ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 46】不名誉な異名

落ち込んだ様子のナナに案内されて、ムーンペタの教会にやって来たおれは

ひどく憔悴した様子のサイラスが教会に来ていることを知った。

 

暗く重苦しい空気の中、おれはナナが用意してくれた椅子に腰かけた。

 

さっきは「カイン殿下、どうしてこちらへ?」と聞いてきたくせに、サイラスは

疲れ切ったように深いため息をついてうつむいたまま微動だにしない。

 

 

「… いったいどうしたんだよ、サイラス。おまえがそんなにやつれるなんてよ…

 まさかとは思うが、王子の身になにかあったのか?」

 

ただならぬ暗くて重い空気に若干ためらいながらも、おれはサイラスに尋ねた。

サイラスは顔をあげると「このような情けない姿で、申し訳ございません」

ぺこりと頭を下げてから話し始めた。

 

「殿下... いえ、国王はお元気にしておられます。即位の礼の式典はなくし、その分の

 時間と費用をローラの門の補修に充てようと張り切っておいでですし、精力的に

 政務をこなしておられます。国王のご体調にはまったく問題ありません」

 

 

そうだ。ローラの門の進捗状況を親父に報告しに来たとき、王子は確かに語っていた。

ハーゴンを討伐してローレシアに凱旋した際に、「新国王即位」の話は民衆にも

伝わったし、その場でみんなにお祝いもしてもらえたんだから、わざわざ式典を開いて

祝ってもらう必要はない。式典の分の時間とお金は、ローラの門の補修に充てて

1日も早く平和な日常をみんなに取り戻してあげたいんだ、と。

 

親父だけじゃなく、サマルトリア重臣たちも王子のその言葉に感心していた。

「おまえも見習うように」と王子が帰ってからおれは親父に小言を言われたんだ。

 

あのとき、確かに王子は元気そうで全身からあふれんばかりの活力がみなぎっていた。

「王子の体調にはまったく問題はない」というサイラスの話も嘘ではないだろう。

 

 

「だとしたら、なにが問題なんだ?」

 

おれが再び尋ねると、サイラスは少し表情をゆがませたが、ひと息ついて話を続けた。

 

「… 私の不徳の致すところなのですが、最近、青の騎士団から退団を希望する者が

 後を絶たないのです。最初は、平和になって騎士団としての活動も縮小されたため

 他の仕事に就きたいと思う者もいるだろうと気にしていませんでした。ただ、

 退団した者の多くが、ローレシアから他の土地へ移住していると知りました。

 今、ローレシアでは、人口の急激な流出が深刻な問題となっているのです」

 

 

確かに、サマルトリアでもローレシアからの移住者が増えたという報告は聞いていた。

だが、おれも親父もその報告をたいして問題視していなかった。

 

ハーゴン軍が威勢を振るっていた頃は、城や町を一歩でも出ると魔物がうようよいた。

力に自信のない奴らは、せいぜいスライムや大なめくじが出る程度のローレシアでしか

暮らせなかっただろう。おれたちがハーゴンを討伐し、世界が平和になったことで

弱い奴らでも自由に移住が出来るようになったのだろうと軽く考えていたのだ。

それほど、深刻なのか? なぜ、移住が急激に増えてんだ?

 

 

「なんで、ローレシアを去る奴が増えてるんだ? 若い王様に変わったばっかりで

 本来なら活気づいてくるはずなんだが。 原因はわかっているのかよ?」

 

「ずっと原因がわからなくて... 退団者を問い詰めてもみんな口ごもるばかりですし。

 人口の減少は国力にも影響しますので、本来すぐに報告すべきところなのですが

 原因不明で人口が減っていると殿下... いえ、国王に伝えるのも忍びないですし。

 情けないですが、どうすればいいのか途方に暮れる日々が長く続いておりました。

 ただ、諦めずにしつこく問い詰めたところ、話してくれる者がようやく現れて

 最近になってやっと移住者が急増している原因がわかったんです」

 

「原因はなんだったんだ?」

 

 

これまで、流暢に話していたサイラスが急に黙り込んだ。重苦しい空気が漂う。

救いを求めて周りを見たが、アルファズルは腕を組み目を閉じたまま動かないし

おれの横に座るナナも伏し目がちで小さなため息をつくばかりだった。

 

 

長い長い沈黙の後で、サイラスはようやく口を開いた。

 

「...... 非常に不快な話で、私の口から申し上げるのもはばかられるのですが…。

 退団者の話では、青の騎士団の中で新国王に対する『不名誉な異名』が

 騒動になっているというのです。その異名を聞いて、国王に恐怖心を抱いたり、

 忌み嫌う者が出ていることが退団者や移住者の増加の原因だという話でした」

 

「王子に対する『不名誉な異名』? いったい、なんのことだ?」

 

 

サイラスはおれの質問にふうぅ~と大きく息をつくと、意を決して言った。

 

「不肖サイラス、恐れながら申し上げます。国王への不名誉な異名とは...

 ... 新ローレシア王は『破壊神を破壊した男』というものです」

 

 

「なにっ!」

 

あまりの衝撃に言葉が出なかった。

 

 

「破壊神を破壊した男」だとっ!?

 

f:id:john0910:20171222045048j:plain 王子が破壊した破壊神

 

 

 

おれたちは命懸けで戦ってきたというのに! 死力を尽くして、やっとの思いで

この世界に平和を取り戻したというのに! なんだよ、その言い草は!

 

 

「くそっ! どこのどいつだ、そんなこと言った奴は!

 許せねえ! 見つけ出して叩きのめしてやる!!」

 

 

激しい怒りが湧きあがった。おれは思わず立ち上がり、机をドンとこぶしで叩いた。

 

 

「落ち着け、カイン。

 悔しい思いをしているのはここにいるみんな同じだ」

 

アルファズルは腕組みをしたまま目を開けて、鋭い眼光でおれを見据えている。

 

 

おれは他の2人に目を向けた。

 

サイラスは血走った目で、目の前にある壁をキッとにらみつけていた。机の上では、

血がにじむほど力強く握りしめたこぶしがぶるぶると震えている。

 

ナナも唇を噛みしめたまま、肩を震わせて嗚咽をもらしている。

 

 

「今は、誰がその言葉を言ったのかは重要ではない。

 ローレシアの人口流出をどう食い止めるかが大事だ。

 怒りで問題の本質を見失ってはならぬぞ!」

 

 

「本質を見失うな」というアルファズルの言葉で、おれは冷静さを取り戻した。

椅子に座り直して、呼吸を整える。怒りで震えていた身体が少しずつ緩んできた。

 

 

そうだ。落ち着け! 大事なのはローレシアの人口流出を食い止めることだ。

誰が言い出したことか知らねえが、このままでは終わらせねえぞ!

 

 

 

 

ゲームブックとは関係ないですが、これはどうしても書きたかったエピソードで

書くならこのタイミングしかないと思い、ここで出してみました (^_-)-☆

 

 

ローレシアの王子は「破壊神を破壊した男」と言われて、迫害されて

国は衰退・没落して、ローレシアは滅亡してしまうという話... (´;ω;`)

ドラゴンクエストⅡの派生作品で有名なエピソードですよね☆

 

 

 

この創作物語では

ローレシアでは新国王が即位して、ムーンブルクの再建も目処がついて来て

ロト3国で平和に向けて突き進んでいる最中に突如として起きた災難 (´;ω;`)

 

一見、ロト3国は順調に見えて実は今、ローレシアは存亡の危機に瀕しています。

「破壊神を破壊した男」という異名が人々の間に広まり、ローレシアから

人々がどんどん逃げ出すという悲しい事態が起こっています (´;ω;`)

 

さて、カインたちはこのピンチを乗り越えることが出来るのでしょうか?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ