ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作番外編 ⑱】 ティアの大冒険 ~凱旋~

トルネコさんに聞いた話のとおり、ローレシア南のほこらに旅の扉はあったの。

 

虹色の光がうごめく水たまりのような場所に足を踏み入れたら瞬間移動できるのよ!

ここから一瞬でデルコンダル城に行けるなんて、まるで夢のような話よね。

 

 

あたしは「行ってみましょうよ!」とみんなを誘ってみたんだけど、ティメラウスから

行こうとしているデルコンダルがどんなに恐ろしい国なのかを聞かされたの。

 

 

ティメラウスの話によると、デルコンダル王はモルディウスやおにいちゃんたちを

捕まえて牢屋に投獄したっていうのよ。

 

モルディウスはサマルトリア緑の騎士団長で、おにいちゃんたちは王族なのに?!

 

 

王様が気に入らない相手は偉い人でも捕まえられて牢屋に入れられる野蛮な国なのね!

ティメラウスは「王様が改心したとしても、油断ならない国だ」って脅してくるの。

 

 

それにね。これはリオスさんが言ってたんだけど、ここの旅の扉を使った人はまだ

トルネコさんしかいないでしょ?

 

あたしたちがいきなり旅の扉で向こうに行ったら、絶対にあやしまれるわよね。

 

デルコンダル王がいくら改心していても、いきなり見たこともない人物が現れたら

ビックリして思わず「捕まえろ!」と家来たちに命じちゃうに違いないわ。

 

 

おにいちゃんたちを捕まえたぐらいだから、あたしがサマルトリアの王女だと言っても

見逃してもらえないだろうし、おにいちゃんやモルディウスが捕まっちゃうぐらい

強い兵士がいるんだから、ティメラウスやリオスさんがいてもきっと捕まっちゃうわ。

 

 

冷たい牢屋に閉じ込められるのを想像して、あたしがだんだん怖くなってきたとき

なんと旅の扉のある場所に通じる重厚な扉が誰も触ってないのに勝手に閉まったの!

 

 

扉が勝手に閉まったのよ?

そんなことある?!

 

風が吹いたらすぐに閉まるような軽い扉じゃなくて、リオスさんが「よいしょ」って

力を入れて開けた重い扉よ? それが誰も触ってないのに閉まるだなんて......

 

 

グランログザー師匠は「まだ行くときじゃないというルビス様の思し召し」と言うの。

お師匠さまの話だと旅の扉に入れるかどうかは、運命で決まっているんですって!

 

 

でも、本当にルビス様が?!

ここにいる誰かが閉めたんじゃないの?

 

あたしはティメラウスに肩をつかまれていて扉が閉まる瞬間を見ていなかったから

ルビス様の思し召しで勝手に閉まったと聞いても信じられない気持ちだったんだけど

扉の前にいて一部始終を見ていたクリフトが「勝手に閉まった!」と言うのよ。

 

 

ルビス様の力で重い扉が勝手に閉まるなんてにわかには信じられないけど、実際に

扉が閉まっちゃったのは事実なのよね。

 

それに、向こうへ行ったら本当に捕まるかもしれないのに、何の対策もせずに無防備で

デルコンダルに行くのは確かにやめておいた方が良さそうだわ。

 

 

「しょうがないわね。旅の扉をくぐるのは諦めて、サマルトリアへ帰りましょう」

 

あたしの声に全員がうなずいて、あたしたちはほこらの外に出たの。

 

 

「昨日はお世話になりました。不肖の弟子ですが今後ともよろしくお願いいたします」

 

クリフトがお師匠さまに丁重に頭を下げた後、自分の荷物の中から『キメラの翼』

取り出しているのが目の端に映る。

 

 

あぁ、これで本当に旅が終わるのね...

 

あたしは胸がグッとつまって鼻の奥がツンとして涙がにじんできたわ。

 

 

「おじょうちゃん、またおいで。次はきっと旅の扉に入れるじゃろう。クリフトが

 ここへ修行に来るのに付き合って、一緒に訪ねてくると良いぞ」

 

しょんぼりしたあたしを励ますつもりなのかしら、グランログザー師匠は身をかがめて

あたしと視線を合わせると、穏やかに微笑みながら言ってきたの。

 

 

そうよね! 今はしょうがないから帰るけど、またすぐに冒険に出ればいいのよ!

今度はちゃんとデルコンダルに行ってくる」と言ってから来ればいいわ。

 

 

「ありがとうございます、お師匠さま。あたし、必ずまたここへ来ますわ」

 

あたしがにっこり笑って言うと、お師匠さまも満足そうにうなずいたの。

 

 

「ほっほっほ。カインはこのほこらに旅の扉があるなんて知らんからのう。帰ったら

 精いっぱい自慢してやると良い。世界中を旅してすべてを知っている気でいるが

 まだまだ世の中には知らないことがたくさんあるとあいつに教えるイイ機会じゃて」

 

お師匠さまは楽しそうに笑っている。

 

 

あたしも目を輝かせたわ。

おにいちゃんはきっと「どうせ大した思い出にもならないつまらねえ旅だろ?」なんて

思ってるかもしれないけど、おにいちゃんの知らない大発見があるんだから!

 

 

帰っておにいちゃんに旅の扉の話をしたら、おにいちゃんはどんな顔をするかしら?

おにいちゃんの驚く顔を想像したら、今すぐにでも帰りたくなってきたわ!

 

 

「いろいろとお世話になりました。では、我々はサマルトリアへ帰ります」

 

ティメラウスがそう言うと、隣にいたリオスさんはぴょこんと頭を下げた。

 

 

「みなさま、準備はよろしいですか?」

 

クリフトはあたしたちの様子を見回した後、キメラの翼を大空へ放り投げたの。

 

 

 

虹色の光があたしたちをつつみ込み、光が薄れるとサマルトリアの城下町が見えたわ。

 

あ~あ、ホントに帰ってきちゃったのね

 

 

あたしたちは城下町を歩いたの。

旅に出てちょうど1カ月ぐらいかしら? 城下町は特に変わった様子もないわね。

 

しばらく歩いていると、バブルスライムの看板が掲げられたお店が見えてきたわ!

 

 

「あたし、このままちょっとオーウェンさんのお店に寄っていこうかしら?」

 

オーウェンさんにあたしがしてきた旅の話をしたら、すごく喜んでくれると思うのよ。

あたしの話をニコニコしながら聞いてくれて、褒めてくれるに違いないわ!

 

 

緑色の小さなお店に向かおうとしていたあたしをティメラウスが止めたの。

 

「姫さま、寄り道はダメですぞ! 我々はゆっくり進んだので、当初の予定よりも数日

 帰りが遅れているんです。まずは城に戻って無事の帰国を報告し、店に立ち寄るのは

 そのあとにしてください!」

 

ティメラウスはあたしの持っていたバスケットをつかんで方向転換させてきたの。

 

 

あたしはお姫様なのに無礼よ!

だけど、ティメラウスの言うとおり確かに帰りが遅くなったのは事実なのよね。

お父様やお母様が心配して待ってるだろうし、許してあげるわ。

 

 

あたしたちはそのままお城に向かったの。

 

城門に向かって進んで行くと、あたしたちが歩いてくるのを見た城門の警備兵が

慌てて奥に向かって叫んだのよ。

 

 

「ティア姫が、勇者の泉より無事にご帰還なされた~!」

 

 

門番の声の後、すぐに城門が明けられてたくさんの兵士たちが城から出て来たの。

 

 

「ティア姫さま万歳! 姫さま万歳!」

 

大きな拍手が起こって、騎士たちからは次々に万歳の声があがったわ。

 

 

あぁ、気持ちい~い!

おにいちゃんが帰って来たときこんな風に出迎えられて本当に羨ましかったのよね。

 

 

あたしは大歓声を受けながら、胸を張って堂々と優雅に城内へと進もうとしたんだけど

隣にいたクリフトがいないの!

 

あたしのそばにいるのは、城に帰ってきて安堵の表情を浮かべるティメラウスだけ。

リオスさんまでいないわ!

 

 

あたしが振り向くとクリフトとリオスさんは、城門の前で小さくなっているのよ。

 

 

「どうしたのよ、早く行きましょう」

 

あたしが城門の前まで戻って2人に声をかけると、クリフトもリオスさんもそろって

ブンブンと大きく首を横に振るの。

 

 

「私のような若輩者が、先輩騎士のみなさまの歓声を浴びながら行進するだなんて

 想像しただけで足がすくみます。私にはあそこを歩くなんてとても無理ですよ」

 

 

「あっしも同じっす。カイン殿下やじいさんのおかげでサマルトリアにいられるけど

 あっしなんてただの盗賊っすから。こんな扱いはどうも苦手で...」

 

2人はもじもじして動こうとしないの。

 

 

もうっ! 出迎えの兵士たちがさっきから怪訝そうな顔であたしたちを見ているわよ。

恥ずかしいじゃないの!

 

 

「細かいことは気にしないで。2人とも、あたしの従者ってことで良いじゃないの。

 さっさと行きましょうよ!」

 

あたしはリオスさんとクリフトの腕を取って引っ張ろうとしたんだけど、リオスさんは

するりとあたしから腕を外したの。

 

 

「おじょうちゃん、悪りいっすけど、あっしにはこんなところ歩くのは無理っす!」

 

あたしの腕をほどいたリオスさんは、そのまま素早い動きで城門から逃げ出したの。

 

 

「あぁ! リオス様、待ってくださいよ! 姫さま、誠に申し訳ございません!」

 

 

  『にげる』を選択したリオス&クリフト ( *´艸`)

 

 

リオスさんの素早い動きに呆気に取られているあたしの隙をついて、クリフトも

あたしから腕をほどくと、リオスさんを追いかけてそのまま走って行っちゃったの。

 

 

「おーい、姫さま! あいつらのことは放っておいて、もう行きますぞ~!」

 

ティメラウスが声をかけてくる。

 

 

しょうがないわね。

あたしはティメラウスのところに戻って、2人で城内を歩くことにしたの。

 

 

あたしの被害妄想なのかもしれないけど、城門に入る直前でリオスさんとクリフトに

逃げられたことで、目撃した兵士たちがうすら笑いを浮かべている気がするわ!

 

もうっ! クリフトのバカッ!

リオスさんのバカッ!

あとでお仕置きしてやるんだから!

 

 

 

「ティアーー!!」

 

無事に城内に入ると、お母様が向こうから走って来てあたしに抱きついてきたの。

 

 

「遅かったじゃない、心配したのよ」

 

あたしからゆっくり身体を離すと、お母様はあたしの顔をまじまじと見てきたわ。

目にはうっすら涙が浮かんでいる。

 

 

「ははっ。たった1カ月ほどの旅だというのに。ちょっと帰りが遅れただけで王妃は

 大げさだな~。おかえり、ティア」

 

お母様の後ろからお父様がゆっくりと歩いて来て、あたしを見て穏やかに微笑んだの。

 

 

「ただいま戻りました、お父様」

 

あたしはひざを曲げて挨拶したわ。

 

 

あたしの隣にいたティメラウスが直立して胸に手を当ててお父様に向かって一礼する。

お父様は「うむ」と小さな声で言いながら、ティメラウスを見てうなずいたの。

 

 

あたしはお父様の背後に目を向けたわ。

 

お父様とお母様は出迎えに来てくれたのに、おにいちゃんの姿が見えないんだもの!

 

 

「あの... おにいさまは?」

 

きょろきょろ見回してもおにいちゃんがいなくて、あたしはお父様に尋ねたの。

 

 

「ん? カインか? あいつは自室にいるんじゃないか? おそらく妹の出迎えなんて

 気恥ずかしくて自分の部屋に隠れておるんじゃろう。はっはっは!」

 

お父様は楽しそうに豪快に笑ったの。

 

 

あたしは笑う気になれなかったわ。

可愛い可愛い妹が長旅を終えて帰って来たのに、出迎えないなんて許せないわよ!

 

 

「お父様、お母様。あたくし、おにいさまに帰国の挨拶をしてまいりますわ」

 

あたしはがんばって穏やかな表情をつくってお父様とお母様に微笑みかけると、すぐに

おにいちゃんの部屋に向かったの。

 

 

あたしが腹立ちまぎれにおにいちゃんの部屋の扉を思いっきりドンドンと叩いてやると

しばらくしておにいちゃんは顔を出したわ。

 

 

まさか、寝てたの?

 

おにいちゃんは眠そうなぼんやりとした目であたしを見下ろし、ぼさぼさの髪には

大きな寝癖がついているのよ!

 

 

「なんだよ、うるせーな。せっかく人が気持ちよく寝てたのによ。邪魔すんなよな」

 

おにいちゃんはあたしの顔を見て不機嫌そうに言うのよ。ひどくない?

 

 

「なによ! 可愛い妹が長旅を終えて無事に帰って来たんだから『おかえり』ぐらい

 言ってくれたって良いじゃない!」

 

あたしが抗議の声をあげると、おにいちゃんは耳に手を当てて顔をしかめたの。

 

 

「あ~、もう。うるせえな! おかえり、おかえり。これでいいだろ? じゃあな!」

 

おにいちゃんは早口でそれだけ言うと、部屋の扉をバタンと締めちゃったのよ。

 

 

あたしは再びドンドンと部屋の扉を叩いたけど、すぐにまた寝ちゃったのかしら?

おにいちゃんからの反応はなかったの。

 

 

なによ! あたしがねずみを倒したこととか、勇者の泉で大変な思いをしたこととか

お師匠さまの住むほこらに旅の扉があることとか、いっぱいいっぱい話したいのに!

おにいちゃんのバカッ!

 

 

 

 

「ティアの大冒険」(1st season?)は今回で終了になりますヾ(*´∀`*)ノ

予想外に長くなりましたが、ここまで読んでくださりありがとうございます♡

 

 

ゲームブックで王子がカインと一緒にサマルトリアへ帰ったとき、カインの自室に

裏門から入る選択肢と、堂々と正門を通る選択肢に分かれますよね (^_-)-☆

 

堂々と正門を通る選択肢を選ぶと「カイン殿下万歳!」の大歓声の中を歩くことになり

王子はなんとなく居心地が悪いままカインについていくことになりますが、あの状況は

クリフトとリオスは耐えられないだろうと思い『にげる』を選択させました ( *´艸`)

 

 

ティアの帰国を喜ぶサマルトリア王&王妃とは対照的に自室にこもったままのカイン。

ティアが訪ねても、めんどくさそうに応対してすぐに引っ込んじゃいました (。-_-。)

 

この対応については、次回からの「カイン編」で明らかにしていきますね (^_-)-☆

(実はノープラン (;´∀`) ティアたちが帰って来るまでに考えておきます... (;'∀'))

 

 

さて、次回からはお留守番パート(?)カインの話になりますよ~ (・∀・)ノ

 

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ