ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 98】夢のような展開

ミリアの家の前でナナと別れたおれと王子は、雷神丸を探しに港の西側へやって来た。

だが、雷神丸はどこかに出港しているようで、港に船の姿はなかった。

 

おれはオルムが今どこにいるか調べてもらうため、ピピンという少年が連れて来た

ルプガナ船団長と共に、港にある事務所へと向かうことにした。

 

 

おれがオルムを探す理由がわかっていない王子は、おれと船団長の話を聞きながら

ずっと戸惑った表情のままだったが、おれと船団長が事務所に向けて歩き出すと

黙っておれたちの後についてきた。

 

 

事務所はちょうど港の真ん中にあった。

 

入出港の船が何艘も行き交い喧騒が聞こえてくる東側と、停泊する船がズラリと並んで

静寂に包まれている西側の対比を交互に眺めながら、おれたちは事務所へと入った。

 

 

事務所といっても、大人の男が5人も入ればすぐ満員になるような小さな丸太小屋だ。

 

事務所の壁には大きな世界地図が貼られており、その世界地図には四方八方に航路が

細かく書き込まれていた。

 

奥に置かれた机の上には大きな地球儀が置かれ、その地球儀にもおびただしい数の

航路が彫られている。

 

 

地球儀の脇には、紙を何枚かまとめて紐でくくったものが無造作に置かれていた。

ルプガナ船団長は、その紙の束を手に取るとパラパラとめくり始めた。

 

 

「ええっと、雷神丸... 雷神丸っと」

 

船団長はブツブツつぶやきながら、派手な音を立てて紙をめくった。

 

 

「おおっ、あったあった。えっと、雷神丸はペルポイに向かったようだな」

 

「へっ、やっぱりそうか」

 

船団長の言葉におれはつぶやいた。

 

 

今、ムーンブルク城跡は不要ながれきがすべて取り除かれ、綺麗に整地されている。

城を再建する準備は整っていた。

 

 

だが、いざ建設を始める段階になって、建築家の間で新しい意見が飛び出したのだ。

 

その意見とは、ペルポイの地下都市を参考に、新しいムーンブルク城でも地下の設備を

強化した方が良いというものだ。

 

ペルポイほどの地下都市をつくる必要はないが、ある程度の地下設備が完成すれば

ムーンブルク城と同様に、地下牢があるだけのローレシア城と、そもそも地下がない

サマルトリア城の今後の国力強化にも大いに役立つと、専門家は声高に話していた。

 

 

以前、ムーンブルク城の地下には、粗末な地下牢がある程度だった。

 

だが、その小さな地下牢に唯一の生存者、ムーンブルク兵のソーリル氏がいたことが

大きな評価を受けたのだ。ムーンブルク城の地下がもっと整えられていれば、生存者は

もっと多く出ていたかもしれないという意見が、いたるところから噴出した。

 

 

そこで、ムーンブルク城を再建するにあたって、ペルポイから地下都市の建設に詳しい

専門家を多く招き、地下設備を強化させようという声がどんどん高まっていった。

 

 

 

そんな風潮もあって今、ムーンブルクにはペルポイからの使者が多く集められている。

 

ペルポイムーンブルク間の移動が盛んな今、人々の移動に適した快速船の雷神丸が

ペルポイに向かって出港したというのも大いにうなずけることだった。

 

 

「となると、オルムの野郎は今、ペルポイにいるのか?」

 

おれは運航管理表を見る船団長に尋ねた。

 

 

「いや。今はペルポイから出港して、ムーンブルクに向かっているようだな」

 

 

ムーンブルクにはいつごろ着くんだ?」

 

おれは祈るような思いで船団長に尋ねた。

 

 

「うーん。天候にもよるけど、遅くてもあと数日のうちに着くんじゃねえか? いや、

 もう着いているかもしれねえな」

 

 

「本当かよ。それで? ムーンブルクに着いた後、雷神丸はどうするんだ?」

 

おれは大きく身を乗り出した。

 

 

「その後か? ちょっと待てよ。へぇ~、そうかい。おもしれえ」

 

船団長はフフッと笑った。

 

 

「なんだよ、なに笑ってんだ?」

 

 

「ああ、いや。大したことじゃねえんだけどな。ムーンブルクに到着した後、雷神丸は

 ルプガナに帰ってくるんだけどよ、どうやら他の奴が雷神丸を操縦するみたいだ。

 樫の棒の野郎め、雷神丸は絶対におれにしか操れねえとか言ってたのによ、えらく

 寛大になったもんだと思ってな。頑固なあいつもようやく、他の仲間たちの成長を

 認められるようになったんだな」

 

船団長は嬉しそうに微笑むと、手にしていた紙をピンと指ではじいた。

 

 

「他の奴に雷神丸をまかせて、オルム自身はどうするんだ?」

 

 

「あいつはしばらくの間、そのままムーンブルクに滞在するみたいだな。その後で、

 ムーンブルクに行った別の船に乗って、こっちに戻って来るみたいだぜ」

 

 

「えっと...。ムーンブルクに残って、オルムはいったい何をするんですか?」

 

ずっと黙っているのも気が引けたのか、王子が船団長に尋ねた。

 

 

「ああ。あの男... レオンだったか? オルムやおまえたちとしばらく一緒に旅をした

 テパの村出身の男がいただろう? そいつが今、ムーンブルクの当番らしいぜ。

 それでオルムもムーンブルクに残って、レオンって奴と一緒にムーンブルク

 復興作業を手伝うみたいだな」

 

 

「なにっ?  レオンも今、ムーンブルクにいるのか?」

 

おれは思わず、運航管理表を持つ船団長の太い腕をわしづかみにした。

 

 

「おれがこんなことで噓つくわけないだろ。本当は部外者には見せられねえんだけど、

 まぁ、あんたたちは特別だからな。ほら、ここを見てみな」

 

船団長はおれに運航表を差し出してきた。

 

 

運航表は読めないぐらいの汚ねえ字で、ごちゃごちゃと書かれていたが、その中に

「オルム → ムーンブルク、作業(レオン)」という走り書きが確かに見えた。

 

 

「すげえ! すげえや!」

 

おれは喜びのあまり、つかんでいた船団長の腕をブンブンと大きく振りまわし、

それだけでは収まらず、無意識のうちに船団長の裸の胸を何度もバシバシ叩いていた。

 

 

「おいおい、なんだなんだ? よくわからねえが、オルムがムーンブルクに残ることが

 よっぽど嬉しいみてえだな」

 

いきなり胸を叩かれた船団長は、おれから少し身体を離しながら声をかけてきた。

 

 

「ああ、最高の気分だぜ!」

 

船団長がおれから身体を引いたため胸を叩けなくなったが、おれは喜びを抑えきれず、

今度は大きく手を広げて王子に抱きついた。

 

 

王子はビックリして身体を固くしながらも、おれに抱きつかれたままじっとしていた。

 

 

「ははっ。おまえがなんでそんなに大喜びしているのか、さっぱりわからねえけど

 それだけ喜ぶのを見ていたら、なんだかおれまで嬉しくなってきたぜ。それより

 おまえたち、今日はおれの家に泊まっていくだろ? というより、泊まっていけよ。

 姫もちょうど家にいるようだし、遠慮はいらねえぜ。それで、他の用がないなら

 一緒に帰ろうぜ。実はおれ、ずっと腹が減ってんだよ」

 

船団長は運航管理表を机の上に置くと、腹をさすりながら外に出るよう促した。

 

おれたちはうなずき、泊めてもらう礼を言って船団長と一緒に事務所を出た。

 

 

ミリアの家に向かって歩きながら、王子がおれの服の袖をつかんで引っ張ってきた。

 

「ねえ、カイン! ぼくはもう、我慢できないよ。そろそろ教えてくれないか?

 オルムがムーンブルクにいること、きみはなんでそんなにも喜んでいるんだい?」

 

 

まあ、王子が自分で気づくまで待っていたら、いつまでたっても変わらないだろう。

しょうがねえ、そろそろ教えてやるとするか。黙っているのも可哀想だからな。

 

おれは王子に耳打ちした。

 

 

おれの言葉を聞くと、王子の顔が一瞬にして明るくパッと輝いた。

 

「そうか! もうあれから1年になるのか!」

 

 

「へへっ、そうさ。それでどうせなら、また同じ奴らで祝ってやりてえと思ってよ」

 

 

疑問が解消されてスッキリしたのか、王子は明るく弾けるような笑顔を見せた。

 

「ああ~、ようやく謎が解けたよ。きみがオルムを探していた理由もわかったし、

 もう1人の呼びたい奴は村にいるというのもね。あれはレオンのことだったんだ」

 

 

「そういうことさ」

 

おれは王子にウインクしてみせた。

 

 

「それで、オルムもレオンもムーンブルクにいると知って、あんなに喜んだんだね。

 探す手間も省けた上に、ムーンブルクにいるなんて確かに1番いい状況だもんな!」

 

「ああ、最高だろ!」

 

 

「うん、本当にそうだね! じゃあ、これからきみはオルムとレオンに会って...」

 

王子も興奮した様子でおれに話しかけてきたが、もうミリアの家は目の前だ。

おれは顔の前で手を広げ、王子を制した。

 

 

「待てよ、王子。もう、ミリアの家に着いちまうぜ。この続きは夜にでも話そう」

 

「ああ、そうだね」

 

王子は晴れやかな顔でうなずいた。

 

 

 

カインがオルムを探す理由は「今年も同じメンバーで、ナナの誕生日を祝おう♡」

 

王子は自分で気づくまで放っておくと、たぶんずーっとわからないままなので (;´∀`)

ここで王子にもネタばらし ( *´艸`)

 

 

3人は永遠の17歳でイイな♪ と思っていたんですが、後先考えずに

「王子は今年の自分の誕生日にミリアと結婚する!」と書いちゃったので... (;´∀`)

 

ナナの誕生日をこのあたりで終わらせておかないと、この先の話が進まない... (-"-)

なので、まずはナナの誕生日、続いてカインの誕生日も書いていきますよ~ (^_-)-☆

 

 

昨年と同じメンバーで誕生日をお祝いしたいと、オルムとレオンを探すカインですが

なんと! 2人とも今は『ムーンブルクにいる』という 夢のような展開☆

(オルムとレオンのそれぞれに会いに行く話を書くのが面倒だからという

 私の思いが反映された都合の良い設定であるような無いような... (;´∀`))

 

 

王子にはネタばらしもしたし、オルムとレオンはすでにムーンブルクにいるし

サプライズイベントに向けて、ここから一気に話が進みそうですね (^_-)-☆

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ