ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 122】 幸せを決めるのは...

ナナの誕生パーティーも大成功に終わり、おれはずっと親切にしてくれたおばさんを

礼も兼ねて家まで送ってやることにした。

 

家まで送る道すがら、パーティーのときにおばさんがおれに親切にしてくれたのは、

おばさんの息子のトンヌラとおれがよく似ているからだと聞かされた。

 

 

トンヌラは幼なじみのマリアのことがずっと好きだったのに、なかなか素直になれず

おばさんをヤキモキさせてたらしい。

 

おれとナナを見て、かつてのトンヌラを思い出して放っておけなかったというのが

おばさんが親切にしてくれた理由だった。

 

 

 

「おい、ちょっと待てよ! あの2人...」

 

おれは、パーティーに来ていたトンヌラとマリアをあらためて思い出していた。

 

 

おばさんの隣にいたトンヌラとマリアは、生まれて間もない赤ん坊を交互に胸に抱き、

2人で赤ん坊をあやしながら、幸せそうに微笑みあっていたじゃねえか!

 

おれがそのことを伝えると、おばさんは大きくうなずいた。

 

 

「うん。2人は結婚して、少し前に赤ちゃんが生まれたんだよ。あたしの孫だね。

 ありがたいことに、孫はマリアに似てくれたんだ。あの子はきっと可愛くなるよ」

 

おばさんは幸せそうに微笑んだ。

 

 

 

  マリア似なら、可愛い子になるのは確定ですねヾ(*´∀`*)ノ

 

 

 

 

「なぁ、おれと似てるかはさておき、トンヌラは意地っ張りで素直じゃねえんだろ?

 何でそんなことになったんだよ?」

 

おれの問いかけに、おばさんは「待ってました!」とばかりに胸を張った。

 

 

トンヌラとマリアは、子どもの頃から会えば喧嘩するような関係でね。トンヌラ

 マリアのことをいつもからかってばかりいたんだよ。それで、マリアを怒らせては

 しょっちゅう引っ叩かれて、頬にモミジの跡をつけて帰ってきたりしてね」

 

おばさんは懐かしそうな目をした。

 

 

「それで? どうして結婚なんてことになったんだ? いったい、どうなったんだよ?」

 

今の幸せそうな2人の姿が信じられず、おれはおばさんに話の続きを促した。

 

 

トンヌラが素直になれないでいる間にね、マリアに縁談が持ち上がったんだよ。

 とても良いお相手でね、断る理由はないぐらいの素晴らしいご縁だったんだ」

 

 

「ああ? どういうことだ? ますます意味がわからねえぜ。マリアにはそんなイイ奴が

 現れたっていうのに、その流れでなんでトンヌラと結婚するんだよ?」

 

おれは首をひねった。

 

 

「まぁまぁ、最後まで話を聞きなよ。突然、マリアの前に現われた素晴らしい若者に

 ウチのトンヌラは、すっかり自信を失くしちゃってね。しょげちゃったんだよ。

 終いには『マリアはあの男と一緒になった方が幸せだろう』なんて言い出してね」

 

 

「うん。トンヌラの気持ちはよくわかるぜ。まあ、おれでもそうなるだろうな」

 

おれがうなずくと、暗い夜道でおばさんの目がキラリと光った。

 

 

トンヌラの言葉を聞いて、あたしはあの子の頬を思いっきり引っ叩いてやったのよ!

 馬鹿なこと言うなってね!」

 

おばさんはその場で大きく腕まくりをすると、ブンッと勢いよく腕を振った。

おれの髪が揺れるほどの強い風が起きる。

 

 

「あの男と一緒になった方が幸せだなんて、何であんたが決めるのさ。おかしいだろ?

 マリアの幸せは、マリアが決めるものだよ! 誰と一緒にいるのが自分の幸せなのか、

 誰と一緒にいたいのか、決めるのはあんたじゃなくて、マリア自身だろ! ってね。

 あたしはトンヌラを思いっきりぶん殴って、怒鳴りつけてやったんだよ!」

 

 

おれ自身が、ぶん殴られて怒鳴りつけられたような気分になった。

 

おばさんの言葉が胸に突き刺さる。

 

 

おばさんはふーっと息を吐いた後、おれを見て穏やかに微笑んだ。

 

 

「あんたがトンヌラに似てるって言った意味、今ならよくわかるだろ? あたしは、

 あんたにトンヌラと同じ間違いをして欲しくないんだよ。これから先、ナナ姫に

 良縁が舞い込んだとき、あんたに『あの男と一緒になった方がナナは幸せ』なんて

 馬鹿なことを言って欲しくないんだよ。ナナ姫の幸せは、ナナ姫自身が決めること。

 あんたに出来ることはただ素直に、自分の気持ちをナナ姫に伝えるだけなんだよ」

 

おばさんは母親のような優しいまなざしで、おれをじっと見つめてきた。

 

 

「バカ息子も、あたしの一撃で目が覚めてね。ようやくマリアに想いを伝えたんだよ。

 どちらの男を選ぶかはマリアが決めれば良いけど、自分はマリアが大好きだから、

 ずっと一緒にいたいってね。マリアは『その言葉をずっと待ってた』って答えて、

 2人は今ではあの通りさ」

 

おばさんは幸せそうに微笑んだ。

 

 

ナナの幸せはナナが決める。

おれに出来ることはただ、自分の素直な気持ちをそのままナナに伝えるだけ...

 

マリアは、トンヌラからの告白に『その言葉をずっと待ってた』と答えた。

もし、トンヌラのようにおれが正直にナナへの想いを伝えたら、ナナの答えは......

 

 

「おれも... そうなれるのか?」

 

自分でも意外な言葉が口から出た。こんなこと、今まで誰にも聞いたことねえのに。

 

 

「なれるよ! あたしが保証する! だって、あんたたち、息子夫婦にそっくりだもの。

 あんたたちが幸せな結婚をして、2人で楽しそうに笑う未来があたしには見えるよ」

 

おばさんはふくよかな胸をドンと叩いた。

 

 

「不思議だな。あんたがそう言ってくれると、なんだか安心するぜ」

 

本当に不思議な話だが、おばさんの言葉はなぜかすんなりと聞き入れることが出来た。

 

 

「そう? 嬉しいこと言ってくれるね。あんたのことは息子みたいに思ってるからさ、

 あんたもあたしのこと『ムーンペタの母ちゃん』ぐらいに思ってくれたらいいよ!

 あっ、でも、そんなこと出来るわけないわね。あんたは、サマルトリアに帰ったら

 綺麗な王妃様がいるんだものね。あたしみたいなおばさんじゃ釣り合わないわ」

 

おばさんは恥ずかしそうに身をすくめた。

 

 

「そんなことねえぜ」

 

おれは、本当のおふくろはおれを産んですぐに亡くなり、今の王妃は後妻だと伝えた。

何でこんなことまでおばさんに話しているのか、自分でも不思議な気分だった。

 

 

「今の王妃は妹のティアの母親だけど、おれとティアを分け隔てなく育ててくれた。

 血のつながりはねえけど、今のおれにとっては本当の母親も同然さ。あの王妃は

 とにかく度量が広くて、親父以上に肝が据わっているからな。多少のことでは

 まったく動じねえぜ。おれがムーンペタに新しい母ちゃんが出来たと言っても

『そりゃ良いじゃない。どうせなら世界中に母ちゃんをつくっちゃいなよ』って、

 きっと笑って歓迎するだろうよ」

 

実際に「良いじゃないの」と喜ぶ王妃の声が聞こえた気がして、おれは笑った。

 

 

「血のつながりなんて関係ないよ。あんたには素敵なお母様が2人もいるんだね」

 

おばさんは穏やかに微笑んだ。

 

 

「ああ。そして今日、素敵な母ちゃんが1人増えたぜ。まぁ、そいつは『お母様』って

 感じじゃねえけどな」

 

おれは、おばさん... いやムーンペタの母ちゃん」を見て、ニヤリと笑った。

 

 

「まぁ、失礼しちゃうわね!」

 

母ちゃんもおれを見て笑った。

 

 

そうこうするうちに、おれたちは宿屋の近くまで歩いて来ていた。

 

 

「あたしの家はここだよ。あんたのお城と比べたら、犬小屋みたいなもんだけどさ。

 まぁ、いつでも遊びにおいでよ」

 

母ちゃんが指差したのは、クリーム色の壁に茶色い屋根のこじんまりとした家だった。

家の周りは綺麗に整えられていて、玄関には小さな植木鉢が飾られている。

 

 

「へへっ。犬小屋にしちゃあ、かなりセンスのいい立派な犬小屋じゃねえか。おれ様が

 来る価値は充分あるぜ。あんたも、おれの母ちゃんを名乗るだけあるな!」

 

おれの言葉を聞いて、母ちゃんは照れたように微笑んだ。

 

 

「こんな遠くまで送ってくれてありがとね。帰り道も気をつけて戻るんだよ」

 

そう言って母ちゃんが家に入ろうとするのを見守りながら、おれはハタと思い出した。

 

 

 

「なあ、ちょっと待ってくれ。さっきの話だけどよ…」

 

おれは、おれを産んだおふくろはもう亡くなっていること、今の王妃とおれには

血のつながりがないということは、誰にも言わず秘密にして欲しいと頼んだ。

 

 

「ふふ、ばっかだねえ。あたしがあんたを困らせるようなこと言うわけないだろう?

 大丈夫! 誰にも言わないから安心しな。王妃様のことも、あんたの秘めた想いも、

 ナナ姫がハートのクッキー食べるのを見ながら、あんたが鼻の下をだらりと伸ばして

 情けないぐらいデレデレしていたことも、ぜーんぶ内緒にしてあげるよ!」

 

おばさん... いや、母ちゃんはニヒヒと笑うと、すばやく玄関の戸を開けて家に入った。

 

 

「なんだとっ!」

 

思わず食ってかかろうと伸ばしたおれの手は、むなしく空を切った。

 

 

母ちゃんは家の明かりをつけ、窓からおれを見てニヤニヤしながら手を振ってきた。

 

 

くそっ!

 

おれは舌打ちしながら母ちゃんの家に背を向け、そのまま小さく手をあげてから

教会へ向けて歩き出した。

 

 

 

今回の話。

「マリアの幸せはマリアが決める...」のくだりは、過去の自分への言葉です (;'∀')

 

(大昔の話ですが)とても素敵な男性を前にして、私はすっかり気後れしちゃって ( ノД`)

 

「もっと素敵な女性がいるのに、こんな素敵な方に私が相手では申し訳ない (T_T)」

 

ただ自分でイジけてメソメソするだけじゃなく、私の場合はこのウジウジした気持ちを

お相手にもぶつけてしまって _| ̄|○

 

せっかくの幸せを、自分で手放してしまったことがありました 。゚(゚´Д`゚)゚。

 

カインには絶対に同じ想いをさせたくないから、おばさんに一喝してもらいましたよ☆

 

ちなみに、私が手放した素敵な男性は、その後すぐにとても素敵な女性とめぐり会えたので、結果的には

これで良かったと思っています (*´ω`*)♡

 

 

ここにきて、突然の「トンヌラ ♡ マリア」カップルの誕生になりました ( *´艸`)

世間一般では「ロレ・ムン」推しも多いですが、私は昔から断然「サマ・ムン」推し☆

なので、別の世界線でもトンヌラとマリアをくっつけてやりましたよ~ヾ(*´∀`*)ノ

 

 

トンヌラのママを「カインの母ちゃん」にする気はまったくなかったんです (;´∀`)

(最初は、ただ「息子に似てるから応援するだけ」のおばさんになる予定でした)

 

でも、サマルトリア王妃はきっと「世界中に母ちゃんがいるなんて良いやん♪」って

笑って受け入れるだろうな~と思ったら、話の流れ的に「これもアリかな?」となり

途中で方向転換しました (^_-)-☆

 

この先、世界各地に「カインの母ちゃん」が増えていくのかはまだ未定です ( *´艸`)

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ