ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 134】ベタ惚れの証?

「剣術を学びたい」とティメラウスに申し出て、体力づくりの稽古を始めたティアは

「武闘家の素質がある」とティメラウスに認められて、すっかり調子づいちまった。

 

「あたし、そのうち武術を試す冒険に出たいわ」とわけのわからねえことを言い出し、

おれとティメラウスの反対の声も無視して、さっきから蹴りの練習を続けている。

 

 

「坊ちゃん! たしか王妃様が裏庭にいらっしゃったはず。私はこれから裏庭に行って

 王妃様にこの件を報告してきます!」

 

ティメラウスはおれに言うと、返事を待たずに裏庭に向かって走って行った。

 

 

以前、ティメラウスはおれのことを「坊ちゃん」と呼ぶこともあったが、おれが

ハーゴン討伐の旅を終えて帰って来てからは「殿下」と呼んで敬意を払っていた。

 

「坊ちゃん」と呼びかけてきたことに、ティメラウスの激しい動揺が感じられる。

 

 

おれはどうする? 親父のところへ報告に行くか? ... いや、さすがにそれは大げさか?

 

どうしようかとあたりを見回すと、リオスが床にごろりと寝転んで鼻をほじりながら

おれの様子をニヤニヤと眺めていた。

 

 

「ずいぶんと余裕があるじゃねえか」

 

おれはリオスをにらみつけた。

 

 

「あっしは根無し草の風来坊っすから。おじょうちゃんが冒険に出たいというのを

 止める権利はないっす。それに冒険に出ると言ったって、心配することないっしょ。

 1人で行くわけじゃないだろうし、行っても『勇者の泉』あたりでしょうよ」

 

リオスは今度はティアを見て笑っている。

 

 

「勇者の泉?」

 

おれが首をかしげると、脚を繰り出して蹴りの練習をしていたティアが慌てて止めた。

 

 

「リオスさんったら、変なこと言わないで!」

 

ティアはこっちに走ってくると、リオスにこぶしを突き出した。心なしか顔が赤い。

 

 

「うへぇ~。逃げろ~!」

 

リオスは頭を抱えながら逃げていく。

 

 

「あ! おい、待てよ!」

 

リオスはそのまま逃げていき、ティアもリオスを追いかけて走って行っちまった。

 

 

どうやらリオスがなにか知ってそうだ。

ティアが本当に冒険に出るというのなら、リオスを捕まえて事情を聞いてみよう。

 

 

ティメラウスが王妃のところへ向かい、ティアとリオスも走り去っていった。

 

とりあえず、ティメラウスから話を聞いた後の王妃の反応が気になるし、王妃には

花の礼も言わなくちゃならねえからな。

 

おれは裏庭へと向かった。

 

 

裏庭に行くとティメラウスの姿はなく、王妃が鼻歌まじりに花の剪定をしている。

 

 

「ティメラウスはどこ行ったんだ?」

 

おれが王妃に声をかけると、王妃は歌い続けながら機嫌よく振り返った。

 


「ティアのことを王様にも報告しなきゃって言って、急いで謁見の間に向かったわよ。

 歳を取ったせいかしらねぇ? ティメラウスもすっかり心配症になっちゃって」

 

王妃は平然と笑っている。

 

 

「へっ、あんたは母親なのに、ティアのことまったく心配する様子はねえんだな」

 

けろりとした王妃におれは呆れた。

 


「ティアのこと? 心配いらないわよ。どうせあの娘のことだから、お供もいないのに

 1人だけで行くことはないだろうし、行ったところでどうせ『勇者の泉』でしょ。

 道中もアリとネズミぐらいしかいないわよ。洞窟の中にいる毒蛇が少し厄介だけど、

 連れの相手がなんとかするでしょうよ」

 

王妃は楽しそうに笑った。

 

 

「勇者の泉? あんたまでそんなこと言うのか? 偶然とは思えねえな。おい、あんたら

 いったいなにを知ってんだよ?」

 

リオスだけじゃなく、王妃まで「勇者の泉」と言ったことにおれは驚きの声を上げた。

 


「ん? あたし以外に誰が言ってるの?」

 

 

「リオスだよ。さっき同じことを言ってたぜ。ティアは1人で行かねえだろうし、

 どうせ行っても勇者の泉だってな」

 

王妃は納得とばかりにうなずいた。

 


「ふふっ、リオスなら言いそうね。さすが盗賊! 目ざといところがあるわ」

 

 

「なぁ、さっきから1人でブツブツなに言ってんだ? おれにも説明しろよ!」

 

王妃が1人で笑ってるのに腹が立ってきた。

 

 

「まぁまぁ待って。こういうことはね、機が熟すまでは周りが騒いじゃいけないのよ。

 時期が来たらちゃんとあんたにも話すからさ、しばらく静かに待ってなさいよ。

 ところであんた、ティアから話を聞いたわよ。すごいじゃないの!」

 

王妃はいきなりおれの肩を叩いてきた。

 

 

「急に話変えんなよ。すごいって何がだ?」

 

煙に巻かれたような言い回しから、突然「すごい」と言われてもサッパリわからねえ。

 

 

「プレゼントした花、ナナが見たときには咲いてたんだって? すごいじゃないの!

 いったいどんな魔法を使ったのよ」

 

王妃は目を輝かせて、興奮した様子でおれの服をつかんでくる。

 

 

「おれ? なにもしてねえよ。花が咲いていたのは、あんたの力じゃねえのか?」

 

おれは花のことはさっぱりわからねえし、花を咲かせる方法なんて知るわけがない。

 

 

てっきり植木鉢の土に王妃が何かしらの手を加えたか、花を包んだあの薄桃色の布に

植物の成長を促進させるような秘密があると思ってたのに、違うのか?

 

 

「あたしが魔法なんて使えるわけないじゃない。もし花を咲かせる魔法を知ってたら

 今頃ここ一面は満開になってるわよ。… ってことは、何も手を加えてないのに

 あの花は咲いたってこと? すごいわね。ふふっ、あんたの愛の力なんじゃない?」

 

王妃はひじでおれを突いてきた。

 

 

「けっ、ばーか。なにくだらねえこと言ってんだ。まぁ、あんたの力じゃないにせよ

 花が咲いてて面目は保たれたぜ。あんたが世話してくれたおかげだからな、一応

 礼は言っとくよ。ありがとな」

 

おれから礼を言われることなんてめったにねえからか、王妃は照れたように微笑んだ。

 

 

照れ笑いする王妃の顔をあらためてちゃんと見て、おれは変化に気づいた。

 

「あんた、ティアに美容液もらったのか?」

 

 

王妃の顔は透明感が増し、艶々している。

 

 

「ティアがお土産にくれたからさっそく試してみたの。ふふっ、綺麗になったでしょ」

 

王妃は嬉しそうに頬に手を当てた。

 

 

「美容液を塗ってから親父に会ったか?」

 

 

王妃の答え次第で、今までずっと疑問だったことに答えが出るかもしれねえぞ!

おれは勢い込んで尋ねた。

 

 

「ティアはあたしたち2人に美容液を持ってきてくれたのよ。だからティアと一緒に

 王様にお会いして、その場で王様と2人で塗り合ってみたのよ」

 

王妃は年甲斐もなく頬を染めている。

 

 

「それで? 美容液を塗った後、親父の顔を見てどう思った? 変じゃなかったか?

 やたらとカッコよく見えるとか、妙にキラキラしてるとか、輝いて見えるとか...」

 

早口でまくしたてるように言うおれに、王妃は不思議そうな顔で首を傾げた。

 

 

「王様はいつだってとってもカッコよくて素敵じゃない。美容液を塗らなくたって

 いつもキラキラ輝いているわよ」

 

王妃は親父の顔を思い浮かべながら、うっとりした恍惚の表情を浮かべた。

 

 

息子のおれからしたら非常に気持ち悪い話だが、王妃は親父にベタ惚れだ。

「世界一カッコいい王様」「最高に素敵な旦那様」といつもおれに言ってくる。

 

 

もし『泡美容』を塗った王妃が「王様がキラキラまぶしくて直視できない」と言えば

おれに起きた異変に答えが出ると思った。

 

 

おれが想定した答えは ...... そ、その... なんだ、相手のことがすごぉく... その... す、す

好きなときに、相手の顔がキラキラとまぶしいぐらい光輝いて見えるんじゃねえか?

 

 

「親父の顔は普通に見れたのか? まぶしくて見れないなんてことなかったのかよ?」

 

おれは再び尋ねてみた。

 

 

「王様は本当にとってもカッコイイから、あたしは普段から見惚れちゃうのよね~」

 

王妃はデレデレ笑っている。

 

 

「だから! 泡美容を塗って、今までと変わりなかったのかって聞いてんだよ!」

 

王妃がまともに答えてくれないことに腹が立ち、おれは声を荒らげた。

 

 

「あんた、さっきからなにを言ってるの? あんたのお父様はいつだってカッコイイ。

 美容液を塗ろうが塗るまいが、王様の素晴らしい魅力はなにも変わらないわよ」

 

おれが怒ってる理由がわからないらしく、王妃はきょとんとした顔でおれを見てきた。

 

 

「親父は? 親父も変わらなかったか? あんたを見てまぶしそうじゃなかったか?」

 

親父も王妃のことはちゃんと大事にしている。2人は仲の良い夫婦だからな。

王妃はなにも感じなくても、もしかしたら親父には異変があったかもしれねえ。

 

 

「うふふ。王様はあたしを見て『綺麗になったな』って言ってくださったわよ」

 

王妃は両手を頬に当て、顔を紅潮させて少女のようにはにかんだ笑みを見せた。

 

 

「まぶしそうとか、あんたの顔を直視できないみたいな感じはなかったか?」

 

今までの話っぷりで既に可能性は低そうだが、念のため聞いてみる。

 

 

「王様はいつものように、あたしを見つめながら穏やかに微笑んで『綺麗だ』って

 言ってくださったわよ。だからあたしも『王様もとても素敵です』って答えてね。

 2人で顔を見合わせて微笑みあったのよ。それはそれは幸せな時間だったわ」

 

 

おれは深いため息をついた。

聞きたくもねえ両親のノロケ話を聞かされた上に、なんの収穫もなかったんだからな。

 

 

「なによ。自分がナナと愛を語り合えないからって、ため息つくことないでしょ!

 あんたが聞いてくるから答えただけなのにさ。それに質問の内容も意味不明なのよ。

 まぶしい? 直視できない? あんたがなにを言ってるのか、サッパリわからないわ」

 

これまでの答えっぷりと今の王妃の顔を見る限り、本当にわかってないようだ。

 

 

「わからねえなら別に良いよ。おれの話は気にすんな。じゃあな」

 

おれは不思議そうにおれを見ている王妃をその場に残して裏庭から立ち去った。

 

 

 

どういうことだ?

すごく好きな相手の顔がキラキラと光輝いて見えるわけじゃねえのか?

 

王妃が親父に惚れてるのは間違いない。

それなのにまぶしくないだと?!

 

ある程度の確信を持って聞いたのに思惑が外れて、おれは途方に暮れた。

 

 

くそっ! やっぱり事の真相はオーウェンに聞きに行くしかねえようだな。

 

 

 

 

謎が深まりましたね ( *´艸`)

 

オーウェンがくれた『泡美容』という美容液を塗ってから、ナナが光輝いて見えて

まぶしくて直視できないカイン。

 

「すごく好きな相手の顔がキラキラ輝いて見えるのでは?」という仮説を立てて

王様のことが大好きな王妃に尋ねましたが、ただノロケ話を聞かされただけ...  (;´Д`)

 

王妃の話によれば、王妃にも王様にも特に異変は起きていないようです (-_-;)

 

 

では、なぜカインはナナがまぶしく見えるようになったのでしょう?

次回、オーウェンに聞きに行きますよ!

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ