ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 116】 泡美容

ナナに贈る誕生日プレゼント。

オルムとレオンが用意したのはムーンブルク城のミニチュア模型』だった。

 

本当の城がよみがえったかと思うほど精巧なつくりの模型は、ナナを感動で涙ぐませ

大聖堂はあたたかな空気に包まれた。

 

 

「あの、すみません。次は私がナナ様にプレゼントを贈呈してもよろしいでしょうか?

 みなさんがおかえりになってしまう前に、全員にお渡ししたいので...」

 

バブルスライムハンターのオーウェンが、少し遠慮がちにおれたちに尋ねてきた。

 

 

今日のナナの誕生パーティーについては、終了時間を特に設定していなかった。

 

大聖堂の扉は開け放ち、誰でも出入り自由にして、住民たちは帰りたくなればいつでも

帰って良いことにしていた。

 

食事も終わり、小さい子どもを連れた奴らは、そろそろ帰り時間を気にし始める頃だ。

オーウェンはそいつらが帰ってしまう前に、全員にプレゼントを渡したいのだろう。

 

 

特に反対する理由もねえとおれたちがうなずくと、オーウェンはニッコリ笑って

キャリーケースを開け、中から緑色の小ビンを取り出してナナに手渡した。

 

「私からナナ様へのプレゼントは、開発したばかりの新商品です。どうぞ」

 

 

「あ、ありがとう」

 

ナナは少し照れた様子でオーウェンから小ビンを受け取り、まじまじと眺めた。

 

 

オーウェンは、そのまま手際よく緑色の小ビンをティア、リーナ、ミリアに手渡し、

大聖堂に集まっているムーンペタの住民たちにも、せっせと配り始めた。

 

おれと王子、オルム、レオンも、オーウェンと一緒になって配るのを手伝ってやった。

 

 

「このプレゼントを考えた当初は、女性だけに配るつもりでしたが、あとになって

 こんなことで男女の差をつけるのは不公平だと気づいて、自分の考えを改めました。

 よろしければ、みなさんもどうぞ」

 

オーウェンはおれたちだけでなく、大聖堂に集まったおっさんや少年にも手渡した。

 

 

全員に小ビンが行き渡ったことを確かめると、オーウェンはあらためてナナの前に来て

ナナに向けてニッコリと微笑みかけた。

 

「この商品は『泡粘膏』を改良して、新たにつくりあげたものなんですよ!」

 

 

「バブルバーム? 初めて聞く名前だわ。それはいったいどういったものなの?」

 

おれのそばにいるおばさんが、小ビンをゆらゆら振りながらオーウェンに尋ねた。

 

 

「ははっ。こちらで泡粘膏は、まだ馴染みがありませんか。私もまだまだですね」

 

オーウェンは頭をかいた。

 

 

「泡粘膏というのは、傷にも病にも毒にも効く万能薬なんです。バブルスライム

 電流を流して作り出すことから、泡粘膏(バブルバーム)と名づけたんですよ」

 

  『泡粘膏』はゲームブックでは最強の万能薬だと思っています☆

 

 

サマルトリアでは大人気なのよ!」

 

ティアが横から口をはさんだ。

 

 

 

「ありがとう、ティアちゃん」

 

オーウェンはティアを見て二ッと白い歯を見せて笑うと、再び話を始めた。

 

 

「こちらにいるカイン殿下とサマルトリア王のご厚意で、サマルトリアで店を構えて

 泡粘膏を販売していました。一時は、飛ぶように売れていたんですが...」

 

オーウェンは言葉を区切ると、おれと王子、ナナの顔をじっと見て肩をすくめた。

 

 

「町の外に出れば魔物がウヨウヨしていた頃は、ケガや毒の治療のために飛ぶように

 売れていた泡粘膏も、こちらにいる3人の勇者様が、さっさとハーゴンを倒して、

 平和な世の中をもたらしてしまいましたからね。私の商売はあがったりですよ」

 

オーウェンが大げさにおどけながら言うと、大聖堂内でどっと笑いが起きた。

 

 

「まぁ、それは冗談として。このままでは傷薬や毒消しの需要は減る一方ですから。

 何か対策をしなければと研究して作り上げたのが、今回お渡ししたこの商品。

 泡粘膏を改良して作った美容液『泡美容(バブルボーテ)』です!」

 

 

「バブル... ボーテ?」

「美容液?! これが?」

 

大聖堂に集まった奴らは全員、不思議そうな顔をして手にした小ビンを眺めている。

 

 

リーナが腕を伸ばして、オーウェンの服の袖をくいくいっと引っ張った。

 

「おじちゃん。美容液ってなあに?」

 

 

「うん、今から説明するよ」

 

オーウェンはリーナの頭をなでた。

 

 

「ティアちゃんもリーナちゃんも、お外で元気に遊ぶでしょう? そのとき、お日様が

 ガンガン照りつけて暑い日もあれば、風がビュンビュン吹いて寒い日もあるよね?」

 

オーウェンの言葉に、ティアもリーナもわくわくした様子でうなずいた。

 

 

「暑かったり、寒かったり、空気が乾いていたり...。そんなことで身体が痛くなったり

 毒を受けたと感じることはないよね? だけど、目に見えていないだけで、実際は

 ティアちゃんもリーナちゃんも、ケガしたり毒を受けているんだよ!」

 

 

「えっ?!」

「そうなの?!」

 

ティアとリーナは驚きの声をあげた。

 

 

「人間はね、小さな細胞がいっぱい集まって出来ているんだ。大きなケガや毒があると

 人は『痛い』と感じるんだけどね、小さな細胞のケガや毒は、痛いと気づかないまま

 放置しちゃうんだよ。そしてずっと放置していると、治らなくなってしまうんだ。

 その小さな細胞のケガや毒を治すのが、この『泡美容』なんだよ」

 

 

「へぇ~!」

「すごいのね」

 

「本当に効果あるのかしら?」

「早く試してみたいわね!」

 

ティアやリーナだけでなく、話を聞いていた奴らが一様に感心の声をあげた。

 

 

オーウェンはさすがの商売人だ。

ティアとリーナみてえなガキにもわかるように説明することで、聴衆の心をいつしか

がっちりとつかんでいる。

 

 

「泡美容の使い方は簡単。ふたを開けて適量を手にとり、お肌の気になるところに

 浸み込むようにつけるだけ。特に気になるところには、たっぷり塗ってください」

 

オーウェンの言葉が終わるか終わらないかのうちに、みんなは小ビンのふたを開けて

早速ペタペタと顔に塗り始めた。

 

 

せっかくもらったのに、まったく使わねえっていうのも悪いからな。

おれは大して興味もなかったが、周りに合わせて、見よう見まねで顔に塗ってみた。

 

効果なんてよくわからねえが、顔がじんわりとあったかくなった気がする。

 

 

「すごいわ。肌が若返ったみたい」

「おい、おまえ。ここにあったシワが無くなったんじゃないか?」

 

あちこちから歓声があがる。

 

 

住民たちの顔を見ると、確かに肌にハリが出て、顔が明るくなった気もするな。

ただ、オーウェンの言葉に乗せられてイイ気分になり、表情が明るくなったことで

いかにも肌が良くなったように見えているだけかもしれねえけどな。

 

 

「これで若返ったら、ますますモテちまうな。へへっ、困っちゃうぜ!」

 

いつの間にか『出会いの酒場』で働いている陽気な男が、大聖堂に来ていたようだ。

イイ男とは程遠い風貌の男だが、愛嬌があり明るく周りを盛りあげるのが得意な男で、

今も男の軽口に大きな笑いが起きている。

 

 

さっきまでは、オルムとレオンがプレゼントしたムーンブルク城の復元模型」

大聖堂内はあたたかな感動に包まれていたが、今は一気に明るい雰囲気になった。

 

 

ぼんやりと住民たちのはしゃぐ様子を見つつ、ナナに目を向けたおれはハッとなった。

 

ナナの肌に関しては、旅をしているときも今も、特に気に留めたことはなかった。

今日でまた1つババアになったとはいえ、まだ18歳のナナの顔にはシワもなく

ハリもツヤもあると感じていた。

 

だが、長旅を経験して、くそ暑いところや、くそ寒いところにも行って、過酷な環境で

魔物と戦い続けていたナナの肌は、オーウェンの言葉を借りれば「ケガだらけ」

「毒にも侵されていた」のだろう。

 

 

『泡美容』を使うことで、小さな細胞の傷の修復と解毒がおこなわれたナナの肌は

一段と白く輝きを増していた。

 

ナナの顔は明るくキラキラと輝いて見えた。心なしか、瞳の輝きも増した気がする。

おれはその輝きに吸い寄せられるように、ナナの顔をただぼーっと見つめていた。

 

 

「うわぁ~、おねえちゃん。すっごく綺麗~!」

 

ティアの大声で、ふと我に返った。

 

それまで自分たちの顔を触りながらワイワイ騒いでいた住民たちも、ティアの言葉で

一斉にナナに目を向けた。

 

 

「まぁ、本当に綺麗ねぇ!」

「ますます美人になったな!」

 

住民たちからも囃し立てられて、ナナは照れたように顔を赤らめて微笑んだ。

 

 

ナナの頬がパッと桜色に染まって、よりいっそう美しさが増したように思えた。

 

 

はっ! いかんいかん。おれはさっきから何を考えているんだ!

 

おれはぶんぶんと首を振った。

 

 

「これは本当に素晴らしい美容液ね。まだ余分にあるのかしら? まだあるのなら

 あたしに売ってくれない?」

 

 

おばさんがオーウェンに声をかけると、オーウェンはニッコリと微笑んだ。

 

 

「気に入っていただけて光栄です。ええ、どうぞ。もちろん、お安くしておきますよ」

 

オーウェンがキャリーケースから小ビンを取り出すと、周りにいた女たちが一気に

「あたしも!」「あたしも!」オーウェンのそばに集まり始めた。

 

 

大聖堂は直売所にとって代わった。

 

 

「あいつ。今日は最初っから、ここで商売するつもりで来やがったな!」

 

おれがチッと舌打ちしながら文句を言うと、王子が笑ってたしなめてきた。

 

 

「まぁ、いいじゃないか。ムーンペタのみんなも喜んでいるし、ナナたちもあんなに

 楽しそうにしてるんだ。今日のところはナナの誕生日に免じて許してあげなよ」

 

 

ナナは、ティアやリーナ、ミリアとお互いの顔を触りながら、きゃあきゃあ言って

確かに楽しそうに笑っている。

 

 

オーウェンにはしてやられた気もするが、ナナが笑っているなら、まぁ、いっか。

 

 

 

商売人のオーウェン ( *´艸`)

パーティー会場を、一瞬にして即席の直売所に変えちゃいました~ (;´∀`)

 

 

以前にオーウェン「全女子が確実に喜ぶプレゼント」を用意していると書いたとき

「このプレゼントは私が現実に欲しいもの!」とコメントしました。

 

『泡美容(バブルボーテ)』は、今の私が猛烈に欲しいものですよヾ(*´∀`*)ノ

 

 

「肌細胞の奥にまで浸透...」「肌を内側から修復...」みたいな謳い文句の美容液は

世の中にたくさん売られているんですけど、実際の効果となると... ねぇ... (;'∀')

 

 

その点、泡粘膏(バブルバーム)の絶大な効果は、ゲームブックをプレイした人なら

わかりますよね~ (^_-)-☆

 

HP回復&毒消しが出来るだなんて、本当に最高の薬だと思っていますよ (≧∇≦)♪

その泡粘膏を改良して美容液にしただなんて、絶対に『買い』でしょうヾ(*´∀`*)ノ

 

商品説明するオーウェンの言葉が、通販番組に聞こえてきて仕方ないんですが (;´∀`)

オーウェンはカリスマ販売員の本領を発揮して、泡美容は瞬く間に完売ですよ~☆

 

 

ナナの誕生パーティーを勝手に商売の場にしたことに、カインはご立腹の様子 ( *´艸`)

でも、王子の言うとおり、ナナが喜んで笑っているんだから、良いじゃないの、ねえ。

(ナナが綺麗になって、あまりの美しさにカインも見とれていたんだからさ ( *´艸`))

 

 

パーティー会場は一気に盛りあがり、ナナも楽しそうに笑っている。

オーウェンからのプレゼント『泡美容』も、なかなかの強敵ですよね~ (-_-;)

 

さて、カインが優勝を狙っている「プレゼント勝負」(?)の行方やいかに?!

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ