ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 100】小突き合い

ミリアの家に招かれたおれたちは豪華な夕食を終え、まだミリアと話し足りないナナは

夕食が終わるとミリアを引っ張って、挨拶もそこそこに部屋へと戻っていった。

 

おれと王子はそんなナナの様子を見ながら旅での思い出を振り返り、船団長夫婦と

しばらくナナの話題で盛り上がった。

 

4人でひとしきり笑って、おれと王子がそのまま引き続き船団長と雑談をしている間に

ミリアのおふくろは、おれたちが泊まる部屋を手早く整えてくれたようだ。

 

おれと王子は2人に丁重に礼を言うと、用意してもらった部屋に入った。

 

 

王と皇太子を泊めるような良い部屋がないとミリアのおふくろは謙遜していたが、

通された部屋は立派なものだった。

 

広々とした部屋には、落ち着いた雰囲気の調度品と上質の家具が設置されており、

大きなベッドが2つ置かれている。

 

 

おれはそのうちの1つのベッドにドカッと腰を下ろして、ふぅ~とひと息ついた。

 

王子は反対側のベッドにおれと向き合うように腰かけ、おれを見て微笑んだ。

 

 

「さっきの話だけど、ぼくはすっかり忘れていたんだ、もうすぐナナの誕生日だって」

 

王子もずっと話したかったのだろう。ベッドに座ると早速おれに話しかけてきた。

 

 

「へへっ。実は、おれも忘れていたんだ」

 

「え!? カインも?」

 

 

おれは鼻の下をこすった。

 

「ついうっかりな。ローレシア大司教と話したとき、おまえが『自分の誕生日に

 ミリアと結婚する』って言っただろ? あれで思い出したんだよ。もし、おまえの

 あの言葉がなかったら、うっかり忘れたままだったかもしれねえな」

 

 

「ああ、それでか~」

 

王子は納得したように手を打った。

 

 

「なんだよ?」

 

 

「いつものきみなら、もっと早くに1人でルプガナに来てオルムを探すのにな、なんで

 こんなギリギリになって、しかもナナの目を盗んで探しているんだろう? こんなに

 ギリギリになったのには何か理由があるのかなってね、ずっと疑問だったんだよ」

 

 

おれは頭をかいた。

 

「へへっ。本当にギリギリになったよな。本来なら、ナナがルプガナにいないときに

 調べるのが1番だ。でも、いったん帰って、後からおれ1人で再びルプガナに来て

 探すには時間が足りねえ。今日のうちに、オルムの行方だけでも知っておかねえと

 いよいよナナの誕生日に間に合わなくなるだろ。ルプガナではオルムを探して、

 その後はレオンを探す。果たして間に合うのか? とひそかに焦っていたんだけどよ、

 2人がムーンブルクいるのなら、ここまでの遅れを一気に取り戻せるぜ!」

 

 

おれが興奮しながら言うと、王子も嬉しそうに笑った。

 

「うん。本当にここから一気に巻き返せるよね! さっき、きみが大喜びしていた理由が

 今ならすごくよくわかるよ。それで、今年もパーティーをするんだろう?」

 

 

王子の問いかけにおれは少し考えこんだ。

 

「そのつもりなんだけどよ。昨年は、ザハンでカルラが協力してくれたからな。簡単に

 パーティーも出来たんだけど、今年はどこでやるか悩みどころだよな」

 

 

「うーん。1番いいのは、やっぱりムーンペタになるんじゃないかな?」

 

王子は首をひねった。

 

 

「誕生日当日にナナをどこかへ呼び出すっていうのも変だからな、ムーンペタの教会で

 パーティーが出来れば1番いいんだけど。ただ、あいつがなぁ...」

 

 

「あいつ?」

 

 

「アルファズルだよ」

 

おれはアルファズルの顔と、予想される言葉を思い浮かべてため息をついた。

 

 

 

「アルファズルの奴、『誕生日とはまず、己を産んでくれた両親に感謝し、これまでの

 己の人生を振り返り、今ある命に感謝しながら粛々とすごすもの。飲んだり食ったり

 浮かれて愚かなバカ騒ぎをするような日では決してないのだ。 神聖で美しい教会を

 くだらないバカ騒ぎの場に使うなど、もってのほか!』とか言いそうだろ?」

 

 

おれが口真似すると王子は吹き出した。

 

「あははっ、確かに言いそう。アルファズルがそう言っている姿が目に浮かんだよ。

 でも、ナナのためにみんなで祝ってやりたいんだと言えば、アルファズルもさすがに

 協力してくれるんじゃないかな?」

 

 

「ああ。今はとにかく、アルファズルの良心に期待するしかねえよな。ただ、もし

 アルファズルの反対があって、ムーンペタ誕生パーティーするのが厳しくなっても

 いざというときには、ルプガナ船団長の夫婦が力になってくれそうだよな!」

 

 

おれの言葉に王子は大きくうなずいた。

 

「うん、カインの言うとおり。いざとなれば、ここでパーティーが出来そうだよね。

 おばさんは『ミリアの衣装のことで』ってナナを上手く呼び出してくれるだろうし

 料理や部屋のことでも、いろいろと協力してくれそうだよね!」

 

 

おれも話をつなげた。

 

ムーンペタがダメだったときは、またザハンに行ってカルラに頼むしかねえかと

 心配していたんだけどな。ルプガナもパーティーの候補地になってくれそうだぜ。

 そういう点でも今日、船団長夫婦とナナのことを話せたことは大きな収穫だよな!」

 

 

おれと王子はニッコリと微笑みあった。

 

 

 

「...... ところでカイン。パーティーに参加するのは、ぼくたち4人だけかい?」

 

 

「いや。決まっているのは、おれたち4人は確定ってことだけだ。あと数人ほど

 参加できそうな奴には声をかけようと思う。ただ、あんまり大所帯になっても

 どうかと思うぜ。部屋や料理の問題もあるし、大人数の移動も大変になるしな」

 

 

「ナナを祝いたいっていう希望者を募ったら、ものすごい数になりそうだもんね」

 

 

「ああ。ナナだって、あまりたくさんの人から祝われても落ち着かねえだろうからな。

 昨年と似たような感じで、数人のこじんまりとしたものでいいんじゃねえか?」

 

 

王子はうなずきながらも、なにやら意味ありげな視線を投げかけてきた。

 

「... 数人に声をかけるとしたら、誰だい?」

 

 

「ティアとリーナは喜んで来るだろう。あの2人なら、どこへ連れて行くのも簡単だし

 こいつらもほぼ確定だよな。あとは... そうだな、ガルダーやオーウェンあたりか?

 まぁ、集まってもその程度じゃないか?」

 

おれは王子の視線の意図がつかめないまま、とりあえず問いかけに答えた。

 

 

「う... ん...。そんなもんかな...」

 

王子はなんだか納得していない顔だ。

 

 

その態度でようやくピンと来た。

 

「おまえは愛するミリア』と一緒に来ればいいさ。公にはしてないけど

 ミリアはおまえの大事な婚約者なんだし。今回の花嫁衣裳の件で、ナナとミリアも

 なんだか急速に仲良くなったみてえだからな。ナナもミリアが誕生パーティー

 来てくれるとなれば喜ぶだろうよ」

 

 

「いや、別にそんなつもりじゃ...」

 

王子は照れ臭そうに目をそらした。

 

 

「ばーか。ミリアも呼びたいって、さっきからおまえの顔にずっと書いてあるぜ!」

 

おれは、王子の頬を突いてやった。

 

 

「そ、そんなことないよ」

 

王子は顔を赤らめながら、頬のあたりを手でごしごしこすった。

 

 

「そんなことないって言うなら、おれが適当に名前を挙げたとき、なんであんなに

 煮え切らない態度だったんだよ」

 

動揺している王子がおもしろくて、おれはニヤニヤしながら詰めよってやった。

 

 

「い、いや。ぼくは別に、そんな煮え切らない態度なんて取ってないよ。さっきは、

 きみが名前を出した人たちを思い浮かべて、そんなもんかな~って思っただけで。

 ミ、ミリアを呼びたいだなんて、ぼくはそんなつもりじゃ...」

 

 

「へっ、そんなつもりじゃないなら、他にどんなつもりがあるんだよ!」

 

おれは笑って王子の肩を小突いてやった。

 

 

「もう! やめてくれよ〜」

 

王子は笑いながら小突きかえしてきた。

 

こいつは自分が思っている以上に力が強い。王子は軽~く小突いたつもりだろうが

おれの上体はぐらっと揺れた。

 

 

「てめえ、図星を指されたからって!」

 

おれは今度は王子を両手で突いてやった。

 

 

「やったな!」

 

王子がおれを押し返してくる。

 

王子の力が強すぎて、おれはそのままベッドにごろんとひっくり返った。

 

 

「力まかせに敵をなぎ倒すのは、おまえの得意戦法だけどよ、いくら得意技だからって

 その技をおれにも使うんじゃねえよ」

 

おれは笑いながら起き上がると、負けじと王子を強く突いてやった。

 

王子は笑っているだけでビクともしない。

ちっ! なんて身体だよ。

 

 

「ああ~! ぼくが力まかせになぎ倒すって、またそれを言ったな!」

 

王子も笑っておれにつかみかかってきた。

 

 

くそっ! 負けるもんか!

 

おれも王子につかみかかった。

 

 

おれたちはガキの頃に戻ったように、しばらくお互いの身体を小突いたり叩いたり

ベッドの上でふざけ合っていた。

 

 

 

 

創作物語も100話目になりましたが、内容は相変わらずで話も進みませんね (;´∀`)

記念すべき100話目も、王子とカインがただしゃべるだけの話になりました...。

 

 

王子とカインが仲良くワイワイしているのが大好きな私(BL趣味はありませんが...)

 

王子とカインは、年齢的には高2(高3?)ぐらいの男の子同士ですよね (*´ω`*)♪

ナナの誕生パーティーに恋人のミリアも呼びたいんだけどなかなか言い出せない王子

そのことに気づいて、ここぞとばかりに王子をイジるカイン ( *´艸`)

 

高校生男子の友達同士でも、片方には彼女がいるパターンってありますよね!

もう一方が彼女のことで友達をからかって、ふざけ合うのって可愛いなと思いながら

今回の話を書きましたヾ(*´∀`*)ノ

 

 

ただ、ふざけ合って終わりではなく、今回の王子とカインの話し合いで、これからの

課題(?)も見えてきましたね。

 

そうです!

きっと「パーティーなんてくだらない」と言うであろう、あいつ の説得 ( *´艸`)

 

 

さて。カインはオルムとレオンに会い、パーティーに誘うことが出来るのでしょうか?

アルファズルを説得し、パーティー会場をムーンペタの教会に出来るのでしょうか?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ