ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 127】とっさの機転

ナナの誕生パーティーも大成功に終わり、ムーンブルクの船着き場から船に乗って

それぞれの家に帰ることになった、オルム・レオン・ミリア。

 

ルプガナ船団長の計らいで、娘のミリアが船着き場に行くための馬車が手配され

船員たちが船長一行を迎えに来た。

 

「今から乗る船は雷神丸じゃないのに、なぜまたオルムが『船長』と呼ばれるの?」

王子のとぼけた発言に全員で大笑いした後、3人は馬車に向かって歩いていた。

 

 

肩を組んで歩くオルムとレオンの後ろを歩いていたミリアは、「なにか」を見つけて

大きく身体を震わせた。

 

ミリアはビクンと飛び上がった後、慌てて前を歩くレオンの陰に身体を隠した。

 

 

「なにか」は、そんなミリアには目もくれず、真っ直ぐにこちらへ歩み寄ってきた。

 

 

「国王、遅くなって申し訳ございません。お迎えにあがりました!」

 

  「なにか」ことサイラス ( *´艸`)

 

 

堂々と歩いてきた「なにか」

サイラスはおれと王子の前まで来ると、その場でゆっくりとひざまずいた。

 

 

「サ、サイラス?! どうしてきみがここへ? それに迎えに来たってどういうことだ?

 きみは今日から、ムーンブルクの当番じゃなかったのかい?」

 

自分の前にひざまずく忠臣を前に、王子が戸惑った声をあげた。

 

 

前方に視線を向けると、ミリアがオルムとレオンに手を貸してもらいながら、素早く

馬車に乗り込んでいるところだった。

 

 

「ええ、私はこれからムーンブルクへ向かいます。ただ、国王が途中のムーンペタ

 滞在しているのに素通りするわけにはいかないと、ご挨拶に参りました」

 

サイラスは立ち上がり、鎧についたほこりを軽く払うと、深々と一礼した。

 

 

「えっと、きみはムーンブルクに行くんだろう? じゃあ、迎えに来たというのは?」

 

 

「町の入口に、護衛の2人を待機させています。馬もすでに用意しておりますので、

 今すぐにでも出発できます!」

 

サイラスは王子の問いかけに間髪入れずに答えると、後ろを振り返った。

 

馬車の幌から顔を出し、こちらの様子をうかがっていたミリアが慌てて顔を隠した。

 

 

町の入口に目を向けると、青い鎧を着た2人の男が立っているのが小さく見えた。

男たちの横に3頭の馬がつながれている。

 

 

「はぁ? サイラスよ。すぐに帰れと急かすくせに、王子に馬で帰れって言うのか?

 王子を早く帰してえなら、キメラの翼ですぐに帰せば良いじゃねえか。ローレシア

 キメラの翼がねえからって、馬で帰れだなんて時代錯誤なんじゃねえか?」

 

おれが言うと、ローレシアにキメラの翼が無いことを馬鹿にされたと感じたのか、

王子はムッとした表情を見せた。

 

 

けっ! おれはおまえのために言ってやってんのによ、心の狭い奴だな。

 

 

おれの発言に怒ったのはサイラスも同じだったみたいだが、サイラスは怒りを抑えて

静かな口調で反論してきた。

 

 

「カイン殿下。我々は同じロト3国の仲間です。たとえ悪意のない冗談だとしても

 ローレシアを侮辱するような発言は、おやめいただきたい! 馬を用意したのには

 大事な意味があるんです。キメラの翼を用意できなかったからではありません!」

 

言葉遣いは丁寧だが、サイラスは鋭い目つきでおれをにらみつけている。

 

 

「悪い悪い。そんなつもりはねえけど、おまえが侮辱されたと感じたんなら謝るよ。

 で、馬で帰る理由ってなんだ?」

 

おれが問いかけると、怒りで紅潮していたサイラスの表情が少し和らいだ。

 

 

「我が国王は現在、ローラの門を修繕する任務を受けています。せっかくですから

 この機会にローラの門を通り、修復状況を確認しながら帰っていただきたいのです」

 

サイラスは王子を見つめ誇らしげに言った。

 

 

ローラの門の修繕は、王子が国王になってから初めておこなう大仕事だからな。

サイラスの気合の入り具合も理解できる。

 

 

「ああ、わかったよ。ぼくは馬でローラの門を通り、修復状況を確認しながら帰るよ。

 だからサイラス、きみは安心してこのまますぐにムーンブルクに向かうと良いよ」

 

王子は早口でサイラスに合意した。

 

 

ん? やけにあっさり合意したな。

 

いつもの王子なら「きみに言われなくても考えてるよ」みたいな反論をするのにな。

最終的に合意するとしても、サイラスから一方的に命令されるのは嫌がるはずだ。

 

 

王子の態度をおれは不思議に思ったが、前方の馬車を見てすぐに理由がわかった。

 

 

馬車の手綱を握った船員たちが、ソワソワしながらこちらの様子をうかがっている。

 

オルムたちが乗る船の出港時間まで、おそらくそんなに時間が無いのだろう。

ミリアの荷物を積み、オルムたちも乗り込んだのだからすぐに出発したいところだ。

 

だが、ミリアが幌の中で「王子と話してから出発したい」と言っているに違いない。

 

船団長の娘の願いをむげにも出来ず、出発したくても出来ないといったところか。

今はギリギリまで待っている状態だ。

 

 

王子も、当然そのことに気づいていて、サイラスをとっとと追い払いたいのだろう。

 

自分が下手に意見せずにさっさとサイラスの意見を聞き入れれば、サイラスはすぐに

ムーンブルクへ旅立つと踏んで、王子はすんなりと合意したんだな。

 

 

 

「ええ。私はこのまま町の入口まで国王と一緒に行き、お見送りしてからすぐに

 ムーンブルクへ向かいます。では、さっそく出発しましょう!」

 

サイラスが王子に先に行くよう促した。

 

 

サイラスだけを行かせるつもりが、見送るから町の入口まで一緒に行こうと言われた...

思いもよらないサイラスからの反応に、王子は驚いてギョッと目をむいた。

 

なんとかサイラスだけを行かせたい王子は、思惑が外れて困った顔でおれを見てきた。

 

 

しょうがねえな、ひと肌脱いでやるか。

 

 

「ちょっと待てよ、サイラス。王子はおれとナナと約束があるんだよ。なあ、ナナ!」

 

おれがいきなり声をかけると、ソワソワする船員につられて、オロオロした顔で

おれたちと馬車を見比べていたナナは、ビックリしながらおれを見てきた。

 

 

サイラスの視線がナナに移った一瞬の隙に、おれはナナにウインクして見せた。

 

 

「え、ええ。そうなの。ごめんなさいね、サイラス。この後、3人で約束があるのよ」

 

ナナは、多少しどろもどろになりながらも、おれの話に乗ってくれた。

 

 

よし、あとはまかせろ!

 

 

「アルファズルはパーティーの会場に教会を手配してくれただけで、パーティーには

 参加してねえんだ。それで、ナナが『ちゃんとお礼を言いたい』って言い出してよ、

 せっかくだから王子がプレゼントした綺麗なドレスに着替えてから、おれたち3人で

 挨拶に行こうって話になってんだよ。ナナの着替えと、挨拶に行く時間を考えたら

 まだまだ出発できそうもねえ。だから、おまえは先にムーンブルクに向かえよ」

 

おれが適当な言い訳を考えてサイラスに言うと、王子とナナもうんうんとうなずいた。

 

 

もし、ここでサイラスが一歩も引かずに、挨拶に行かざるを得なくなったとしても

アルファズルなら、状況を踏まえて冷静に対応してくれるだろうという確信があった。

 

まぁ、そんなことにならず、サイラスに自ら引いてもらうのが1番だけどな。

 

 

「いや… しかし...」

 

 

「挨拶だけなら後日でも良いだろうっておまえは言うかもしれねえけどよ、さっき

 アルファズルに会って、あとで正式に挨拶に行くからって約束しちまったんだよ。

 てめえが王子を見送りたいからって、まさかおれたちに約束を破らせるつもりか?

 もしそうだって言うんなら、てめえの口からアルファズルに言ってこいよな。

 王子が帰るのを見送りたいから、アルファズルに挨拶している暇はねえってよ!」

 

 

「い、いえ。大賢者様にそんな...」

 

サイラスはブンブンと手を振った。

 

 

「じゃあ、サイラス。おまえに出来る選択は2つだ。ナナが着替え、おれたち3人が

 アルファズルに挨拶してくるのを待ち、ムーンブルクの当番に遅刻するか、それとも

 ここで王子と別れ、間に合うようにムーンブルクに向かうかだ。好きな方を選べよ」

 

 

おれの言葉にサイラスは肩を落とした。

 

「くっ...。わかりました。国王、私はここでお別れしてムーンブルクに向かいます。

 帰りの道中も、どうぞお気をつけて。何かあれば、すぐにお知らせください」

 

 

「ああ。わかったよ、サイラス。さあ、ぼくが見送ってあげるから、もう行きなよ」

 

王子に向かって一礼したサイラスを、王子は急き立てるように促した。

 

 

「いえ、まだ本日の集合時間までには、充分な余裕があるのですが...」

 

 

「なに言ってるんだよ、サイラス。きみは青の騎士団長なんだよ。騎士団長たるもの

 誰よりも率先して先に先に行動しないと、団員たちに示しがつかないよ。騎士団の

 士気を高めるには、団長は早く着きすぎるくらいで良いんだよ。さあ、早く!」

 

王子はサイラスの背中をぐいぐい押して、強引に歩かせようとしている。

 

 

「ええ。もう行きますが、旅立つ前に是非ともお話ししておきたいことが...」

 

サイラスは体勢を翻して王子からの押しをかわし、なかなか動こうとしない。

 

 

「話は歩きながらでも出来るだろう? 町の入口まで充分な距離はある。きみがぼくに

 話したいことは歩きながら聞くよ。さあ、そうと決まれば早く行こうよ!」

 

背中を押しても体勢を入れ替えられてラチが明かないと思ったのか、王子は前に回り

サイラスの腕をギュッとつかむと、力まかせにグイグイと引っ張った。

 

 

「いえ。歩きながらだとせわしないので、話は是非ここで聞いてください」

 

サイラスは王子の引きに負けないよう踏ん張っているが、身体を鍛えた騎士団長も

王子の力にはかなわないようだ。

 

サイラスは少しずつ引きずられていった。

 

 

ははっ、おもしれえな、王子の野郎。こいつにこんな一面があるなんてな。

 

おれは半笑いで、王子とサイラスの間で繰り広げられる激しい攻防を見ていた。

 

 

「サイラス! あたし、ムーンブルクが再興するのを、ずっと楽しみに待っているの。

 ねえ、早く行って今の様子を見てちょうだいよ。ローレシア青の騎士団長として、

 ムーンブルクのこと、よろしく頼むわ!」

 

横からナナが王子に加勢する。

 

 

「ナ、ナナ姫?! そ、そうですか。ナナ姫様のご依頼となれば...。わ、わかりました。

 事前の視察も兼ねて、私は今からすぐにムーンブルクへ向かいます。それでは

 みなさま、ごきげんよう

 

サイラスは諦めたらしく、おれたちに一礼すると、王子にズルズル引きずられながら

町の入口へと歩いていった。

 

 

よしっ! 今回もおれたちの勝ちだ!

 

 

 

ミリアの異変について、コメントでは「ミリアご懐妊」説も出ていましたが ( *´艸`)

ふたを開ければ実にくだらない、ただの「サイラスとの遭遇」でした~ (;´∀`)

 

 

この創作物語では、なぜか堅物サイラスをやり込めて撤退させるのが定番 ( *´艸`)

 

今回も王子が帰るのを見届けてムーンブルクに行くと言って王子を困らせましたが

カインがとっさの機転で良案を思いつき、退却させることに成功しましたヾ(*´∀`*)ノ

 

 

ムーンブルク再興の統括責任者の1人なのに、集合時間に遅刻するなんてサイラスには

絶対に出来ないことですから ( *´艸`)

 

かと言って、自分が遅刻したくないからって、アルファズルに挨拶に行く王子たちに

「挨拶は無しで良くね?」とも言えず...

 

「自分は遅刻したくない」「王子たちには挨拶をして大賢者様に礼を尽くして欲しい」

この2つを叶えるには、撤退しかない状況に追い込んでやりましたぜ ( `∀´)ノ

 

 

粘ってなかなか帰らないサイラスと、すぐに帰したい王子との攻防戦 ( *´艸`)

サマルトリア攻防戦よりはかなり地味ですが、ここでも負けられない激しい攻防戦☆

 

サイラスはさすがに強いと思うけど、それでも王子にはかなわないだろうと思って

ガンバって踏ん張りながらも、ズルズル引きずられていく展開になりました ( *´艸`)

 

 

このままでもいずれ引っ張られていったと思いますが、時間短縮のためナナが加勢☆

ナナの強力な後押しを受けて、見事に王子が勝利しました~ヾ(*´∀`*)ノ

 

 

さて、難敵サイラスを追い返して、次回は王子とミリアの甘~いひとときか?!

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ