ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 110】意気投合

ナナへ贈る花を入れる鉢を探しに物置小屋へ向かったおれは、そこでリオスに会った。

 

リオスはおれが手にした何の変哲もない白い鉢に小刀で手を加え、キラキラと光輝く

美しい鉢をつくりあげた。

 

「あっしが殿下に協力するのは、あんたとナナ姫がくっつけば、あっしも生まれ故郷の

 ムーンブルクに堂々と帰れるようになるからだ。あっしと手を組まねえか?」

 

美しい鉢と引き換えにそう提案されたおれは、リオスと手を組むことを決意した。

 

 

 

リオスから受け取った鉢を持って裏庭に戻ると、王妃はおれが持ってきた鉢を見て

目を丸くし、歓声をあげた。

 

「まぁ! そんな綺麗な鉢、いったいどこにあったのよ! 綺麗ね~、惚れ惚れするわ」

 

王妃はおれから鉢を取り上げると、光にかざしてまじまじと眺め出した。

 

 

リオスと王妃に面識があるのかは知らねえ。もし、リオスの存在を知らねえとしたら

盗賊が城の中をウロウロしていることに王妃が何と言うか気にはなったが、おれは

正直にリオスがつくったことを話した。

 

 

「リオス...? あぁ、サマルトリアハーゴン軍に襲われたとき、あんたとティアを

 城内へと導いてくれた人よね。あんたのお父上から聞いているわ。そして、最近では

 ティメラウスと一緒になって、ティアの教育係もしているんでしょ? 知ってるわよ。

 へぇ~、短時間でこんなものをササッとつくっちゃうだなんて、みんなの評判どおり

 有能で腕がいいのね。ふふっ。是非とも会ってみたいわ。ここに連れて来なさいよ」

 

へっ! おれが知らないうちに、リオスはサマルトリアで高評価を得ているらしいな。

 

 

おれはいったん物置小屋に戻ると、手持ち無沙汰な様子で小刀をくるくる回していた

リオスを呼び寄せ、王妃が会いたがっていることを伝えた。

 

リオスは「ふふっ」と変な顔で笑いながら小刀を懐にしまい、おれの後について来た。

 

 

「おいっ、リオスを連れて来たぜ」

 

王妃に声をかけると、うっとりした顔で鉢を眺めていた王妃はおれたちの方を見て

穏やかにリオスに微笑みかけた。

 

 

「へへっ、どうも」

 

リオスは照れたように頭をかきながら、王妃にへこへこと頭を下げた。

 

 

「あなたがリオスね。ティアやティメラウスから、あなたの話はよく聞いているわ。

 とても気が利いて、器用な働き者だってね。確かにこの鉢を見れば、あなたがいかに

 優秀な人材かよくわかるわ。それで、あなたの目的はなに?」

 

口元の微笑みを崩さないまま、王妃はギロリと鋭い視線をリオスに向けた。

 

王妃の豹変っぷりにおれはギョッとなったが、リオスは顔色を変えず王妃を見ていた。

 

 

「あなたがわざわざこんなことをするなんて、何か見返りを求めてのことでしょ?

 あなたは盗賊だもの。得るものがないのに、自ら積極的に動くことはないはず。

 カインやティアに取り入って、あんた! サマルトリア

 なにをするつもりだい?」

 

 

おれは常々、人を見る目はある方だと思っていたが、まだまだのようだな。

おしゃべり好きのうるさいババアだと思っていた王妃に、こんな一面があったなんて。

 

聞いたこともない低いトーンで話す王妃の言葉には、威圧感と独特の凄みがあった。

 

 

「へへっ、さすがはサマルトリアの王妃様だ。そのへんにいる女とは格が違うぜ。

 わかりました、あっしがこの鉢をつくった目的を王妃様にお話ししましょう」

 

王妃の凄みにまったく動じることもなく、リオスは音もたてずに王妃に近づくと

耳元に口を寄せてこそこそと話した。

 

 

身体の前できつく腕を組み、警戒した様子でリオスをにらみつけていた王妃の表情が

リオスの話を聞きながら、見る見るうちに和やかになり明るくなった。

 

「まぁ! そうなの!? いいじゃない、あたしも同じ気持ちよ。なんだぁ、あなたって

 本当に良い人だったのね!」

 

王妃は態度を一変させて、今は嬉しそうに笑いながらリオスの肩を叩いている。

 

 

「ええ。王妃様も、あっしと同じ気持ちだろうということはわかっていましたよ」

 

リオスはおれを見てニヤリと笑った。

 

 

「そうね。あたしたち、同じ目的を持つ仲間だもの! これからも

 同志として仲良く出来そうよね」

 

王妃もおれを見てニヤニヤ笑っている。

 

 

リオスが王妃に何を耳打ちしたかは聞こえなかったが、おれを見てニヤニヤ笑っている

2人のしまりのないニヤケ顔が、内緒話のすべてを物語っていた。

 

 

「ちっ! 別にひそひそ話しなくても、あんたらの言いたいことはお見通しだぜ」

 

結局、王妃とティアの他に、めんどくさい奴がもう1人増えただけじゃねえか。

おれはふて腐れてボヤいた。

 

 

「うふふ。いいことじゃない、みんながあんたのために協力してくれるんだからさ。

 ありがたく思いなさいよ」

 

王妃はニコニコ笑っている。

 

 

けっ、のんきなババアだ。

おれとナナがもし本当にくっついたら、この国はどうなると思ってんだよ。

 

 

「なぁ、あんたはサマルトリアの王妃だろ? 国の将来を考えたら、皇太子のおれが

 ムーンブルクに行こうとしているだなんて、なんとも思わねえのかよ?」

 

いい機会だ。おれはずっと前から聞いてみたかった疑問を王妃にぶつけた。

 

 

「別に。そうなったら、サマルトリアはティアにまかせたらいいじゃない」

 

王妃があまりにもあっさり言うので、おれは思わずひっくり返りそうになった。

 

 

「ずいぶん、あっさりしてるな」

 

 

「うふふ。だって、あんたもティアもあたしの自慢の子どもたちだもの」

 

王妃はおれを見て胸を張った。

 

 

「あんたもティアも、生意気でずる賢いところはあるけど、素直な優しい子に育ったと

 あたしは自負しているんだよ。どっちが継いでも、この国は絶対に良くなるさ。

 あんたでも、ティアでも、どっちが王になっても良いんだよ、サマルトリアはね。

 でも、ムーンブルクは...」

 

胸を張って自信ありげに笑っていた王妃は、ふと真面目な顔つきになった。

 

 

「なんだよ、いきなり深刻そうな顔して。ムーンブルクはどうだって言うんだ?」

 

王妃の表情の変化に心がざわついた。

 

 

「あんたが継いでも、ティアが継いでも、どうにでもなるサマルトリアとは違って

 ムーンブルクにはあんたの力が必要だと、あたしはずっと考えていたんだよ」

 

 

ムーンブルクにはおれの力が必要? それって… どういうことだよ?」

 

王妃の様子を見る限り、いつものどうでもいいくだらねえ話とはわけが違いそうだ。

心がざわざわして落ち着かねえ。

 

 

「ふふっ。あたしはね、あんたがナナを好きだからっていう理由だけで、あんたに

 協力しているわけじゃない。ムーンブルクにはあんたの力が必要だから、そして

 ナナにもあんたが必要だから。だから、あたしはあんたに協力しているんだよ」

 

 

「あっしも同感です。あっしも、ムーンブルクに大きな顔で帰りたいだけじゃねえ。

 生まれ故郷の発展には殿下の力が必要だと思って、あんたに協力すると決めたんだ」

 

リオスの小さい目も、鋭い眼光でじっとおれを見据えていた。

 

 

ムーンブルク城が完成したら、ナナは正式に女王に即位するんだろうけど、王子が

 先代のローレシア王から王位を譲られて王様になったのと、ナナが即位するのとは

 重みが全然違うよ。ナナはあの細い肩に、とんでもない重圧を背負うことになる。

 1人じゃ支えきれないほどの... ね」

 

確かに。王妃の言うとおりかもしれねえ。おれはゴクリとつばを飲み込んだ。

 

 

「あの子は美人で気立てもいいから、たくさんの良縁が舞い込むと思う。女王1人では

 いろいろ大変だろうと、世界各国から縁談が持ち込まれるだろうよ。だけどね、

 ナナが結婚する相手も、何不自由なく育った平和な国のお姫様と結婚するのとは

 わけが違うんだよ。ナナと結婚する相手は、ナナと共に重圧を背負い、支え合って

 ムーンブルクを発展させられる男じゃないと務まらない」

 

 

「そして、それが出来る男は、あんたしかいないってことだよ、カイン殿下」

 

王妃とリオスが、いつになく真剣なまなざしでおれを見つめている。

 

 

2人からじっと見据えられ、おれの身体は石にでもなったかのように動かなくなった。

 

 

「あんたが、ただナナを好きでモノにしたいだけだって言うんなら、やめときな。

 ナナだけじゃなく、ムーンブルクも背負う覚悟があるんなら、あたしはこれからも

 あんたとナナが上手くいくように全力で手助けするつもりだよ。あんたの気持ちが

 それだけ真剣なものなのか、自分で考えて答えを出しなさい」

 

 

「殿下に、ナナ姫もムーンブルクも背負う覚悟があるのなら、あっしらは全面的に

 あんたに協力するぜ。でも、これはあんたの将来に関わる重大な決断になるだろう。

 一時的な感情に流されず、よく考えて決めることだな」

 

王妃とリオスはズバッと言い放ってきた。

 

 

 

ナナだけじゃなく、ムーンブルクも背負うほどの真剣な想いなのか考えろだと?!

おれの将来に関わる重大な決断だと?!

 

へっ! なめられたもんだ。王妃もリオスも、そんな言葉でおれを脅すつもりかよ。

おれ様を誰だと思ってんだ?! 

 

 

「おれを馬鹿にすんなよな。別に、ムーンブルクがあんなことにならなかったとしても

 王位継承者同士が一緒になるには、いろいろと覚悟が必要だろ? おれは自分の中で

 ナナへの気持ちに気づいたときから、とっくに両国を背負う覚悟は出来てるぜ。

 へんっ! まかせとけよ! ムーンブルクの復興はおれが絶対に果たしてやるさ!

 

おれは王妃の手から鉢を奪い取ると、王妃とリオスにウインクしてやった。

 

 

 

 

最初は「王妃とリオスが、カインとナナの仲を取り持つ件で意気投合♪」という

軽い感じの話で終わらせるつもりだったんですが、なぜか真面目な話に... (;´∀`)

 

 

王妃は、ただ面白がって息子の恋を応援しているだけじゃなく、サマルトリア

ムーンブルクの両国が発展するために、カインとナナの仲を応援していること。

 

リオスも、ただサマルトリアムーンブルクの2国でデカい顔したいだけじゃなく

祖国・ムーンブルクが完全なる復興を遂げるためには、カインの力が必要だと感じて

カインを応援すると決めたこと。

 

ふざけているだけのように見える王妃もリオスも、実は真面目に考えていて ( *´艸`)

 

両国の未来を真剣に考えた結果として、カインとナナが結ばれることが最善だと思い

王妃とリオスは「意気投合する」という流れになりました (*´ω`*)♡

 

 

 

ただナナを好きなだけじゃダメなんだよ。ナナのことが好きなら、ナナだけじゃなく

ムーンブルクも背負う覚悟を持て!

 

王妃とリオスからの言葉。

17歳(もうすぐ18歳)の少年には、かなーり重い言葉のように感じますが

「もう覚悟は出来ているぜ」とあっさり認めるカインが個人的にはお気に入りです♡

 

 

誕生日プレゼントの話から、なぜかカインの将来の話になっちゃいましたが ( *´艸`)

カインも重責を担う覚悟を決められたみたいなので、プレゼントの話に戻しましょう♪

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ