ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 ⑳】 涙

おれは物音を立てないように細心の注意を払いながらゆっくりと後ずさりして

柱の陰でこっそり泣いているナナのそばを離れると、元の場所へ戻った。

 

あいかわらず、サイラスが王子に言葉遣いの重要性について説教をしている。

 

サイラスの反対側から、ティアが「王子は女性に対する扱い方もわかってないわ」

などと言って王子に詰め寄っている。

 

リーナはティアにくっついて、やり込められている王子を面白そうに見ていた。

 

アルファズルは「我関せず」といった様子で、懐から本を取り出し読んでいた。

 

ここにナナがいないことには誰も気づいていないようだった。良かった。

 

サイラスとティアに両側から詰め寄られ、ギャンギャン言われている王子は

おれの姿を見ると「助けてくれ!」とでも言いたげな情けない顔をした。

 

「ティア。王子のことをあれこれ言う前に、おまえも少しはおとなしくしろよな。

 いつもそんなにギャアギャアうるさかったら、これから婿取りに苦労するぜ」

 

王子を助ける気はなかったが、ナナの不在を悟られないためおれは輪の中に入った。

 

「あら、おにいちゃん。心配ご無用よ。

『強さと淑やかさをあわせ持つ女が男を虜にする』ってお母様が言ってたもの。

 いくら綺麗でも、なに考えてるかわかんない無口な女はつまんないからダメで

 自分の意見をはっきりと言える女は、男にとってすっごく魅力的なんですって。

 あたしはちゃんとおしとやかにも出来るし、将来は男を虜にできるから安心して」

 

「強さと淑やかさ」... 王妃の意見はあながち間違っているともいえないが...。

ったく! あのババア、ろくでもないことをティアに吹き込んでやがる。

 

「ねえねえ、ティアちゃん。あたしも将来は男を虜に出来るかしら?」

「もっちろん! リーナちゃんも、あたしと同じくらい可愛いんだから大丈夫よ!

 どんなに『強さと淑やかさ』があっても、醜い女じゃどうしようもないもの。

 まずは男を惹きつける美貌が大前提よ。その点で、リーナちゃんは合格だわ。

 あとは、あたしみたいに強さと淑やかさを身につければバッチリよ! うふふふふ」

「わかったわ。あたしも、ティアちゃんみたいになれるようにガンバル!」

 

おいっ! ちょっと待て、リーナ。おまえ、目指す目標を完全に間違えてるぞ!

おれは心の中で叫んだ。

王子も同じことを思ったに違いない。おれたちはお互いの視線だけで同意した。

 

「国王たるもの、臣下の心に響く言葉を発しないと...」などと言ってたサイラスは

話を止めて、ポカンとした表情でキャッキャとはしゃぐガキ2人を見つめている。

 

ティアとリーナがとんでもないことを言い合ってるところに、ナナが戻ってきた。

こっそり顔でも洗ってきたのか、さっぱりとした顔をしている。

 

「ねえ、ティアちゃん。おねえちゃんは美人だから虜に出来るわよね~」

「あったり前じゃない! 実はもうみんなを虜にしちゃってるんじゃないの~」

ティアはいたずらっぽく笑って、おれたちの顔をぐるっと見回した。

 

「なんの話をしているの?」

ナナが自然な感じで2人の会話に入る。

 

ティアが会話の内容を伝えると、ナナは明るい笑い声をあげた。

「うふふ。あなたたちったら、男を虜にするだなんて。もうっ!おマセさんね」

 

ナナは笑いながら、ティアとリーナのおでこを人さし指でつんっとつついた。

ティアとリーナから「キャハハッ」と楽しそうな笑い声が弾けてくる。

 

ティアとリーナに対するナナの声は、いつもと変わりなく優しかった。

 

 

ナナが普段の明るい調子でティアやリーナとしゃべっているのを見ながら

おれは少し離れたところに立ち、先ほどのやりとりを思い返してみた。

 

今までずっと5人ですごしてきたのに、急に離れる話が出てみんなが動揺した。

確かにおれ自身も、おれたちはこれからバラバラになるのかと心は乱された。

 

だが、アルファズルはムーンペタに留まることを強制せず、自由だと言った。

いったんムーンペタに着いた後は、どこでも好きなところへ行って良いのだと。

 

1人をのぞいて、おれたちは一緒にいたいと思えばこれからも一緒にいられる。

 

なのに、なぜナナは泣いたのか?

 

考えられる理由は1つ。

その「1人」と別れるのが寂しいからだ。

 

そう、王子だ。

 

王子がローレシアに戻り、こんな風に自由に会えなくなるのが寂しいのだ。

 

王子は、ローレシアに戻った後は即位の礼とローラの門の修繕で多忙になる。

ナナが「そばにいたいから」と王子を追いかけて一緒にローレシアに行ったところで

ろくに話す時間も取れないだろう。

 

それにローレシアに行けば、王子とミリアとの婚約が着々と進められるのを

目の当たりにすることにもなる。

 

 

そうだ、ナナは王子を......。

それについては、3人で一緒に旅をしている間、ずっと考えていたことだった。

 

風の塔へ行ったとき、ナナは王子に抱きかかえられて空を飛ぶのを楽しんでいた。

ムーンブルク城で亡霊にとり憑かれそうになったときは、王子にすがって泣いた。

王子がナナをかばってドラゴンの角から転落死したときも、抱きついて泣いた。

 

そしてナナは否定していたが、どう考えてもナナはミリアのことを嫌っている。

王子とミリアがイチャイチャしていると、あれだけ露骨に機嫌が悪くなるんだ。

2人の親密さにナナがやきもちを焼いているのは、誰が見て明らかじゃねえか。

 

やきもちを焼くのは、それだけ『ナナの王子に対する想い』が強いってことだ。

 

晩餐会の夜も、おれが寝ちまったのが寂しかったなどというバカげた理由よりも

王子へのかなわぬ想いを嘆いていたと考える方がしっくりくるじゃねえか。

 

かなわぬ想いを抱えながら、それでも一緒にいられればと気持ちを切り替えて

今日まで共にすごす時間を笑って楽しく送っていたが、別れが決定的になって

王子と会えなくなる寂しさに耐えきれず、泣いてしまったのではないだろうか。 

 

ナナの気持ちは初めからわかりきっていたのに、ずっと気づかないふりをしていた。

王妃が言うバカみてえな『女の勘』にすがって、心のよりどころにしていた。

 

...... 目の前がぼんやりとかすんできて、おれは慌てて目をしばたたき首を振った。

おれは超一流の魔戦士だ。おれ様がこんなところで泣くわけにはいかない。

 

 

泣~いちゃった、泣いちゃった ( *´艸`) (← いじめっこ作者)

 

前回の話をUPした段階で、今回の話はほぼ書き終えていたんです(あとはちょっと手直しする程度)

なので前回の話に「カインが泣いちゃいそう」とコメントが来たときは、ぶっ飛びましたね Σ(・ω・ノ)ノ!

書き直そうかと思ったんですが、イチから直すのは面倒なので このまま強行突破しますヾ(*´∀`*)ノ

 

普段のカインなら「ナナが泣くことってなんだ?」と冷静に分析できるはずなのに

王妃から「あんた、イケるよ!」って言われてすっかり恋愛モード中 (*´ω`*)

 

せっかく私がナナを泣かせる場面を、すっご~くわかりやす~く書いてあげたのに 

『心の揺れ動きはすべて恋愛によって起こるもの』って状態になっちゃってるので

「おれとは一緒にいられるのに泣くってことは、王子なのかー (´;ω;`)!って

勝手に失恋して泣いちゃった (;´∀`)

 

 

さて、ナナの想い人を勘違いして1人で半ベソかいちゃってるカイン (;´∀`)

ややこしい状況になってきましたね (*_*)

(恋愛マンガ好きの作者は1人でこの状況を楽しんじゃってます... ( *´艸`))

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ