ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 ⑭】 それぞれの立場

勇猛果敢な武将・明君としても名高いサマルトリア王が、「2人の娘たち」に

自慢の口ひげをおもちゃにされているのは滑稽だったが、親父は満足そうだった。

 

「父上、ご相談したいことがあります」

 

「なんじゃ、言ってみろ」

 

しゃべるとひげが動くのが面白くて、ティアとリーナが無邪気な笑い声をあげた。

親父は目尻を下げ、2人の娘を見つめた。

 

「先日、王子殿とローラの門の補修をどうするかについて話し合いました。

 私はサマルトリアが侵攻されて出来たキズは当方で直すのが妥当と存じます。

 しかし、王子殿はローレシアが修繕を請け負うことをご希望でして...」

 

王子は1歩前に進み出ると、一礼して話し始めた。

 

「申し上げます。

 サマルトリアハーゴン軍の侵攻を受けた際、わが父は病床におりました。

 あのときローレシアが攻め込まれていたら、落城していたかもしれません。

 今、ローレシアがあるのは、サマルトリアハーゴン軍を撃退してくれたおかげ。

 せめてローラの門の修繕を請け負い、このご恩に報いたいのです」

  

「よしっ! 承知した。今回は王子殿の真剣な想いを受けて、ローラの門の修繕は

 全面的に王子殿におまかせしよう」

 

「ち、父上!?」

親父が即答したので驚いた。

 

「まあ、待てカイン」

親父はおれを制すると、鋭いまなざしで王子を見つめながら言った。 

 

「王子殿はこれからローレシアの国王になる。今までの皇太子時代とは違い

 事業の進め方、予算の使い方、人の配属や動かし方、他国への連絡など

 国王としておこなうさまざまなことを、すべて学んでいかなくてはならない。

 さらに、国王は国をあげておこなう事業にはきちんと責任を持たねばならん。

 王子殿、そなたには自分が全責任を負う覚悟はあるのか?」

 

さっきまでの和やかな雰囲気が一変して、ピリッと緊張した空気になった。

2人の娘たちもひげで遊ぶのをやめて、親父の顔を見つめている。

 

「はい。もちろんあります!」

 

「よし、いいぞ。その覚悟があるのなら、初めて国王の責務を負う事業として

 今回の【ローラの門の補修】は王子殿にふさわしい事業だとわしは思う。

 家臣たちが手助けするとはいえ、1人で何もかもを背負うのは大変じゃ。

 いざとなるとわからないこと、不安に思うことがたくさん出てくるだろう。

 他のことだと、わしも口を出せないこともあるが、ローラの門については

 サマルトリアも介入できる事案だから、わしも少しは助けてやれるじゃろう。

 これから困ったときは、なんでも遠慮せず、わしに相談してくれば良いぞ」

 

「はいっ! ありがとうございます!」

 

親父と王子が真剣に話し合うのを横で聞きながら、おれは急に自分が1人だけ

置いてけぼりにされ、取り残されたような落ち着かない気持ちになった。

 

そうだ。この先、王子はローレシアの国王になり親父と同じ立場になるのだ。

皇太子のままのおれとは違い、一国の主として責任のある立場に変わるのだ。

 

そして、おれの反対隣に立っているナナもまた、立場が変わる一人だ。

ナナもこれからは一国の主、城主としてムーンブルクを再興する。

 

同じ歳でありながら、責任のある立場に変わっていく王子とナナ。

皇太子のままのおれ…。

 

おれはこれから先、いったいなにをしていけばいいのだろうか......。

 

そんなおれの胸の内を察したかのように、親父がおれの顔を見ながら言った。

 

「カインよ。わしは自分が若いと思っているし、まだまだ王位を譲る気もない。

 王子殿やナナ姫はおまえと異なる立場になるが、焦ることはないぞ。

 どんな立場であっても、おまえが今できることを精いっぱいやればいいのだ。

 おまえは今のまま、身軽な皇太子として、これからも自由に世界を動き回り

 必要な状況に応じて、王子殿とナナ姫をしっかりと助けてやるのじゃ。

 それは今のおまえにしかできない、大切な役割なのだからな

 

おれは自分の両隣を見た。

王子とナナは、おれの顔を見て大きくうなずいた。

 

「これからも頼りにしてるよ! カイン」

「貴重な男手なんだからね。これからもバリバリ働いてもらうわよ!」

 

王子とナナの言葉を聞いて、親父も満足そうにうなずいた。

 

「そしてカインよ、わしの可愛い娘たちのことも、ちゃんと可愛がるんじゃぞ」

 親父は両脇に座るティアとリーナを見て穏やかに微笑んだ。

 

ティアとリーナはおれの方を向くと、とびっきりの笑顔を見せてくれた。

 

 

ドラゴンクエストⅡ」で、ゲームクリア後の世界を想像したときに

ローレシアの王子は王様になり、ムーンブルクの王女は城を建て直すけど

サマルトリアの王子は何をするんだろう?ってずっと思ってたんです...(@_@;)

 

私が感じたモヤモヤを、今回はカインにも感じてもらいました (;´∀`)

 

でも、私はカインびいきなので (;´∀`)

「カインはカインのままで良いんだよ♡」とみんなに言わせました~ ( *´艸`)

 

仲間想いで面倒見も良くて、行動力も度胸も3人の中で一番あるカインは

一カ所に留まるより自由に行動する方が性に合っていますよね (^_-)-☆

 

サマルトリアはティアがお婿さんをもらって後を継ぎ、カインはお婿さんとして

ムーンブルク王になって欲しいので、こんな未来は予想していませんが

世代交代をして、3人がそれぞれの国で王様・王女様になってからも

3人にはずっとお互いを想い合い、助け合っていって欲しいですね (*´ω`*)

 

 

では、次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ