ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 60】笑わせること

ムーンブルク王妃の遺骨を修道院に安置して、おれとナナは城へ戻ることにした。

気持ちの整理が出来たナナは、行きとは違って穏やかに話しかけてくる。

 

 

ムーンペタにはムーンブルクからの避難民もたくさんいて、兵士の遺族もいること。

遺族が訪れたときは供養をさせて欲しいと、修道院の僧侶にお願いしてきたこと。

 

「でも、ムーンペタから修道院まで行くのはかなり遠いわよね。それに、このまま

 いつまでも僧侶様のご厚意に甘えているわけにもいかないと思うのよ。いずれは

 どこかちゃんとした場所に、慰霊地を設けないといけないと思うわ」

 

「そうだな。それに関してはアルファズルや遺族たちと相談して決めるがいいさ。

 ムーンペタからムーンブルクに向かう道は、起伏も緩やかで草原が多いからよ、

 あのあたりにつくれば、両方から訪れることが出来るし良いかもしれねえな」

 

「そうね。みんなと相談してみるわ」

 

そんな会話を続けながら馬を走らせていると、ムーンブルク城が近づいて来た。

 

 

おれたちが修道院に向けて出発した後、城での作業は再開されていたようだが、

おれたちが戻ってくるのを見て、男たちは再び作業の手を止めてこちらを見ていた。

 

城の前で馬を止めると、ナナはひらりと馬から降りてみんなのもとへ向かった。

 

「みなさん、ご心配をおかけしました。無事に母の遺骨を修道院に安置できて

 少しスッキリしました。あたしは大丈夫です! みなさん、本当にありがとう」

 

ナナはしっかりした口調で言い、男たちに向けて深々とお辞儀をした。

 

 

男たちからあたたかい拍手が起きた。

 

「姫様にはおれたちがついているぜ!」

「今後はおれが親代わりになってやるよ」

「ばーか! おまえみたいな親父は嫌だろ。姫様、おれが親父になってやるよ」

 

男たちは口々に声をあげる。

 

「じゃあ、あたくしは姫様のお母様になってさしあげようかしら。うふん」

男たちの中でもひときわガタイのデカい大男が、大げさに媚びるしぐさで言うと

現場ではガハハハッと大爆笑が起きた。

 

そんな男たちの様子を見て、ナナも楽しそうに笑っている。

 

 

「おねえちゃーん!」

 

男たちをかき分けて、リーナはナナのもとへ走っていき、ナナの胸に飛び込んだ。

 

「リーナちゃん!」

 

ナナは飛びついてきたリーナをしっかりと抱きとめて、2人は固く抱き合った。

 

 

ふと、服の裾を引っ張られる感覚があり、そちらに目を向けるとティアがいた。

ティアはバツが悪そうな複雑な表情をして、ジッとおれを見上げていた。

 

おれはその場にしゃがみこんで、ティアと視線を合わせた。

 

「なんだよ、自分には両親が揃っているからって気にしてんのか?」

 

おれが声をかけると、ティアは今にも泣きそうな顔で小さくうなずいた。

 

「ばーか! そんなこと気にしなくて良いんだよ。おまえは、これからも変わりなく

 ナナやリーナと仲良くすれば良いんだ。気が引けてなにかしてやりてえと思うなら

 あの2人をたくさん笑わせてやれ! おまえの役目はそれだけで充分だからよ」

 

おれがそう言って頭をなでてやると、ティアの表情が和らいだ。

 

 

「よし! おまえも行けよ」

 

おれが背中を押してやると、ティアは笑って2人のもとへと駆け出した。

 

「おねえちゃーん、リーナちゃーん! あたしも仲間に入れてー!」

 

元気よく叫びながら走り出したティアは、石につまづいて派手にすっ転んだ。

 

「キャッ! ティアちゃん!」

「ティアちゃん、大丈夫?」

 

ナナやリーナが驚きの声をあげる。

 

おれも心配になってティアに近づこうとしたが、ティアはすぐに立ち上がった。

 

 

「もうっ! なんなのよ! せっかくの感動的なシーンだったって言うのにさ。なんで

 こんなところに石ころがあるのよ!」

 

ティアはプンプン怒って、自分がつまづいた石を蹴飛ばしている。

 

男たちの間でまた笑いが起きた。

 

 

「なによ! 笑わないでよ!」

 

キッと怒って男たちをにらんだティアの顔を見て、さらに爆笑が起きる。

 

なんだ? と思ってティアの顔を見ると、転んだときにでもついたのだろう。

ティアの鼻の頭には泥がついていた。

 

ベッタリと泥のついた顔で怒るティアを見て、おれも思わず吹き出した。

 

「あー! おにいちゃんまで! あたしを笑い者にするなんてひどいわ!」

 

ティアが真剣な表情で抗議すればするほど、泥のついた情けない顔との対比が面白く

おれは笑いが止まらなくなった。

 

「ねえ、おねえちゃん! リーナちゃん! みんなひどくない?」

 

怒りがおさまらないティアは、同意を求めてナナとリーナに顔を向けた。

ティアの顔を見たナナやリーナも笑い出す。

 

「まぁ、おねえちゃんやリーナちゃんまで笑うの? なんなのよ、もうっ!」

 

ティアは1人でむくれている。

 

さすがはわが妹だ。

ちゃんと、ナナもリーナも思いっきり笑わせてやったじゃねえか! イヒヒ。

 

 

ナナが明るさを取り戻し、さらにティアが身体を張って(?)笑いを取ってくれて

現場の空気はまた活気づいた。

 

良い雰囲気で作業の再開を告げようとしたところ、ふと空が陰った。

見上げると大きな竜が翼を広げている。

 

 

「ぐわっはっはっ! 愚かな人間ども、よおく聞け!

 わしはこのときをずっと待っておったのじゃ。ここまで

 長きにわたって、ロトの子孫たちをだまし続けたのも、

 すべてはこの日のためだ。今こそすべてを焼き尽くし、

 世界を闇に変え、曽祖父のあだを取ってやるからな、

 さあ覚悟しろ!」

 

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竜王のひまごがギラギラした眼で、おれたちを見下ろしている。

 

 

おいっ、なにを言ってんだ? おっさん。

どうせまた、タチの悪い冗談だろ?

 

 

 

ムーンブルク城に戻って来たナナを、あたたかく出迎える男たち (*´ω`*)

 

闘技大会に出場する男たちってことなので、20代~40代ぐらいでしょうか?

40代ぐらいの男たちにとっては、ナナはちょうど娘世代ですからね。

両親を亡くしたナナのことは、実の娘のように可愛いらしく思えるんでしょう☆

 

私もゲームブックを読んでいた頃はまだ小学生でしたが、いつの間にか40代となり

自分でも信じられませんが、すっかりカインたちの「親世代」になりました (;´∀`)

 

今は、可愛い息子たち・娘たちを見る感覚でこの創作物語を書いています (*´ω`*)

 

 

そして、ナナとリーナが固く抱き合う場面では、ティアの気持ちにも触れました。

仲の良いナナとリーナには両親がいなくて、自分には両親もおにいちゃんもいる。

 

なんだか2人に申し訳ないような気がして、どう接すれば良いんだろうと悩む。

12歳前後の多感な女の子の悩みに「おまえはそのままで良いんだよ」と返して

そっと背中を押す優しいおにいちゃん♡

 

なかなか良い場面になったと思います♪

(毎度お得意の自画自賛 (;´∀`))

 

そのままほっこりでは面白くないので、ティアには派手にすっ転んでもらって ( *´艸`)

現場の空気を一気に変え、大いに盛りあげてもらいました☆ よくやったぞ、ティア!

 

 

さて、現場の空気も和んで明るくなり、このまま作業再開といきたいところでしたが

またひと騒動ありそうですね ( *´艸`)

 

竜王のおっさんは、またタチの悪い冗談を言っているだけなのか?

 

それとも今度こそガチなのか?

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ