ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 21】 不自然な演技?

翌朝、おれたちはサイラスに急かされて慌ただしくサマルトリア城を出発した。

 

出発前には親父のところへ挨拶に行った。

親父は王子とナナに「なにか困ったことがあれば、いつでも頼るがいい」と言い

腰をかがめると「またいつでも帰っておいで」と言ってリーナの頭をなでた。

 

城を出た後、おれたちはオーウェンの店にも立ち寄った。

王子が「作業途中で急に去ることになってしまい申し訳ありません」と頭を下げると

オーウェンは恐縮した様子で返事した。

「いえいえ。あとは乾燥させるだけですから、残りの作業は私1人でも大丈夫です!

 1ヵ月もあれば、ムーンブルクで使うのに充分な量の粉が完成することでしょう。

 その際は、私もムーンブルクへお供いたします。またお会いしましょう」

 

オーウェンは城下町の入口まで出て、笑顔でおれたちを送り出してくれた。

 

 

城下町を出ると、おれたちはサイラスが調達してきた馬に乗せられた。

ティアはおれの馬に乗り、リーナは王子の馬に乗って出発することになった。

 

一刻も早くローラの門に到着して、視察を終わらせたいのだろう。

先頭に立つサイラスは最初から馬を強く駆って、かなりの速度で馬を走らせた。

 

おれと王子は馬には乗り慣れているが、人を同乗させた機会は少ない。

同乗しているティアとリーナを怖がらせないように慎重な騎乗をしながらも

少しでも気を抜くとすぐに引き離されていくサイラスを追わなければならない。

おれも王子も1人で乗っているときの数倍、疲労度は大きかった。

 

おれたちが慎重に馬を走らせているとはいえ、馬はかなりの速度で走っている。

ティアとリーナは高さと速度の恐怖に加え、絶えず襲ってくる激しい震動で

上体をフラフラさせながら、必死に手綱をぎゅっと握り目を閉じて震えていた。

 

普段は優雅に走らせる程度にしか馬を操れないナナとアルファズルは

全力で馬を駆って追いかけてきたが、サイラスとの差は広がるばかりだった。

 

...... もう我慢の限界だ。

 

おれは落っことさないようにティアを抱きかかえて鞍から身を乗り出すと

前方に向けて大声を出し、先頭をひた走るサイラスを怒鳴りつけた。

 

「サイラス! 早く王子を連れて帰りたいてめえの気持ちはわかるが、今は屈強な

 野郎たちだけで旅してるわけじゃねえんだぞ。振り返って周りをよく見てみろ!

 姫たちを護衛するどころか、てめえが自分勝手に振り回しているだけじゃねえか!

 てめえのペースに合わせて走らされてる、こいつらの身にもなってみろよな!」

 

おれの怒鳴り声に気づいたサイラスは、手綱を引き馬を止めて振り返った。

おれたちも次々に馬を止めて、サイラスの近くに集結した。

 

よっぽど怖かったのか、リーナは王子にしがみついて震えながら泣いていた。

王子は「大丈夫。もう大丈夫だよ」と言いながらリーナの背中をなでている。

 

いつもならカンカンに怒るはずのティアは、しゃべる気力もなくなったようで

おれの腕をぎゅっとつかんだまま、黙ってぶるぶると震えていた。

 

おれたちから遥かに遅れて、ようやく追いついてきたナナとアルファズルは

2人とも汗をかき、青白い顔をして「ぜえ、ぜえ」と肩で大きく息をしていた。

 

そんなおれたちの様子を見たサイラスは、ガックリとうなだれた。 

「常日頃、殿下には人の立場になって物事を判断するよう伝えているのに

 私自身が自分本位にみなさまを振り回してしまうとは...申し訳ございません」

 

おれたちはその場ですぐに休憩をとったが、全員の疲労が激しかったため 

翌日に備えて充分な休息をとることに決め、そのまますぐに野営の準備をした。

 

おれたちは馬を近くの木につなぎ水を与えて休ませると、テントの設営に入った。

 

女3人が休むための、頑丈な素材で出来た丸い球体型のテント

男どもが雑魚寝するための、大きいだけが取り柄の三角形のテント

 

アルファズルは休ませ、おれと王子とサイラスで2基のテントを並べて設置した。

 

テントの設置が終わると、サイラスは「頭を冷やしてきます」と林へ歩いて行った。

 

おれと王子は、近くにある適当な岩の上に腰をおろして休むことにした。

 

アルファズルは大きな木の根元に座り、うつむき目を閉じてじっとしていた。

疲れているようだが、ほおにも赤みが戻り体調には問題なさそうだった。

 

ティアとリーナを丸テントで寝かせると、ナナはホッとした表情で戻ってきた。

おれたちと同じように岩の上に腰をおろすと、ナナは穏やかに微笑んだ。

 

「休めることになって安心したわ。カインがサイラスに意見してくれたおかげね」

 

「ティアとリーナが限界だったし、誰かが落馬したりするとやっかいだからな」

 

「ごめんよ、カイン。本来ならぼくがしっかりと指導しなきゃいけないのに...」

 

「気にすんなよ。そういうことは王様になったら自然と身についてくるだろ」

 

「そうね。王子もついに王様になるのよね。王子はこれから忙しくなるわよ~。

 まずは即位の礼があるし、ローラの門も直すし、ルプガナからお妃様を迎える

 準備もしなくちゃいけないんだもの。本当に大忙しだわ」

 

ルプガナ? お妃様? えっ、それってミリアのことかい?」

 

「そうよ、決まってるじゃない」

 

「えっ、じゃあ、ぼくとミリアが結婚する話が進められているってことか」

 

「はははっ。まるで他人事みたいに言ってるな。おまえはミリアがなんのために

 急いでルプガナに帰ったか、まったく気づいてなかったってわけだ」

 

ええ~っ! そういうことだったんだ

 

「ふふふっ。もう、王子らしいわね。

 ローレシア新国王のご成婚だから、さぞかし豪華なお式になるんでしょうね。

 ミリアのウェディングドレス姿を見るのも楽しみだわ。きっとすごく綺麗よね」

 

「ミリアの花嫁姿....か.....。う~ん、まったく想像がつかないな......」

 

「もうっ! 王子ってば。当日はちゃんと『綺麗だよ』って言ってあげなさいよ。

 女の子はそういうことをいつまでもずーっとずーっと覚えているんだからね」

 

ナナは軽やかに笑いながら、王子の肩をパシッと叩いた。

 

その後もナナは「ミリアの髪飾りは、生花を使うと良いんじゃないかしら」とか

「王子の正装は青を基調としているから、合わせるなら何色が素敵かしら」など

王子には聞くだけムダだろって話を、陽気に延々としゃべり続けていた。

 

 

...... おれがもし、ナナの立場だったら

報われない想いを断ち切るため、カラ元気で懸命に陽気に振舞うかもしれない。

そう、他から見たら不自然なほどに...

 

一見すると、仲間として王子の結婚を心から喜んで祝福しているように思えるが

ナナの異常なはしゃぎっぷりは、王子への想いを捨てるための演技にも見えた。

 

... ナナの笑顔がおれの胸を締めつける。

おそらくナナは自分の想いを王子に伝えることなく、身を引くつもりなのだろう。


…… ナナ、本当にそれでいいのか?

 

 

暴走するサイラスには、ガツンと制裁を加えてやりました! イエ~イヾ(*´∀`*)ノ

 (話が進むごとに、私のいじわる度が上昇しているような…(;´∀`))

 

ゲームブックでは、カインが世界樹の葉を搾って盲目だったリーナの目を治し

目が見える喜びでナナとリーナが抱き合って泣き、カインがもらい泣き (*´ω`*)

 

王子は (;´∀`)?? という状況だったので、今回は「王子&リーナ」をペアに。

ローレシアのおにいちゃんも優しいおにいちゃんで良かった良かった (*´ω`*)

 

王子とミリアの結婚について、不自然なほどはしゃいで楽しそうに話すナナを見て

心がざわついているカイン...。

 

若い女の子にとって『結婚』は憧れ ♡

ましてや友達の結婚式だなんて、そりゃテンションMAXですよヾ(*´∀`*)ノ

 

ナナが陽気にはしゃぐのは、この年代の女子ならごくごく自然なことなんですが

恋で冷静さを失っているカインは、おかしな誤解をしちゃってますね (;´∀`)

 

自分が失恋しちゃったことより、「ナナが『報われないつらい恋』をしながら

気持ちを抑えて無理して笑っている」ことが苦しくてたまらないようです...。

(←失恋も含めて、すべてカインの勘違いなんですけどね (;´∀`))

 

自分の幸せよりも、相手が幸せであることを願う…… 本物の愛ですね (*´ω`*)

 

かなわぬ恋に1人で涙を流しているナナの力になってやりたい...

暴走サイラスをガツンとやっつけたカインが次回は暴走しますよ~ ( *´艸`)

 

では、次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ