ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 33】心をひとつに

ムーンペタの教会に1泊した翌朝、簡易ベッドで寝ていたおれは叩き起こされた。

「おにいちゃん、おにいちゃんってば。ねえねえ、早く起きてよ~」

「おにいちゃん、起きて起きて。大変な騒ぎになってるのよ!」

「カイン! ねえ、早く起きて。あの人だかりをなんとかしてちょうだい」

 

昨夜【出会いの酒場】で飲んだ酒がまだ残っていて、大声がガンガン頭に響く。

「あ~、あったま痛え~。なんだよ、いったい。どうしたってんだ?」

 

おれが頭を押さえながらベッドから身体を起こすと、3人は一斉に外を指さした。

立ちあがって窓から外を見ると、教会の前に大勢の民衆が集まってきていた。

「なんの騒ぎだ?」と驚くおれの顔を見て、ナナが状況を説明してくれた。

 

 

数日間ムーンペタに滞在して連日のお祭り騒ぎに参加したことで、おれとティアが

サマルトリアの王族だということはムーンペタの住民たちの知るところとなった。

 

帰るときになって騒動が起きるのを避けるため、おれたちは昨日の夕暮れ時に

静かに帰るつもりだったが、思わぬ言い争いになり教会前で騒ぎを起こした。

おれたちはまったく気づかなかったが、そのとき目撃者はたくさんいたらしい。

 

さらに、おれが【出会いの酒場】で飲んでいるのも大勢の人に見られていた。

 

 

サマルトリアの王子ムーンブルクの王女が教会前で痴話ゲンカをしていたのよ。

夜にはサマルトリアの王子が1人酒場で不貞腐れて飲んだくれていたんだってさ。

その後、王子は酔っぱらって武器屋と道具屋の主人に絡んでいったらしいわよ~。

サマルトリアの王子は妹君と一緒に、翌朝には自国に帰ると言ってたらしいぞ。

ムーンブルクの王女は、サマルトリアの王子をどんな顔をして見送るのかしら?

面白そうだから、帰国を見送る振りをして王子と王女の様子を見に行こうぜ。

 

昨日の夜から、ムーンペタの町はおれたちの噂でもちきりだったらしい。

群衆は、表向きでは『おれとティアの帰国を見送る』という名目で集まっていたが

実際は噂を聞いて好奇心に駆られてやって来ただけのただの野次馬どもだった。

 

 

教会前に人が集まっているのを見たナナたち3人はアルファズルに相談に行ったが

アルファズルは「放っておけばいい」と言って相手にしてくれなかったらしい。

 

確かにアルファズルの言うとおり、くだらない奴らの相手をしてやる必要はない。

騒いでいるのは今だけで、おれたちが帰ればくだらない噂話もじきに収まるはずだ。 

こちらが相手にしなければ、いずれ奴らはこの話題から興味を失うことだろう。

 

わざわざ姿を見せて下手に言い訳をするぐらいなら、騒動を避けておれとティアは

教会の裏口から出て、そのままこっそりルーラでサマルトリアへ帰ることもできる。

 

本来、静かに帰るつもりだったんだ。こっそり帰ったところで問題はないはずだ。

 

ただ、おれたちが何もせずにこのまま人目を避けて帰った場合は、残された奴ら

特にナナが、ムーンペタ住民たちの不愉快な好奇の目にさらされることになる。

 

すぐに収まるとはいえ、ナナが陰であれこれ言われるかと思うと気分が悪い。

この噂のせいで、ナナとムーンペタ住民との関係がギクシャクするのも忍びない。

 

それに、夜になっておれが1人で酒場に行き酒を飲んだことが噂話に拍車をかけた。

騒動を大きくした張本人でもあるおれが、このままほっとけるわけがねえ。

 

 

おれはナナとリーナに正装を命じ、リーナにも上等な服を着せるよう頼んだ。

3人はわけがわからないという顔をしながらも、おれの指示に従ってくれた。

ここはおれの腕の見せどころだ。二日酔いだなんて泣き言は言ってられねえぜ。

ナナたち3人が退室するのを見送ると、おれも身を清めて正装した。

 

 

30分後。

おれを先頭にナナ・ティア・リーナが教会前に現れると、どよめきが起こった。

おれたちの王族の装いを見て驚く声の他に、ひそひそと噂話の声が混じっている。

 

おれは集まった人々に向けて右手をあげた。ざわついていた群衆が静かになる。

 

「この度は、私と妹の見送りに集まってくれてありがとう。感謝申し上げる。

 わがサマルトリアは、これからムーンブルクの再興に全力を尽くす所存だ。

 ローレシアも新国王のもと、ローラの門を修繕して人々の往来を活発にし

 ムーンブルクの再興に貢献することだろう。みんなには期待していて欲しい」

 

後ろの方で小声でひそひそ話し続けていた奴らも、話を止めておれに注目している。

おれは語気を強めた。 

 

「だが、サマルトリアローレシアムーンブルク復興のために尽力したとしても

 ムーンブルクにとって1番大切なのはそなたたちだと私は思っている。そなたたち

 ムーンブルクを愛するムーンペタの住民の団結力こそが、なによりも大切なのだ。

 ナナ姫は私と共に大神官ハーゴンを討伐したとはいえ、まだ若くてか弱い女性だ。

 ムーンブルクを再興して女王として即位するまで幾多の困難があることだろう。

 姫が1人で重圧を抱え苦しまないよう、そなたたちが姫のそばで支えて欲しい。

 姫と共にこの町で暮らすそなたたちには、今後も姫の1番の味方でいて欲しい。

 ナナ姫の力になって欲しい。これはそなたたちにしか出来ないことなのだ!」

 

一瞬、あたりがシンと静まりかえった。

 

次の瞬間、拍手と歓声が上がった。

「姫様! 私たちは姫様の味方ですよ!」

「私たちが姫様を守ってみせましょう!」

ムーンペタは、これからもムーンブルクと共にあり続けます!」

 

 

「そなたたちの心温まる言葉を聞いて、われらも安心してサマルトリアに帰れる。

 サマルトリアムーンペタのさらなる発展にも貢献すると今ここに約束しよう。

 では、そろそろ失礼する。みんな、これからナナ姫のことくれぐれも頼んだぞ!」

 

 

「ナナ姫様のことは、どうぞ私たちにおまかせください!」

サマルトリアの王子様・王女様! どうかお気をつけてお帰りくださいませ」

サマルトリアばんざーい! ムーンブルクばんざーい!」

大歓声がおれたちをつつんだ。

 

 

よし、うまくいったぜ。

群衆を復興の方向へと誘導して、一致団結させることに成功したみたいだな。

 

ムーンペタは町をあげてムーンブルクの王女を守る」と住民たちに誓わせたのだ。

もし、ナナのことを悪く言う奴が現れたとしても、他の奴らが守ってくれるはずだ。

 

おれは振り向いてナナを見た。

ナナは瞳を潤ませておれを見つめている。

おれはしっかりとうなずいた。

 

 

「帰るぞ」と目配せをして、おれはティアを近くに引き寄せた。

 

「おにいちゃん、ティアちゃん。元気でね! また会おうね! バイバーイ!」

大歓声の中、リーナがおれたち2人に向かって元気よく手を振ってくる。

 

「おねえちゃん、リーナちゃん、どうぞお元気で。また会いましょうね!」

正装して淑女らしく振舞うティアが、おれの隣で優雅に手を振り返している。

 

 

「二つの点は一つの点に。星幽界の守護者よ、われをかの場所へと導きたまえ。ルーラ!」

 

虹色の光に包まれる瞬間、ナナが胸元で小さく手を振るのが見えたような気がした。

 

 

 

昨夜、カインはそっちのけで部屋の内装話で盛り上がっていたナナたち ( *´艸`)

帰国の日の朝をどんな展開にするかで、おおいに悩まされました... (;´∀`)

 

今さらどんな顔で何を話せばいいのか?

 

あれこれ考えてたときにふと思い出したのが、かつて世間をにぎわせたある騒動...

 

民衆の意見は会見1つで大きく変わると知ったので(... 何のことかな~ (;´∀`)?)

ゆうべの教会前でのすったもんだを見られ、面白おかしく炎上した状態にしておき

カイン殿下の巧みな話術によって、民衆の関心をゴシップネタから方向転換させ

ムーンブルク復興に向けて人々の心を一致団結させる様子を描いてみました (^_-)-☆

 

普段の人懐っこいカインも大好きですが、王族らしい礼儀正しさと威厳をもった

カイン殿下も大好きなんですよね (*´ω`*)

 

帰国するにあたって、カインとナナは特に言葉を交わすこともありませんでしたが

「ナナを守りたい」というカインの気持ちはしっかりナナにも伝わったということで

良かったんじゃないでしょうか (*´ω`*)

 

 

ハーゴン城から戻って来て、3人がそれぞれの国(町)に帰るまでを書き終えて

この創作物語も 「~ 第1章(完)~」 といったところですね (*´ω`*)

 

次回からは、いよいよカインがムーンブルク復興のために動きまわりますよ。

新しい冒険の始まりですね! では、次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ