ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作番外編 ⑯】 ティアの大冒険 ~旅の扉~

ローレシア南のほこらに到着して、グランログザー師匠に会えたあたしたち。

 

クリフトは、旅に出る前におにいちゃんに書いてもらった手紙をお師匠さまに渡して

弟子にして欲しいとお願いしたの。

 

 

「弟子になりたいのなら、一番弟子のダクダクバンボのことは知ってるよな?」

いきなりお師匠さまに尋ねられて、クリフトは困惑した表情を見せたわ。

 

「知らない」と言ったら弟子にしてもらえないんじゃないかとあたしは心配だったけど

クリフトは嘘をつきたくなかったのね。

 

正直に「知らない」と答えて謝ろうとしたところで、追い打ちをかけるようにして

グランログザー師匠は「弟子入りを頼んでおきながら、一番弟子・ダクダクバンボの

話をしていないとしたら、カインはけしからん奴じゃ!」と怒りだしちゃったの。

 

グランログザー師匠が怒るのを聞いて、ますます困った顔で立ち尽くすクリフト。

 

 

クリフトが「カイン殿下からはなにも聞いてない」と答えたら、おにいちゃんが

お師匠さまに怒られちゃうわ!

 

あたしはクリフトに近づいて「知ってるって嘘つきなさいよ」と言おうとしたの。

 

 

でも、あたしが耳打ちするより早くクリフトはその場でひざまずいて謝っちゃったの。

 

「自分はダクダクバンボのことは知りません。カイン殿下はなにも言ってなかったけど

 カイン殿下は悪くありません。自分から積極的に尋ねるべきでした。だからすべての

 罰は自分1人が受けます」

 

クリフトは深々と頭を下げたのよ。

 

 

あたしはおにいちゃんが罰せられるんじゃないか、クリフトはお師匠さまに怒られて

弟子にしてもらえないんじゃないかとハラハラして不安でいっぱいだったわ。

 

 

弟子にしてもらえないわ、おにいちゃんにも嫌われるわなんてことになったら最悪よ!

何のためにここまで歩いて来たと思ってんのよ! クリフトのバカッ!

 

 

あたしが心の中で文句を言っていると、グランログザー師匠は笑い出したの。

 

 

「ダクダクバンボなんて弟子はいないってカインから聞かされてないのか」って!

 

 

    ほっほっほ。わしにダクダクバンボなんて弟子はおらんぞ

 

 

 

ねえ、聞いてよ! ひどくない?

ダクダクバンボって、お師匠さまが適当にでっちあげた架空の人物なんですって!

嘘をついてたのはお師匠さまの方だったのよ! だますなんてひどいわよね!

 

 

グランログザー師匠にだまされたのは悔しいけど、クリフトは正直に謝ったおかげで

いい子だって弟子入りを認められたのよ。

 

そして、遠くで見てたあたしはなにが起こっているかよくわかんなかったんだけど、

クリフトはご褒美としてお師匠さまに魔力を高めてもらえたんですって!

 

 

魔力を得たクリフトはなんだか自信が出て来たみたいで、足取りも堂々としてるの。

お師匠さまにお礼を言って歩いてくるクリフトをあたしたちは誇らしく見守ったのよ。

 

そして、あたしと一緒に何となく様子を見ていたリオスさんと、うたた寝から目覚めた

ティメラウスも一緒になって、あたしたちみんなでクリフトを囲んで喜び合ったわ。

 

 

お師匠さまの住むほこらは小さくて狭いけど、清潔であたたかくて快適だったの。

 

その日の夜、あたしたちもすっかりイイ気分になって久しぶりにふかふかのベッドで

ゆっくり眠ることが出来たのよ。

 

 

翌朝。

あたしは複雑な気分だったわ。

旅の行程は終えて、あとはキメラの翼を使ってサマルトリアに帰るだけなのよね。

 

 

早く帰ってお父様やお母様、おにいちゃんに会いたい気持ちはもちろんあるのよ。

でも、これで冒険も終わりなのねと思うと、センチメートル? センチメンタル?

あれ? どっちだったかしら? とにかくちょっともせつない気持ちもあるわけ。

 

 

旅が終わって「ようやく帰れる!」と朝から喜んでいるのはティメラウスね。

 

クリフトは魔力が高まった喜びいっぱいで、他のことはどうでもいいみたいだわ。

 

 

あたしのこの寂しい気持ちをわかってくれる人はいないのかしら?

 

そう思って隣を見ると、リオスさんはソワソワした様子で部屋を見回しているの。

 

 

そういえば昨日、このほこらに入ったときからリオスさんは落ち着かない様子で

部屋をキョロキョロ眺めていたのよね。

 

そのときはリオスさんは盗賊だからお宝のにおいがしないか気になるんだと思って

見て見ぬふりしてたけど、今朝になってもまだソワソワしてるなんて変ね。

 

 

どうしたのかしら?

なにか気になることでも?

 

あたしがこっそりリオスさんに聞いてみようとしたところ、リオスさんは隣にいた

ティメラウスの腕をつかんで、ごしょごしょと何やら耳打ちし出したの。

 

 

「なんだ、わざわざ耳打ちしてくるから何事かと思えばそんなことか。そんなに気になるんなら、おまえが

 自分で聞けばいいだろう?」

 

「いやいや。盗賊のあっしが聞いたりしたら、なんか怪しまれそうじゃないっすか?」

 

「ふんっ、くだらない。別に悪いことするわけじゃないんだから、堂々と聞けばいいじゃないか」

 

「いや、頼んますって。やっぱりじいさんから聞いてくださいよ~。気になってこのままじゃ帰れねえっす。

 じいさんだってあのとき初めて聞いたんでしょ? どこにあるか知りたくないっすか?」

 

 

「...… しょうがない奴じゃな」

 

2人はしばらく小声でなにか言い合ってたんだけど、ティメラウスは観念したように

リオスさんのおでこをコツンと軽く小突くと、お師匠さまに尋ねたの。

 

 

「こ、こほん。グランログザー殿、ひとつお尋ねしたいことがありましてな。この

 ほこらに来る途中、我々はトルネコとかいう商人と出会いまして。その者の話だと

 デルコンダルとこのほこらが旅の扉でつながっているとか...?」

 

 

あぁ! ホントだわ!

あたしったらうっかりさんね!

大事なことを忘れてたわよ。

 

 

「あたしも聞いたわ! トルネコさんがデルコンダルから旅の扉を使ってローレシア

 お魚を売りに来たときに、ここでお師匠さまに会って、お師匠さまの魔法でお魚を

 凍らせてもらったんだって!」

 

さっきまで感じていたもの悲しい寂しさは、一気にどこかへ吹っ飛んじゃったわ!

 

 

あたし、旅の扉って見たことないの。

おにいちゃんやおねえちゃんが思い出話で言ってるのを聞いただけなのよ。

 

ここに旅の扉があるなら、ぜひ見たいわ!

 

 

「ほうほう。ここに来る途中であの者に出会ったとはな。やはり人は運命に導かれて

 出会うべくして出会うんじゃな」

 

グランログザー師匠は愉快そうに笑った。

 

 

「じゃあ、トルネコさんの言うとおり、ここに旅の扉があるのね!」

 

あたしは身を乗り出して尋ねたわ。

 

 

「ほっほっほ。旅の扉の入口がすぐ後ろにあるというのにまったく気づかないとはな。 

 灯台下暗しとはよく言ったものじゃ」


グランログザー師匠は楽しそうに笑って、あたしの背後に視線を向けたの。

 

 

お師匠さまの視線をたどってあたしも振り返ったけど、あたしの後ろにあるのは

レンガでつくられた壁だけよ。

 


「ん? ここかっ!」

 

リオスさんがなにもない壁を押すと、いきなり壁がぐるんと回ったの!

 


壁の向こうから虹色の光があふれ出してくる

 


ただの壁に見えたところは、反対側から見ると重厚な扉になっているのね。

頑丈そうな錠前が今は外されているから、かつては厳重に封印されていたという

トルネコさんの話も嘘じゃなさそうだわ。

 


「こ... こんなところに旅の扉が...」

 

ティメラウスは驚いて絶句しているわ。

 

 

あたしはリオスさんの脇からさっそく壁の向こうをのぞき込んでみたの。

 

1人だけ入れそうな小さな水たまりみたいなものがあって、そこから虹色の光が

あたりをキラキラ照らしているの。


水たまりのような部分は、絶えず色を変えながらゆらゆらと揺らめいているわ。

 


「これが旅の扉...」

 

あたしの隣でクリフトがつぶやいた。

 


クリフトも初めて見るのね。

 

こんな水たまりのような場所に1歩足を踏み入れたら、遠くの世界に運ばれるなんて

とっても神秘的よね!

 


「あの商人に会ったのなら説明するまでもないが、この旅の扉デルコンダル城と

 つながっておる。かつては封印しておったが、ハーゴンが倒され、ローレシア

 デルコンダルが友好関係になったことを受けて、最近になって開放したものじゃ。

 ふふっ、開放してからここへはまだ1人しか来ておらぬがのう」

 

お師匠さまはクスクス笑っている。

 

 

「えっ? トルネコさんしか来てないの?」

 

あたしが尋ねると、グランログザー師匠はにっこり微笑んでうなずいたの。

 

 

「おじょうちゃんにはまだ難しいかも知れぬが、すべてはさだめじゃ。サマルトリア

 ハーゴン軍に包囲されたときにわしらが集結したように、見る目があり、運命を

 動かす力のある者が導かれるもの。あの商人には大きな使命があるのじゃろうな」

 

グランログザー師匠は虚空を見上げてうなずきながら微笑んでいるわ。

 

 

運命を動かす力がある?

あのトルネコさんに?!

ただの太った魚屋さんじゃないの?

 

 

あたしは再び旅の扉に目を向けたわ。

虹色の光がゆらゆら揺らめいて、まるであたしを誘っているみたい......

 

 

うん、きっとそうよ!

あたしも導かれているんだわ!

 

あたしは勢いよく振り返った。

 

 

「この扉をくぐったらデルコンダルへ行けるんでしょ? みんなで行ってみない?」

 

あたしがみんなに声をかけると、ティメラウスはぎょっとして目を見開いたの。

 

 

「姫さま、このほこらを訪ねた後は真っ直ぐサマルトリアに帰る約束ですぞ。まさか

 まだ旅に出ようとは言いませぬな?」

 

ティメラウスは目をむいて反対してくる。

 

 

「えー。せっかく目の前に旅の扉があるのに、このまま帰るなんてもったいないわよ!

 ねえ、クリフトは行くでしょ?」

 

あたしはにらみつけてくるティメラウスを無視して、クリフトを誘ってみたわ。

 

 

「私は姫さまの行くところでしたらどこでもお供しますが...... ただティメラウス様の

 ご意見もごもっともです。当初の予定では、ここからはすぐにサマルトリア

 帰ることになっていますから、やはり戻られた方が良いのではないでしょうか?

 王様や王妃様、カイン殿下が姫さまの帰りを今か今かと待っていると思いますので」

 

 

まぁ、なによ。クリフトなら味方になってくれると思ったのに、いい子ぶっちゃって!

ティメラウスの肩を持つなんてひどいわ。

 

 

でも、ティメラウスやクリフトが反対したからって、目の前にこんな魅力的な

旅の扉があるのに、諦めるなんて嫌よ!

 

 

「いやねえ、そんな長居しないわよ。ちょっと覗いてくるだけよ。旅の扉をくぐって

 デルコンダルに行って、ぶらぶら散策したらすぐに戻ってくればいいじゃないの。

 トルネコさんの奥さんがやってるお店も見てみたいわ。ちょっとだけ見に行って

 また旅の扉でここに帰ってきましょうよ。それか、デルコンダルからキメラの翼で

 すぐサマルトリアに帰ればいいわよ! ねえ〜、行きましょうよ~!」

 

 

 

 

「ティアの大冒険は適当に終わらせて、カインの話に戻りたい ヽ(`Д´)ノ」

かなり前から思ってますが (;'∀')、私の想いとは裏腹に話がなかなか進みませんね... (-"-)

 

 

前回グランログザー師匠に弟子入りも認められ、クリフトのMPも増やしてもらえて

「めでたしめでたし♪」でサマルトリアにご帰還の予定でしたが、この南のほこらには

デルコンダルとつながっている旅の扉があるんですよね... (;´∀`)

 

 

トルネコが『旅の扉』の話をしていたのに、全員がスルーして帰るというのも変なので

リオスが話題を持ち出したところ、ティアが「あたし、デルコンダルに行きたい!」

(勝手に)言い出しました (;´∀`)

 

今まで『旅の扉』を見たことなかったのに、目の前に旅の扉が現れて、ここをくぐれば

デルコンダルに行けるとなれば「行ってみたい!」となりますよね~ (;´Д`)

 

 

さて......

 

ここから旅の扉デルコンダルへ行く『ティアの大冒険 2nd season』が始まるのか?

それとも.....?

 

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ