ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 133】 おてんば姫

ムーンペタからサマルトリア城に帰って来たおれは、緑の騎士団の軍医待機所を訪ね

サンチョにクッキーの礼を伝えた。

 

食いしん坊で食べ物に対して鋭い観察眼があると豪語するサンチョは、おれがこっそり

1つだけ「ハート型のクッキー」を焼いていたことを見抜いていた。

 

そのハート型のクッキーをナナが食ったと知り、サンチョは馬鹿みてえに大喜びした。

 

 

ただクッキー食っただけだろ、くだらねえことなのに大げさだぜと思いながらも

サンチョが一緒になってガキみてえに喜んでくれるのは単純に嬉しかった。

 

おれを抱え上げて腰を痛めたサンチョに、礼を兼ねてもう一度ベホイミを唱えてから

おれは軍医待機所をあとにした。

 

 

翌朝、おれが自室のベットの上でまどろんでいると、ドシンという大きな音がした。

続けて笑い声も聞こえてくる。

 

なんだと思い部屋を出て音のした方へ進むと、ティアの部屋の前にある開けた場所で

リオスがごろりと転がっていた。

 

 

床に転がって尻をさすっているリオスの隣で、ティアは片足をあげて立っている。

ティアの前にはティメラウスがいて、変な格好で立つティアを満足そうに見ていた。

 

  ティアを見て満足そうな表情のティメラウス卿

 

 

「なにやってんだ、おまえら?」

 

おれが声をかけると、リオスは助けてくれと言わんばかりにおれに手を伸ばしてきた。

 

手を貸して起こしてやると、床に座り込んだリオスはまだ痛そうに尻をさすっている。

 

 

「なにがあったんだ?」

 

リオスに尋ねると、片足をあげたまま立っているティアが得意気に答えた。

 

 

「リオスさん、あたしのマネしてこの格好をやろうとしたの。そこでバランスを崩して

 尻もちついちゃったってわけよ」

 

ティアは誇らしげに笑っている。

 

 

「そういうおまえは何やってんだ?」

 

おれが聞くと、よくぞ聞いてくれたとでも言いたげにティアの顔がパッと輝いた。

 

 

修行よ、しゅ・ぎょ・う」

 

ティアは嬉しそうに笑う。

 

 

「ああ? 片足あげて立ってるだけでなにが修行だよ」とさらに尋ねようとすると、

リオスがおれの脚を掴んてきた。

 

 

「カイン殿下。あんた、魔法が使えるんっすよね。こんなに痛がってるあっしを見て

 可哀想だ、魔法を使って助けてやろうって気は起きないんですかい?」

 

 

「ははっ。悪りい悪りい。そうだよな。それに、おれはおまえを探してたんだった。

 プレゼントの礼を言おうと思ってよ」

 

おれは笑いながらしゃがみこんだ。

 

 

「なら、なおさら助けろよ~」

 

リオスはおれのふくらはぎをつねってくる。

 

 

おれがベホイミを唱えてやると、痛みが和らいで楽になったのかリオスは「ふ~っ」

その場で大きく息を吐く。

 

おれはリオスの背中をポンポンと叩いてやりながら言った。

 

「あらためてプレゼントの礼を言うよ。ありがとな。あんたが彫ってくれた白い鉢

 すっげえ喜んでもらえたぜ」

 

 

「パーティーのことは、おじょうちゃんからたっぷり話を聞きましたよ。花が咲いてて

 ナナ姫も大喜びだったとか、鉢についてもうっとりしながら見てたとか... ね」

 

リオスはおれにウインクする。おれがうなずくと、リオスは耳元に口を寄せてきた。

 

 

「あっしもガンバった甲斐がありましたよ。ナナ姫との仲が深まって、殿下の

 ムーンブルク行きはこのまま順調に進みそうっすね! あっしの思惑通りに」

 

小声でささやいたとはいえ、リオスのすぐ近くにはティアとティメラウスがいる。

 

 

おれは慌てて2人の様子を探ったが、ティアもティメラウスもどうやら修行とやらに

夢中なようで、2人ともおれたちの話を聞いている様子はなかった。

 

そんなおれの慌てっぷりを、リオスはニヤニヤと笑いながら面白がっている。

 

 

くそっ! 馬鹿にしやがって!

おれはリオスの頭を小突いてやった。

 

 

「なぁ、おまえらの修行ってなんなんだよ。さっきからすげえ嬉しそうだけどよ」

 

リオスを小突いて立ち上がると、おれはティアとティメラウスに尋ねた。

 

修行だと言っているが、さっきからずっとティアが変な格好で立っているだけで

サッパリわけがわからない。

 

 

「ほほほっ。では、殿下もティア姫様の隣で一緒にやってみると良いですよ」

 

ティメラウスが笑いながら手招きして、ティアの隣に立つよう促してくる。

 

 

「同じ格好をすれば良いのか?」

 

おれはティアの隣に立ち、見よう見まねで太ももが腹につくように片足をあげた。

 

 

「ええ、もう少し足を高く上げてください。そして、そのままの姿勢を保つ... うん。

 さすが殿下はリオスとは違いますね」

 

ティメラウスの言葉を聞いて、ティアはおかしそうに笑い声をあげた。

 

 

「なんだ、リオス。おまえはこれでバランスを崩して、尻もちついたってことか」

 

こんなことも出来ねえなんてな。さっきの仕返しとばかりに、おれも笑ってやった。

リオスは腕を組み、フンッと顔を背ける。

 

 

「殿下、笑っていられるのは今のうちかもしれませんよ。では、お2人。その状態から

 曲げている脚を、出来るだけ大きく高く上に振りあげてください。振りあげたあとは

 再び今の状態に戻すのですよ」

 

ティメラウスの声を聞き、ティアは脚を振り上げるとピタリと元の状態に戻る。

振り上げたティアの脚は真っ直ぐに伸び、頭に届くほどの高さだった。

 

 

この状態から脚を振り上げる~?

 

おれもやってみようとしたが、脚を高く上げようとすると上体がふらつく。

とても上にはあげられない。おれには脚を前に伸ばすのが精いっぱいだった。

 

 

「大丈夫ですよ、殿下。普通の人はそんなものです。バランスを崩して倒れないだけ

 まだ殿下は優秀な方ですよ。こうやって実際にやってみると、姫様がどれほど

 すごいかよくわかるでしょう」

 

ティメラウスの言葉に、ティアは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。

 

 

...... 悔しいが、確かにティアはすごい。

 

 

「少し前、姫様に剣術を教えて欲しいと頼まれて、剣を振るう前にはまず基本的な

 体力づくりからだと思って、この運動を始めたんですけどね。いやはや驚きました。

 まさか姫様に武闘家の素質があったとは。人は見かけによりませんね!」

 

生粋の戦士であるティメラウスは、秘めた武術の才能を発見してよっぽど嬉しいのか

ティアを見つめて微笑んでいる。

 

 

「ぶ、武闘家だと?!」

 

ティアには似つかわしくない意外すぎる言葉が出て、おれは目を丸くした。

 

おれの驚く顔を見て、ティアは得意満面でとびっきりの笑顔を見せた。

 

 

「ねえ。すごいでしょ、おにいちゃん! あたし、このまま武闘家の修行を重ねて

 いつか武術を試す冒険に行きたいわ!」

 

ティアはキラキラと目を輝かせている。

 

 

「ぼ、冒険だと?! 馬鹿なこと言うなよ。今は平和になったけど、フラフラと出歩いて

 おまえにもしものことがあったら、親父や王妃が悲しむだろうが!」

 

 

この話の流れはマズい。

こいつならやりかねないぞ!

 

 

「そうですとも、姫様! 武術を学ぶといっても、姫様は女の子なんですし。私は

 てっきり軽い運動か、せいぜい護身術ぐらいの気持ちでいたんですが...」

 

さっきまでティアの才能を誇らしく感じていたティメラウスも、冒険に出ると言われて

さすがに焦ったようで、慌てふためきながらおれに加勢してティアを止めに入った。

 

 

「あら、ティメラウス。あたしには類まれなる才能があるって絶賛してたじゃない。

 その優れた才能を護身術なんかで終わらせたんじゃ、もったいないでしょ?」

 

ティアはティメラウスに言い返してくる。

 

 

まずいぞ。ティアはもうすっかり武術を試す冒険に出る気になってるじゃねーか!

 

 

「いや、確かに姫様の素晴らしい才能は認めますが。冒険となると話は別ですぞ!」

 

ティメラウスも頑として譲らない。

 

 

「ティメラウス! こいつに余計なこと教えるんじゃねえぞ。強力な蹴りとか覚えたら

 こいつ、壁を蹴破りかねねえ!」

 

おれはティメラウスに訴えた。

 

 

「あら、いいこと聞いたわ。たとえ冒険なんて行かせないって閉じ込められたとしても

 あたし、この鋭く力強い蹴りで、壁を蹴破って脱出できるかも!」

 

ティアはコツをつかんだのか、上体は微動だにせずに鋭い蹴りを繰り出した。

 

今回は空振りだったが、あの勢いで壁を蹴り続けたら本当に蹴破れるかもしれねえ!

 

 

「やめろー!!」

「やめろー!!」

 

蹴りの練習を続けるティアを前に、おれとティメラウスの叫びが虚しくこだました。

 

 

 

 

王妃に会う前にまずはリオスに会わせようと思って、リオスと会う展開を考えていたら

なんか既視感のある話に... ( *´艸`)

 

武術に優れたおてんばなお姫様は、他の世界線にも存在するみたいですが... (;'∀')

どうやらティアにも「武闘家」としての素質がありそうです☆

 

「あたし、武術を試す冒険に出たい」という姫様を必死で止める青年とおじいの構図は

やっぱりどこかで見覚えがありますね (ティメラウスの画像はブライですし ( *´艸`))

 

ちなみに、ティメラウスの画像は「緑の服を着たおじい」の条件で適当に選びました。

今回の話は完全な思いつきで、最初から狙っていたわけではありませんよ。

(適当に「ブライ」を選んだだけなのに、うまくハマって嬉しいです ( *´艸`)♪)

 

現段階ではおにいちゃんが青年役を演じましたが、ティアが冒険に行くのを止めつつ

結局は一緒にお供することになる青年の登場は、この先あるのでしょうか ( *´艸`)?

 

期待してお待ちください (^_-)-☆

 

 

さて。リオスにもお礼を言えたので、次こそ王妃に会いに行きたいところですね!

次回こそは会えるでしょうか (;´∀`)?

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ