ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 61】本日の主役

遺骨を安置して修道院から戻ったナナは、城のみんなにあたたかく迎えられた。

一時はナナやリーナに両親がいないことを気に病んだティアも、明るさを取り戻し

本来の「ティアらしい姿」を見せてくれた。まぁ、本人は納得していないようだが。

 

気持ちを新たに作業を再開しようとしたところ、上空に竜王のひまごが現れた。

すべてを焼き尽くす今日のため、おれたちをずっとだまし続けていたんだと言う。

 

おっさん、冗談だろ?

それとも今回は本気なのか?

 

 

おれは空を仰ぎ、上空で翼をバサバサさせている竜王のひまごを見つめた。

ギラギラと血走った目が、獲物を狙うようにおれたちを見下ろしているように見える。

 

これは…! 本当にヤバいかもしれねえぞ!

おっさんの視線にただならぬものを感じたおれは、ナナたちのもとへと走った。

 

おれが走り出したのと同時に、竜王のひまごがおれたちめがけて急降下してくる!

 

 

ナナたちのもとへと走り着いたおれが3人をかばうように両手を広げたところで、

竜王のひまごも着陸したのだろう。背中から、ものすごい衝撃波が襲ってきた。

 

あまりの波動に前につんのめりそうになりながらも、足を踏ん張ってなんとか耐えた。

近くでは衝撃の強さでバランスを崩し、転倒している男たちの姿が見える。

 

 

しばらくすると衝撃波はおさまり、おれはゆっくりと後ろを振り返った。

竜王のひまごは首を伸ばし、相変わらずギラついた目でおれたちを見つめている。

 

このやろう! 今までの姿は偽りか? だましやがったな!

 

竜王のひまごをキッとにらみつけながら、おれはこれまでの難敵な魔物たちとの戦いを

1つ1つ思い出していた。

 

 

ロンダルキアの洞窟でドラゴンと戦い、王子がドラゴンの爪で首を絞められて

絶体絶命のピンチになったとき、おれのザラキが起死回生で効いたこと。

 

ハーゴンとの戦いで、召喚された悪魔神官デヌスが引き連れていたダースドラゴンにも

おれのザラキが効いたこと。あのときは、悪魔神官デヌスのザオリク

すぐにダースドラゴンは生き返ったが、ザラキが効いたのは間違いない。

 

 

そうだ。確率はかなり低いかもしれないが、竜には『ザラキ』が効く!

 

おれはふぅぅと息を吐き出すと、両腕を高く差し上げ目を閉じて呪文の準備を始めた。

 

おれ様のザラキで、てめえのくだらねえ野望なんて打ち砕いてやるぜ!

 

 

だがそのとき、後ろからおれの肩に手をかけて強く揺すぶる奴がいた。

誰だよと思って振り返るとナナだった。

 

ナナはおれを見つめ、激しく首を横に振ると、前方を見るように促した。

 

 

「カッカッカ。さすがは世間を震撼させたあの竜王を曽祖父に持つだけのことはある。

 なかなかの迫力じゃったぞ。いや~、おもしろいものを見せてもらったな」

 

竜王のひまごの背中から、ひげをたくわえた1人の高貴な男が姿をあらわした。

あれは… デルコンダル王か!

 

「ぐわっはっは! 以前にも、ここにいるおちびさんたちと一緒に大灯台を落として

 光の玉を手に入れた帰りにラダトームの奴らをだましたことがあるんじゃがな。

 これがまた、なかなかの快感なんじゃよ。1度やるとクセになるわい」

 

竜王のひまごは背中にいるラダトーム王を見ながら、喉を鳴らして陽気に笑っている。

 

 

「おい、こらっ! おっさんども、人をからかってふざけんのもいい加減にしろよな!

 冗談で人間、死ぬことだってあるって前から言ってあるだろうが!」

 

おれはすぐさまおっさんたちに抗議しに行ったが、奴らはまったく聴く耳を持たない。

 

 

「なぜか、あの姫にはすぐにバレてしまうんじゃが、男どもは簡単にだまされてな。

 姫様が平然としておるのに、王子たち2人はいつも勝手に騒ぎ立てるんじゃよ。

 いや~、それがたまらなくおもしろくてな。グハッ、グハッ、グハッ」

 

サマルトリアの王子はなかなかのキレ者だと思っておったのだが、こんな簡単に

 だまされるとはな。カッカッカ、そなたの慌てっぷり、なかなか痛快じゃったぞ!」

 

「なんだとっ!」

 

おれは怒りのあまり、デルコンダル王につかみかかろうとした。

 

 

するとそのとき、デルコンダル王の背後で虹色のまばゆい光があたりを照らした。

 

まぶしさに目を細めていると、デルコンダルの家臣たちが光の中から姿をあらわした。

 

「王様! こちらにおられましたか! いやはや、肝を冷やしましたぞ」

重臣と思われる老齢のじいさんが、泣きそうな顔でデルコンダル王に駆け寄った。

 

じいさんの話によると、ムーンブルクへ向かう手配を済ませて王様のもとを訪ねると

そこにデルコンダル王の姿はなく、王様は良からぬ事件に巻き込まれたのではないかと

城内が大騒ぎになったのだという。

 

「ほうぼうを探し回り、いろんな者に話を聞きましたが、誰も王様を見ておらず。

 ようやく門番の男から『竜が中庭から西へと飛び立つのを見た』と聞きましてな。

 これだけ探しても城内におられないということは、もしや、王様もその竜と一緒に

 飛んで行かれたのでは? という一縷の望みでここまでやってまいりました。

 あぁ、ご無事で本当に良かった…」

 

デルコンダル王が無事に見つかったことで、じいさんは安心して気が抜けたのだろう。

王様に向けて話しながらも、涙がとめどなくあふれ、しきりに目の下をぬぐっている。

 

 

おれは竜王のおっさんのもとへスタスタと歩いていくと、その首に腕をまわした。

 

「なぁ、おっさんよ。あんたにも見えてるだろ? あの涙が。あんな人の良さそうな

 じいさんを泣かせやがって! てめえらおっさんどもの身勝手な行動のせいでよ、

 いったいどれだけの人間が迷惑してると思ってんだよ、ああん?」

 

おれは首にまわした腕に力を込めて、竜王のおっさんを絞めあげた。

 

 

「わかった、わかった。今回に関しては、本当にわしが悪かった。じゃが、これまでの

 わしの多大なる功績に免じて、すべて水に流してくれよ。なっ、なっ?」

 

「けっ。ただじゃ、許せねえな」

 

 

「カイン。人をいじめるくせ、止めなさいよ。本当に性格悪いんだから。

 ただ、あなたもやめなさい、いたずらは!」

 

いつの間にかナナがおれのすぐ後ろにいて、竜王のひまごをピシャリと叱りつけた。

竜王のひまごもナナに叱られて、少しは効いたらしい。しょんぼりとうなだれた。

 

しょうがねえ。おっさんもナナに叱られて懲りたみてえだし、許してやるか。

おれがそんなことを考えていると、離れた場所から『千里眼』が大きな声をあげた。

 

 

「お~い! こっちに向かって誰かがやって来るぞ!」

奴の指し示す方向に目を向けると、数頭の馬らしきものが薄っすらと見える。

 

「青い鎧… あれはローレシアだ! ローレシアの青の騎士団がこっちにやって来るぞ。

 そして、一団の先頭にいるあの若者… あれは、ローレシア王だ!

 

 

ローレシア王」の言葉に、それまで泣きじゃくる重臣を苦笑いしつつなだめていた

デルコンダル王が一瞬で険しい表情に変わり、『千里眼』の差す方向をにらみつけた。

 

 

いよいよ、主役の登場か!

 

おれは小さく身震いした。

 

 

 

カインが竜王のひまごに、またまた(また?)「だまされるの巻」でした~( *´艸`)

 

竜王のひまごには、初対面の時から何度も何度もだまされている王子とカイン (;´∀`)

さすがに今回はだまされないかと思いきや、「今度こそ本気でヤバいかも?」

簡単にだまされてくれました ( *´艸`)♪

 

今回は王子が不在でしたが、一緒にいたら王子もまた確実にだまされたでしょうね☆

 

 

「竜には意外とザラキが効く☆」冷静な戦略分析のもと、ナナが止めてくれなかったら

カインは竜王のひまごにまでザラキを唱えちゃうところでした… (;´∀`)

ナナが止めてくれて良かった~ (*´ω`*)

 

 

だまされて、本気でザラキを唱えようとしちゃっただけでなく、だまされたところを

デルコンダル王にも見られて笑われて、またしてもとんだ赤っ恥のカイン ( *´艸`)

 

カインとしても笑われた悔しさはひとしおですが、ナナがカインの代わりにガツンと

竜王のひまごを叱ってくれたので、今回も許してあげましょう (*´ω`*)

 

 

そしていよいよ本日の主役(?)、王子がムーンブルクにやって来ましたよヾ(*´∀`*)ノ

カインの作戦は成功するのでしょうか?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ