ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作番外編 ⑰】 ティアの大冒険 ~神意~

グランログザー師匠に、ローレシア南のほこらでひと晩ゆっくり休ませてもらって

翌朝、あたしたちはキメラの翼を使ってサマルトリアに帰るだけになったの。

 

早くサマルトリアに帰りたい気持ちもあるけど、冒険が終わっちゃう寂しさもあって

あたしは複雑な気分だったわ。

 

 

この気持ちをわかってくれる人はいないかしらとあたりを見回すと、昨日からずっと

ソワソワしているリオスさんが、ティメラウスを引っ張ってなにか耳打ちしているの。

 

しばらく2人でひそひそと内緒話を続けた後で「おまえはしょうがない奴だな」

ティメラウスはリオスさんを軽く小突いて、お師匠さまにこんな質問をしたのよ。

 

 

デルコンダルと、このほこらは旅の扉でつながってるんですよね?」って!

 

 

そうだったわ、トルネコさんから聞いた話をあたしはすっかり忘れていたの。

トルネコさんの言うとおり、ここに本当に旅の扉があるならぜひ見てみたいわ!

 

 

それでね、お師匠さまに聞いたら本当にこのほこらの中に旅の扉はあったのよ!

 

一見するとただの壁にしか見えないところが、実は重厚な扉になっていたの。

 

 

扉の先には、人1人が入れそうな小さな水たまりみたいなものがあって、その中では

虹色の光がゆらゆら揺らめいているの。

 

 

この水たまりみたいなところに足を踏み入れたら、たちまち瞬間移動できるのよ!

ここからすぐデルコンダルへ行けるの!

 

デルコンダルなんて行ったことないわ。

ここから一瞬でビューンと行けるんだったら、そりゃあもちろん行きたいわよ!

 

 

「ねえ! ここからみんなで、ちょっとだけデルコンダルに行ってきましょうよ!」

 

あたしはみんなに声をかけたの。

 

 

「姫さま、もう旅は終わり。ここから真っ直ぐサマルトリアへ帰る約束ですぞ!」

 

ティメラウスはムスッと不機嫌になると、目を見開いてあたしをにらみつけてきたわ。

 

 

  もう旅はおしまい! さっさとサマルトリアへ帰りますぞ!

 

 

あたしはティメラウスの話を無視して、クリフトを味方につけようとしたんだけど

クリフトまで渋った返事をするの。

 

 

「王様や王妃様、カイン殿下がお待ちですから、このまま素直に帰りましょう」

 

クリフトを味方にして押し切ろうとしたのに、クリフトのおバカさんがあたしじゃなく

ティメラウスに同意しちゃったから、ティメラウスはすっかり得意げな顔になって

ふふんとあたしを見てきたのよ。

 

 

もうっ! これじゃまるで、あたしが負けたみたいじゃないのよ。クリフトのバカッ!

 

あたしは悔しくて悔しくて、クリフトとティメラウスをにらみつけてやったわ。

 

 

「姫さま、よく聞いてください」

 

あたしが悔しさのあまりギリギリと歯ぎしりしていると、ティメラウスが近づいてきて

あたしの肩を両手でつかみ、すごく真面目な顔をして話しかけてきたの。

 

 

「姫さまはデルコンダルの恐ろしさをまったくわかっておりませんな。カイン殿下が

 王子殿やナナ姫と旅に出ていた頃、殿下を探すためにモルディウスがたった1人で

 デルコンダル城を訪れたことがあるんですよ。そのときデルコンダル城に入った

 モルディウスがいったいどんな扱いを受けたのか、姫さまはご存じでしょうか?」

 

 

モルディウスがおにいちゃんを探しにデルコンダルに行ってたなんて初耳よ。

デルコンダルでモルディウスに何があったかなんて、あたしが知るはずがないわ。

 

あたしは首を横に振ったの。

 

 

「……モルディウスはデルコンダル王の命令で、牢屋に投獄されました...」

 

ティメラウスが低い声で静かに言ったの。

あたしは背筋がゾクっとしたわ。

 

 

「モルディウスはサマルトリア緑の騎士団長ですぞ。高い地位にあるし、武力にも

 自信があったはず。それなのに、あっさりと捕まって牢に入れられたのですぞ!」

 

あたしの肩をつかむティメラウスの手にグッと力が込められたのを感じる。

 

 

「それで? モルディウスはデルコンダルの牢屋からどうやって逃げ出したの?」

 

あたしはかすかに震える声で尋ねたわ。

 

 

「もう一生このまま牢ですごすのかと覚悟していたとき、たまたまデルコンダル

 訪れていたカイン殿下たちと出会えたんです。それで逃げ出せたんですよ」

 

 

「まぁ! おにいちゃんたちに会うなんてすごい偶然ね。おかげで無事に逃げ出せて

 モルディウスも良かったじゃないの」

 

あたしは微笑みながら言ったの。

 

 

でも、ティメラウスはこわばった固い表情のままであたしの肩をグッとつかみ直すと

さらに一段と低い声で言ったの。

 

 

「全然よくないですぞ、姫さま。なぜ、デルコンダル城の牢屋にいたモルディウスが

 カイン殿下たちに出会えたと思います? 答えはひとつ。あとからデルコンダル城を

 訪れたカイン殿下たちもデルコンダル王に捕まり、地下牢に投獄されたからです。

 カイン殿下とモルディウスは寒々しい牢屋の中で再会を果たしたのですぞ!」

 

 

「えっ! うそでしょ? おにいちゃんたちは王族なのよ? 皇子や王女が捕まるなんて

 そんなことあるわけないわよ!」

 

あたしはビックリして叫んだわ。

 

 

「そんな普通で考えるとありえないことが起きたのがデルコンダルなんですぞ! 当時、

 ローレシアデルコンダルは敵対してましたからね、敵国からの侵入者ということで

 捕まったんだろうと思いますが、ローレシアと敵対しているからってモルディウスや

 カイン殿下まで捕まえることはないでしょう。私は城に帰ってきたモルディウスから

 話を聞いて憤慨しましたぞ! もちろん今は、デルコンダル王もすっかり改心して

 ローレシアとの関係も友好的になりましたが、皇子を捕まえて投獄するなんてことを

 平気でやっていた国ですからね。軽い気持ちで訪れるのは危険でしょうな」

 

ティメラウスはモルディウスの話を思い出したのか、怒りをにじませた声で言ったの。

 

あたしは驚いて言葉を失ったわ。

 

 

「う〜ん。そりゃあマズイな。お師匠さまの話では、この旅の扉を使った奴はまだ

 トルネコしかいないんだろ? となると、あっしらが旅の扉デルコンダルへ行くと

 向こうからすれば、いきなり見知らぬ連中が現れるわけだからな。改心した王でも

 不審者が紛れ込んできたと思われて、あっしらも捕まる可能性がありそうだぜ」

 

リオスさんが横から言ってくる。

 

 

「モルディウス様やカイン殿下たちが簡単に捕まるだなんて、デルコンダルの兵士は

 かなり強いんでしょうね。不審者だとみなされて向こうが本気で捕まえに来たら、

 我々の力では太刀打ちできないでしょう」

 

クリフトまであたしを脅してくる。

 

 

話を聞いているうちに怖くなってきたわ。

デルコンダル王は優しいおじさまだと思っていたのに、そんな野蛮な人なのね。

 

 

やっぱり行かない方が良いかしら?

でも、目の前に旅の扉があるのに入らないで帰るなんてもったいないわよね!

 

う〜ん。だからって、もし本当にデルコンダルに行って捕まっちゃったらどうしよう。

 

おにいちゃんたちやモルディウスが抵抗しても勝てない相手なんだもん。

ティメラウスやリオスさんが一緒にいたとしても、安心は出来ないってことよね。

 

 

デルコンダルに行くことはサマルトリアの人たちには言ってないから、もしかしたら

誰も助けに来てくれないまま、ずーーっと牢屋に閉じ込められるかもしれないのよね。

 

 

唯一、デルコンダル行きを知るお師匠さまがおにいちゃんに助けを求めに行っても、

今回は「不届きな魔法使いめ!」と言われて、お父様に追い返されるかもしれないわ。

 

 

捕まったことを気づかれず、誰も助けに来てくれないまま、牢屋でおばあさんになって

あたし、朽ち果てていくのかしら?

そんなのいやよ!

 

 

暗くて寒い牢屋にいつまでも閉じ込められることを想像したら、みじめで情けなくて

涙が出て来ちゃったわ。

 

あたしは目の端に浮いた涙をぬぐった。

 

 

そのとき

 

「あっ!」

 

クリフトがいきなり声をあげたの。

 

 

クリフトの声に振り返ると、旅の扉に通じている重厚な扉がぎいぃと音を立てながら

ゆっくり閉まっていくのよ!

 

 

どうして?!

誰も扉に触っていないのに?!

 

 

「ほほほっ。おじょうちゃん。残念じゃが、まだ行くときではないようじゃのう。

 さっきも言ったが、行くも行かぬもすべてはさだめじゃて。扉が誰も触れないのに

 勝手に閉まったのは『そのときではない』というルビス様の思し召しに違いない」

 

閉まった扉を見て、グランログザー師匠が静かに微笑みながらあたしに言ってきたの。

 

 

どういうこと?

ルビス様の力で扉が勝手に閉められたの?

 

そんなこと、本当にあるのかしら?

 

 

不思議に思いながら周りを観察すると、リオスさんの手には縄が握られているの。

 

 

ねえ、扉が閉まったのはルビス様の力じゃなく、リオスさんの仕業じゃないの?

あの縄を投げて、離れたところから扉を閉めたのかもしれないわよね…

 

 

それに、グランログザー師匠もあやしいわ。

魔法を使って扉を閉めるぐらい、お師匠さまならいとも簡単に出来そうだもの。

 

 

あたしはティメラウスに両肩をつかまれていたから、扉の方は見てなかったのよ。

何が起きたのか、扉の前にいて一部始終を見ていたのはクリフトなのよね。

 

 

「ねえ、クリフト。いったい何があったの? 本当に扉が勝手に閉まったわけ?」

 

あたしは目撃者のクリフトに尋ねたの。

 

 

「ええ。そうなんです。誰も触っていないのに扉が勝手に閉まったんですよ。まるで

 今までの話を聞いて、デルコンダルに行くのはやめた方が良いと言わんばかりに

 急に扉が閉まっていったんですよ!」

 

クリフトは「信じられない」という顔で興奮しながらあたしに言ってきたのよ。

 

 

う〜ん

クリフトは真面目に答えてるみたいね。

 

もし、リオスさんの投げ縄で扉が閉まったのを目撃したなら、あたしの問いかけに

もっとうろたえるはずだわ。

 

 

それなら、グランログザー師匠が誰にも気づかれないように魔法を使ったのかしら?

 

でも、クリフトは魔法に詳しいんだから、お師匠さまがこっそり魔法を使ったとしても

何か気づくと思うんだけど…

 

 

クリフトは何かに気づいた様子もなく、不思議そうに閉まった扉を見つめているの。

 

 

となると、本当に

ルビス様が閉めたの?!

 

ティメラウスたちの話を聞いて、あたしがデルコンダルに行くのは危険だと思って

ルビス様が守ってくれたってこと?

 

 

なんだか狐につままれたような気分ね。

 

でも、確かにデルコンダルに行って不審者だと勘違いされて捕まっちゃうのは怖いし

止められるのもわかる気がするわ。

 

 

「… よくわからないけど、今はデルコンダルに行かない方が良さそうね」

 

あたしが小さくつぶやくと、後ろでティメラウスが安堵のため息をつくのが聞こえた。

 

あたしの言葉に、お師匠様・クリフト・リオスさんがうんうんとうなずいている。

 

 

「しょうがないわ。旅の扉をくぐるのは今度にして、サマルトリアへ帰りましょう」

 

あたしは今でも信じられないけど、本当にルビス様の力で扉を閉められちゃったなら、

もうどうしようもないものね。

 

 

あたしはデルコンダル行きを諦めて、サマルトリアへ帰ることにしたのよ。

 

 

 

 

扉を閉めたのは誰?!

 

縄を手にしているリオスはあやしい...

「ほほほ、すべてはさだめじゃて」と微笑んでいるグランログザー師匠もあやしい....

 

クリフトが大げさに驚くのもあやしいし...

ティメラウスがずっとティアの両肩を力いっぱいつかんでいたのもあやしい...

 

 

全員があやしく思えますが (;´∀`)、ティアの視点で見る限り真相は藪の中... (~_~;)

 

デルコンダル行きを諦めさせるため、全員が団結して演技したのかもしれないし

本当にルビス様のご加護でティアを守ってくれたのかもしれないですよね (・∀・)☆

 

 

デルコンダルに関しては、ゲームブックをプレイしてるときは怖かったんです (>_<)

 

王子がデルコンダルは気に食わない」と言っていたという記憶だけで訪れてみたら

ローレシアの王子だと正体がバレただけで捕まるし、牢屋の中にはやつれて弱りきった

モルディウスがいるし... (。-_-。)(さらに、逃げるときに『リレミト』使えなかったら、

風のマントが破れちゃうんですよね ( ノД`))

 

酷い国、嫌な国という第一印象が強かったので、どんなに恐ろしい国なのかについて

ティメラウスに語ってもらいました☆

 

 

ただ最初の訪問でさんざん酷い目に遭っただけに、2回目の訪問でナナの話を聞いて

デルコンダル王が改心するときは、ホント 感動モノ なんですけどね (*´ω`*)♡

 

 

さて、不思議な力(?)によって、デルコンダル行きを拒まれたティアたち

ようやくサマルトリアへ帰りますよ♪(ここまでホント長かったわ... (;´∀`))

 

次回はとうとう「ティアの大冒険」最終回の予定ですよ (^_-)-☆

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ