ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 ⑬】 王と王妃

オーウェンの店を出てから、おれは後ろを見ずに城門前へと歩き続けた。

 

城門は、まだところどころ激しい戦闘の爪痕が残っていたが

主戦場はローラの門周辺だったこともあってか、城自体の被害は少なく

また迅速に修復がおこなわれているようで、かつての姿を取り戻しつつあった。

 

城門前にいた門番が、歩いてくるおれの姿に気づき、ひざまずいた。

「カイン殿下! おかえりなさいませ!」

 

おれは右手を挙げて、挨拶に応えた。

門番は立ち上がり後ろを向くと、城の奥に向かって大きな声を出した。

「カイン殿下がご帰還なされましたー!」

 

門番の声を聞いて、城の奥から兵士たちが城門へと駆け出してくる。

最後尾にティメラウスの姿があった。

 

f:id:john0910:20171207062514j:plain ブライじゃなくて、このブログではティメラウスです!

緑色の服を着たおじいちゃんってところがピッタリでしょ?

 

「殿下! よくぞご無事で。ティメラウス、殿下のお帰りを心待ちにしておりました」

 

「ありがとう。今日はローレシアの王子殿とムーンブルクのナナ姫もお連れした。

 くれぐれも粗相のないように、丁重にもてなしてくれ。よろしく頼むぞ」

 

「ははっ。かしこまりました」

ティメラウスは一礼すると、後ろを歩く王子たちのもとへ小走りで向かった。

「みなさま、ようこそお越しくださいました。さあさあ、どうぞこちらへ」

 

城門前に全員がそろうと、おれたちは両側に並んだ兵士が「万歳!万歳!」と叫ぶ中

親父たちが待つ謁見室へと歩いた。

 

おれはみんなと並んで歩きながら、こっそりティメラウスに近づいて耳打ちした。

「話したいことがあるんだ。謁見が終わったら、あとでおれの部屋まで来てくれ」

ティメラウスは微笑むと、胸に手を当てて小さく一礼した。

 

謁見室に入ると、玉座に座っていた親父は立ちあがっておれたちを迎えた。

少し離れたところには王妃がいて、ドレスの裾を広げておれたちに挨拶した。

 

王妃は親父の後妻でティアの母親であり、おれにとっては継母になるが

細かいことは気にしない大らかさがあり、気立ても良く優しい人だ。

 

おれは10歳の誕生日に親父に呼ばれ、出生の話を聞かされた。

本当のおふくろはおれを産んですぐに亡くなり、今のおふくろは継母であると。

 

それまでずっと本当の母親だと思っていた人が実は継母だったと知って

ショックを受け自室に引きこもったおれのところにティメラウスがやって来て

当時のことを話してくれた。

 

後妻として迎え入れられる際、王妃は当時まだ3つかそこらだったおれを見て

ひとめで気に入り、王宮に来てからは片時も離れずに可愛がっていたそうだ。

 

その溺愛ぶりは親父が「妻を息子に取られたな」と苦笑するほどだったという。

確かにおれは継母だと知ってからも、王妃の愛情を疑ったことは一度もない。

 

おれにとっては一生頭の上がらない人だ。

 

 

謁見室ではおれを中央にして、王子とナナが両脇に並んだ。

 

「父上、母上。たくさんの人々の犠牲と協力のおかげでハーゴンを倒し、

 こうして無事に戻ってまいりました」

おれは王子をまねてひざまずいた。

 

「カインよ。こたびのハーゴン討伐、ごくろうであった」

 

「ありがとうございます」

 

「王子殿もナナ姫も、不肖のわが息子と共によく戦ってくれた。

 ハーゴンを倒せたのはそなたたちのおかげだ。心から礼を申すぞ」

 

親父の言葉に王子とナナも拝礼をした。

 

「みんな長旅で疲れただろう。たいしたもてなしも出来ぬがゆっくり休むと良い。

 ティアも兄上のお迎え、ごくろうであった。はて、そちらのおじょうさんは…」

 

ティアとリーナは、おれたちから少し離れたところに控えていた。

リーナは、ティアの後ろに隠れるようにして不安げに縮こまっていた。

ティアは、大人びた表情でそんなリーナの手をしっかり握っている。

 

おれは親父に簡潔に説明した。

 

ガライの町でリーナと出会ったこと

盲目だったリーナの目を治す薬を探して、リーナの目を治したこと

ナナとリーナは本当の姉妹のように打ち解けて仲良くなったこと

リーナの父親が船で出たまま戻らないので、今後はナナと一緒に暮らすこと

 

親父はリーナを見つめ表情を和らげた。

 

「ナナおねえちゃんの妹であり、あたしの妹でもあるのよ、お父様」

ティアが誇らしげに言った。

 

親父はいっそう相好を崩した。

「おお、そうか。ティアにもついに妹ができたか。そりゃ、めでたい!

 さあさあ、2人ともそんなところに立ってないで、こっちへおいで」

 

親父はティアとリーナを呼び寄せると、大きな手で2人の頭をなでてやった。

そして2人を両脇に抱えると玉座に腰を下ろした。

 

「可愛いリーナや。ティアの妹なら、きみはわしの娘でもあるんじゃ。

 きみのお父さんはルビス様のところへ行ってなかなか帰れないようだ。

 これからは、わしのこともお父さんだと思ってくれて構わないぞ。

 それとも、リーナはこんなひげもじゃのお父さんは嫌かな? はっはっは」

 

リーナは、おどおどした目で親父を見た。

親父はリーナを見て微笑んでいたが、リーナは緊張した顔で身を固くしていた。

 

石のように固まっているリーナを見て、ティアが親父の口ひげに手を伸ばした。

普段はひげを触られるのを極端に嫌う親父も、今日は何も言わなかった。

 

ティアが親父のひげを引っ張ったり指に巻きつけたりして遊んでいるのを見て

リーナは少しためらいながらも、おそるおそる親父のひげに手を伸ばした。

親父は目だけを動かしてリーナの様子を眺めながら、口元に微笑みを浮かべ

されるがままにしていた。

 

 

生まれや血筋より、「人の和」を重んじるサマルトリア王。

情に厚くて、幼い子供に優しいお父さんの一面を描いてみました~ (*´ω`*)

 

そして、そんな国王が後妻に選んだ王妃も「血のつながり」にはこだわらない

大らかで愛情深い優しいお母さんという設定にしました。

 

「出生の秘密を知ったカインが、城に居づらくなって魔法に傾倒した」

最初はそんな設定も考えたのですが、腹違いと知ってもティアと兄妹仲良しだし

カインはたくさんの愛情を受けて自由にのびのび育ったというイメージなので

血縁関係なく、王妃に愛されて大事に育てられた子にしてみました (^_-)-☆

 

ほっこりした家族のあたたかい時間になっていますが、

そろそろ『ローラの門』のことを王様に相談しなきゃいけませんね。

 

 

では、次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ