ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 99】新しい一面

オルムとレオンの2人が「今は一緒にムーンブルクにいる」と知って興奮状態のおれと

おれがオルムたちを探している理由がようやくわかって、同じく興奮状態の王子は

ルプガナ船団長に連れられて、今晩泊めてもらうミリアの家へと戻ってきた。

 

 

おおっと、いけねえ!

 

おれは家に入ろうとする船団長を呼び止め

「おれがオルムを探していたことは、ナナには内緒にしてほしい」と頼んだ。

 

 

「はははっ。さてはおまえ、姫に内緒で樫の棒となにかするつもりだな。安心しな、

 黙っておいてやるよ。男と男の約束だ」

 

 

船団長はニヤリと笑うと、おれに向けて親指を立てて承諾の意を表した。

そして、その手で自宅の扉を開けた。

 


「ただいまぁ!」

 

船団長が玄関で言うと、ミリアのおふくろがパタパタと足音を立てて出迎えに来た。

 


「おかえりなさい。まぁ、あなたたちも一緒だったのね。良かったわ」

 

ミリアのおふくろは、船団長の後ろにおれたちがいるのを見てにっこり微笑んだ。

 


「ん? なにが良かったんだ?」

 

「お姫様と3人で今晩はうちに泊まってもらおうと思って、準備をしていたんだけど

 2人とも出掛けたままでずっと戻ってこないからね、もしかしたら2人ですでに

 宿をとってしまったんじゃないかと心配していたんだよ。それで、あなたが帰ったら

 2人を探しに行くように頼もうと思っていたところに、一緒に帰ってきたからね。

 ああ、良かったって思ったのよ」

 

ミリアのおふくろは嬉しそうに話した。

船団長も微笑んでうなずいた。

 

 

「ところで、ミリアたちは?」

 

船団長の問いかけに、ミリアのおふくろは苦笑いしながら後ろを振り返った。

 

 

「お姫様にミリアの花嫁衣裳の試作品を見てもらったら、もっとこうしたらいいとか

 こうしたらさらに可愛くなるんじゃないかって意見がいっぱい出てきてね。今もまだ

 2人で楽しそうに、あーでもないこーでもないって話し合っているよ。お姫様が

 あんなに活発に自分の意見を言う子だったなんてね! ちょっと意外だったわ」

 

ミリアのおふくろは、おれと王子を見ながらニヤニヤと笑った。

 

 

「口うるさいナナと一緒の旅は、大変だっただろうね」と、その顔は物語っていた。

 

おれは王子と顔を見合わせて笑い、ミリアのおふくろに向けて肩をすくめて見せた。

 

 

「それで、メシはもう出来てるのか? おれ、すごく腹が減ってんだけど」

 

船団長は腹をさすりながら尋ねた。

 

 

「ええ。もう出来てるわ。みんなが集まるからね、奮発してたくさん作ったんだよ。

 さあ、あんたたちもいらっしゃい。そして、遠慮なくおあがり」

 

ミリアのおふくろは、上機嫌でおれたちを食堂へと案内してくれた。

 

 

おれたちが席につくと、おふくろに呼ばれたミリアとナナも食堂に入ってきた。

 

 

「お父さん、お帰りなさい」

 

ミリアは父親に微笑みかけ、隣にいるナナも船団長に向かってぺこりと頭を下げたが

すぐに視線をミリアに移すと、ミリアと2人でなにやら楽しそうにクスクス笑った。

 

 

言われていたとおり、テーブルの上にはたくさんのうまそうな料理が用意されていた。

 

船団長はさっそく、旺盛な食欲を見せながら勢いよく食べ始めた。

 

いい匂いにつられて一気に空腹を感じたおれも、船団長に負けじとガツガツ食べた。

 

それは王子も同じだった。

おれたち3人は、お互い競い合うようにたくさんの料理を口に運び続けていた。

 

 

男たちがどんどん料理を平らげていくのに対して、女たちはどこか上の空だった。

特にナナは料理には少し手をつけただけで、あとはミリアにこそこそと耳打ちしたり

テーブルに指でなにかを描いてミリアに見せては、2人してころころ笑い合っていた。

 

おそらく花嫁衣装について、ナナはまだまだ話し足りないことが山ほどあるんだろう。

食事も早々に終えて、また話の続きをしたい様子がありありと見てとれた。

 

 

これはおれにとって好都合だ。

ナナがおれと王子のことはそっちのけで、ミリアと花嫁衣裳の話を続けてくれれば

おれも王子と2人でじっくりと今後の計画について話せるからな!

 

今日はとことんツイてるぜ!

おれは料理を次々に口へと運びながら、内心ほくそ笑んでいた。

 

 

「ねえ、あなた。みんなには今晩、どの部屋で寝てもらおうかしら?」

 

夕食も終盤に差し掛かるころ、ミリアのおふくろが船団長に尋ねた。

 

 

「おばさま、お部屋を用意してもらわなくても大丈夫です。あたしはミリアの部屋に

 泊めてもらいますから」

 

ナナはミリアのおふくろに向かってキッパリと言うと、隣のミリアと視線を合わせて

うふふと微笑み合った。

 

 

「あら、そう? それじゃあ、あんたたち2人のお部屋はどうしようかしらねぇ?

 王様と皇太子様を、あまり粗末な部屋に泊めるというのもどうかと思うし...」

 

おふくろはおれと王子に向けて尋ねてきた。

 

 

「おれと王子も一緒の部屋でいいぜ」

 

おれたちも2人で話したいことがあるから... と言いかけて、ぐっと飲みこんだ。

おそらく聞いちゃいないだろうが、今ナナの前で余計なことは言わない方がいい。

 

 

船団長はそんなおれを見てニヤリと笑うと、隣に座る妻に向けて言った。

 

「男は男同士、女は女同士。これぐらいの若い連中には、積もる話もあるだろうよ。

 一緒の部屋でいいって言っているんだから、一緒の部屋にしてやりな。2階の奥に

 少し大きめの部屋があっただろ、あの部屋なら王様と皇太子様を泊めたとしても

 恥にはならねえんじゃねえか?」

 

 

「ええ、そうね。じゃあ、あの部屋に泊まってもらうことにしましょう」

 

「よろしくお願いします」

 

王子は未来の義両親に頭を下げた。

 

 

テーブルの料理はほぼ食い尽くされていた。

そろそろお開きといったところか。

 

「泊まる部屋が決まったのなら、そろそろ失礼してもいいかしら? ミリアとまだまだ

 話したいことがたくさんあるのよ」

 

ナナがもう待ちきれないとばかりに、半分腰を浮かせながら言った。

 

 

ミリアの親父とおふくろは、おれと王子をチラッと見て苦笑いすると

 

「女同士でそんなにおしゃべりしたいなら、もう部屋に行くといいぞ」

 

ナナとミリアを促した。

 

 

「ありがとうございます。おばさま! お料理、全部とっても美味しかったです!

 本当にごちそうさまでした。あと、今夜は泊めていただきありがとうございます!

 では、お2人とも、おやすみなさい」

 

ナナは勢いよく立ち上がると、ミリアの親父とおふくろにそれぞれ頭を下げて

隣にいるミリアの手を取った。

 

 

「ミリア、行きましょ!」

 

 

「え、ええ…」

 

ミリアはナナの勢いに少し戸惑う様子を見せながらも、素直にナナに従った。

 

 

「お父さん、お母さん。そして、王子様、カイン。みんな、おやすみなさい」

 

ミリアはおれたちに微笑みかけると、ナナに手を引かれるまま食堂を出て行った。

 

 

「はははっ。お姫様の本性を見たな。おまえたちには、おやすみの挨拶もなしか」

 

ナナとミリアがいなくなると、船団長はおれたちを見てニヤニヤ笑った。

 

 

「へっ。アレコレうるさく文句を言われたり、ガミガミ叱られないだけマシだよな」

 

「そうだね。今日のナナはすごく機嫌がいいから、むしろありがたいよね」

 

おれと王子がこれまでの経験を思い出しながらつぶやくと、夫婦は大笑いした。

 

 

「でも、単に気が強いワガママなお姫様じゃなくて、すごく良い子だなって思ったわ。

 あれだけミリアのために一生懸命になってくれるんだもの。情に厚い子なのよ」

 

「ふうん、そうなのか?」

 

 

「ああ。『情に厚い』という面は、確かに当たっているかもしれねえな」

 

別にナナの肩を持つ気はなかったが、事実を話すぐらいはしてやってもいいだろう。

 

 

おれはミリアの両親に、ナナが旅の途中にガライの町で盲目の少女と出会ったこと。

その少女の目を治す薬を探すため、危険な沈没船の中を必死に捜索したこと。

 

目が見えるようになった少女とすっかり打ち解けて、身寄りのない少女とは今も

実の姉妹のようにムーンペタで仲良く一緒に暮らしていることを話した。

 

 

2人は静かにおれの話を聞いていた。

 

 

「出会って間もない女の子のために、一生懸命に手を尽くしてあげて、今でも一緒に

 仲良く暮らしているなんてね。お姫様は本当に、心優しい子なんだねぇ。それだけ

 優しい良い子なんだからさ、多少の気の強さは大目にみてあげなきゃね!」

 

ナナとリーナの話に感動したのか、ミリアのおふくろが目を潤ませながら言った。

 

隣の船団長も、しみじみとうなずいている。

 

 

「いや。あの気の強さは、多少っていう域をはるかに超えているけどな」

 

おれの言葉に、それまでしんみりと涙ぐんでいた夫婦は再び大笑いした。

 

 

 

ゲームブックをあらためて読み返してみると、ルプガナでは、カインがミリアの両親に

「おれたちが娘さんを恐ろしい魔物から助けてやったぜ!」と自慢していたり ( *´艸`)

 

王子とカインの2人がハーゴンに対する軍事力の強化』を船団長に依頼したりで

ナナが出て来ることは少ないんですよね。

 

 

ラダトームに向けて船団長と一緒に出港したときも、ナナは船酔いでゲーゲーする

カインを1人で介抱していました。

 

 

これまでのやりとりで、船団長夫婦の中ではきっと「ナナはおしとやかなお姫様」

そんな印象が出来ていたでしょう☆

 

そんな夫婦の思い込みを、根底からひっくり返してやりました~ ( *´艸`)

 

 

こんなにハキハキ言う子なの!?

こんなに主張が激しいの!?

案外、気の強い子なのね!

 

意外な一面にミリアのママは最初は戸惑うんだけど、ナナの気の強さも主張の激しさも

周りの人を大切に想う情の深さから来ているんだとわかって、最後にはホッコリ出来て

良かったんじゃないかと思います♡

 

 

ナナがミリアの花嫁衣装に夢中になって、王子とカインを放ったらかしにしてくれたら

カインたちにとっても(もちろん、私にとっても ( *´艸`))ありがたいことですし

 

ゲームブックでは、王子をめぐって(?)ちょっとギスギスしていたナナとミリアが

同じ部屋で、夜通しおしゃべりするぐらいの仲良しになったのも良いことですし

 

気が強くてハキハキしているナナの性格が、良い方向に進んでいますよねヾ(*´∀`*)ノ

 

 

さて、邪魔者(?)のナナもいなくなり、2人でゆっくり話せる部屋も用意されたし、

王子とカインも、安心してイベントの打ち合わせに入りましょう (≧∇≦)♪

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ