ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 ⑫】 新しい王子様!?

ここまでオーウェンの話を黙って聞いていたナナが、ふとなにかを思い出したように

隣に座っている王子の袖を引っ張った。

 

「ねえ、この方って...」

「ほら、満月の塔へ向かう途中に......」

はぐれメタル倒したときに会ったじゃない、全身が銀色の......」

 

ナナは王子にひそひそと囁いた。

王子はしばらくきょとんとしていたが、ナナの言うことがようやく理解できたようで

 

「ああ! ぼくたちに銀溶液って薬を売りつけてきた男のことか!」と言った。

 

「売りつけたって...。そんな言い方、失礼でしょ! まったくもう」

 

ナナは王子の腕をバシッと叩くと、心配そうにオーウェンの様子を探ったが

オーウェンもおれたちもなんの話かわからず怪訝そうにしているのを見ると

ホッとした顔で話し始めた。

 

「あたしたち、あなたのお兄さんにお会いしたことがあるんです」

 

「そういや、あんた。前に生き別れた兄貴がいるとか言ってたよな。

 ええっと、たしか『ブラーエン』とかいう名前だったか?」

 

「そう。そのブラーエンさんに会ったことがあるのよ、あたしたち」

 

ナナは王子と満月の塔に向かう途中、テパのジャングルではぐれメタルに遭遇し

はぐれメタルハンターのブラーエン】と出会ったことを話した。

 

ブラーエンは全身をピカピカの銀色の衣装で包み、はぐれメタルの入った袋を持ち

はぐれメタルからつくった『銀溶液(メタル・リキッド)』を販売していたという。

 

「ほほお。私の兄は【はぐれメタルハンター】になっていましたか。

 ずっと気になっていましたが、達者で暮らしているようなので安心しました。

 衣装が全身銀色とは、兄は派手好きですね。まあ、毒の耐性をつけるために

 顔も身体も緑色になってしまった私が言えた話じゃないですが......」

 

「そうだ、オーウェン。あんたはバブルスライムの毒に耐性があるんだったな。

 じゃあ、毒に対しての知識もあるのか? たとえば、毒の沼地を甦らせるとか...」

 

「ええ、もちろん。毒に関しては幼いころから徹底的に学んできました。

 私が学んだ方法を使えば、大丈夫! どんなに毒性の強い沼地であっても

 花が咲き誇る草原へと変えられますよ」

 

「すっごーい! かっくいー!!」

ひざの上に座ったティアが、目をキラキラ輝かせてオーウェンを見上げた。

 

毒の沼地を再生させ、美しい花が咲く土壌に改善したいとずっと思っていた。

オーウェンが出来るならありがたい。だが、くそっ!なんとなく気分が悪い。

 

「ありがとう。おじょうちゃん」オーウェンは白い歯を見せてティアに笑いかけた。

オーウェンは笑顔のままナナを見ると、胸に手をあて軽く一礼して言った。

 

ムーンブルク城の周辺にある毒の沼地も必ず甦ります!ご安心ください。

 必ず姫様のような美しい花々が咲き乱れる土地に改良してみせましょう。

 私で良ければ、いつでも姫様のお力になりますのでお申し付けください」

 

「あ、ありがとうございます!」

ナナが嬉しそうに答える。心なしか、ほおが赤くなっているような気がする。

 

ムーンブルクを花に囲まれた美しい城にするというのはおれが言いたかった言葉だ。

ちくしょう! こいつ、良いところを持っていきやがって!

 

「......おねえちゃんを助けてくれるの?」

ナナの背後からリーナが顔を出し、オーウェンを見ておずおずと尋ねた。

 

「ああ、そうだよ。おねえちゃんのことはおじちゃんが必ず助けてあげるよ」

オーウェンは満面の笑みで、ようやく目が合ったリーナに笑いかけた。

 

「......じゃあ、げんまん」

リーナは少しためらいながらも、オーウェンに向けて小指を伸ばした。

 

「はい、リーナちゃん。げんまん」

差し出されたリーナの小さな小指にオーウェンは緑色の小指を絡ませた。

 

リーナは、はにかみながらも手をぶんぶん振ってオーウェンと約束を交わした。

 

くそっ! どいつもこいつも! いったいどうなってんだ?


「話はついたよな。そろそろ行こうぜ、親父たちが待ってる」

いささか唐突な気もしたが、おれは椅子から腰を浮かせた。

 

女たちはビックリした顔でおれを見た。

「えーっ、まだいいじゃない」

「王様にお会いするなら、身なりを整えるなり事前に準備したいわ。

 今日はこのままゆっくりして、謁見は明日でもいいんじゃないかしら」

 

指きりをした後は身を乗り出して、オーウェンの手のひらをなでたり

指を引っ張ったりして遊んでいたリーナは、寂しそうな目でおれを見た。

 

「うるさい、うるさい! おれらが5人も店の中に居座ったら、商売の邪魔だろ。

 さあ、立った立った。じゃあ、オーウェン。またな」

 

おれはオーウェンに別れを告げると、全員を急き立てながらオーウェンの店を出た。

王子は素直におれの後に出てきたが、ナナはオーウェンの様子を何度も気にしつつ

ことさらゆっくりと店を出て、店を出た後も名残惜しげに振り返った。

 

ティアとリーナは、店の前まで見送りに来たオーウェンの両側に立ち

それぞれ手を伸ばしてオーウェンの手を片方ずつ握っていた。

 

「また、会いに来るわね」

ティアの言葉に、リーナも「うんうん」と大きくうなずいている。

 

「おい、てめえら! いい加減にしろよな。ほら、さっさと行くぞ!」

 

おれは振り返って店に向かって怒鳴ると、前を向いてどんどん歩き続けた。

くそっ! なんでこんなに腹が立つんだ。

 

 

 この回は、書いていてすっごく手ごたえがありました!会心の出来ヾ(*´∀`*)ノ

 

オーウェンにだけ会ったことがあるカイン

ブラーエンにだけ会ったことがあるナナ

 

唯一、2人に会っているのに、ナナの話を聞いてもきょとん顔の王子 ( *´艸`)

挙げ句に失礼な天然発言 (;´∀`)

ブラーエンといえば、お金を払わされたことしか覚えてないという... ( *´艸`)

 

「顔も全身も、肌の色はすべて緑色」というハンデがあるのに、気がつけば

女子のハートをわしづかみにして、全部かっさらっていくオーウェン (*´ω`*)

 

ナナのためを想って「毒の沼地」について言及したら、それがきっかけで

女子全員のハートを奪われてしまい、激しい嫉妬に駆られるカイン ( *´艸`)

 

手を握り、上目遣いで見つめながら別れを惜しむ2人の小さな乙女たち ( *´艸`)

 

われながらイイ感じに面白く仕上がったと思います!(←自画自賛 (;´∀`))

 

 

さて、次回はカインの父・サマルトリア王に謁見ですよ。

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ