ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 40】 仲間はずれ

レオンをテパの村に送り届けて、おれは1人でサマルトリアへ帰って来た。

 

最初は、ガルダーを探しにまだ行っていない町をまわる予定だったが

ガルダーが町を訪れる可能性が低くなった以上は下手に動いても無駄足になる。

いったん城に帰って、今後の予定をゆっくりと組み直そうと思ったのだ。

 

ルーラで城門前に到着して城内に入ろうとしたところ、門は封鎖されていた。

いつもは賑やかな声が響いている城下町も、今はひっそりと静まりかえっている。

 

いったい、なにがあった?

 

城下町の入口あたりに岩のようなものがうごめいているのがぼんやりと見えた。

話し声のようなものも聞こえてくる。

 

おれは警戒しつつ入口へ近づいて行った。

 

歩きながら城下町の様子をうかがうと、どうやら住人たちは無事なようだ。

入口で起きている騒ぎを恐れ、家の中に身を隠して息をひそめているだけらしい。

 

近づいて行くにつれて、岩のようなものの正体がわかった。思わずため息が出る。

 

やれやれ、また面倒な奴がやってきたな。一難去ってまた一難だぜ。

 

遠くから岩のように見えたのは、羽を広げた巨大な竜だった。

竜王のひまご」が町の入口に降り立ち、大地が揺れるような大声を出している。

 

竜に対峙しているのは、緑の騎士団だ。片眼の騎士団長が先頭に立っている。

 

「だ~か~ら! さっきから何度も言っておるだろ。わしは町を襲う気はないんじゃ。

 わしは善良な竜だぞ。ロトの子孫たちも何度も助けたし、友好な関係なんじゃ」

 

「へっ、バカめ! 他の奴らはだませても、このモルディウスをだませると思うなよ!

 甘い言葉をささやき、友好な振りをして油断させるそなたの手口はお見通しだ!

 どうせ『世界の半分をおまえにやろう』とでも言う気だろ! だまされんぞ!」

 

「いつの時代の話をしておる。それはわしのひいじいさんが使った古臭い手口だ。

 今をときめくこのわしが、そんな古臭い手を使うわけないだろ」

 

「はははっ、引っかかったな! 今は別の手を使ってだます気だと白状しおったわい。

 浅はかな奴め! おまえの汚いやり口にだまされるものか! さあ、覚悟しろ!」

 

モルディウスの号令に、緑の騎士団が一気に臨戦態勢に入る。

 

こいつは...... おもしれえぞ!

 

おれは近くの木の陰に身を隠して、ことの成り行きを見守ることにした。

竜王のひまごは、イライラした様子で空に向かってゴオオッと炎を吐いた。

 

「ええい! 待て待て! 戦う気はないのだとさっきからずっと言ってるだろう。

 わしはただ、この城の王子と話がしたいだけだと何度も言ってるではないか。

 ここの王子は城にはいないのか? いないのなら、今どこにいるのじゃ?」

 

「ふんっ! 瞬間移動の魔法を使ってどこかに飛んでったきり、帰って来んわい。

 剣の稽古はそっちのけで、くだらない魔法にばっかり傾倒して困ったもんだ。

 まったく! いつまでたっても、ちっとも落ち着きがなくふらふらしおってからに。

 根なし草のぼっちゃんめ。今ごろ、どこをほっつき歩いているのやら...」

 

「おいっ! モルディウス! てめえ、言ってくれたな! ぜんぶ聞こえてるぞ!」

しまった! 隠れて楽しむつもりが、つい声をあげてしまった。

 

竜王のひまご、モルディウス、緑の騎士団の視線が一斉におれに集中する。

 

「おお~っ! 帰って来ておったのか、おちびさんよ。待っていたぞ、わが友よ!

 さあさあ、こっちへ来てこの『カタブツ野郎』をさっさとどうにかしてくれ!」

 

「なんだと、この野郎っ!」

 

ちいっ! こうなったらしょうがない。

 

「モルディウス! こちらは私のお客人だ。おまえたちは下がっていなさい」

 

「し、しかし、殿下っ!」

 

「いいから、下がりなさい」

 

「... はっ!」

不服そうな顔をしながら、モルディウスと緑の騎士団は引き揚げていった。

 

おれは竜王のひまごと対峙する。

「おっさん、急にどうしたんだよ。いきなり来たら騒ぎになるだろうが」

 

竜王のひまごは横目でギロリとおれをにらむと、フンッと顔をそむけた。

 

なんだよ、なに怒ってんだ?

 

「わしらは一緒に大灯台を攻めて『光の玉』を取り戻し、共にハーゴンも倒した。

 われら竜一族とロトの勇者には確かに忌まわしい過去があったが、わしらの代で

 過去の因縁から解き放たれ、イイ仲間になれたと思っておったのじゃ。なのに...

 なのに... こんな仕打ちに遭うとは...」

 

おっさんはおれの様子をチラチラと見ながら、おおげさに泣きマネして見せた。

 

「おっさん、なんの話だ? おれがおっさんに何かしたって言ってんのか?」

 

「ふんっ! なら教えてやるわい。おぬし、わしを仲間はずれにしたじゃろ!」

竜王のひまごはキッとこちらに向き直り、大声でおれを怒鳴った。

 

おっさんの話はこうだ。

 

ある日、わしが「竜王の城」の外に出て羽を伸ばしていたところ、ルプガナの港に

たくさんの船が停泊して賑やかだったので、何があったのかと様子を見に行った。

 

わしの姿を見た船員たちは竜王が攻めて来たー!」と叫んで大騒ぎになったが

おまえたちが大灯台に助けにいった娘(ミリアのことだ)が船着き場から出てきて

「待って! こちらの方は私を助けてくれた優しい竜よ」と止めに入ってくれた。

 

そこでわしは、その娘に「このルプガナの賑わいは何の騒ぎだ?」と尋ねた。

娘はムーンブルク城を再建するため大規模な人の動きがある」と言うではないか。

しかも「その指揮をとっているのはサマルトリアのカイン殿下」と言っておった。

 

「わしはなーんも知らんかったぞ!

 わざわざあんな船を出さなくても、わしならぴゅーっとひとっ飛びで運べるのに。

 なんでわしに助けを求めん? わしらは仲間ではないのか? 友ではないのか?」

 

やれやれ。おれは竜王のひまごに気づかれないように小さくため息をつくと

また大げさに泣きマネをしているおっさんのそばへと大股で歩み寄った。

 

「おっさん、悪かったよ。仲間はずれにしたつもりはねえよ。ただ、おっさんは

 竜の中の王『竜王のひまご』だからよ、たたずまいに威厳がありすぎるんだよ。

 さっきみたいによ、みんながおっさんの威厳を怖がっちまうと悪いと思ってよ。

 それでおっさんには声をかけなかっただけなんだ。なあ、わかってくれよ。

 おれたちは苦楽を共にした戦友だろ?」

 

おれは竜王のおっさんの首(?)のあたりに腕をまわしてウインクした。

 

「ふん。わしが大事な仲間だとわかってるなら良い。あの娘に聞いたところによると

 おまえさん、デルコンダルからムーンブルクへ大勢の人を運ぶというではないか。

 あれぐらいの距離なら、わしならあっという間に飛び越えることが出来るぞ。

 なあ、わしにその役目をやらせたくなってきたじゃろ。な、な」

 

...... デルコンダルからムーンブルクまで猛者たちを連れてくるのには

おれとグランログザー師匠とアルファズルの魔法があれば充分こと足りる。

 

はあ。だが、そんなことを言ってまたこのおっさんがいじけたら厄介だからな。

 

「... わかったよ。おっさんにもデルコンダルからの輸送を手伝ってもらおう」

 

「さすが、ロトの子孫は話が早くて助かるわい。そうと決まれば善は急げじゃ。

 今から一緒にデルコンダルに行って、王様に話をつけてくるぞ」

 

... おい、冗談だろ? 帰って来たばかりなのに、またデルコンダルへ行くのか?

 

どうしても行くというのなら、おれがルーラを使って1人で行きたいところだが

おれの目の前で竜王のおっさんはウキウキとおれが乗るための鞍を準備している。

 

おいおい、あんなところまで飛んで行く気かよ...... の、乗りたくねえ...

 

どうやって断ろうか思案していると、鞍の準備が出来た竜王のおっさんは

おれをひょいっと咥えて背中に乗せ、空にゴオオッと炎を吐いて飛び立った。

 

おれを乗せた竜王のひまごは上機嫌で、空に炎を吐き頻繁に高度を変えながら

ぐんぐん加速して飛んでいる。


… ち、ちくしょう... おれをきりきり舞いさせて楽しんでやがるな... うええ

 

 

 

いつか登場させたかった「竜王のおっさん」、ここで登場~ヾ(*´∀`*)ノ

 

竜王のひまごが「ロト3国のどこかに現れ、因縁つけられる」設定にしようと思い

どこで誰と絡ませるか考えたときにピンと来たのがモルディウスでした ( *´艸`)

 

長年サマルトリアで従事しているため、竜王に関する言い伝えについても詳しく

ひまごがロトの子孫と『仲良しアピール』しても、「わしはだまされんぞ!」

「おまえの魂胆はお見通しだ!」って反論しまくる姿が浮かびました ( *´艸`)

 

モルディウスとはお互い一歩も引かずに大声でギャンギャンやりあい

カインには「仲間はずれにされた~」とウソ泣きする竜王のひまご ( *´艸`)

可愛いところがたくさん書けたかな~と満足しています (*´ω`*)

 


さて、きりきり舞いされながら再びデルコンダルへ連れて行かれるカイン (;´∀`)

カインが大好きなのに、なぜか散々な目に遭わせてしまう私... (´;ω;`)(← いじわるだからですね)

 

果たして、カインに平穏無事な日々は訪れるのでしょうか?

そして、ガルダーには一体いつになったら会えるんでしょうか (;´∀`)?

 

続きもお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ