ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 140】 そのうちわかる

ムーンブルク戦没者の慰霊地になりそうな丘を訪ねた帰り、おれはナナから今夜は

ムーンペタで泊まっていかないかと誘われ、一緒に教会へと向かった。

 

 

帰る途中に思わずナナを押し倒してしまったことで出来た引っ叩かれた頬の腫れと

ナナに好きな人を聞かないでもらうために口止め料で買ったスライムのぬいぐるみ

 

これら2つの「聞かれたくないこと」について、さらに追及されるのを避けるため

おれは機転を利かせてアルファズルに慰霊地の話題を振ったが、話しているうちに

ムーンペタの奴らに整地を頼めばいいんじゃねえか?」と思いついた。

 

 

おれのとっさの考えはアルファズル・ナナ・リーナに称賛され、夕食は和やかに進み

言い訳を考えるのが面倒くさい話題は避けたまま、つつがなく終了した。

 

 

夕食を終えて片づけも済ませるとアルファズル・ナナ・リーナは自室に戻り、おれは

アルファズルが毒や呪いの治療に使っている寝台の1つを借りて寝ることにした。

 

 

翌朝、おれとナナは昨日ナナが言っていたとおりに母ちゃんの家へと向かった。

 

家に向かう途中で、ナナは『出会いの酒場』に寄っていこうと言い出した。

 

なんでも『出会いの酒場』では日中に軽食やデザートを出す喫茶スペースを設けていて

中でもケーキは絶品だと大好評らしい。

 

 

「あたしも食べてみたいし、そんなに美味しいんならみんなにも食べて欲しいわ。

 手土産に買って行きましょうよ」

 

ナナはウキウキして宿屋に入っていった。

 

 

ケーキのことなんてわからねえから宿屋の入口で待っていると、注文を終えたナナは

小さな箱を手にニコニコして戻ってきた。

 

 

宿屋から母ちゃんの家はすぐそこだ。

 

おれはクリーム色の壁に茶色い屋根の家を見つけると「ここだぜ」とナナに言って

玄関の扉をドンドンと叩いた。

 

 

ほどなくして扉が開き、おれとナナの姿を見た母ちゃんは顔をほころばせた。

 

「まぁ! ホントに来てくれたんだね。いらっしゃい、どうぞ遠慮なくおあがりよ」

 

 

 カインとナナが来てくれて、とても嬉しそうな母ちゃん (≧∇≦)♪

 

 

嬉しそうに笑う母ちゃんに促されて、おれとナナは家の中に入った。

 

「あたし、今からトンヌラたちを迎えに行ってくるわ。すぐそこに住んでるのよ。

 ほら、白い壁の家が見えるでしょ?」

 

 

窓から母ちゃんの指差す方を見ると、通りを挟んだ数軒先に白い壁と桃色の屋根をした

まだ真新しい家が見えた。

 

マリアの趣味で建てた家だろうか? トンヌラには似合わないずいぶん可愛らしい家だ。

 

 

「すぐに戻ってくるから、それまで適当にくつろいでいてよ。この家のものはなんでも

 好き勝手に使っていいからね!」

 

母ちゃんはそれだけ言うと、おれたちの返事も聞かずに家を飛び出して行った。

 

 

「えっと… とりあえず茶でも淹れるか」

 

おれはキッチンに向かうと、近くにあったヤカンに水を入れて火にかけた。

 

 

「あ、あたしもケーキを取り分けるわ」

 

ナナもおれに続いてキッチンに来ると、食器棚から皿を取り出し『出会いの酒場』で

買ってきたケーキを皿に乗せ始めた。

 

 

「こんにちはー」

「こんにちはー」

 

 

  (どうしてもマリアの方が背が高くなっちゃうわ... (;'∀'))

 

 

すぐに玄関から明るい声がして、トンヌラと赤ん坊を抱いたマリアが入ってきた。

2人のあとから母ちゃんも続く。

 

 

「あらあら。悪かったわねー。あんたたちにそんな雑用をさせるだなんて」

 

おれとナナがキッチンにいるのを見て、母ちゃんは慌てた様子でやって来た。

 

 

「へっ、いいさ。おれが美味い茶を淹れてやるからよ、おとなしく座ってろよ」

 

キッチンに入ろうとする母ちゃんを制すると、母ちゃんは嬉しそうにソファに座った。

 

 

ナナがケーキの乗った皿を持って行き、おれがカップを運んでテーブルについた。

 

赤ん坊はゆりかごに寝かされている。

おれたちは茶とケーキを前に簡単に乾杯のまねごとをした。

 

 

「まぁ! これって本当にいつものお茶なの? とってもとっても美味しいわ」

 

マリアが感嘆の声をあげた。

 

 

「同じ茶葉でも淹れ方で大きな違いが出るんだね~。今まで普通に飲んでいたお茶が

 こんなに美味しいだなんて!」

 

母ちゃんも感心しておれを見る。

 

 

「ふふっ。カインは料理がすごく上手だって言ったの、間違いなかったでしょ?」

 

褒められたのはおれで別にてめえのことじゃねえのに、ナナが満面の笑みで言った。

 

 

「ねえ! このケーキ、もしかして『出会いの酒場』で買ってきたんじゃないの?」

 

カップを置いた母ちゃんがケーキの皿を見ながらウキウキした顔で聞いてくる。

 

 

「そうなのよ。ずっと食べてみたいと思ってて、いい機会だから買ってきたの」

 

 

「きゃー、嬉しい~! このケーキ、あたしもずっと食べてみたかったの~」

 

 

女3人はワイワイはしゃぎながら、ケーキにフォークを突きさしている。

 

 

ったく! 太るとか言いながら、女って奴はまったく手が止まる様子もねえんだもんな。

おれは隣に座るトンヌラと視線を合わせると、無言のまま目だけで会話を交わした。

 

 

茶とケーキにそれなりに満足したところで、おれたちはお互いのことを話し始めた。

 

トンヌラとマリアと話すのは初めてだから、簡単に2人のことを教えてもらった。

幼なじみの2人は20歳で結婚して、今は結婚して丸2年になるんだと言う。

 

 

「お互い歳や身分の違いはあるけどよ、気にせず普通に話そうぜ。おれたちのことも

 カインとナナって呼べばいいから」

 

おれが2人に声をかけると、トンヌラとマリアは笑顔でうなずいた。

 

 

「それじゃあ、ナナ。ねえ良かったら、赤ちゃんにミルクをあげてみない?」

 

マリアがナナに話しかけた。

 

 

「えっ? いいの?」

 

 

「ええ、もちろんよ!」

 

 

「ふふっ、いいわね。将来、ナナに赤ちゃんが生まれたときの練習にもなるわよ」

 

女3人は楽しそうにミルクを温めるため連れ立ってキッチンに立った。

 

 

 

「ナナの誕生パーティーのとき、母さんがぼくとカインは似てるって言ってきたんだ」

 

おれと2人になると、トンヌラはおれに身を寄せてひそひそと話しかけてきた。

 

 

「最初はよくわからなくてね。顔も体型もまったく違うだろ? どこが似てるんだって

 母さんに聞いたけど『そのうちわかるわよ』って笑うだけで答えてくれなくてね」

 

そこまで話すと、トンヌラはおれの顔をじっと見てニヤニヤと笑い出した。

 

 

「ナナがドレスに着替えて戻って来たとき、ようやく母さんの言葉の意味がわかった。

 うっとりとナナに見惚れるきみの顔、まるで昔の自分を見てるみたいだったよ」

 

トンヌラはクックと笑っている。

 

 

おれがドレスを着たナナに目を奪われたのは事実だが、あのときは大聖堂にいた全員が

ナナに注目していたはずだった。

 

 

「ちっ! まさか母ちゃんだけじゃなく、おまえにまで見られていたとはな...」

 

顔がカァっと熱くなる。

母ちゃんにもさんざん笑い者にされたが、まさかその息子にまで笑われるだなんて...

 

 

「はははっ。ぼくは『カインとぼくのどこが似てるんだろう』って、きみのことばかり

 見ていたからね。ぼくと母さんぐらいで、他の人は見てなかったと思うよ」

 

トンヌラは慰めるようにおれの肩をポンポンと叩いてきやがった。くそっ!

 

 

「まあまあ、そんなに恥ずかしがるなよ。ぼくも同じ経験があるんだからさ。ぼくも

 マリアにお見合いの話が持ち上がって、マリアのおめかしした姿を見たときには

 周りがいっさい見えなくなって、周りの人の声もまったく聞こえなくなったんだ。

 見惚れるってこういうことかと思ったよ」

 

当時のマリアの姿を思い出しているのか、トンヌラはうっとりしながらつぶやいた。

 

 

 

「うふふ、そうね。あのときのポーッとなったあなたの顔、本当に傑作だったわ」

 

いきなり近くで声がして、おれとトンヌラはその場で飛び上がった。

 

 

「マ、マリア?!」

 

トンヌラと顔を寄せてひそひそ話していたせいで気づかなかったが、いつの間にか

目の前にマリアが立っていた。

 

 

マリアは「しーっ」とおれたちに人差し指を立てて、後ろを振り返った。

 

 

キッチンにある椅子に腰かけたナナが、ひざに乗せた赤ん坊にミルクをやっている。

 

ナナはおれたちの様子が気になるのか、チラチラとこちらに視線を向けてきたが

「ほらほら。よそ見しないの」と母ちゃんにたしなめられ、再び赤ん坊に目を向けた。

 

 

母ちゃんはおれたちにウインクする。

ナナのことはまかせて、あんたたちで好きなだけ話しなさいという意味だろう。

 

その母ちゃんの様子を見て、マリアはホッとしたように話し始めた。

 

 

「お見合いに向けて1番イイ服を着てお化粧もして、トンヌラに見て欲しいと思って

 家を訪ねたのよ。あのときのトンヌラの顔、カインにも見せたかったわ」

 

マリアは楽しそうに笑った。

 

 

「えっ? きみ、ぼくが見ていることに気づいていたの? ずっと母さんとしゃべってて

 全然ぼくの方は見ないし、ぼくのことを気にしている感じはなかったのに...」

 

トンヌラは顔を赤らめながらも、マリアが気づいていたことに驚きの声をあげた。

 

 

「うふふ。女の子はね、自分に向けられた熱い視線に気づいてるわよ。恥ずかしいから

 気づいてないふりしてるだけ」

 

マリアはおれを見て微笑んだ。

 

 

「なんだと? 気づかないふりしてるだけで、本当はわかってるっていうのか?」

 

「え? じゃあナナも、自分を見つめるカインの熱い視線に気づいていたってこと?」

 

おれとトンヌラが同時に尋ねると、マリアは「もちろん」と男たち2人を見て笑った。

 

 

「ねえ、ナナはあれから冷たくなったりした? あなたのこと避けたりしてないわよね?

 もし見つめられて嫌だと感じたのなら、あなたのこと避けると思うんだけど...」

 

マリアがおれに聞いてくる。

 

 

「大丈夫なんじゃない? だってほら、今日も一緒にここまで来たぐらいなんだからさ」

 

おれの代わりにトンヌラが答えると、マリアは「そうね、そうよね!」とうなずいた。

 

 

「ああ、良かったわ。それなら安心して言っても大丈夫よ! カイン」

 

マリアが嬉しそうにおれの肩を叩く。

 

 

「あ? なにを言うんだよ?」

 

 

「なにって、もう! ナナが好きだって本人に言っても大丈夫ってことよ!」

 

マリアはさっきよりもっと強く、おれの肩をバシッと叩いてきた。

 

 

「な、なにっ?!」

 

マリアの言葉に驚いたおれは、思わずテーブルの脚をガンッと蹴ってしまった。

カップがガチャガチャと音を立てる。

 

ナナがこっちを見るのが目の端に映った。

 

 

「うん、いいね! ここは思いきって言っちゃいなよ、カイン!」

 

トンヌラまでが笑っておれの背中を叩く。

 

 

こいつらめ! 夫婦2人して、のんきな顔で馬鹿なこと言い出すんじゃねえよ!

 

おれはへらへら笑いながらおれを叩いてくるトンヌラとマリアをにらみつけた。

 

 

「ねえ、ちょっとあんた! さっきからなに暴れてんのよ。それに言っちゃえって

 いったいなにを言うの?」

 

赤ん坊にミルクをやっていたはずのナナが、おれたちの顔をのぞき込んできた。

 

 

「うわぁ!」

「うわぁ!」

 

おれとトンヌラは驚いて大声をあげた。

 

 

「なによ! 人を化け物みたいに」

 

おれたちの反応にナナはぷぅっとむくれた。

 

 

「お、おまえがいきなり驚かすからだろうが。あ、赤ん坊はどうしたんだよ?」

 

跳ね上がった心臓を押さえながら聞くと、ナナはニコニコしながら後ろを振り向いた。

母ちゃんが赤ん坊をゆりかごに乗せ、ゆらゆら揺らしながらあやしている。

 

 

「ミルクを飲んで満足したのか、あたしのひざの上でウトウトしてたから、ゆりかごに

 寝かしつけるのはおばさんにまかせて来たのよ。ねえ。あんたたち、さっきから

 ひそひそ何を話していたの? それに言っちゃえってあんた、なにを言うの?」

 

ナナがおれに聞いてくる。

 

 

ばっ、ばかやろう!

この場で言えるわけねえだろ!

 

おれは言葉を失い硬直した。

無言のまま答えに窮しているおれを見て、マリアが助け舟を出してきた。

 

 

「まぁまぁ。今は焦らないで、ナナ。そのうちわかるときが来るわ。いつかきっと

 あなたにも『あぁ、あのときトンヌラとマリアが言ってたのはこのことね』って

 わかるときが必ず来るから! ね、そうでしょう? カイン」

 

マリアがおれにウインクしてくる。

 

 

「ああ、そのうちわかるさ」

 

今はそれしか言えねえ。

おれはあいまいに応じた。

 

 

「ふ〜ん…」

 

ナナはおれとトンヌラ、マリアの顔を交互に見ながら、よくわからないといった表情で

困ったようにうなずいた。

 

 

 

 

個人的には、ナナの気持ちはわかってるんだし、ムードがなくても周りに人がいても

「もう言っちゃえばいいんじゃね?」という気持ちもありますが ( *´艸`)

 

せっかくここまで引っ張ってきたのに、トンヌラやマリアたちのいる前で乗せられて

ノリで告白するのはもったいないので「そのうちわかる」と先送り ( *´艸`)

 

 

それにこの場で乗せられて告白することになったら、カインは照れからボケに走って

「ナナが好きだけど、トンヌラも好き」とか言いそうですもん ( *´艸`)

 

そしたらナナを怒らせちゃうし、実際の告白するときにも悪影響が出そう... (-_-;)

「ナナもカインも好き」と言ってナナを怒らせた王子がいましたからね ( *´艸`))

 

 

ここまで長らく引っ張ってきたので、いつかカインにはとっておきの場面を用意して

告白してもらいますよ~ (^_-)-☆

 

 

 

では、次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ