ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 32】ニアミス

誰もいなくなった教会の前で、おれはしばらくそのまま立ち尽くしていた。

 

ナナとアルファズルは来なくても、おれがずっと教会に入ってこないのを心配した

ティアかリーナが、もしかしたらおれの様子を見に外へ出て来るんじゃねえか? と

ひそかに淡い期待を抱いていたが、どうやら時間のムダだったようだ。

 

 

 

おれは教会に入り奥の洗面台で手巾をぬらすと、もみじの跡がついた頬にあてた。

熱をもった頬に冷えた手巾が心地良い。

 

頬の腫れが引いたのを確かめて、おれは気になっていたある場所へと向かった。

 

バレたら一巻の終わりだが、おれは忍び足でナナたちの部屋の近くにたどり着いた。

部屋の前の廊下には、少女たちの明るくはしゃいだ声が漏れてきていた。

 

慎重に会話に耳を澄ましてみる。

 

「ここに白いテーブルを置こうかしら?」

 

「うん、イイと思うわ。ねえ、カーテンはオレンジ色にしたらいいんじゃない?」

 

「う~ん、ちょっと派手じゃない? 私はベージュとか紺色がいいと思うんだけど」

 

「ベージュとか紺っておじさんっぽくない? もっと可愛い色がいいわよ~!」

 

「可愛い色もいいんだけど、鮮やかな色だと部屋にいても落ち着かないわ」

 

「じゃあ、薄桃色とか空色とかはどうかしら? 派手すぎないし可愛いし」

 

「リーナちゃん、センスある~! 素敵じゃない! ねえ、そうしましょうよ」

 

女3人は部屋の内装のことで盛り上がっていた。けっ、くだらねえ。

おれのことが話題になってるかと思って来てみたが、とんだうぬぼれだったようだ。

 

おれは静かにその場を立ち去ると、教会を出て【出会いの酒場】へ向かった。

 

 

ナナが帰って来てから連日おこなわれていたお祭り騒ぎも下火になりつつあった。

早い時間ということもあり中央の席が空いていたが、今日は1人で静かに飲みたい。

おれは隅にある一角に陣取った。

 

料理とエールのジョッキを注文して、運ばれてきたエールを一気に飲み干した。

追加でもう一杯、ジョッキを注文する。

 

ムシャクシャした気持ちで酒をあおっていると、ぼそぼそと話し声が聞こえた。

振り返ると【戦士の友】【旅人の巷】の店主が顔を突き合わせて話していた。

 

どうやら、店に来た客に対して【戦士の友】の主人が怒っているようだ。

【旅人の巷】の主人がなだめ、夜になって店を閉めた後で飲みに連れて来たらしい。

おれは暇つぶし感覚で、後ろのテーブルにいる2人の話に耳を傾けることにした。

 

「まったく! シケた店とか言うけどよ、ここの品揃えはロト3国でピカイチだぜ」

 

「まあまあ、怒るなって。もともとロト3国は平和で武器も必要なかったもんな」

 

「そうなんだよ。あんな野蛮人ばっかりの国と一緒にすんなって言うんだよな!」

 

「でも、おまえは怒るかもしれないけど、あいつは本当の戦士って感じだったな。

 ロトの子孫のことも知ってたみたいだし、由緒正しい奴なのかもしれねえぞ」

 

ローレシアの王子は力まかせに敵をなぎ倒すだけだとか、サマルトリアの王子

 戦術はうまいけど剣術はたいしたことないとか言ってたあれか? 本当なのかな?」

 

酒をあおりながらぼんやり聞いていたが、聞き捨てならない話になってきた。

 

武器屋の店主を怒らせた客はおれたちのことを知ってるらしい。まさか...そいつは...

 

おれはあらたにエールの大瓶を注文すると、瓶を片手に主人たちの席へ移動した。

 

「なあ、お2人さんよ! 今の話、もう少し詳しく聞かせてくれねえか? この酒は

 おれからのほんのごあいさつがわりだ。まあ、飲んでくれ!」

空いたジョッキにエールを注ぎながら話しかけると、2人は快く応じてくれた。

 

 

今日の昼ごろ、【戦士の友】に屈強な戦士風の男がやって来たらしい。

男は店の武器や防具を見るなり「... ろくなもんがねえな」とつぶやいたのだという。

 

カチンときた店の主人が「ここはこのあたりでは1番の品揃えだぞ」と反論すると

「鋼鉄の剣と鋼鉄の鎧・盾があるだけじゃねえか。シケた店だ」と言われたらしい。

 

男の「シケた店」という言葉に、完全に腹を立てた店主は声を荒らげて言った。 

「鋼鉄の装備があるだけマシだ! サマルトリアは銅の剣と鎖かたびらしかないし

 ローレシアに至っては、まともな武器屋すらないんだからな!」

 

主人の言葉を聞いた男は「へえ!」と驚いて目を見開いた後、急に大笑いしだした。

「武器屋すらないようなところで、王子はよくあんな腕っぷしの力自慢になったな。

 サマルトリアも銅の剣だけで、カインはどうやって突きの剣術を身につけたのか。

 まったく、面白い奴らだぜ」

 

憮然とした武器屋の主人の前で、戦士風の男はずっと楽しげに笑い転げていた。

そこで、店から身を乗り出して2人のやりとりを聞いてた【旅人の巷】の主人が

「あんたさ、誰のことを言ってるんだ?」と尋ねると、戦士風の男は振り返り

「ロトの子孫だよ。おれはあのぼうず達と一緒に旅をしたんだ」と答えたらしい。

 

もしかして? と思って話を聞いてみたが、やっぱり間違いない! ガルダーだ!

 

「そいつは今、どこにいるんだ?」 おれは身を乗り出して店主たちに尋ねた。

 

「さあな~。それからしばらくはローレシアの王子サマルトリアの王子について

 あれこれ思い出話をしていたが、ひと通り話を終えると立ち去ってしまったよ。

 男は去り際に『まともな武器屋もないんだったら、ローレシアサマルトリア

 行く意味はないな。さて、どこへ行こうか』と言ってたから、もうこの町を出て

 どこか別の場所へ行ったんじゃないかな。あんた、あの男の知り合いなのか?」

 

今は酔って気が大きくなっているかもしれないが、ここで身分を明かしたところで

別に問題ないだろう。おれは自分がサマルトリアの王子・カインで、今話してる男は

確かにおれたちと一緒に旅をした仲間であり、おれが探している相手だと明かした。

 

「ええ! あんたがサマルトリアの王子様なのか。確かに、ムーンブルクのナナ姫が

 サマルトリアの王子たちと凱旋したってことは聞いてたけどよ、おれたちは毎日

 店番があるからよ、見に行けなかったんだ。お目にかかるのは初めてだよ」

 

「おれたちはサマルトリアの王子に酒をおごってもらって一緒に飲んだってことか。

 へへっ、帰ってみんなに自慢しようぜ」

 

「そっか~。昼間のあの男は殿下が探している相手だったのか。そうと知ってたら

 引き止めたのにな~。惜しいことをした。お役に立てなくてすまなかったね」

 

「いや、気にすんなよ。おかげでここに立ち寄ったことがわかったし、ローレシア

 サマルトリアには行かねえって言ってたことがわかったんだから、それで充分だ。

 あんたら、まだ飲めるか? ここはおれのおごりだ。ドンドン飲み明かそうぜ!」

 

 

どこにいるかまったくわからなかったガルダーが、今日はムーンペタにいたらしい。

すれ違いになって会えなかったのは残念なことだが、1歩も2歩も前進した気分だ。

近いうちに会えそうな気もしてきた。 

 

ガルダーの有力情報を得て、すっかりイイ気分になったおれはさらに酒を注文すると

武器屋と道具屋の主人と昔からの友達みたいに肩を組んで陽気に飲み始めた。

 

 

 

人と人が出会う町・ムーンペタの【出会いの酒場】で誰と会わせるか悩んだ挙句

(結構、有名どころは登場させちゃったんですよね。残しとけば良かった (;´∀`))

あまりピンとくる相手が思いつかず、ガルダーとニアミスという展開にしました。

 

ガルダーとこんなに早く出会っちゃうのもつまらないし、他の登場人物たちは

また別のところで登場させたいな~と考えているので、今回はおあずけ (´;ω;`)

残念ながら、ゲームブックの名のある登場人物と出会うことはできませんでしたが

代わりにカインが武器屋と道具屋のおやじと仲良しになりました~ ( *´艸`)

 

 

酒場で気持ち良く酔ってるカインですが、現実ではいろいろと問題が... (´;ω;`)

「おれを心配してくれてるかな~」という淡い期待は、ことごとく不発に終わり...。

 

教会前でいくら待ってても誰も出て来ないし、部屋に会話を盗み聞きしに行っても

部屋の模様替えどうする? ってキャッキャしてるのを聞かされただけだし (;´∀`)

 

 

さて、一夜明けてカインとナナはどうなるんでしょうか? 進展はあるのかな?

続きもお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ