ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 156】 懺悔の時間

親父と王妃がおれにサマルトリア王代理をまかせ、テパの村へと旅行に行った。

 

 

おれは親父たちが出かけた後でナナをサマルトリアへ招き、王様代行を見事に努める

おれ様の立派な勇姿を見せつけてやろうと思っていたが、親父がおれの補佐になんと

モルディウスを任命したと聞いた。

 

あいつはきっとおれを監視して「国王を務めるには未熟だ」などと言うに違いない。

 

 

両親が出かけてすぐにナナがサマルトリアに来れば、モルディウスは何を言い出すか。

めんどくさいから、変なイチャモンをつけられるのだけは避けたいところだぜ。

 

 

そこでおれは風邪気味だと言ってサンチョを自室に呼び、ナナ宛ての手紙を託した。

 

サンチョから4日後が休みになる顔なじみの訓練兵に手紙と謝礼金を渡してもらい

休日にムーンペタへ行ってナナに手紙を渡してもらうよう頼んだ。

 

 

とりあえず手紙の件はサンチョに託せたが、それにしてもモルディウスの野郎め!

 

やっぱりおれの監視役として自分の右腕のようなおっさん兵を寄こして来やがった。

 

 

おれはわざとおっさん兵士に見せつけるように初日・2日目と執務室にこもって

国家機密に関する資料に目を通した。

 

おれ様がひたすら真面目に学ぶ様をあいつらにまざまざと見せてやったぜ!

 

 

おれはハーゴンのくそ野郎が暴れ出してからの我が国の国庫の流れを調べてみた。

 

サマルトリア城が包囲されたときは破綻の危機に瀕するほどの深刻な状況だったが

グランログザー師匠の言うように見る目があり運命を動かす力のある奴らが集まり

ハーゴン軍を見事に撃退して、その後のサマルトリアは驚異的な回復を見せていた。

 

 

「国家破綻の危機にあったサマルトリアより、平常時のローレシアの方が貧乏だな」

 

こんな風に王子をからかったら、あいつはきっと顔を真っ赤にして怒るだろうな...

 

くだらねえことを考えながら時間を潰す。

 

 

正直なところ時間が流れるのがとにかく遅く感じられ暇で暇でしょうがなかったが、

おれの地道な努力が功を奏した。

 

初日と2日目の朝はおれの部屋の前にモルディウスの手下が見張り役としていたが、

2日目の午後になると、警備はいつもの若い訓練兵に交代していたのだ!

 

 

よしっ!

あと少しの辛抱だぜ!

 

そう思いながら執務室を出て自室に戻ろうとしていたとき、扉を小さくノックされた。

 

 

ん? 誰だ?

 

 

おれが執務室の扉を開けると、ばあさんがうつむき加減で立っていた。

 

 

「ばあさん」は、もともとおれのおふくろに仕えていた侍女だった。

 

おふくろが亡くなった後は今の王妃が王宮入りする際の面倒をみて、その流れで

今は王妃の侍女頭を務めている。

 

 

王妃とは仲が良く、ガキの頃はおれやティアの面倒もみてくれた優しいばあさんだ。

ティアは「ばあや」と呼び、侍女の中でも1番の信頼を寄せている。

 

 

「ばあさんか? どうしたんだ?」

 

おれが尋ねると、ばあさんはおどおどした視線でおれを見上げてきた。

 

 

「えっと.... 少し前におじょうちゃまのことで... ちょっと気になることがあってねぇ…

 坊ちゃまにも.... 話しておいた方が良いのではないかと思って来たんだけど...」

 

ばあさんはためらいがちに口を開く。

 

 

「ティアの話か?」

 

尋ねるとばあさんは小さくうなずいた。

 

 

「まず、おじょうちゃまのことは真っ先に奥様に報告しに行ったんだよ。そしたら....

 奥様からは『カインには言わなくていいわ』と言われてしまってねぇ… 奥様の

 命令どおりに、坊っちゃまには言わないでおこうかと迷ったんだけど... やっぱり

 ちょっと黙っておくのは気が引けて...」

 

 

王妃がおれに言わなくてもいいと言った?

ティアのことで?

いったいなんだ?

 

 

「あぁ、ばあさんの言いたいことはわかった。ここだけの話にしようぜ。おれは

 誰にも言わねえし、ばあさんから話を聞いたことも王妃には黙っておいてやるよ」

 

おれは軽く胸を叩きながらそう言って、ばあさんを執務室に招き入れた。

 

 

警備兵はいつもの若い奴に交代していたが、一応は警戒しておいた方が良いだろう。

 

おれは執務室のカーテンをぴっちり閉めて、廊下から中が見えないようにした。

ばあさんに椅子をすすめ、対面に座る。

 

 

言いにくい話みてえだからな。

ばあさんを変に急かしたりせずにしばらくそのまま黙って静かに待っていると

ばあさんはゆっくりおれの顔を見て、安心したように軽く微笑んで話し始めた。

 

 

「坊ちゃまがハーゴン... だったっけ? 怖い魔王を倒してサマルトリアに帰って来て

 しばらく経ったある日のことだよ。城の外にいたおじょうちゃまが血相を変えて

 戻って来て、私に言ってきたのさ。『お母様は2番目の奥さんなの?』って」

 

 

 

「!!!」

 

思いがけない話におれは言葉を失った。

 

 

ばあさんが続けて言うには

 

おにいちゃんとあたしはお母様が違うの?

おにいちゃんとお母様は血がつながっていなくて、本当の親子じゃないってこと?

おにいちゃんのお母様が亡くなってしまったから、しょうがなくお母様がお父様の

2番目の奥さんになったってホント?

 

矢継ぎ早に質問されたんだという。

 

 

「… な.….. なんで...?」

 

おれはそう言うのが精一杯だった。

 

 

「おじょうちゃまが言うには、外で知らないおばあさんにいきなり言われたとか...」

 

ばあさんは伏し目がちに答えた。

 

 

「なんだと?! 一体どこのどいつだ、そのババアは!!

 許さねえぞ! おれがブチのめしてやる!」

 

頭が怒りで沸騰しそうになり、おれは腕まくりして立ち上がった。

 

 

「坊ちゃま、坊ちゃま! どうか落ち着いて。奥様には『大ごとにはしないでね』

 言われてるんだよ。坊ちゃまもここはどうか我慢してこらえてくださいまし」

 

ばあさんがおれを止めに入った。

 

 

ばあさんが必死で止めるから、おれはふぅ〜と大きく息を吐いて椅子に座り直したが

怒りはなかなかおさまらなかった。

 

 

「おじょうちゃまの質問があまりに突然のことで、私もつい面食らってしまってね

 上手く取り繕うことが出来なかったんだよ… おじょうちゃまは私の顔色を見て

 事実だと悟ったみたいでね…」

 

ばあさんはガックリうなだれる。

 

 

「ばあさんが気にすることねえよ。悪いのは余計なことを勝手にティアに吹き込んだ

 そのくそババアなんだからよ!」

 

おれは落ち込むばあさんを慰めた。

 

 

「私のせいでおじょうちゃまに出生の秘密を知られてしまったと思って、すぐに

 奥様の元へ行って謝罪したんだけどね、奥様は『まぁ、しょうがないわよ』

 軽く一蹴して、それから私を責めるようなことはひと言もおっしゃらなかったよ。

 今の坊ちゃまと同じだね。お2人は血のつながりはなくとも本当の親子以上。

 本当に優しい親子だね。ホホホ」

 

おれの慰めでちょっと気が晴れたのか、ばあさんはおれを見て微笑んだ。

 

 

「奥様は『ティアが聞いてきたらちゃんと話すわ』と言ってたんだけどね、どうやら

 おじょうちゃまからは何も言われなかったみたいだよ。きっとおじょうちゃまも

 奥様に気を遣って、自分の胸に秘めているんだろうねぇ。どんな気持ちかと思うと

 おじょうちゃまが可哀想で可哀想で…」

 

ばあさんはハラハラと涙をこぼした。

 

 

くそっ! ティアの奴

いつもはあんなにうるさいのによ!

おれにもいっさい何も言わねえで。

 

おれと腹違いの兄妹だとなったら、今までのようにすごせないとでも思ったか?

血のつながりなんて関係なく、王妃はおれの母親だしおまえはおれの妹だろうが!

 

1人で抱え込むなんておまえらしくねえ。

話してくれたら「おれたちの関係は何も変わらねえぜ」と言ってやるのによ!

 

王妃も王妃でなんで放っておくんだ?

おれに言わなくていいってなぜだ?

 

 

「王妃は『しょうがない』と聞き流して、おれには言わなくていいと言ったのか?」

 

おれは、ばあさんがひとしきり泣き終わって落ち着くのを待ってから静かに尋ねた。

 

 

「ええ、そうなのよ。奥様は『事実は事実なんだから、別に取り繕う必要はないわ。

 ティアもそろそろ自分の人生を受け止めてもいい年齢だもの。もし、ティアが

 泣きついてきたときは、あたしたちは血のつながりに関係なくこれからもずっと

 大切な家族であることに間違いはないってあの子にしっかり伝えるつもりよ。

 カインに相談したって事実は変わらないんだから、言わなくていいわ。カインに

 言っても『誰が言ったんだ!』って余計に騒ぎ立てるだけなんですもの』って…」

 

 

おれはふ〜っとため息をついた。

 

 

王妃の言い分はもっともだ。

おれに言っても事実は変わらない。

 

ティアも自分のことを知ってもいい歳だ。

あいつが自分で1人受け止めきれないときは、おれたち 家族で 支えてやればいい。

 

 

くそっ、王妃め!

おれのことはお見通しかよ!

 

確かにおれが知ったところで、くそババアに仕返しすることしか考えねえもんな。

おれには言わなくていいと言われちまうのもしょうがねえ話か。

 

 

「でもよ、ティアは王妃じゃなくておれに泣きついてくる可能性もあったんだぜ?

 おれには事前に伝えても良くねえか?」

 

王妃の考えは理解はできても、まったく知らされなかったのは気に食わねえな。

 

 

「ふふふ、私も聞いたんだよ。事実を知ったおじょうちゃまは酷く困惑してたから

 奥様じゃなく坊ちゃまに話をしに行くかもしれないよ。坊ちゃまにもこの話を先に

 伝えておかなくて大丈夫かい?って。そしたら奥様はひと言だけ返してきたよ。

 『カインならとっさの場面でもスンナリ対処できる子だから大丈夫よ』ってね。

 奥様はそれだけ坊ちゃまのこと心から信頼してるってことだね」

 

ばあさんはふふふっと笑った。

 

 

「.….. なんと言うか... 大したことでは動じず、どっしり構えてあっけらかんとして…

 肝の据わった女だよな。王妃って奴は」

 

ため息と一緒に言葉が口をついた。

 

 

おれのおふくろである前サマルトリア王妃が亡くなった後で王宮入りするんだから、

度胸も根性も人一倍あり貫禄は相当なものだと思っていたが、あの王妃って女は

多少のことでは動じないすげえ奴だぜ!

 

 

「ええ、ええ。本当に。あの方は初めて王宮に来たときから度胸もピカイチでね。

 あの頃から少しも変わってないわよ」

 

ばあさんはうふふと笑った。

 

 

… へぇ? そういえば、王妃が王宮入りしたときの話は一度も聞いたことがねえな。

 

 

「おれはガキだったこともあって、まったく覚えてねえんだよな。あの王妃が初めて

 王宮に来たときってどんな感じだったんだ? ばあさん、ここだけの話だ。おれに

 当時のことを聞かせてくれよ」

 

おれは身を乗り出して尋ねた。

 

 

「ふふふ、話すのは構わないけどね。坊ちゃま、今からの話は2人だけの秘密だよ」

 

さっきまで「ティアが可哀想で...」と涙目だったばあさんはガラッと表情を変えて

ニヤニヤと笑い出した。

 

 

これは...

相当おもしろい話が聞けそうだぜ!

 

 

 

 

 

「ティアの大冒険」で、ティアが出生の秘密をクリフトに語る場面がありましたが

 

【創作番外編 ④】 ティアの大冒険 ~生い立ち~ - ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

 

今回はカイン側の話 (・∀・)

 

 

ティアから「お母様は2番目の奥さんなの?」と尋ねられて、とっさの反応が出来ず

青ざめてしまったばあや(ばあさん)が、罪の意識と共にカインを訪ねてきましたよ。

 

 

ばあさんの話にうろたえて「余計なことバラしたくそババアに仕返ししてやる!」

意気込むカインとは対照的に、どっしり構えてまったく動じていない王妃 (*´ω`*)

(王妃はかなり好きなキャラなので、えこひいきしていますよ ( *´艸`))

 

 

ばあさんの話によると、王妃は「次期お妃さま候補」として初めて王宮に来たときから

度胸はピカイチの女性だったとか ( *´艸`)

 

さて、王妃はどんな女性だったのでしょう?

そしてカインパパとの馴れ初めは?!

 

 

「ティアが可哀想」と泣いていたのにすっかり立ち直ってニヤニヤするばあさんから

いろいろ聞いちゃいましょう♪

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ