ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 121】 母心

おれがナナに贈った花。

 

本来ならまだ咲く予定ではない花が、なぜかナナが包みを解いたときには咲いていて、

おれは「ナナのために種から花を咲かせ、さらにその花を最高の鉢に入れて贈った」

ムーンペタの住民から称賛された。

 

ムーンペタの住民だけでなく、もちろんナナもおれのプレゼントに大喜びしてくれた。

「鉢も花も大切にして、立派な花を咲かせるわ」とおれに微笑みかけてくれたのだ。

 

 

ナナへのプレゼント渡しもすべて終わり、パーティーも散会の時間になった。

 

「本格的な清掃はまた明日やることにして、今日はこのまま解散にしましょう」

おれたちを代表して王子に宣言してもらい、住民たちはぞろぞろと帰っていった。

 

 

大聖堂に残ったおれたちはというと、オルムとレオンが「飲み足りねえ」と言うから

とりあえず残った料理を1箇所にまとめるなどの簡単な片づけをして、その料理と酒で

もう少し飲み直すことにした。

 

ムーンペタの住民たちはみんな帰ったと思っていたのに、親切なおばさんだけは残って

おれたちの片づけを手伝ってくれた。

 

 

「さてと。片づけもそれなりに終わったことだし、あたしも帰ろうかね」

 

おばさんは周囲を見回しながら言った。

 

 

「なんだよ、もう帰るのか? おれたちと一緒に、もう少し飲んでいかねえか?」

 

「そうよ! 片づけまでしてもらったのに、このまま帰るだなんて申し訳ないわ」

 

おれとナナで引き留めようとしたが、おばさんは首を横に振った。

 

 

「こんな時間に飲み食いしたら大変よ。まぁ、気にしたところで手遅れなんだけどね」

 

おばさんは笑いながら腹をさすった。

 

 

 

「ここまで手伝ってもらった礼も兼ねて、帰ると言うならおれが家まで送っていくぜ。

 いくら慣れた道とはいえ、夜道を1人で歩くのはあぶねえからな」

 

おれがそう言うと、おばさんは少し照れたように顔を赤らめた。

 

 

「まぁ、こんなおばさんのあたしをレディ扱いしてくれるのかい? 光栄だね。しかも

 サマルトリアの皇太子さまに送ってもらえるなんて、こんな名誉なことはないよ」

 

 

「じゃあ、決まりだな。おまえら、適当に飲んだり食ったりしてろよ。おれさまが

 ちゃんと家まで送ってくるからよ」

 

おれは王子たちに声をかけて大聖堂を出た。おばさんもあとからついて出てくる。

 

 

「2人とも、気をつけてね」

 

入口まで出てきた王子とミリアに見送られて、おれとおばさんは並んで歩きだした。

 

 

「あたしの家は、宿屋の近くなんだよ。ちょっと遠いんだけど、大丈夫かい?」

 

おばさんは申し訳なさそうに言った。

 

 

「宿屋の近くなら、教会からはかなり遠いじゃねえか。1人で帰ったりして、途中で

 何かあったら大変だぜ。なおさら、おれがいて良かったじゃねえか!」

 

おれがえへんと胸を張ると、おばさんも嬉しそうに笑ってうなずいた。

 

 

そこから、ふと会話が途切れる...

 

今日、おばさんにはすごく世話になった。

 

特におれがナナにプレゼントを渡すときは、おばさんが上手に会話をつないでくれた。

盛りあがったのはおばさんのおかげだ。

 

 

この件で、おばさんに礼を言いたいところだったが、上手く言葉が出てこなかった。

 

なんと礼を言うつもりだ?

ナナへのアピールに協力してくれてありがとう? おれを褒めてくれてありがとう?

 

けっ! 頭でもおかしくなったか? そんな馬鹿なこと、口が裂けても言えねえぜ!

 

 

わざわざ礼を言うのも変な気がするし、かといって何も触れないというのも変だ。

 

何を言うべきかと考えながら歩いていると、隣にいるおばさんがぷっと吹き出した。

おばさんはそのまま立ち止まり「あはははー」と腹を抱えて笑っている。

 

おばさんがいきなり笑い出した理由がわからず、おれも立ち止まって様子を見ていた。

 

しばらくすると、おばさんは目尻に浮いた涙をぬぐいながら、ゆっくり歩き始めた。

なにがなんだかわからねえが、おれもおばさんに歩調を合わせて隣を歩く。

 

 

「ごめんなさいね。普段はおしゃべりなくせに、気の利いたことを言おうとすると

 途端に照れて言えないところまで、息子にそっくりだからさ。もう可笑しくって!」

 

おばさんはおれを見てまた笑っている。

 

 

「息子? そっくり? なんのことだ?」

 

おばさんの話がサッパリわからねえ。

 

 

「あたしにはね、トンヌラっていう息子がいるんだよ。あんたよりちょっと歳上のね」

 

笑いがおさまってきたおばさんは、ふーっと大きくひと息ついた。

 

 

トンヌラ? 変な名前だな」

 

 

「あら、そうかい? あたしは、男らしくてカッコイイ名前だと思うんだけどね~。

 まぁ、とにかく。息子のトンヌラと、あんたが見れば見るほどそっくりなんだよ。

 だからもう、なにもかもが可笑しくってね~。あっ、そうそう。トンヌラは今日の

 パーティーに来ていたよ。あたしの近くにいたんけど、気づかなかったかい?」

 

 

そう言われて思い返してみると、おばさんの近くには、おばさんとよく似た体形の

すんぐりした男がいたような気がするな。

 

 

  おばさんの息子・トンヌラ君(装備は無視してくださいな ( *´艸`))

 

 

おれがその男で間違いないか尋ねると、おばさんは「そうそう」とうなずいた。

 

 

「あんなチビの太っちょと、おれが似てるって言うのか? 全然、似てねえだろ?」

 

おれが聞きかえすと、おばさんは笑いながら首を振った。

 

 

「あははは。ごめんごめん、顔や体型は似てないよ。あんたはスリムで男前だもんね。

 似てるのは性格のことさ。性格が本当によく似てるんだよね。じゃあさ、あんた。

 トンヌラの隣にいた、可愛らしい女の子のことも覚えているかい?」

 

おばさんが再び尋ねてくる。

 

 

あらためて思い返してみた。

そういえば、トンヌラとかいう男の隣には、金髪の綺麗な女がいたような気がする。

 

  「呪文はまかせて」のセリフは見なかったことにしてください ( *´艸`)

 

 

おれがその女のことも覚えていると言うと、おばさんは満足そうにうなずいた。

 

 

「あの子はマリアって言うんだよ。うちのトンヌラはね、子どもの頃からずーーっと

 幼なじみのマリアのことが好きだったんだよ。でも、トンヌラったら意地っ張りで

 なかなか認めようとしなくってね、あたしはいつもハラハラしていたってわけさ」

 

おばさんは意味ありげな視線を向けてきた。

 

 

「それが、おれと似てるってか?」

 

おれがチッと舌打ちすると、おばさんは「ふふふ、似てるだろ?」と笑った。

 

 

「なあ。いつ、気づいたんだよ?」

 

今さら否定したところでムダだろうと諦めて、おれはおばさんに尋ねた。

 

 

「1番最初に、あれ? と思ったのは、ナナ姫が大聖堂の扉を開けたときさ。あんた、

 誰よりも早くナナ姫の隣に行って、嬉しそうに笑ってたじゃないの。嬉しそうなのに

 口では『また1つババアになった』とか言っちゃってさ。もう、照れ隠しかなんだか

 知らないけど、可愛いんだから~」

 

おばさんはひじでおれを突いてくる。

 

 

くそっ! そんなに早くから怪しまれていたなんてな。全然気づかなかったぜ。

 

 

「そのあとも、美容液を塗って綺麗になったナナ姫を見てうっとりしちゃってるし

 姫様がドレスに着替えて戻って来たときなんて、女神様でも見たのかというぐらい

 恍惚の表情を浮かべちゃってさ。妹ちゃんに話しかけられても答えられないぐらい

 見惚れちゃってるんだもの。ああ、これは間違いないって確信したわよ。あはは~」

 

おばさんはまた大笑いしだした。

 

 

なんてこった。そんなところまで見られていたってことかよ!

 

 

「それで、おれがプレゼントを渡すときは、おれとナナのそばにいたってわけか」

 

 

「そうよ。まるで昔の息子を見ているようで、放っておけなくってね。少しでも何か

 手助けできないかってさ。まぁ、近くにいたところで、大した力にはなれないと

 思っていたけど、あたしも少しは役に立ったよね。あのハートのクッキーとか」

 

おばさんはくっくっくと笑った。

 

 

まさか、あれまで見ていたのか!

 

 

「ナナ姫がクッキーを配っているとき、あんたが妙にソワソワしてるように見えてね。

 せっかく姫様のために焼いたクッキーなのに、他のみんなに食べられちゃうのは

 嫌なんだと思って止めたんだよ。そしたら、もっと別の理由があっただなんてね!

 ふふ。ナナ姫がハートのクッキーを食べてくれて、良かったじゃないの。あたしも

 わかったときは嬉しかったわよ」

 

 

そこまで見られていただなんて...

 

おれは恥ずかしいやら情けないやらで、その場でがっくりと肩を落とした。

 

 

「別に恥ずかしがることないじゃない。人を好きになるのは素敵なことなんだからさ。

 あたしはなにも、あんたに恥をかかせたくてこんなことを言ってるんじゃないよ。

 あんたにも、あたしの息子のように幸せになって欲しいって思ってるだけさ」

 

おばさんはおれの背中をポンポンと叩いた。

 

 

 

おばさんの言葉を聞いて思い出した。

 

そういえば、トンヌラとマリアは...

 

 

 

おばさんとカインの会話はまだ続いていますが、長くなるので途中で区切りますね。

 

「パーティの最初からずっとカインを見守る存在がいる」と私は書いていましたが

それはこの「おばさん」でした〜☆

 

(「アルファズル?」という意見が多かったですが、違いましたね ( *´艸`))

 

 

パーティーの間中、ずっとカインに親切にしてくれていたおばさん (*´ω`*)

おばさんが親切にしてくれた理由は、ナナに対してなかなか素直になれないカインが

息子のトンヌラによく似ていて、息子のように思えて放っておけないからでした~。

 

ナナが大聖堂に帰って来たとき、他の誰よりも嬉しそうに笑っているカインを見て

おばさんはすぐにピンと来て、そこからずっと見守ってくれていたんですね (*´ω`*)

 

 

ずっと優しくしてくれて、的確なフォローをしてもらったのはありがたいんだけど

あんなところやそんなところも、おばさんにはすべて見られていたなんて... (>_<)

恥ずかしさで落ち込むカイン ( *´艸`)

 

落ち込むカインに「息子のように幸せになって欲しいだけ」と声をかけたおばさん。

 

 

さて、おばさんのその言葉を聞いて、カインはなにかを思い出しましたが、いったい

なにを思い出したんでしょう?

 

トンヌラとマリアは...?!

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ