ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 106】哀愁ただよう男たち

ナナの誕生パーティー計画を順調に進めつつ、サマルトリアに帰って来たおれは

リーナが一緒にいることをすっかり忘れ、ミリアのことで王子をからかっていた。

 

結果、リーナに「王子おにいちゃんはミリアおねえちゃんが好きなのね!」とバレた。

さらに、なんでそんな話になったのかさっぱりわからねえが「カインおにいちゃんが

誰を好きなのか、ナナおねえちゃんに聞いてみる!」と脅された。

 

焦ったおれと王子は、好きな人についての話をナナやティアに内緒にしてもらうため、

リーナに口止め料として、スライムのぬいぐるみを買ってやる羽目になった...

 

 

スライムのぬいぐるみを抱きしめながらルンルン歩くリーナの後ろを、おれと王子は

重い足取りのままついていった。

 

 

リーナの歩調に合わせ城下町をゆっくり歩いていると、とある小さな店が目についた。

 

濃い緑色の屋根と、淡い緑色の壁。

入口にはバブルスライムのイラストが描かれた小さな看板が掲げられている。

 

 

「おっと、うっかり忘れるところだった。おい、ここに寄っていこうぜ」

おれは店をあごでしゃくった。

 

王子はうなずき、「リーナ!」と前を歩くリーナを呼び止めた。

 

 

 

「...でね、うちのバカ息子ったら、昨日は木登りして落っこちたって、こーんな大きな

 たんこぶ作って帰って来たのよ。それで、たんこぶにも効くのかしら?と半信半疑で

 泡粘膏を塗ってみたら、見る見るうちにたんこぶが小さくなってねぇ。あらまぁ!

 これはすごいわってことで、さっそくまた買いに来たってわけなのよ!」

 

入口から中を覗くと、太ったおばさんが小さな椅子に窮屈そうに座り、オーウェン

まくしたてるように話していた。

 

 

「泡粘膏はどんな傷にも毒にも効果がある薬なんです。自信を持ってお勧めしますよ」

 

オーウェンがにこやかに微笑むと、おばさんは何度もうんうんとうなずいた。

 

 

「主人が買ってきたときは疑ってたんだけどね、昨日は本当に素晴らしい薬だと思って

 いざ買いに来てみたら、まさかこんな素敵な店員さんがいただなんてねぇ~」

 

おばさんは恋する少女のように、うっとりした目でオーウェンを見つめた。

 

 

「素敵だなんて、恐縮です」

 

オーウェンはそんなおばさんの目にも手慣れた様子であしらった。

 

そして、こちらに気づいて小さく会釈した。

 

 

「あら、新しいお客さん? あたしったら、すっかり長居しちゃってごめんなさいね」

 

オーウェンの視線をたどって、おれたちを見たおばさんは、照れたように顔を赤らめ

慌てて椅子から立ち上がった。

 

 

「いえいえ。泡粘膏を気に入っていただけてとても嬉しいですよ。またいつでも

 遠慮なくいらしてくださいね」

 

オーウェンはおばさんに満面の笑みを浮かべると、店の外まで見送りに行った。

 

おばさんが帰るのを見届けたオーウェンは、戻って来るとおれたちに椅子を勧めた。

 

 

以前にこの店で話したときは打ち解けたのに、今日はまた照れ臭い気持ちが出たのか、

リーナは恥ずかしそうにスライムのぬいぐるみで顔を隠している。

 

オーウェンはリーナを見て微笑み、おれと王子の椅子の間に小さな椅子を置いた。

リーナはスライムの陰から横目で見て、小さな椅子にぴょこんと座った。

 

 

ムーンブルクでお会いしていますが、こうやってお会いするのは久しぶりですね。

 どうぞゆっくりしていってください」

 

オーウェンはおれと王子に微笑みかけた。

 

 

「ああ、ありがとな。ただ、今日はちょっとあんたに話したいことがあって来たんだ」

 

「私に話ですか? なんでしょう?」

 

 

おれはもうすぐナナの誕生日で、ムーンペタの教会でパーティーをすることを伝えた。

 

「それで、良かったらあんたにも、パーティーに参加してもらえねえかと思ってな」

 

「えっ、ナナ様のお誕生日のお祝いの席に、私も参加してよろしいのですか?」

 

「ああ、あんたさえ良ければな」

 

 

オーウェンは大きくうなずいた。

 

「ええ。もちろん。喜んで参加いたします! ちょうど、新しい商品が出来たところで

 ナナ様にぜひ使っていただきたいと思っていたところだったんです。僭越ながら

 私からのお誕生日の贈り物として、ナナ様に進呈いたしましょう」

 

 

「... なにをあげるの?」

 

リーナがスライムの陰からちょっとだけ顔を出して、オーウェンに尋ねた。

 

 

「それはナイショ。当日までのお楽しみだよ、リーナちゃん」

 

オーウェンは二ッと白い歯を出してリーナに笑いかけた。

 

リーナはまたスライムで顔を隠した。

 

 

「ナナおねえちゃんにあげるプレゼントは、ぼくの自信作でね。すべての女の子が

 喜んでくれると思うんだ。だからナナおねえちゃんだけじゃなく、ティアちゃんにも

 もちろん、リーナちゃんにもあげる」

 

オーウェンは優しい声で、リーナが顔の前に持っているスライムに向けて話しかけた。

 

 

「ほんとっ!?」

 

リーナが再びスライムをぐいっと押しやって、ぴょこっと顔を出す。

 

オーウェンは顔を出したリーナを見て、楽しそうに二ッと笑いかけた。

 

 

「本当だよ、リーナちゃん。当日はナナおねえちゃんと、ティアちゃん、リーナちゃん

 みんなにプレゼントするからね。今から楽しみにしていてよ」

 

「うんっ!」

 

リーナは嬉しそうに大きくうなずいた。

 

 

「... あ、あの... 当日はもう1人、女の子が参加する予定なんですが...」

 

王子が小声でオーウェンに言った。

 

 

「わかりました。すべての女性にいきわたるように、当日は余分にお持ちします。

 急な女性の参加があっても大丈夫なようにしますので、ご安心ください」

 

オーウェンは穏やかに微笑みながら、自分の胸をこぶしで小さくたたいた。

 

 

「そのプレゼントは、本当に全部の女の子が喜ぶものなの?」

 

リーナがオーウェンに尋ねる。

 

 

「ぜ~んぶの女の子が喜ぶよ」

 

オーウェンは勢いよく腕を回して、大きく円を描きながら答えた。

 

 

「ぜったい?」

 

「うん、絶対!」

 

「じゃあ、リーナとげんまんしてくれる?」

 

「もちろん、いいよ」

 

オーウェンはニッコリ微笑むと、リーナに向けて緑色の小指を差し出した。

 

 

さっきまであんなに小さくなって恥ずかしがっていたのに、リーナは身を乗り出して

オーウェンの指に自分の小指を絡めた。

 

 

リーナが腰を浮かせたことで、リーナの膝の上に乗っていたスライムのぬいぐるみは

膝から滑り落ち、床の上に転がった。

 

 

だが、リーナはまったく気にする様子もなく、オーウェンと指きりげんまんをしながら

「うふふふ」と笑っている。

 

 

床に無残に転がったぬいぐるみに気づいた王子が静かに立ち上がり、スライムを

気の毒そうにゆっくり拾い上げた。

 

パンパンと軽くたたいてほこりを払い、哀れみの目でスライムの顔を見つめる。

王子はぬいぐるみのスライムと目を合わせたまま、固まったように動かなくなった。

 

 

おれも立ち上がって王子の隣に立った。

 

王子の手にあるスライムは、にやけた口のまま、つぶらな瞳でおれを見つめてきた。

なんとも言えない気分になる。

 

 

「この笑顔が哀愁を誘うよな」

 

おれはぽつりとつぶやいた。

 

 

「うん。こんなに真っ青な顔をして、それでも笑っているというのが何とも... ね…」

 

王子もぽつりとつぶやきかえした。

 

 

おれと王子はそのまま無言で、スライムのにやけた笑顔を見つめていた。

 

 

 床に転がされても健気に笑っているのが、逆に泣けるよね... ( ノД`)

 

 

 

サマルトリア攻防戦の際、リリザの町で合流したオーウェンに向かってティアが

「かっくいい~」と言ったことがきっかけになって、この創作物語の中では

『稀代のモテ男』になっているバブルスライムハンターのオーウェン ( *´艸`)

 

 

前回は、ナナ・ティア・リーナの3人を一気にかっさらっていったオーウェン ( *´艸`)

 

【創作 ⑫】 新しい王子様!? - ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

 

今日はリーナだけでしたが、やっぱり持っていかれちゃいました~ ( ノД`)

 

 

ついさっきまで、リーナにルンルンで抱っこしてもらっていたスライムのぬいぐるみは

オーウェンとの指切りげんまんによって、無残にも床の上へ... (´;ω;`)

 

 

今回は、ほぼしゃべる機会も与えられないまま呆気なく惨敗した王子とカインと共に

青ざめた顔で哀愁をただよわせている3人の男たち ( *´艸`)

 

前回はぬいぐるみを買わされたことにムカついてスライムの顔をパンチしたカイン。

今回は一転して、同じ痛みと悲しみをわかり合える同志 になりましたよ ( *´艸`)

 

転がされても、知らんぷりされても、それでも笑っているスライム(ぬいぐるみ)

なおさら涙を誘うよね... ( ノД`)

 

 

今回も、稀代のモテ男・オーウェンを前にあっさり惨敗を喫した王子とカインですが、

オーウェンがナナの誕生パーティーに参加するのは決定しました~ヾ(*´∀`*)ノ

 

しかも、存在だけで女子の心を鷲掴みするのに『全女子が絶対に喜ぶプレゼント』

もう準備しているとか Σ(・ω・ノ)ノ!

 

最強の敵、現る☆

これはカインも王子も、いつまでも負けていられませんね!

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ