ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 108】プレゼント大作戦♪

リーナを連れてサマルトリアに戻り、ティアにもナナの誕生日が近いことを伝えると

ティアとリーナは早速2人で、ナナの誕生日プレゼントについての相談を始めた。

 

 

翌日はミリアに会いにルプガナへ行くため、今夜はサマルトリアで泊まることになった

王子と一緒に自室に戻ったおれは、簡単な夕食を取り、互いの労をねぎらいあった。

 

おれたち2人はあらためてナナの誕生パーティー成功を誓い、固い握手を交わした。

 

 

翌朝ーーー

【魔法を売る店】でキメラの翼を買い、ルプガナに行く王子をおれは見送りに出た。

 

 

「別にキメラの翼で行かなくても、おれが送っていってやっても良いんだぜ」

 

おれは、城を出て道具屋に向かって歩いていく王子に声をかけた。

 

昨日は移動呪文を何度も使って、さすがのおれ様でも多少の疲れはあったが、一晩寝て

今日はすっかり元気だ。

 

 

「ううん。さすがにそれは遠慮しておくよ。どっちみち、ローレシアに帰るときも

 キメラの翼をどこかの店で買わなきゃいけないからさ。ここで余分に買っておいて

 その1つを使ってルプガナに行くよ」

 

 

「おまえは魔法も使えないんだからよ、いくら辺鄙な片田舎だとしても、ローレシア

 キメラの翼ぐらい買えるようにしねえとな。おまえもなにかと不便だろ?」

 

おれはここぞとばかりに、またローレシアのド田舎っぷりを小馬鹿にしてやった。

 

 

「そうだね。道具屋を充実させることは、町のさらなる発展のためにも、ローレシア

 今後の重要な課題だよね!」

 

馬鹿にされて怒るかと思いきや、王子は一転してキリッと真剣な顔つきになった。

 

 

「おおっ? なんだか急に王様らしい発言が出たじゃねえか? 朝っぱらからいそいそと

 恋人に会いに行く奴の言葉とは思えねえ、えらく真面目な発言が出たぜ」

 

「カイーン! からかうのは止めてくれって、昨日ぼくはきみに頼んだじゃないか」

 

「へへっ、おまえは甘いな。こんなにおもしれえこと、おれが止めるわけねえだろ」

 

おれたちは笑い合い、小突き合いながら【魔法を売る店】まで歩いた。

 

 

 

「じゃあね、カイン」

 

キメラの翼をいくつか買って、店から出てきた王子がおれに声をかけた。

 

 

「おお。ミリアによろしくな」

 

キメラの翼を手に持ち、出発準備を整えた王子に向けて、おれは軽く手を振った。

 

 

「うん。じゃあ、また。次にぼくたちが会うのは、ナナの誕生日当日かな?」

 

「ああ、そうなりそうだな。おまえたちも当日はサマルトリアに来いよ。おれたちと

 一緒にムーンペタに行こうぜ」

 

「ありがとう。そうするよ」

 

王子は微笑んでうなずくと、キメラの翼を空に向かって放り投げた。

 

 

「さて...っと」

 

虹色の光が薄れ、王子が去ったのを確認すると、おれは軽く手をパンッと叩いた。

 

 

パーティーの会場は決まったが、『肝心なもの』がまだ決まってねえんだ。

 

 

昨日の話によれば、オーウェン「全部の女の子が喜ぶプレゼント」とかいうものを

もう用意しているだと!?

 

くそっ! うかうかしてられねえ。

 

 

おれは小走りで城下町を抜けて城に戻ると、そのまま裏庭へと向かった。

 

 

ナナの誕生日プレゼントとして、真っ先に頭に思い浮かんだのはこの花だ。

 

ベラヌールでぺルラという婆さんに種をもらってきて、王妃に植えてもらった花。

ナナが「なんて美しいのかしら」と、目を潤ませながら見ていた花だ。

 

 

以前、この城の連中は口々に「花のことなら王妃様におまかせを」と連呼していたが、

その言葉に誤りはなさそうだ。

 

目の前の花壇には、見たこともない植物が見事なまでに生い茂っていた。

ただ、つぼみはいくつか膨らんでいるようだが、まだ花が咲いているものはない。

 

 

どれぐらいで花は咲くんだ?

はたして間に合うのか?

 

おれは花に近づくと、つぼみの様子をあちこちから眺めてみた。

 

 

「ふふっ。やっぱりここにいたわね」

 

背後から声がして振り返ると、王妃がおれを見て笑いながら近づいてくるのが見えた。

 

 

「さっきね、ティアとリーナ? あの可愛らしい女の子に会ったら、あの子たち2人して

 もうすぐナナおねえちゃんの誕生日なのってあたしに教えてくれたんだよ。リーナは

 昨日、おにいちゃんと一緒にサマルトリアに来たって言うからさ、それならきっと

 あんたはここにいるだろうと思って来てみたんだよ。やっぱりいたね。あたしの勘も

 まだまだ捨てたもんじゃないわね」

 

王妃はおれのそばにくると、おれを見上げて楽しそうにクックッと笑った。

 

 

「なあ、この花はいつ咲くんだ?」

 

おれは王妃の言葉を無視して尋ねた。

 

 

「う~ん。まだまだかかるよ。早いものでも、咲くにはあと10日はかかるだろうね」

 

 

「そうか...」

 

10日も先だと、ナナの誕生日には間に合わねえ。つぼみの様子から、すぐには

咲きそうにないとわかっていたが、ハッキリ断言されると、さすがにガックリきた。

 

 

「なあ、もう1つ聞きてえんだけど。この花、よそに持っていくのは可能なのか?」

 

おれは気を取り直して再び質問した。

たとえすぐに咲かなくても、ムーンペタでこの花が咲かせられるならそれでいいんだ。

 

 

ムーンペタムーンブルクみたいな場所に植え替えると、すぐに枯れるだろうね」

 

王妃はピシャリと言った。

 

 

「どうしても無理か?」

 

「どうしても無理だね」

 

王妃はおれの心なんてお構いなしに、あっさりと、冷徹に、平然と言い切った。

 

 

「出てきた葉を見る限り、この花はきっと、あの花と同じ種類だと思うんだよね」

 

王妃は大きく広がった葉に手を触れながら、聞いたこともない花の名前を言ってきた。

 

 

「ふうん。そうなのか?」

 

花の名前なんて、言われたところでまったくわからねえ。おれは曖昧にうなずいた。

 

 

「もし、あたしの読み通りだとしたら、この花はきっと暑さに弱くて、涼しい水辺を

 好む花だと思うんだよ。ベラヌールだっけ? あんたが種をもらってきた場所でも

 この花は、涼しい水辺で咲いていたんじゃないのかい?」

 

確かに、花が咲いているのを見たのは、今にも雪が降りそうな寒い日の湖のほとりだ。

おれがそう伝えると、王妃は首を大きく縦に動かし、満足そうにうなずいた。

 

 

ムーンブルクムーンペタも、温暖でカラッとした気候だろ? つまり、この花の

 好む環境とは正反対ってことだよ。そんなところに持って行ったら、元気な苗でも

 あっという間にしおれるだろうね」

 

 

くそっ! やっぱり無理なのか...

 

ぺルラという婆さんにも言われていたが、王妃からもまったく同じことを言われて

おれはがっくりと肩を落とし、その場にへなへなとしゃがみこんだ。

 

 

ナナの誕生日に贈るのはこの花しかねえ。

当日に合わせて咲いてくれれば、ナナはきっと歓声をあげて大喜びするはずなのに。

 

 

もし、この花を贈れないとしたら、おれは代わりにナナに何を贈ればいい?

 

くそっ! どうする?

もう時間はねえぞ!

 

 

 

「ふふっ。この花をムーンペタムーンブルクで咲かせるのは、ほぼ不可能だよ。

 ただし、屋外では... ね」

 

その言葉におれが顔を上げて王妃を見ると、王妃はおれを見てウインクしてきた。

 

 

ムーンペタムーンブルクの屋外で花を咲かせるのは、環境が合わなくて難しいよ。

 でも、花は室内で咲かせることも出来るでしょう? 現にこの城でも、サマルトリア

 環境に合わない花は、鉢に植え替えて城の中に置いて咲かせているんだよ。あんたも

 城の中で、あたしが置いた鉢植えを何個も見たことあるんじゃないの?」

 

王妃はおれに尋ねてきたが、そもそも城の中に花があるかなんて気にしたこともねえ。

 

 

「ああ? そんなもん、あったか?」

 

おれの答えに、王妃は天を仰いで、わざとらしく大きなため息をついた。

 

 

「そんなところにも目を向けられなくて、あんた、よく外で魔物と戦ってきてたわね。

 あんたは身体も力も弱いんだからさ。人よりも注意深く目を走らせて、敵の存在に

 早く気づいて先手を打てないと苦戦するだろうに。あんた、命がいくつあっても

 足りなかったんじゃないの?」

 

 

「ちっ! うるせーよ。今は魔物との戦いの話をしてるわけじゃねえだろ?」

 

戦いのことなんて何も知らないはずのババアに図星を指された。おれは舌打ちすると

近くにある小石を拾い上げて、花壇を取り囲むレンガに向けて投げつけた。

 

 

「まぁ、いいわ。とにかく、室内で温度や水の管理をすれば、外の環境が合わなくても

 花は立派に咲くってことよ。この花も、涼しい場所に置いて水をたっぷりあげれば

 美しい花を咲かせてくれるよ。特に教会の中は石造りでひんやりしているからね、

 ムーンペタの教会みたいな涼しくて薄暗い場所は、この花にはピッタリの環境だよ」

 

王妃はおれを見てにっこり微笑んだ。

 

 

「たとえ外の環境が合わなくても、室内に鉢を置いて温度と水をきちんと管理すれば、

 立派に咲かせることが出来る。ムーンペタのひんやりした教会は、涼しい場所を好む

 この花にはピッタリの環境...」

 

おれはもごもごと王妃の言葉を反復した。

 

 

「じゃあ、この花を鉢に植え替えて室内に置いてもらえば、ナナにプレゼントしても

 問題ねえってことだよな!」

 

花が咲いてナナの喜ぶ顔が見れる!

おれはその場に勢いよく立ち上がった。

 

 

「ええ。それをあんたに伝えたくて、あたしはわざわざここまでやって来たんだよ。

 とびっきり元気な苗を選んで植え替えてあげるからさ。あんたは物置小屋に行って

 植え替えるための鉢を探しておいでよ。苗がこの先もまだ成長することを見越して

 さらに、あんたやナナが持ち運びしやすいことも考えて、鉢はなるべく大きくて

 軽いものを選びなさいよ。あっ、ねえ! ちょっと聞いてるの? カイーン!」

 

王妃の言葉を背中で聞きながら、おれは裏庭の脇にある小さな物置小屋へと向かった。

 

 

 

カインからナナへの誕生日プレゼント。昨年のように「わぁ、すご~い (≧∇≦)」と

ナナが感激して大喜びしてくれるものにしたかったのですが、私の頭ではこれしか

思いつきませんでした (;´∀`)

 

 

初めて見たときにナナが「なんて美しいのかしら」とうっとりしながら見ていた

ベラヌールの花を、ナナの住んでいる場所で綺麗に咲かせてやりたい♡

 

 

ベラヌールで種をもらって来た頃から、ずっと心の中で願い続けていたカインの想いを

察していた王妃ママ。

 

カインの願いを叶えるための方法をずっと考え続けて「外での生育は難しいけど、

鉢植えにして室内で咲かせることが出来る」とアドバイスしてくれました~ (*´ω`*)

(王妃はかなり好きなキャラなので、良いママっぷりを発揮させましたよ ( *´艸`))

 

 

最初から「室内なら大丈夫」とは言わず、いったんカインをどん底に突き落としてから

あとで持ち上げるところは、いかにもカインのママらしいですよね~ ( *´艸`)

 

 

王妃ママの協力を得て、念願のお花をナナにプレゼントできそうなカイン (*´ω`*)

 

目下のライバルは「全女子が絶対に喜ぶプレゼント」を用意するオーウェンですね。

 

さて。カインは『絶対に負けられない戦い』に勝つことが出来るのでしょうか?

 

カインのプレゼント大作戦☆

まだまだ続きますよ~(≧∇≦)♪

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ