ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 143】 本当に仲良し

ムーンブルク戦没者の慰霊地になりそうな丘を訪れているおれたち。

 

「坂道を寝転んでゴロゴロ転がると楽しいよ。一緒にやろうよ!」と言うトンヌラ

「どうせ転がるならあんたも道連れよ」と言うナナに丘の上に連れて来られたおれは

頂上で寝かされて転がされた。

 

ぐるぐるまわりながら坂道を転がり落ち、目が回りめまいと吐き気に苦しみながら

四つん這いで移動していると、視線の先でマリアが赤ん坊に乳をやっていた。

 

 

...... こほん。おれは…… その… なんだ。

赤ん坊が乳を飲む姿なんて今まで見たことなかったし、あくまで社会勉強の1つとして

見学しようとしたわけなんだよ。

 

マリアに近づき、いよいよ見学しようとしたところで、いきなり耳に激痛が走った。

 

おれの意図を勘違いしたナナが、鬼みてえな形相でおれの耳を引っ張ったのだ。

 

さらにひどいことに、ナナから嫌がらせされ痛い思いをしたというのに、ナナの野郎が

「耳を引っ張ったのはめまいを治すための治療」トンヌラとリーナに言いやがった!

 

おれは2人から「めまいを治してくれたナナに感謝すべきだ」と圧力をかけられ

ナナに礼を言う羽目になった。

 

ちくしょう!

 

 

 

「さあ、そろそろお昼にしましょう」

 

草原の真ん中でしゃべるおれたち4人に、母ちゃんがにこやかに声をかけてくる。

 

 楽しいお弁当の時間だよ♪

 

 

「わーい。ぼく、ずっとお腹すいてたんだよね。リーナちゃん、行こう!」

 

トンヌラはリーナの手をとり、2人は母ちゃんのそばに駆け寄っていった。

ははっ。精神年齢が同じなのか、トンヌラとリーナはすっかり仲良くなったみてえだ。

 

おれとナナも2人に続いて母ちゃんのところへ行き、おれたちは円になって座った。

 

 

母ちゃんがカゴから弁当箱を取り出し、マリアがおれたちに紙の皿を配ってくれた。

 

 

「はい、神父さんもどうぞ」

 

母ちゃんは皿におかずを取り分けると、木陰で座っているアルファズルに手渡した。

 

 

「ああ、すまぬな」

 

アルファズルは無表情で皿を受け取る。

 

 

トンヌラは、マリアが食べやすいようにと赤ん坊を抱くのを交代してやっていた。

 

「腹が減った」と言いながら赤ん坊を抱いて弁当に手を伸ばせないトンヌラの代わりに

マリアはおかずをつまむと「ほら、食べて。あーん」トンヌラに食べさせる。

 

「うん、おいしい!」トンヌラが笑うと、マリアも嬉しそうに微笑んだ。

 

 

「本当に仲良しよね」

 

ナナがトンヌラたち夫婦を見ながら、うらやましそうな声でつぶやいた。

 

 

「うふふ、ごちそうさま。見てるだけでこっちがお腹いっぱいになっちゃうわよ」

 

母ちゃんも息子たちを見て微笑む。

 

 

「えへへ。ぼくたち2人はこうやって、母さんの減量に協力してやってるんだよ」

 

トンヌラも笑顔で言い返した。

 

 

こいつらのやりとりを聞きながら、おれもなにげなくトンヌラ夫妻に目を向けた。

 

視線が自然とマリアの胸元に向く。

マリアの服は、1番上までボタンがきっちりと留められていた。

 

 

くそっ! さっきまで大胆に開いてたのに。

 

留められたボタンを恨めしく思いながら見ていると、いきなり頬をペチンと叩かれた。

 

 

「いてっ、なにすんだ!」

 

頬を押さえながら叩かれた方を見ると、ナナはふんっとおれから顔をそむけた。

 

 

「蚊が止まってたから叩いて追い払ってあげたのよ。刺されなくて良かったわね」

 

完全におれから目をそらし、ナナは平然とした顔でおかずを口に運んだ。

 

 

「へんっ! 見え透いた嘘つくなよな。てめえ、いい加減にしろよ!」

 

 

「なによ、あたしがなにしたって言うのよ」

 

 

「さっきから嫌がらせばっかりしやがってよ。調子乗ってんじゃねーぞ!」

 

 

「なんであたしが嫌がらせするのよ。あんた、嫌がらせされるようなことしたの?」

 

 

「ぐっ... それは...」

 

 

言葉に詰まったおれを見て、ナナは再びふんっとあごをあげておれを見下してきた。

 

 

くそっ!

 

腹が立ったおれは、ナナの皿にあった肉団子をつまんで口に入れた。

 

 

「あっ! ちょっとあんた、なにするのよ! ずっと楽しみにとっておいたのに!」

 

ナナがおれにつかみかかってくる。

 

 

へんっ! ざまあみろ!

 

絶対ナナなんかに食わしてやるもんかと、おれは弁当箱に残っていた最後の肉団子も

つまんで口に放り込んだ。

 

 

「あーー! ちょっとなにすんのよ。あたしの肉団子、返しなさいよ!」

 

おれは立ち上がり、肉団子を咀嚼したあとナナにあかんベーして走って逃げた。

 

 

「許さないわ! 待ちなさい、カイン!」

 

ナナも立ち上がり、おれを追いかけてくる。

 

 

「へんっ。たかが肉団子でそんなにムキになってよ。おまえ、本当にお姫様なのかよ」

 

おれは振り返って言った。

 

 

「あんた、食べ物の恨みは恐ろしいのよ」

 

ナナが必死で走ってくる。

 

 

けっ! 必死に走ったところで、足の速さでおれ様にかなうわけねえだろ。

 

 

おれは走りながらぐるっと回って母ちゃんたちのところへ戻り、ひと息ついてから

今度は別のおかずをつまんで食った。

 

 

「カイン、いい加減にしなさいよ!」

 

ナナが遠くからおれに怒鳴ってきたが、おれは無視しておかずを食い続けた。

 

 

へへっ、休憩とエネルギー補給は完璧だ。

 

ナナがようやく近づいてくると、おれはベーッと舌を出してさらに逃げてやった。

 

 

「はぁはぁ、… 許さないわよ、カイン。ふぅ〜ふぅ〜、ちょっと... 待ちなさいよ」

 

ナナが息を切らしておれを追ってくる。

 

 

「うふふ。本当に仲良しね」

 

 

ナナから逃げて走っていくおれの背中に、マリアの楽しそうなつぶやきが聞こえた。

 

 

結局、おれたちは飯を食い終わってからも、日が暮れるまで草原で追いかけっこしたり

草の上で大の字になって寝転んだり、坂を転がったりしてすごした。

 

 

「すっかり遅くなったな。今からだと歩いて森を抜けるのは厳しいぜ」

 

おれは鬱蒼とした暗い森に目を向けた。

 

 

「確かにあんな暗い森を歩くのは怖いわね。それに1日中遊んで疲れちゃったわ」

 

母ちゃんがふーっとひと息つく。

 

 

「ルーラで帰るしかねえな」

 

おれの言葉を聞いて、呪文を使うと察したみんながおれのそばに集まってきた。

 

 

ルーラを唱えるのはたやすいが、周りに集まった人数を見て少し緊張が走る。

 

ナナの誕生バーティーに向かうのに、ティアに加えて王子やミリア、オーウェン

呪文でムーンペタに運んだことはある。

 

 

だが、今はあのときより人数が多い。

全員を無事に運べるだろうか?

 

 

ポンッと後ろから肩に手を置かれた。

振り返ると、いつの間にかアルファズルがおれのすぐ後ろに立っていた。

 

 

「己を信じよ、カイン」

 

おれの心を見抜いたかのように、アルファズルはひとことだけ言ってくる。

 

 

「へへっ、まかせとけ。あんたの力を借りなくても、全員を連れて帰ってやるぜ」

 

おれは鼻の下をこすった。

 

 

全員がおれの近くにいることを最後に確認して、おれは呪文を唱えた。

 

「二つの点は一つの点に。星幽界の守護者よ、われをかの場所へと導きたまえ。ルーラ!」

 

 

虹色の光が薄れると、母ちゃん・トンヌラ・マリアの3人は歓声をあげた。

 

 

「すごい、一瞬のうちに帰って来たわよ」

 

 

「こんな呪文を使えるだなんて、ナナだけじゃなくやっぱりカインもすごいんだな!」

 

 

「ふふっ、そりゃそうよ。カインもナナも偉大なる勇者様なんだから、ねっ!」

 

 

赤ん坊を抱いたマリアがニコニコしながらおれとナナを見てウインクしてくる。

 

ナナとリーナもおれに笑いかけてきた。

 

アルファズルは労をねぎらうようにポンポンとおれの肩を叩くと、1人ゆっくりと

ムーンペタの町の中に入っていった。

 

 

「あんたたち、良ければ今夜も泊まっていかない? 今日はリーナちゃんも一緒に。

 1日付き合ってくれたのと、ここまで送ってくれたお礼といっちゃなんだけどさ」

 

母ちゃんがおれの腕をつかんで言ってくる。

 

 

「… え? あたしも泊まってもいいの?」

 

リーナが遠慮がちに尋ねると、母ちゃんはニッコリ笑ってリーナの頭をなでた。

 

 

「ぜひおいでよ、リーナちゃん。ちょっと歳が行き過ぎてるけど、あたしのことは

 本当のお母さんだと思って、これから遠慮なく甘えてくれて良いんだよ」

 

母ちゃんはその場にしゃがんでリーナと視線を合わせながら言った。

 

 

「母ちゃんはトンヌラの母ちゃんだけど、おれの母ちゃんでもあるからな。これから

 リーナの母ちゃんになってもいいんじゃねえか、構わねえだろ? トンヌラ

 

 

「うん、もちろんだよ。リーナちゃんみたいな可愛い妹が出来るなら大歓迎だよ!

 いつの間にか生意気な弟も出来てたし、きょうだいが増えるのは慣れっこさ」

 

 

「あん? 生意気な弟だと?」

 

おれがこぶしを振りかぶると、トンヌラは笑ってマリアの後ろに隠れた。

 

 

「リーナちゃん。明日の朝、勉強が始まる前に教会に戻れば大丈夫よ。今日はみんなで

 お母さんの家に泊まりましょう」

 

ナナがリーナに言うと、リーナはおれたちを見回し「うん!」と元気よくうなずいた。

 

 

リーナはナナと母ちゃんに手をつないでもらい、母ちゃんの家に向かった。

そしておれたちは母ちゃんの家に泊まり、翌朝おれはナナとリーナを教会へ送った。

 

 

ナナに連れられてムーンペタに来て教会で1泊、母ちゃんの家で2泊。

3日ぶりにサマルトリアへ帰る。

 

教会の前で見送るナナとリーナに軽く手をあげて、おれは呪文を唱えた。

 

「二つの点は一つの点に。星幽界の守護者よ、われをかの場所へと導きたまえ。ルーラ!」

 

 

光が薄れ、見慣れた故郷の光景が目に入る。

 

たった3日だというのに、サマルトリアでは異変が起きていたことにこのときのおれは

まだ気づいていなかった…。

 

 

 

 

まだ帰らないカイン ( *´艸`)

(今回の話の最後で、ようやくサマルトリアに到着したみたいですけどね (;´∀`))

 

よく似た2組のカップル♡

「カイン×ナナ」と「トンヌラ×マリア」

 

楽しいお弁当タイムでそれぞれの「仲良し」っぷりを書いてみましたよ~ヾ(*´∀`*)ノ

 

 

母ちゃんの話だと、以前のトンヌラとマリアはカインとナナにそっくりだったとか?!

 

赤ちゃんを抱いたカインに「はい、あーん♡」とナナがおかずを食べさせる (*´ω`*)♡

いずれそんな未来も来るのでしょうか?(現時点では想像も出来ませんけどね (;'∀'))

 

 

ちなみに、ナナが楽しみにとっておいた肉団子にはなんの意味もありません ( *´艸`)

そもそも世界線が違うカインたちが普段は何を食べているのかがわからない... (;'∀')

ゲームブックでは「スライム・ベスの煮物」を食べていましたよね ( *´艸`))

 

お弁当の定番として、卵巻き・唐揚げ・ハンバーグなども考えましたが、なんとなく

肉団子にしました(お姫様が「肉団子に執着」というのも笑えるし ( *´艸`)♪)

 

 

「はい、あーん♡」でおかずを食べさせるラブラブな「トンヌラ&マリア」

くだらない言い争いからおかずを奪って追いかけっこするラブラブな「カイン&ナナ」

楽しんでもらえたなら嬉しいです♪

 

 

さて(脱線しまくったけど)ようやくカインがサマルトリアに帰りました (≧∇≦)☆

 

サマルトリアでは、たった3日の間になにやら異変が起きているみたい... (◎_◎;)

(最後は小説などでよく見かける思わせぶりな手法を使ってみました♪)

 

 

サマルトリアでいったい何が?!

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ