結どころか、両国の関係にひびが入るのでは...」

 

サイラスはうろたえている。

 

「だからこそ良いんだよ。ここで、ありきたりな国宝なんて渡しても意味ねえだろ。

『あれ』を渡すことに意味があるんだ。これで確実に、あのおっさんは警戒を解く」

 

「し、しかし... 一国の主にそのようなものを渡すだなんて...。 前代未聞です」

 

「そうかい? でも、王子はムーンブルクの主にあたるナナに『あれ』を渡しているぜ。

 まぁ、王子がナナに『あれ』を渡したのは、誕生日プレゼントとしてだけどな」

 

 

サイラスはキョトンとしている。

 

「まだ、わからねえか? 以前、王子がナナにプレゼントしたことで、『あれ』は

 王子とナナの友情の証でもあり、国同士の友好関係を示すものにもなったわけだよ。

ムーンブルクの王位継承者』であるナナに渡した以上、各国の友好の証として

 今度はデルコンダル王に『あれ』渡しても、なんら不思議じゃねえんだ」

 

「は、はぁ…」サイラスは、よくわからないといった顔で、仕方なくうなずいている。

 

「おまえの言うとおり、普通なら国同士の同盟締結に『あんなもの』は渡さねえ。

 最悪の場合、国王への侮辱と受け取られ、両国の関係にひびが入りかねないからな。

 今回は、あえてそこを利用するんだ。同盟締結の場で王子が『あれ』を渡して、

 デルコンダル王が怒り出すようなことになれば、そこでナナに出てもらうんだよ。

 ナナに証明してもらうんだ。『あれ』は立派な国同士の友好関係を示す証であり、

 さらに王子とデルコンダル王の友情の証でもあるんだってな」

 

サイラスはまだよく理解していない顔だ。

 

「同盟締結に『あんなもの』を渡して、さらに王様との友情を示すってことになれば

 デルコンダル王は必ず警戒を解くさ。あのおっさんは、きっと笑って言うだろうよ。

『わしと友達になろうってか! 実におめでたい奴じゃ、気に入った!』ってな。

 そして、おっさんは喜んで『あれ』を受け取り、両国の同盟は無事に締結され、

 王子への脅威も消え去るってわけさ!」

 

「しかし… 上手くいくでしょうか…? もし、デルコンダル王の怒りが収まらければ、

 取り返しのつかない深刻な事態になる懸念があるのですが…」

 

「考えても仕方ねえよ。ごちゃごちゃ言わずに、とりあえずやってみるしかねえだろ。

 今からおれは王子に会って、デルコンダル王に『あれ』を渡すよう話をする。

 おまえもおれと一緒に来て、『あれ』を渡すようにと王子を説得しろよ」

 

「… い、いや… しかし...」

 

「おまえ、さっき『なんでもする』って言ったよな! 男に二言はねえぞ!」

 

「いや、でも、あの…」

 

渋るサイラスの腕を強引に引っ掴んで、力まかせにぐいぐい引っ張りながら

おれは謁見の間へと向かった。

 

 

カインが考えた「作戦の全貌」がここで見えてきましたね (^_-)-☆

 

カインとサイラスの会話の中で、何度も出てきた作戦の重要アイテム『あれ』

このゲームブックに詳しい方でしたら、もうおわかりですよね ( *´艸`)

 

ヒントは、カインの言葉にもありましたが「ナナへの誕生日プレゼント」です。

このブログで作者からも酷評された、王子からの誕生日プレゼント ( *´艸`)

 

プライドの高いデルコンダル王に、国同士の同盟締結で『あれ』を渡したら...?

そりゃあ、サイラスが怖がって心配するのもわかりますよね ( *´艸`)

 

次回は久しぶりに王子が登場☆

 

カインの作戦を渋るサイラスは、一緒に説得してくれるでしょうか ( *´艸`)?

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ