ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 29】 昨夜のツケ

ナナとおれは歩いてテントまで戻った。

 

歩いている間に、全身にびっしょりとかいていた汗が冷えたようだ。

さっきから背中にゾクゾクと寒気がする。鳥肌が立つような気持ちの悪い震えが

背中だけでおさまらず腕まで広がってた。

 

ゾクゾク不快な悪寒が止まらない反面、背中にはナナが頭を押しつけてきた感触が

ハッキリと残り、わき腹のあたりにもナナのやわらかな腕の感触が残っていた。

 

そうだ、夢じゃねえ。ついさっき、ナナは確かにおれの背中で泣いたのだ。

ためらいがちに回されたナナの腕... そっと背中に押しつけられたナナの頭...

中越しに感じたナナのぬくもり... ナナの身体からほのかに香る甘い香水の香り...

泣いているナナの震えがおれの心も震わせたことを思い出し、身体が熱くなる。

 

熱いのか寒いのか、気持ちが良いのか悪いのか、わけがわからなかった。

疲労と眠気で頭がぼんやりして、ふわふわした夢の中にいるみたいだった。

 

 

ようやくテントにたどり着くと「朝までひと眠りしようぜ」とナナに言った。

 

ナナは少しはにかみながら微笑むと「今日は本当にありがとう... カイン」と言って

小走りで丸テントへ戻って行った。 

 

おれはナナが丸テントに入るのを見送ってから、自分たちのテントに入った。

 

 

悪寒がしていることだし、汗を拭いて着替えた方が良いことはわかっていたが

背中に残るナナの感触が薄れてしまうのは、もったいないような気もした。

 

まだナナのぬくもりが残っている服...

汗を拭くのも着替えるのも億劫だ。

なーに、ちょっと寒気がしているだけだ。これぐらいどうってことないだろ。

 

ゾクゾクと震える身体を毛布でぐるぐる巻きにすると、おれは背中越しに感じた

ナナのぬくもりと柔らかな感触を、何度も何度も思い返しながら眠りについた。

 

 

 

翌朝、目を覚ますと視界に霞みがかかったようにテントの天井が歪んで見えた。

 

なんだ...? 景色がおかしいぞ...... おれはいったいどうしちまったんだ...?

 

起き上がろうとすると、身体は鉛のように重く関節がギシギシときしんで痛む。

それでもなんとかして上体を起こすと、頭がクラクラして倒れそうになった。

 

「あっ、まだ寝てなきゃダメよ」

 

テントが開き、桶のようなものを手にしたナナが入ってくる。

 

ナナは慌てた様子で持っていた桶を足元に置くと、おれのそばに駆け寄ってきて

背中に手を添えて寝かせてくれた。

おれはナナに促されるまま、倒れ込むようにバタリと横になった。

 

起き上がってまた寝ただけなのに、全力疾走したぐらいにふうふうと息が切れる。

少し動いただけで頭がガンガン痛む。

 

どうやら、昨夜のことでおれは風邪をひいたらしい。

これだけ身体が重くて動かないとなると、かなりの高熱が出ているのだろう。

やれやれ、悪寒がしてたのに着替えないで寝ちまったツケがまわったな。

  

「アルファズルの氷魔法って本当にすごい威力よね。感心しちゃうわ」

 

ナナはおれを寝かせると、さきほど床に置いた桶を取ってきて傍らに座った。

桶にはアルファズルが魔法でつくったらしい氷が山盛りに入っている。

 

ナナは桶の中に入っていた白い手巾を絞って、おれの額に置いた。

その手がおれの頬に触れる。熱が高いのを確認して、ナナは悲しげに顔をしかめた。

 

「あたしのせいで、こんなことになって......。ごめんなさいね... カイン」

 

のども腫れているのか、ちくちくと痛む。だが、おれは声を振り絞って言った。

「... おまえの... せいじゃ... ねえよ...... おまえは... なにも... 悪く... ねえんだ...

 ...... 悪く... ねえんだ... から...... 自分を... 責めたり... するな... よな......」

 

ひと言を発するだけでもひどく息苦しい。

自分の声とは思えないようなガサガサした声が狭い気道を通って出てくる。


おれを見るナナの目がみるみるうちに潤み、涙がほおを伝った。

 

「...バ.. カ...... 心配...いら... ねえ...よ...... おれは... だい...じょう...ぶ...... だ...」


おれを見つめるナナの瞳から、大粒の涙が次々にあふれてくる。

 

あふれ落ちる涙を拭ってやろうと、おれはナナの頬に向けて手を伸ばした。

腕は鋼鉄のように重く、自由に動かない。

 

ナナはそんなおれの手をとり、胸の前に引き寄せて両手でぎゅっと握りしめた。

ずっと氷水に触れていたせいか、ナナはひどく冷たい手をしている。

 

ばかやろう! こんなに冷たい手をして。おまえまで風邪ひいちまうぞ。

おまえも昨日は寝てねえんだから、おれのことは気にせずテントに戻って寝ろよ

 

そう言ってやりたいのに声は出ず、ぜいぜいと熱い息が出るだけだった。

のどがふさがって声が出ない。息が苦しい。おれはそのまま意識を失った。

 

 

 

...... どれぐらい時間がたったのだろう。

おれが再び目を覚ますと、ナナが傍らに横たわっていた。

 

一瞬、おれの風邪がナナにうつってぶっ倒れちまったんじゃねえか?と焦ったが

ナナは穏やかな顔で寝息をたてている。

 

ナナの横には先ほどの桶が置いてあり、溶け残った氷がわずかに浮いていた。

さっきは山盛りの氷だったのだから、かなり長い時間おれは寝てたらしい。

 

おれが寝てる間、ナナは何度も何度も手巾を浸して冷やしてくれていたのだろう。

それで疲れきって寝ちまったってことか... ばかやろう。また1人で無理しやがって。

 

一方のおれはというと、また全身にびっしょりと汗をかいていた。

昨夜の不快な汗とは違い、悪いものがすべて排出したようなサッパリした気分だ。

 

まだ少しふらふらしているが、さきほどよりも視界はスッキリと鮮明に見えるし

汗をかいて熱はほぼ下がったようで、身体も羽が生えたように軽く感じる。

 

 

... 腹減ったな。

 

昨夜、簡単な食事をしてから何も食ってないんだから腹が減ってるのは当然だが

今までは食いたいとすら思わなかった。

 

食欲が出てきたんだから、もう大丈夫だ。完全に体調も上向いてきているだろう。

 

とにかく腹が減った。なにか食おう。

 

おれは自分が使っていた毛布を傍らで寝ているナナにそっとかけてやった。

それから立ちあがり、汗を拭いて着替えると外へ出た。

 

 

 

せっかく2人がイイ雰囲気になったので、もっとイチャイチャさせようと思い

カインが熱を出し、ナナが看病をするというベタな展開にしました~ (;´∀`)

 

「カインが倒れてナナが看病 (*´ω`*)」

思いついたときはムフフ♡ でしたが、実際のところ倒れたカインは寝てるので

カインが語り手だとナナの様子が見えずイマイチでしたね。すみません... (;´∀`)

 

ゲームでは虚弱体質なサマルトリアの王子ゲームブックのカインも虚弱体質で

船酔いに苦しんでましたね(カインいわく「繊細なつくり」らしいですが ( *´艸`))

 

もともと身体が弱めのカインが、全力で走り続けて汗びっしょりのまま放置して

さらにナナと♡ で大興奮!となれば、いろんな意味で高熱も出るでしょう ( *´艸`)

 

ちゃんと汗を拭いて着替えもして、あったかくしてから眠れば良かったんだけど

ナナのぬくもりが残った服はもったいなくて脱げない思春期男子のカイン (*´ω`*)

好きな人と手をつないだらもったいなくて手を洗えないってありますもんね。

 

 

ナナが看病してくれた甲斐あって、熱も下がり食欲も出てきたカインですが 

魔法で桶いっぱいの氷をつくってくれたアルファズルは何をしてるんでしょう?

大好きなおにいちゃんが高熱で倒れたと知ったティアとリーナは今どこに?

それは次回、明らかになりますよ (^_-)-☆ 

 

 

では、次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ