ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 142】 治療...?

ムーンブルク戦没者の慰霊地は、ムーンペタの住民たちに整地してもらおうぜ」

おれが思いつきで言った意見にアルファズルもナナも賛成したあの話を、おれは

母ちゃんの家に泊めてもらう夕食の席で母ちゃん・トンヌラ・マリアに伝えた。

 

話を聞いた3人が実際の丘を見てみたいと言うので、おれたちは翌日リーナも誘って

みんなで丘に向かうことにした。

 

 

整備をするにあたって「住民たちの生の声を聞きたい」と同行したアルファズルは

母ちゃんやトンヌラたちが思い思いに発言するのを、ペンを走らせすべて書き留めた。

 

 

あらかた意見を出し終えたところで、ずっとソワソワしていたトンヌラがおれに

「丘を登ってもいいか?」と聞いてくる。

 

 

  さっきからずっと遊びたくってしょうがないトンヌラ君 ( *´艸`)

 

ガライの町で坂を滑って遊んだことがあるというリーナの話を聞いてから、この坂を

滑りたくてウズウズしていたらしい。

 

 

おれが承諾すると、トンヌラは丘を駆け登り寝転んでゴロゴロ転がり下りてきた。

 

下りてきた後は「楽しそう!」とはしゃぐリーナを連れていき、トンヌラとリーナは

きゃあきゃあ大騒ぎしながら、ゴロゴロと坂を転がり下りてくる。

 

 

「まったく、いつまで経っても子どもなんだから」とマリアは転がる夫を見ながら

あきれた顔で笑っていた。

 

 


「うひゃあ~、目が回る~」

 

下まで転がってきたリーナは立ち上がり、ふらふらとその場で尻もちをついた。

ふらついて尻もちまでついたのに、リーナは楽しそうにニコニコ笑っている。

 

 

「ねえねえ、きみたちもやろうよ!」

 

リーナに続けて下りてきたトンヌラは、目を回す素振りもなくスクッと立ち上がり

大はしゃぎでおれたちに声をかけてきた。

 


「あたしはやめておくわ。今からこの子にお乳をあげないといけないもの」

 

マリアは赤ん坊を抱いたまま、母ちゃんが座っている隣にちょこんと座った。

 


「ちぇっ、そりゃ残念だな。それじゃあ、カイン! 一緒に滑ろう、楽しいよ!」

 

トンヌラはおれの腕をつかんできた。

 


「おれはいいよ」

 

手を振りほどこうとしたが、腕をがっしりとつかまれていて離れない。

 


「ねえ、おねえちゃんも行こうよ!」

 

リーナが無邪気に両手でナナの手をつかんで、ぐいぐいと引っ張っている。

 


ナナはリーナに片手を引っ張られながら、もう一方の手でおれの手をつかんできた。

 


「おい、なにするんだ!」

 


「ふふっ、イイじゃない。どうせ転がる羽目になるんなら、あんたも道連れよ」

 

トンヌラとナナに両手を引っ張られ、おれはズルズルと丘の上まで連れて来られた。

 

 

 

「さあ、カイン。寝転んで」

 

トンヌラがキラキラした目で言ってくる。

 

 

「はぁ? おれからかよ」

 

おれは文句を言ったが、ナナに「うるさいわね、さっさと寝なさいよ」とにらまれた。

 

 

ごねていても仕方ねえ。ここまで来た以上は、どっちみち転がり落ちることになる。

早く終わらせちまった方が得策だな。

 

 

おれがしぶしぶ寝転ぶと、トンヌラは嬉しそうに笑いながらおれに近づいてきた。

 

 

「そっれぇ~!」

 

トンヌラの声に合わせて、ナナとリーナもおれの身体をグイッと押した。

 

 

ゴロゴロと坂を転がり落ちる。

 

空と地面が交互に見える。

目の前の景色だけじゃなく、脳みそも胃袋も一緒にぐるぐる回っているのを感じる。

 

 

うえええ~。気持ち悪りい...

 

 

下までゴロゴロと転がって、おれはその場で両手両足を広げてあお向けに寝転んだ。

 

青空に白い雲が浮いている。

心地良い天気のはずだが、青い空も白い雲もぐるぐると回っているように感じた。

 

 

「ねえ、カイーン!」

 

丘の上からナナが呼んでくる。

 

 

倒れたおれを見て心配してくれたのか?

 

おれは寝転んだ体勢のまま、目だけを動かして頂上にいるナナを見た。

 

 

「あんた、そんなところで寝てたら邪魔なのよ。もうちょっとあっち行ってよ!」

 

大丈夫? と聞かれることを期待したのに、ナナからは無慈悲な声がかけられた。

 

 

「てめえ! 邪魔とか言うなよ」といつもなら言い返すところだが、今は頭と腹ん中が

ぐるぐるしていて、声を出すどころか口を開くことも出来やしねえ。

 

 

おれは立ち上がることも出来ず、うつむいたまま四つん這いになって移動した。

 

 

へんっ、ここまで来れば文句ねえだろ。

 

四つん這いで10歩ほど移動して、おれは今の場所を確かめようと顔を上げた。

 

 

 

............っ!!

 

ゆっくりと顔を上げたおれの目に、なんとも衝撃的な光景が飛び込んできた。

 

 

視線の少し先、母ちゃんが座っている草原の隣で母ちゃんの陰に隠れるようにしながら

マリアが赤ん坊に乳をやっている!

 

しかも、近くに誰もいないからとマリアは無防備に胸元をはだけているではないか!

 

 

こ、これは……!

 

おれはごくりとつばを飲み込んだ。

 

 

このままフラフラと母ちゃんのそばまで行き、そこでよろめいたふりして倒れ込めば…

 

み、見える!!

 

 

さっきまであんなに気持ち悪かったのに、気持ち悪さはどこかに吹っ飛んでいた。

 

おれは四つん這いのまま歩みを進めた。

 

 

近づきすぎても怪しまれていけない。

このあたりでイイだろう。

 

 

ねらいを定めてごろりとその場に寝転ぼうとしたとき、いきなり耳に激痛が走った。

 

 

「いてーっ! いてててて」

 

 

おれが四つん這いで移動している間に、おれに続いて坂を転がり下りて来たのだろう。

 

見上げるとナナが鬼みてえな恐ろしい形相で、おれの耳を力いっぱい引っ張っている。

 

 

「痛ってえな。なにしやがる!」

 

おれは抗議の声をあげた。

 

 

「ふんっ。なにって、あんたが倒れそうだから、こうして支えてあげてるんでしょ!」

 

 

「支える場所がおかしいだろうが!」

 

 

「あら、そう? あんたの目が回ってつらそうだから、こうやって耳を引っ張ることで

 血流を良くしてあげようと思っているだけよ。怒るよりむしろ感謝して欲しいわ」

 

 

「おれをいじめておいて感謝だと?」

 

 

「ふんっ、自業自得でしょ!」

 

 

おれとナナは少しの間にらみ合っていたが、ここでおれはハッとなった。

 

まずいっ! ナナに耳を引っ張られたせいで、思わず大声をあげてしまった。

 

おれはあわててマリアに視線を移した。

 

 

おれたちが近くにいると気づいたマリアが、胸元をかき合わせているのが見えた。

 

 

くそっ! あと少しだったのに!!

 

舌打ちしながらマリアの様子を眺めていると、今度は反対の耳にも激痛が走る。

 

 

「片方の耳じゃ足りないみたいね」

 

ナナは両耳を引っ張り上げてきた。

 

 

「痛ってえ! 耳がちぎれちまうだろ。やめてくれよ~」

 

耳が引きちぎられそうな激痛に耐えかねて、おれは思わず叫びながら立ち上がった。

 

 

立ち上がった後も両耳をナナにつかまれていて、強制的にナナと向き合わされる。

 

くそっ! マリアを見るのはもう無理だ。

 

 

ナナはしばらくおれの耳をおもちゃにして引っ張っていたが、ふっと手を離した。

 

すぐにマリアに目を向けると、もう赤ん坊に乳を与え終わったのか、マリアはゆっくり

服のボタンを留めているところだった。

 

 

ちくしょうっ!!

 

おれは地団駄を踏んだ。

 

ナナはニヤリと笑っておれを見ている。

 

 

「おねえちゃーん、おにいちゃーん」

 

下りてきたリーナがニコニコしながら走ってきたが、目が回っているせいなのか

足がふらついて途中で横にこてんと倒れた。

 

 

「あらあら。リーナちゃん、大丈夫?」

 

ナナが転んだリーナの元に駆け寄ると、リーナは笑ってすぐに立ち上がった。

 

 

「えへへ、大丈夫よ。ちょっと目が回っただけ。楽しかったね、おねえちゃん!」

 

リーナはナナと手をつなぎ、弾むような足取りでこっちに歩いて来る。

 

 

「ええ、面白かったわ。1人だけ、まったく楽しめなかった人がいるみたいだけどね」

 

ナナはおれを見てふふんと笑った。

 

 

「みんなぁ! 待ってよ〜」

 

坂を転がってきたトンヌラが満面の笑みで大きく手を振りながらこっちに走ってくる。

 

 

なんでこいつはこんなに元気なんだ?

何度もぐるぐる回って平気だなんて、頭か身体のどこかがおかしいに違いない。

 

まぁ、よく似た奴を知ってるけどな。

へへっ、あいつは今ごろサイラスに留守番を命じられた玉座でくしゃみしてるだろう。

 

 

「カイン、下りたときは少しふらふらしてたみたいだけど大丈夫かい?」

 

「そうだわ。おにいちゃん、大丈夫?」

 

トンヌラとリーナが聞いてくる。

 

 

「あら、平気よね? あたしが耳を引っ張って血流を良くしてあげたんだもの」

 

ナナがケロリとした顔で答えた。

 

 

「そうなんだぁ。すぐ治療できるなんて、さすがナナだな。良かったね、カイン!」

 

ナナがおれの耳を引っ張ったのは治療なんかじゃなくただの嫌がらせだというのに

トンヌラはナナの話を素直に信じたようだ。

 

ちっ! きっとトンヌラの野郎は、王子以上に生粋の「のんきもの」なんだろう。

 

 

「へんっ、偉そうに。人のこと散々いじめておきながら、よくそんな口がきけるな!」

 

おれはナナに毒づいた。

 

 

「え?! おにいちゃんがおねえちゃんにいじめられたの? いったいどうして?」

 

今までニコニコしていたリーナは驚き、不安そうにおれとナナの顔を見上げてくる。

 

 

「えっ? 耳を引っ張るのは治療じゃないの? ん? きみたち、なにかあったの?」

 

トンヌラもおれたちの顔を交互に見てきた。

 

 

赤ん坊に乳をやってるマリアを覗こうとして、ナナに耳を引っ張られたと知ったら

トンヌラはどんな反応をするだろう?

 

こんな風に普段はのんきでへらへらした奴ほど、怒ったときは怖ええからな。

 

 

「いや、何もねえよ。目が回って気持ち悪くて倒れそうなときに、耳を引っ張られて

 痛くて腹が立っただけだ」

 

おれは適当にごまかした。

 

 

「そっかあ。でも、ナナが引っ張ってくれたおかげで目が回ったのが治ったんだから

 カインはナナに感謝しないとね!」

 

トンヌラがニコニコしながら言ってくる。

 

 

「おにいちゃん。耳を引っ張られて痛かったのかもしれないけど、礼儀は大事よ。

 痛かったことは忘れて、今はおねえちゃんにありがとうを言った方がいいわ」

 

アルファズルにいろいろ学んだからか、リーナが大人ぶった顔でおれに助言してくる。

 

 

くそっ! ナナがおれの耳を引っ張ったのは治療なんかじゃねえのによ!

 

トンヌラもリーナも微笑みながら、おれがナナに礼を言うよう圧力をかけてくる。

 

 

「...... あ、ありがとな。ナナ」

 

2人からの善意の圧力に耐えかねて、おれは仕方なくナナに礼を言った。

 

 

おれの言葉を聞いたナナは目を輝かせ、勝ち誇った顔で満面の笑みを見せた。

 

 

 

 

前回「カインはサマルトリアに帰る」と書いたのに、まだ帰らんのかーい ヽ(`Д´)ノ

 

当初は、みんなでワイワイ遊んでお弁当も食べてから、ムーンペタに帰って解散☆

カインは1人サマルトリアに帰る... という話にする予定だったんですが (;´∀`)

 

カインがナナを押し倒してギャアギャアやり合ってから、カインとナナをもうちょっと

イチャイチャさせたくなって ( *´艸`)

 

「2人にはもっと喧嘩して欲しい、ナナがやきもち妬いたら面白そうヾ(*´∀`*)ノ

こんな欲が芽生えました ( *´艸`)

 

 

ゲームブック本編では、ナナは王子とミリアにやきもち妬いてプンプンしてたけど

カインに対してやきもちを妬く場面って、ほとんどなかったんですよね... (。-_-。)

 

唯一、やきもちっぽいのがぱふぱふしに行こうとして止められたとき」だったので

ゲームブックに沿って聖母マリア様の授乳を覗こうとして制裁を喰らう』( *´艸`)

こんな展開になりました (^_-)-☆

 

 

気持ち悪くて立つことも出来なかったのに、マリアの胸元がはだけてるのを見ただけで

一気に覚醒してシャキーンとなるカインが個人的にはお気に入り ( *´艸`)♡

 

完全に自己満足回ですね (;'∀')

 

 

坂を転げ落ちて目が回って、マリアの覗きは失敗して、ナナに両耳を引っ張られて

ナナに感謝しろと強制的にお礼を言わされて、散々な目に遭ったカイン ( *´艸`)

 

さて次こそ、カインは無事にサマルトリアへと帰れるのでしょうか ( *´艸`)?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ