ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 63】主役の座

王子とデルコンダル王がムーンブルクへやって来て、同盟を結ぶことになったが

おれの想定したとおり、デルコンダル王は王子が両国の同盟の証として差し出した

『ロトの印のステッカー』に怒りをあらわにして、現場は不穏な状態になった。

 

 

ピリピリした空気を打ち破るように、ナナは優雅にデルコンダル王の前へ現われた。

 

「『志を同じくする仲間』ですわ。デルコンダル王」

 

ナナはゆっくりデルコンダル王の前へと歩いていくと、腰の前で両手を重ねて

王ににっこりと微笑みかけながら、ひざを軽く曲げて挨拶をした。

 

怒りで顔を紅潮させて王子を見ていたデルコンダル王の視線がナナへと移った。

 

 

ナナは王女らしい優雅なしぐさで、懐からロトの印のステッカーを取り出した。

 

「あたしも持っておりますの、同じステッカーを。お誕生日のお祝いとして、王子から

 プレゼントしてもらいました。最初は、これもただの誕生日プレゼントの1つとして

 たいして気にも留めていませんでした。でも、あの苦しかった戦いの日々を終えて

 最近になって思ったんです。あたしたちがあの苦しい戦いを乗り越えてこられたのは

 このロトの印のもとに、3人で心を1つにしてきたからだって」

 

ナナの言葉を受けて、怒りから好奇心へと王の心境が変化しているのが見てとれる。

 

デルコンダル王は後方に軽く手をあげた。

剣の柄に手をかけていた兵士たちが剣から手を離し、臨戦態勢が解かれた。

 

 

デルコンダル王はロトとは無縁の御方かもしれません。でも、あたしたちに協力して

 国宝の『不思議な宝石』をくださり、サマルトリアハーゴン軍に襲われたときには

 援軍も出してくださいました。ロトとはまったくご縁のない御方でも、あたしたちと

 心を1つに共に戦ってくださったのではないですか?

 

デルコンダル王も、城にいる男たちも、無言でナナの言葉に聞き入っている。

 

 

「あたしはデルコンダル王のことを『志を同じくする大切な仲間』だと

 思っています。これまで心を1つにして共に戦ってくれた

 大切な仲間であり、今後もずっと共に平和を守り続ける

 大切な仲間である』あたしは思っています。そして、王子もあたしと

 同じ想いで、デルコンダル王にこのステッカーをお渡ししているんです!」

 

あたりはシーンと静まり返った。ここにいる全員の視線がナナに注がれている。

 

 

しばしの沈黙の後、デルコンダル王がポツリと口を開いた。

 

「… そなたはわしの心を動かす天才かもしれぬな、ムーンブルクの王女よ」

 

そのままデルコンダル王は聴衆の方を向き、ハッキリとした口調で話し始めた。

 

 

「正直に言おう。同盟の話を聞いたとき、わしの心にはためらう気持ちがあった。

 今や、このローレシア王は『破壊神を破壊する』ほどの強大な力を持つからな。

 長きにわたって敵対関係にあったローレシアが『積年の恨み』として攻めてきたら

 我がデルコンダルの今の戦力では、あっという間に滅ぼされてしまうだろう。

 今回、同盟を結ぶというのも名ばかりのもので、実際のところデルコンダル

 ローレシアの属国になってしまうのではないかと懸念しておったのじゃ。じゃが…」

 

デルコンダル王は視線をナナに向けて頬を緩めると、かすかに笑みを浮かべた。

 

「わしの懸念は、ただの1人よがりの思い過ごしだったようじゃな。ローレシアには

 我がデルコンダルを攻め落とす気もなければ、属国にする気もまったくない。

 なぜなら、わしを『志を同じくする大切な仲間』と思っているから。

 そなたはそう言っているわけじゃな、ムーンブルクの王女よ」

 

デルコンダル王の言葉に、ナナは満面の笑みでしっかりとうなずいた。

 

 

「この王女の意見に間違いはないか? ローレシア王よ」

 

デルコンダル王は王子に向けて鋭い視線を投げかけた。

 

「はいっ! 間違いありません。ぼくもデルコンダル王は

『志を同じくする大切な仲間』だと思っています!」

 

王子はデルコンダル王の視線を真っすぐに受け止めて、力強く言い切った。

 

 

「よしっ! わかった。わしは今ここで、ローレシアとの同盟関係を締結しよう。

 今後も、デルコンダルローレシア、およびロト3国と

 志を同じくし、心を1つにして平和維持へと努めよう!

 このステッカーは我らの心が1つであることの証じゃ」

 

デルコンダル王は、王子の手から『ロトの印のステッカー』を取りあげると

人々に向けて大きく掲げた。

 

ムーンブルク城にいる男たちから、盛大な拍手と歓声が起こった。

 

 

おれの計画したとおり、ナナがデルコンダル王を説得してくれて、デルコンダル王は

ローレシアとの同盟締結に合意してくれた。

 

すべては成功したはずだ。

だが…

 

 

ナナにおれの計画について事前に話していなかったことが、思わぬ結果を招いた。

 

ムーンブルクにいる男たちの目は、熱のこもった言葉で王様の心を動かしたナナと

ナナの言葉を受けて同盟締結を力強く宣言したデルコンダル王に注がれている。

 

王子は「ナナの言葉に間違いはない」と言っただけで、あとはデルコンダル王に

ステッカーを奪われたまま、ぼんやりとその場に突っ立っているだけだ。

 

誰も王子のことなんて見ちゃいない。

 

おれは心の中で王子に毒づいた。

 

「おい! おまえ、主役の座をあいつらにとられてるぜ」

 

 

 

旅の途中でデルコンダルに行ったときも、王様はナナの言葉に心を動かされて

デルコンダルもロト3国と共にハーゴンと戦う」と約束してくれましたよね。

なので今回も、ナナの言葉に心を動かされて同盟締結する展開にしました (*´ω`*)

 

それは良いんですが、ナナに計画を話してなかったために、王子の立場が… (;´∀`)

 

本来のカインの計画でいけば、ナナはあくまても王子のサポート役であり、

王子が主役となって同盟締結にこぎつけるはずが、主役の座を奪われちゃいました。

 

 

本人に主役の座を奪う気はさらさらなかったけど、自分の想いを熱く語っただけで

デルコンダル王と城にいる男たちの心をわしづかみにしたナナ。罪な女だぜ ( *´艸`)

 

そして、ここぞとばかりに高らかに同盟締結を宣言して注目を集めるデルコンダル王。

こちらも、やっぱりあなどれないタヌキ親父ですよね ( *´艸`)

 

 

聴衆の熱のこもった視線をナナとデルコンダル王に奪われて、さらには手にしていた

ロトの印のステッカーも奪われて、ぼんやりと突っ立っているだけの王子 ( *´艸`)

 

さて、王子は主役の座を取り戻すことが出来るのでしょうか?

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ