ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作番外編 ⑭】 ティアの大冒険 ~試練~

デルコンダルから旅の扉を使って魚を売りに来たという商人・トルネコさん。

トルネコさんからお魚をもらったあたしたちは、その場でさっそく調理したのよ。

 

「魚が焼きあがりました!」と嬉しそうに串を掲げたクリフトは、なんと飛んできた

ドラキーに襲われちゃったの。

 

 

 

  おまえたち! 両側から襲って、そいつの魚を奪うんだキィ!

 

上空から指示を出すドラキー

 

 

2匹のドラキーに集中攻撃されたクリフトは、1本の串を地面に落としちゃったの。

 

「許せないわ!」「おのれ、よくも!」

 

せっかくトルネコさんにもらったお魚をダメにされて、怒ったあたしとクリフトは

石を投げたり拳で殴ったりして2匹のドラキーをやっつけてやったわ。

 

 

そして、あたしは仲間があっさりやられちゃっておろおろするドラキーのしっぽを

思いっきり引っつかんでやったの!

 

しっぽを引っ張って近くでまじまじと顔を見たら、そのドラキーはあたしと王子が

勇者の泉へおにいちゃんを探しに行ったとき、あたしのサンドイッチを奪ったうえ

しかも「たいした味じゃない」と言ってきた失礼極まりないドラキーだったのよ!

 

 

「まだこんなことやってんの?! いい加減にしなさい」とあたしは説教してやったわ。

 

もっともっと懲らしめてやりたかったんだけど、涙目になって「キィ...キィ...」と鳴く

ドラキーに同情したのか、クリフトは「もう許してあげましょうよ」と言い出すし

リオスさんとティメラウスも「煮魚が出来たからもうやめとけ」って止めてきたの。

 

 

怒りは中途半端だったけど、寛大で心優しいあたしは許してあげることにしたのよ。

あたしはドラキーを解放し、3匹は地面に落ちた魚を拾ってさっさと逃げていったわ。

 

その後、気を取り直してあたしたちは思う存分、トルネコさんのお魚を味わったのよ。

 

 

途中で邪魔が入ったとはいえ、ローレシア城にまでわざわざ寄り道することもなく

食べたかったお魚も食べることが出来て、勇者の泉を出てから旅はとっても順調ね!

 

あたしたちは南のほこらにつながる大きな橋を渡って、さらに先に進んだの。

ここまでくればゴールは近いわ!

 

 

橋を渡ってしばらくは林道が続いたんだけど、その先に大きな砂浜が見えてきたの。

 

潮の香りがする砂浜の真ん中あたりに、小さなほこらが建っているのが見えたわ!

ほこらの煙突からは煙が吹き出している。

 

 

お師匠さまはいるのかしら?

 

ほこらの入り口に向かうと、近くの浜辺で流木を拾っているおじいさんがいたのよ。

 

 

「ほほう、これはこれは。ずいぶんとめずらしいお客さんたちが来たのう」

 

おじいさん、グランログザー師匠は流木を片手にゆっくりこちらへ歩いてきたわ。

 

 

  カインの魔法の師匠・グランログザー師匠

 

 

「ふむ。そなたたちには見覚えがある。サマルトリア城がハーゴン軍に包囲されたとき

 カインと共に戦っておったな。世界の命運が決まるとき、見る目があり、運命を

 動かす力のある者が集まる。そなたたちはカインと共にサマルトリアを救う使命を

 背負っておったのじゃ」

 

お師匠さまは笑顔でティメラウスとリオスさんに語りかけながら再会を喜んでいるわ。

そして「よく来たな」と言わんばかりに、リオスさんの背中をポンと叩いたの。

 

 

「グランログザー殿、あのときは大変お世話になりました。サマルトリア城が無事に

 守られたのは、あなた様が魔法を使ってサマルトリア城の外にいる援軍と連絡を取り

 挟撃作戦が実行できたおかげです」

 

ティメラウスが手を差し出すと、お師匠様もにこやかに応じて2人は握手を交わした。

 

 

「わしだけでない。それぞれが自分の使命をきちんと果たしたおかげであろうぞ!」

 

グランログザー師匠は力強くそう言うと、再びティメラウスとリオスさんの顔を見て

「ほっほっほ」と楽しそうに笑ったの。

 

 

サマルトリアが守られたときのお話は武勇伝として記録されているから、クリフトも

ある程度は知っているけど、細かいことは見てないからわからないわよね。

 

あたしはあのとき実際に何があったのか、クリフトに話してあげたのよ。

 

 

あたしはおにいちゃんと一緒にローレシア城から戻ってきたけど、サマルトリア城は

厳重に封鎖されていて、あたしたち2人だけでは城の中に入れなかったこと。

 

城門前にいたリオスさんが錠破りをしてくれて、あたしたちを中に入れてくれたこと。

 

窮地のサマルトリアを救うためにルプガナアレフガルド連合軍とデルコンダル軍が

援軍に来てくれてたんだけど、サマルトリア城がドラゴンたちに包囲されていたから

外部と連絡が取れなくて困ったこと。

 

そこへグランログザー師匠が来て、テレパシーで連絡を取ると言ってくれたこと。

 

お父様は「不届きな魔法使いをつまみ出せ!」と怒ったんだけど、おにいちゃんが

「魔法を使わずに滅びるのと、魔法を使って生き延びるのとどちらを選ぶんです?」

お父様に抗議したこと。

 

グランログザー師匠が魔法で外部と連絡を取ってくれたおかげで、2つの援軍がいつ

到着するかがわかって、2日後にこちらから攻撃に転じる作戦を立てたこと。

 

決戦当日、おにいちゃんはティメラウスとリオスさんを引き連れて、馬に乗って颯爽と

城から出陣していったこと。

 

援軍には背後から挟み撃ちにしてもらって、ハーゴン軍を見事に撃退できたこと。

 

 

「記録を目にしたことはありましたが、内情を聞いたのは初めてです。そうですか...

 サマルトリア城は、ここにいるみなさまが力を合わせて守られたのですね」

 

クリフトは目を輝かせて、お師匠さまやティメラウスたちを見つめている。

 

 

視線を感じたのか、グランログザー師匠がこっちを見てゆっくりと近づいてきたわ。

 

 

「お久しぶりです。お師匠さま、あたしのことは覚えておいでですか?」

 

あたしは身かわしの服のすそを持ち、軽くひざを曲げてにこやかに挨拶したの。

 

 

「ほっほっほ。わかりますぞ、カインの妹じゃろう? 前に会ったときはまだまだ幼い

 おじょうちゃんだったのに、ずいぶんと大きくなったのう。そしてなんだかとても

 勇ましくなったのではないか?」

 

グランログザー師匠は孫の成長を喜ぶような目であたしを見て目を細めた。

 

 

「はい、あたしもおにいちゃんみたいに強くなりたくて、ティメラウス卿のもとで

 修行を積みましたの。いずれは女武闘家として活躍したいと思っておりますのよ」

 

あたしは身のこなしを見てもらおうと、その場で軽やかにくるっと回ってみせたわ。

 

 

「ほうほう。サマルトリアのお姫様は、魔法より武術に興味がおありか。それも良い」

 

お師匠さまは満足そうにうなずいた。

 

 

「して、こちらの少年は?」

 

あたしの隣にいるクリフトに目を向けて、グランログザー師匠が尋ねてくる。

 

 

お師匠さまと目が合ったクリフトはピシッと直立して、深々と頭を下げた。

 

「はじめまして。私はクリフトと申します。緑の騎士団に入ったばかりの若輩者ですが

 どうぞよろしくお願いいたします」

 

 

グランログザー師匠は笑みを浮かべたまま、真剣な目つきになってクリフトを見たの。

 

 

「お師匠さま、クリフトをお師匠さまの弟子にしてくださらないかしら? クリフトは

 将来は神官になりたいと思っておりますの。でも、サマルトリアでは魔法を学ぶのは

 かなり難しいでしょう? そこで、クリフトもお師匠さまの弟子になれたらと思って

 ここまでお願いにあがりましたのよ」

 

あたしの話をふんふんと聞きながら、グランログザー師匠は興味深そうにクリフトを

上から下まで眺めまわしているわ。

 

 

「おい、クリフト! おまえ、カイン殿下から手紙を預かってきてるだろ? さっさと

 お師匠さまに渡して読んでもらえよ」

 

リオスさんが横から声をかけてきた。

 

 

グランログザー師匠に全身を食い入るように見つめられて硬直していたクリフトは

リオスさんの言葉にハッとなって、袋の中をかき回すと中から手紙を取り出して

緊張した様子でお師匠さまに渡した。

 

 

「ふっ、カインの奴め。変なふうに曲がらず正直者に育ったのはいいが、正直すぎて

 率直な物言いが問題じゃな。手紙での礼儀を知らんというのは困ったもんじゃのう」

 

手紙を読んだグランログザー師匠は鼻にシワを寄せて苦笑いすると、手紙から目を離し

再び、クリフトの顔を見上げたの。

 

 

「まぁ、カインの手紙については今はどうでもよいな。そなた、クリフトと申したか?

 わしの弟子になりたいと言うのであれば、当然のことながらわしの一番弟子の

 ダクダクバンボのことは知っておるじゃろう。なにしろ奴は有名な魔術師だからな」

 

グランログザー師匠は口元に笑みを浮かべたまま、クリフトに尋ねてきた。

 

 

「ダクダクバンボ? その名前、前にここに来たときにも聞いたような気がするわね...」

 

あたしはポツリとつぶやいたの。

 

 

たしか、おにいちゃんが「ダクダクバンボに似てきた」とお師匠さまが言ったのよね。

あれ? でも、おにいちゃんはなんて答えたんだったかしら? もう覚えてないわ…

 

 

「ほっほっほ。ダクダクバンボは有名じゃからな。名前に聞き覚えがあって当然じゃ。

 そうじゃろう? クリフトとやら。そなたもまさか知らないとは言わんじゃろう?」

 

グランログザー師匠は鋭い目つきになってクリフトの顔をぐいっと覗き込んできたの。

 

 

「…… あ、あの… えっと…」

 

うろたえたクリフトが、助けを求めるようにちらっとあたしを見てきたわ。

 

 

えっと… 確かあのときは、おにいちゃんとお師匠さまはダクダクバンボの話をして

その話の後で、おにいちゃんが不機嫌になってお師匠様に何か言ってたのよね。

 

ダクダクバンボのことでおにいちゃんがムッとしていたのは間違いないんだけど、

おにいちゃんがなぜ怒り出したのか、お師匠さまとおにいちゃんがどんな話をしたか

ダクダクバンボがどんな人なのか…

 

あたし、まったく覚えてないのよ…

 

 

ダメね... 力になれないわ… と、あたしはクリフトを見て小さく首を振った。

 

 

あたしの反応を見て意を決したみたい。

クリフトは顔を上げて、グランログザー師匠を真っ直ぐ見つめて口を開いたの。

 

 

「あ、あの…!」

 

でも、クリフトが勇気を出して「知らない」と答えようとするのを制するように、

お師匠さまは声を荒げて言ったのよ。

 

 

「ふんっ、カインの奴め! わしに弟子入りを頼んでおきながら、わしの大事な一番弟子

 ダクダクバンボのことを少しも伝えてないとしたらけしからんな! もし、そなたが

 本当にダクダクバンボなんて知らないと言うのなら、そなたの弟子入りとは関係なく

 カインのことは懲らしめねばならぬ! さぁ、どうじゃ? 本当に知らんと申すか?」

 

 

 

 

 

ゲームブックをプレイしたみなさまなら「ダクダクバンボ」はわかりますよね ( *´艸`)

 

正解は「そんな奴、知らない」

ダクダクバンボはグランログザー師匠が適当にでっちあげた名前ですから (・∀・)ノ

 

 

ゲームブックでは、知らないことを正直に「知らない」と言ったことで、カインは

「正直に育ってる」と師匠から褒められてキアリーを教えてもらえるんですよね♪

 

「知ってる」と嘘ついちゃうと「おまえは、まだまだ修行が足りん」と言われて

呪文を教えてもらえないまま、南のほこらまで来たのが無駄足になっちゃいます… (T_T)

 

 

今回、クリフトも素直に「知らない」と言えれば良いのですが、前回よりイジワル度が

増したグランログザー師匠 ( *´艸`)

 

「教えていないカインが悪い! 懲らしめてやる!」とカインを責め始めました… (-_-;)

 

 

さて、クリフトはイジワル度が跳ね上がったグランログザー師匠からの圧に負けずに

 

正直に「知らない」と言えるのか?

それとも、ティアの兄・カイン殿下の顔を立てるため「知ってます」と嘘をつくのか?

 

クリフトの正念場ですね ( *´艸`)

 

 

 

次回もお楽しみに〜ヾ(*´∀`*)ノ