ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 120】 奇跡

とうとう、おれがナナに誕生日プレゼントを渡す順番が回ってきた。と言っても

不覚にもおれが1番最後になり、おれ以外は全員すでに渡しちまったんだけどな。

 

想定外のプレゼントが続き、本音を言えば逃げ出してえところだったが、おれのために

協力してくれた奴らの恩に報いるため、おれは立ち上がりナナの前に向かった。

 

 

懐から出した1つめのプレゼントは、昨夜サンチョと一緒に焼いたクッキーだ。

 

プレゼントするクッキーに、おれは女たちがやるようなある「願掛け」をしていた。

 

 

たくさん焼いた中に1枚だけハート型のクッキーを入れ、ナナがハート型を手にしたら

おれとナナは結ばれる...

 

 

我ながら「くだらねえ願掛け」だと思いながらも、心はざわざわと落ち着かない。

クッキーを周囲に配るナナに内心ハラハラしつつ、おれは成り行きを見ていた。

 

いろいろあったが、最終的にハート型のクッキーを手にしたのは、ナナ だった!

 

ただのお遊びだと何度も自分に言い聞かせたが、自然とにやけてくる顔を抑えられず

おれは、もう1つのプレゼントを取りに行くことでニヤニヤをごまかした。

 

 

もう1つのプレゼント。

 

花が入った薄桃色の包みを手にナナのもとへ戻ると、ナナは口をもぐもぐさせながら

おれの手元を見て瞳を輝かせた。

 

 

「やっぱりそれ、姫様へのプレゼントだったんだね。朝、あんたが持っているのを

 見たときからずっと気になっていたんだよ。すごく綺麗な色だなぁ~ってね」

 

おばさんがニコニコしながら、おれがテーブルに置いた包みをまじまじと眺めた。

 

 

「うん、可愛い色で姫様にピッタリだよ。この布だけでも素敵だと思うね。姫様、

 あんたはどう思う?」

 

おばさんからの問いかけに、ナナもにこやかにうなずいた。

 

 

「ええ、本当に可愛い色よね! この布だけでも嬉しいわよ。ありがとう、カイン」

 

椅子に座ったナナに上目遣いの笑顔で見つめられて、おれは思わずうろたえた。

 

 

「へっ。中身は大したことねえからよ、あんまり期待すんじゃねえぞ」

 

おれはナナから目をそらし、うつむいた。

 

そのまま顔を上げることが出来なくなった。

自分でも情けねえ話だが、中を見たときのナナの落胆を見るのが怖くなったのだ。

 

 

「ううん、そんなことないわよ! きっと中も素敵なんでしょうね。楽しみだわ!」

 

ナナがウキウキして包みを開いていくのを、顔は伏せたまま目を動かして見守った。

 

 

 

「えっ?! これって…」

 

包みを解いて中身を見たと思われるナナから、困惑した戸惑いの声があがる。

 

 

「中身は何だろうな?」などと言いながら見ていた、ムーンペタの奴らも口をつぐみ

大聖堂内はシンと静まりかえった。

 

 

さて、どうするよ?

 

今、ナナの目の前にあるのはただの草だ。

 

もしかしたら、つぼみがいくつか膨らんでいるかもしれねえが、それでも今の状態では

何なのかよくわからねえだろうな。

 

 

ナナ。今は何かわからねえだろうが、あと数日すれば答えがわかる。だから、これが

何なのかを楽しみにして、とりあえず数日だけでも水をやって世話してみてくれよ。

 

あんたたちも、あと数日すればこれが何かわかるからよ、知りたければ数日後にまた

教会を訪ねて、ナナに正解を聞いてくれ。

 

 

今の状況を打破するため、おれは頭をめぐらせて言うべき言葉を絞り出した。

 

よし、これでいこう!

 

 

「ナ...」

 

「思い出したわ! これはベラヌールで見た花よ! ねえ、そうでしょう、カイン?」

 

おれより先に、ナナは大きな声をあげた。

 

 

ナナの言葉に驚き、おれは鉢植えを見た。

 

花が咲くのは早くても数日後だと聞いていたし、その王妃の言葉通り、サマルトリア

出る頃に見たときはまだ固いつぼみだった。

 

 

だが今、目の前にある鉢植えには

小さな花が1つだけ、色鮮やかに咲いているじゃねえか!

 

 

王妃が包んだこの布に不思議な力があったのか? いや、それとも栄養価の高い土か?

それとも、ムーンペタの暖かい気候の影響で、花の成長が一気に進んだのか?

 

理由はわからねえが

とにかく花が咲いているぞ!

 

 

「ねえ、そうでしょ? これってベラヌールで見た花よね? うん、間違いないわ!」

 

ナナは輝く瞳でおれと花を交互に見ながら、嬉しそうに歓喜の声をあげた。

 

 

「へぇ~! ベラヌールにはこんな綺麗な花が咲いているんだね! 初めて見たわよ」

 

おばさんも、うっとり花に見惚れている。

 

 

「綺麗でしょう? あたしも初めて見たとき、なんて美しいのかしらって感動したの!」

 

ナナは興奮した様子で、ベラヌールでこの花を見たときのことをおばさんに話した。

 

 

「ねえ、あんた。姫様の言葉を聞いて、今日のプレゼントにこの花を選んだんだね。

 姫様の何気ない言葉をちゃんと覚えていて、わざわざベラヌールまで足を運んで

 この花をもらってきたってわけだ」

 

おばさんはナナの話にうなずき、にこにこ笑いながらおれを見あげてきた。

 

 

おばさんの言葉を聞いて、ナナはほんのりと頬を赤く染めているように見える。

 

 

「違うわよ、おばさん。おにいちゃんがもらって来たのは種なの。種をもらってきて

 サマルトリアで大きく育てたのよ!」

 

ティアが大きな声で横から口を挟んだ。

 

 

いいぞ、ティア!

おまえは最高の妹だぜ!!

 

 

ティアの言葉に、おばさんだけでなく大聖堂のいたるところから驚きの声があがった。

 

 

「ええっ? 花をもらったんじゃなくて、種からここまで育てたの? 姫様のために?

 あらあら、なんてこった。あんた、この花はすごいプレゼントじゃないか~!」

 

おばさんが感心したようにおれを見てくる。

 

 

ベラヌールでおれが種をもらって来たのは事実だが、ここまで育てたのは王妃だ。

でも、今はババアを利用させてもらおう!

 

 

「ナナがこの花を気に入っていたからよ、最初はムーンブルクに植えようと思って

 ベラヌールまで種をもらいに行ったんだ。でも、調べてみるとこの花は暑さと乾燥に

 めっぽう弱い品種でね、ムーンブルクの気候には向いていないことがわかったんだ。

 それで、この花にとって環境がピッタリ合うサマルトリアで種を植えて、ここまで

 大きくしたってわけさ!」

 

この花の品種を調べたのはおれじゃねえし、生育環境としてサマルトリアが合うことも

ぺルラという婆さんからの受け売りだ。だが、ここで利用しない手はねえだろ?

 

おれは得意げになって、ぺルラという婆さんと王妃から得た知識を披露した。

 

 

「花の性質や合う環境をきちんと調べて、種を植えてここまで大きく育てるなんて、

 あんたって本当に凄い子なんだね~」

 

おばさんが感嘆の声をあげた。

 

 

おばさんに共感するように「すごいわね~」「種からここまで育てるなんて大変だぞ」

「なかなかそこまで出来ねえよな」「確かに手間暇かけたプレゼントだよな!」などと

ムーンペタの住民たちからも、おれを褒め称える声が聞こえてくる。

 

 

おれは周りの奴らにも目を向けた。

 

王子とミリア、オーウェンの3人はおれを見ながらニコニコと微笑んでいる。

 

オルムとレオンは、何やら疑い混じりの視線を向けつつ、2人でニヤニヤ笑っている。

 

ティアはリーナに耳打ちしていた。

リーナは驚いた顔をして、ティアは笑いながらシーッと人差し指を立てている。

 

 

おれはオルムとレオン、そしてティアとリーナをひと睨みしてから再び口を開いた。

 

ムーンペタムーンブルクは暑すぎて、この花を外に植えるのは難しいんだ。それで

 室内で育ててもらえるよう、鉢に植え替えてプレゼントすることにしたんだ」

 

おれの言葉に、人々の目が鉢に集まった。

 

 

「あら? ねえ、見てよ姫様! この鉢、すごくキラキラ輝いているじゃないの!」

 

おばさんは、再び感嘆の声を上げた。

 

 

「まぁ、本当だわ! すごく綺麗よ。キラキラしていて、まるで宝石のようね!」

 

ナナも、瞳を輝かせて嬉しそうに叫んだ。

 

ナナの言葉に呼応するように、大聖堂の人々からもどよめきが起きた。

 

 

「あんな綺麗に光輝く鉢、あたし初めて見たわよ」「鉢だけでもすげえ綺麗だよな」

「あの鉢だけでも欲しいぜ」「細部にまで気を遣った、手の込んだプレゼントだな」

 

住民たちも、目をキラキラさせながら、ナナの持つ鉢にうっとりと見惚れている。

 

 

「せっかくナナのお気に入りの花を贈るのに、適当な鉢に入れたんじゃ台無しだろ!

 最高に美しい鉢に入れてこそ、花もなお美しさが引き立つってもんだぜ!」

 

おれが胸を張って宣言すると、「おお~」という大歓声とともに拍手が起こった。

 

 

リオスの手柄を横取りするようで気が引けたが、あいつは自分の手柄を自慢するより

おれの印象を良くするのが目的だって言っていたからな。別に悪いことじゃねえだろ。

 

 

「ナナ。この花は暑さと乾燥に弱いからよ、室内のなるべく涼しい場所に保管して

 水をたっぷりあげて世話してくれよな」

 

おれはダメ押しとばかりに、王妃から聞かされた注意点をナナに伝えた。

 

 

「そうよね、確かにベラヌールでこの花を見たのはとても寒い日だったし、この花は

 湖のほとりに咲いていたもの。この花が、涼しい場所と水を好むのはよくわかるわ。

 ええ、まかせて。ちゃんと涼しい場所に置いて、あたし立派に育てて見せるわ。

 ありがとう、カイン。あたし、この花もこの鉢も本当に大切にするわね!」

 

ナナは幸せそうにおれに微笑みかけてきた。

 

 

ほんのり桜色に染まった頬とキラキラ輝く瞳に、おれはまた頭がクラクラしてきた。

 

やべえ。このままナナを見ていると、また幻覚で女神に見えてしまいそうだぜ。

 

 

おれは幻覚を振り払うため軽く首をまわすと、いつもの自分らしさを取り戻すそうと

「まぁ、がんばれよな。枯らして泣くんじゃねえぞ!」と軽口をたたいた。

 

おれの言葉にナナは「ベーッ!」と舌を出し、その後は楽しそうに笑った。

 

 

「これでプレゼントはすべて渡し終わったよな。なぁ、姫様。今年はどのプレゼントが

 1番嬉しかった?」

 

レオンがナナに尋ねた。

 

  今年のプレゼントには自信がありそうなレオン ( *´艸`)

 

 

ナナはしばらく考えてから答えた。

 

「全部」

 

 

昨年はあんなに悲しかった「全部」という言葉が、今年はこんなに嬉しいなんてな!

 

おれはナナの言葉に心から安堵していた。

 

 

 

 

カインのためならズルもへっちゃらな私♪

 

「ナナへのプレゼント♡」第2弾も、かなり強引な展開になりました ( *´艸`)

 

「まだ咲いていない花」が、まさかの1輪だけ咲いているという奇跡ヾ(*´∀`*)ノ

 

 

花が咲いているという奇跡に加えて、おばさんやティアがナイスアシストしてくれて、

すっかり調子を取り戻したカインは

 

ベラヌールのぺルラさんと王妃から聞いた話を、自分が調べたかのように話し ( *´艸`)

 

リオスが彫りあげた鉢も、まるで自分がナナのために用意したかのように話し ( *´艸`)

 

「誰よりも手の込んだプレゼントを用意した皇太子さま」と称賛を浴びました (≧∇≦)

 

 

ナイスアシストの後は、リーナにだけこっそり真相を耳打ちしたティア (*´ω`*)♡

 

普段はおしゃべりだけど、いざというときには黙して語らない「賢さ」もある☆

おにいちゃん想いの可愛い妹です♡

 

 

昨年は、自分の優勝を確信していたのに「全部」と言われてガッカリしたカイン。

 

今年は、ナナの「全部」という言葉にホッと胸をなでおろして欲しいと思い ( *´艸`)

「おれは最下位かも?」と不安になるような、強力な刺客たちを用意しました (≧∇≦)

 

 

(ここで裏話ですが)ガルダーやアルファズルがパーティーに参加しなかったのは

単純に私の頭では、これ以上のプレゼントが思いつかなかったから...  (;´∀`)

(プレゼントが思いつかないために、2人は強制的に不参加になりました~ ( *´艸`))

 

 

さて、長かったプレゼント渡し(1カ月以上かかりましたね (;'∀'))もようやく終了☆

次の展開に話を進めますよ☆

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ