ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 132】 坊ちゃん

ナナの誕生パーティーを大成功で終えて、おれとティアはサマルトリアに帰って来た。

 

 

おれは、ナナへのプレゼントを用意するのに協力してくれた王妃・リオス・サンチョに

礼を言いに行こうと思っていたが、王妃に会いに行くのは妹のティアに先を越された。

 

ひと休みしてから王妃に会おうと仮眠したところ、昨夜からの疲れがたまっていて

うっかり寝過ごしちまった。

 

 

おれは今日のうちに王妃に会うのは諦め、緑の騎士団が明日には城に帰ってくると

思い出し、サンチョに会うなら今日だと思って軍医の待機所へと向かうことにした。

 

 

あいつ、今日は何を食ってやがる? と思いながら小窓を覗くと、サンチョは美味そうに

骨付き肉にかぶりついていた。

 

 

 今日も元気にもぐもぐタイム中のサンチョさん ( *´艸`)

 

 

「ははっ。モルディウスが帰ってくる前に、贅沢なもん食ってるじゃねえか!」

 

おれが笑いながら軍医待機所の戸を開けると「ああ、坊ちゃん! おかえりなさい」

サンチョも笑顔で応じた。

 

 

サンチョは肉を食いながら、少し身体をずらしておれが座る場所を開けてくれた。

ソファに座ると、目の前にある骨付き肉からいい香りが漂ってくる。

 

 

帰ってからずっと寝てて何も食ってない。

おれはサンチョが勧めてくれた骨付き肉を1本もらって、勢いよくかぶりついた。

 

 

「あ、あげるのは1本だけですよ!」

 

おれの旺盛な食欲を見て、サンチョは慌てて骨付き肉が乗った皿をおれから遠ざけた。

 

 

「わかってるよ。つい匂いにつられて1本もらっただけで、おまえの貴重な食料を

 奪いに来たんじゃねえ。おれは礼を言いに来たんだからな」

 

おれは、サンチョと一緒につくったクッキーがみんなに大好評だったことを伝えた。

 

 

「へへっ。あのクッキーは、私も美味しく焼けたと思っていたんでね。みなさんに

 喜んでもらえて良かったですよ。あ、坊ちゃん。お茶をどうぞ。この骨付き肉は

 もうあげませんが、お茶なら何杯でも飲んでいいですよ。お茶をいっぱい飲んで

 空腹をごまかしてください」

 

サンチョはそう言いながら、デカい湯吞に茶をなみなみと注いで渡して来た。

 

 

「茶はもらうけど、茶でごまかさなきゃいけねえほど腹は減ってねえよ。それに

 茶を飲んで空腹をごまかすだなんて。おれはそんなことめったにねえな」

 

おれはサンチョから湯呑を受け取りひとくちだけ飲んだ。王妃が淹れる茶には負けるが

この茶もなかなか美味い。

 

 

「えっ、坊ちゃんはそうなんですか? 私はいつも、お茶や飲み物でお腹を膨らませて

 空腹をごまかしているんですけどね。うーん、私が食いしん坊だからですかね」

 

サンチョは首をかしげている。

 

 

「食いしん坊だという自覚はあるんだな。まぁ、この腹を見ればさすがにわかるか」

 

おれは笑いながらサンチョの丸々とした腹をポンッと叩いてやった。

 

 

「坊ちゃん、私の腹の話なんてどうでもいいんですよ。さっきの話に戻しますが、

 坊ちゃんがプレゼントしたクッキーがみなさんに喜ばれて良かったですね」

 

サンチョは新しい骨付き肉にかぶりつきながら、ニコニコして言った。

 

 

「ああ、ありがとよ」

 

おれは答えながら茶を口に含んだ。

 

 

「坊ちゃんの大切なハートは、どうなりました?」

 

サンチョが骨付き肉を食いながらサラッと言ったので、おれは思わず茶を吹き出した。

 

 

「ハッ、ハート?!」

 

なんでおまえがそれを知ってるんだ?

 

 

おれは動揺しつつ服の袖で口元をぬぐった。

 

そんなおれの動揺が目に入らないかのように、サンチョは口をもぐもぐさせながら

慣れた手つきで机の上を拭いた。

 

 

「坊ちゃん、さっきも言ったでしょ? 私は食いしん坊だって。食いしん坊はね

 食べ物については、驚くほどよく目を光らせているんですよ」

 

最後の骨付き肉を食い終えて、サンチョは満足そうに腹をさすりながらおれを見た。

 

 

「クッキーを焼いているときに、坊ちゃんが片隅にこっそりハート型のクッキーを

 並べているのはもちろん見ましたよ。1個だけね。ああ、あれは坊ちゃんの大切な

 ハートなんだな。坊ちゃんのハートが、ちゃんと意中のお相手に届くと良いなって

 ひそかに願っていたんですよ」

 

サンチョは優しい目でおれを見つめる。

 

 

「ナナ様は優しいから、きっとクッキーも1人占めしないでみんなに配るんだろうな。

 そうなったら、坊ちゃんの大切なハートはちゃんとナナ様に届くのかなってね。

 坊ちゃんが帰って来るまで、私もずっとハラハラしてましたよ」

 

 

「おまえには全部バレてたのか...」

 

おれがつぶやくとサンチョはうなずいた。

 

 

「ハート型のクッキーを誰が食べたのか。結果がわからないので、聞くのも悪いかなと

 思ったんですけどね、さっきここに来たときの坊ちゃんの表情を見て、ああこれは

 聞いても大丈夫だって思ったんですよ」

 

サンチョは二ッと歯を見せて笑った。

 

 

「おれの表情? それでわかるのか?」

 

 

「えへん。坊ちゃん、私はこれでも軍医なんですよ。人の表情や顔色の変化には常日頃

 意識を向けているんです。それに坊ちゃんとは長い付き合いですよ。なんせ、私は

 坊ちゃんのおしめも替えてあげたことあるんですからね。坊ちゃんの仕草や表情で

 何があったかはすぐにわかりますよ」

 

せり出した腹をさらに前に突き出し、サンチョは豪快に笑った。

 

 

「坊ちゃんの大切なハートは、ちゃんとナナ様に届いた。そうですよね?」

 

サンチョがニコニコしておれを見てくる。

 

 

ここまでバレてたらしょうがねえ。

おれは素直にうなずいた。

 

 

「わ〜い、ハートが届いたぞ〜! やったぁ~!」

 

サンチョはおれの腰のあたりに腕をまわすと、おれを勢いよく持ち上げた。

 

 

「あっ、おい、なにするんだ!」

 

 

「坊ちゃん、バンザ~イ! アッ、イタタタタ....

 

満面の笑みでおれを抱えあげたサンチョの表情が、一瞬のうちに苦悶に変わった。

おれをソファの上に落とすと、サンチョは四つん這いになって腰に手をやった。

 

 

「おい、大丈夫かよ」

 

 

「アイタタ~。調子に乗って腰を痛めちゃいました。坊ちゃん、大きくなりましたね。

 すっかり重くなっちゃって...」

 

サンチョはうずくまりヒーヒー言って腰をさすりながら、涙目になっている。

 

 

「馬鹿か、おまえは。おれのこといくつだと思ってんだよ。おれはもう17だぞ。

 立派な大人だぜ。そんな奴をいきなり持ち上げたら、腰を痛めて当然だろうが」

 

おれはベホイミを唱えてやった。

 

 

「ふ~。ありがとうございます。いやぁ、すいませんね。坊ちゃんのハートが

 ナナ様に届いたと聞いたら、なんだかすっごく嬉しくなっちゃって、つい... ね」

 

ベホイミで痛みが和らいだのか、サンチョはホッとした様子で上体を起こした。

 

 

サンチョはおれがガキの頃、何かが出来るようになったとか、何かが上達したとか

おれに嬉しいことがあるたびに、おれを高く抱き上げて一緒になって喜んでくれた。

 

今もその癖が出たのだろう。

 

 

「だとしても行動する前に歳を考えろよな。おれが17ってことは、おまえも

 立派なおっさんなんだからよ」

 

おれはサンチョに手を貸してやった。

 

 

サンチョはおれの助けを借りながら隣に座ると、穏やかな笑みを浮かべた。

 

「良かったですね。坊ちゃん」

 

 

「そんな騒ぐことじゃねえだろ。ただナナがハート型のクッキーを食っただけだ」

 

サンチョがこんなしょうもないことで、おれよりもはるかに大喜びしてるのがなんだか

照れ臭くなって、おれは目をそらした。

 

 

「何を言うんですか。たった1つの坊ちゃんのハートですよ。その1つをナナ様が

 食べてくれたんだから。坊ちゃんは、もっと喜ぶべきです!」

 

サンチョはおれの頬を両手で挟んで、強引に自分の方を向かせる。

 

 

「だから! おれをいくつだと思ってんだ。おれはもうガキじゃねえんだぞ!」

 

サンチョの肉厚の手で頬をむにゅっと挟まれて、おれは抗議の声をあげた。

 

 

「坊ちゃんはいくつになっても坊ちゃんです! これからもずっと坊ちゃんです!」

 

おれの頬をさらに強くギュッと挟み込みながら、サンチョはおれを見て笑った。

 

 

ガキの頃、おれが言うことを聞かないとサンチョはこうやっておれの頬を手で挟み

自分の方を向かせて説教していた。

 

 

サンチョにはこれまで何度も抱き上げられたし、何度も頬を挟まれてきた。

 

 

何度も何度も同じことがあったな...

おれも自然と笑いがこぼれた。

 

 

サンチョはおれの頬を挟んだまま、おれをまっすぐに見てもう一度言った。

 

「本当に良かったですね、坊ちゃん!」

 

 

「ありがとな、サンチョ」

 

おれも頬を挟まれたまま答えた。

 

 

 

 

サンチョはドラクエ5のキャラで、主人公を可愛がる優しい召し使いさん (*´ω`*)

可愛くて好きなキャラなので、創作物語でも登場させることにしましたヾ(*´∀`*)ノ

 

ここでは、カインが大好き (*´ω`*)

いくつになっても「可愛い坊ちゃん」としてカインを可愛がる優しいキャラです♡

 

 

子どもの頃からの癖で、カインを抱き上げようとして腰を痛めちゃったり ( *´艸`)

子どもの頃からの癖で、カインを諭すときはいまだに頬をムギュッとしたり ( *´艸`)

 

カインが幼い頃からサンチョにずっと可愛がられてきた歴史を感じる話になったので

個人的には大満足です (*´ω`*)♡

 

 

サンチョへのお礼参りは、ほんわかした空気のまま和やかに終了~ヾ(*´∀`*)ノ

 

次は王妃様でしょうか?!

 

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ