ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 79】呪文と紋章の行方

おれが久しぶりにムーンブルクの様子を見に行くと、ナナが「話したいことがある」

ムーンペタでおれを待っていると知らされた。急いでムーンペタの教会を訪れたおれは

ナナが受け取ったムーンブルク王と王妃の魂が宿る美しい指輪を見せてもらった。

 

この指輪を見せるのがおれを呼び出した目的かと思いきや、ナナは他にもおれに

相談したいことがあるのだという。

 

 

「相談したいことってなんだよ?」

 

おれが尋ねると、ナナは真剣な顔つきから少し表情を和らげて逆に尋ねてきた。

 

 

「ねえ、カイン。今、リーナちゃんはいったいどこにいると思う?」

 

「リーナ? この前みたいにムーンペタの友だちと遊んでるんじゃねえのか?」

 

おれの答えにナナはふふっと軽く笑った。

 

 

「ううん。リーナちゃんはね、今はアルファズルのところにいるのよ」

 

「アルファズルのところ?」

 

 

ナナは軽く胸を張り、自分のことを自慢するように誇らしげな顔を見せた。

 

「リーナちゃんね、将来はアルファズルのように教会のお仕事をしてみたいんだって。

 聖職者になるのか賢者になるのかはまだ決めていないけど、アルファズルのもとで

 修行することになったのよ」

 

「へえ。リーナは教会の仕事に就きたいのか。あいつは根が優しくて心も純粋だから

 教会の仕事はピッタリじゃねえか。うん、なかなかいい選択だと思うぜ」

 

ナナはおれの言葉に大きくうなずいた。

 

 

「ええ、あたしもそう思うわ。それでね、これからリーナちゃんは成長度合いに応じて

 アルファズルから呪文も教えてもらうことになるでしょう? その話をしていたときに

 アルファズルに言われたのよ。ハーゴン討伐に際しておまえたちに授けた呪文は

 おまえたちのものだから、自分たちの納得できる形で後世に継承していくように。

 どんな風に継承していくかは、カインと相談して決めると良い』ってね」

 

「呪文の継承... か」

 

 

「ええ。それとね『呪文の継承についてカインと話す機会に合わせて、紋章についても

 王子も交えて3人でよく話し合うが良い』とも言われたわ」

 

「紋章...。そうだな、紋章のこともすっかり忘れていたぜ」

 

 

元々、ムーンブルク城で保管されていた5つの紋章は、ルビス様の力を弱める目的で

ハーゴン軍に真っ先に狙われ、ムーンブルク城落城の際にバラバラにされた。

 

おれたちは世界中をまわりバラバラになった紋章を集め、最後はロンダルキアの洞窟で

5つ目の紋章を手に入れた。

 

5つの紋章を一列に並べると、あたたかな光と共におれたちの前にルビス様が現れた。

ルビス様はナナの首に『ルビスの守り』をかけ、結界を解いてロンダルキアの大地へと

おれたちをいざなってくれたのだ。

 

 

旅を終えた今、ナナは引き続き『ルビスの守り』を肌身離さず身に着けているが、

紋章に関しては適切な保管場所が思い浮かばず、とりあえず保管場所が確定するまでは

アルファズルの力でムーンペタの教会に厳重に封印してもらっていた。

 

 

「この先、呪文と紋章をどうするか… おまえが相談したいことってこのことか」

 

「ええ。紋章に関しては王子にも意見を聞きたいけど、呪文についてはあたしたちで

 決めることでしょう? だから、まずはカインと話しておきたいなって思ったのよ」

 

 

おれたちが旅で取得した呪文のほとんどは、平和な今の世の中では必要のないものだ。

ホイミやルーラ、レミーラは今後も役に立つと思うが、ザラキイオナズンなんかは

今はもう必要ないし、今後もずっと必要ない世の中が続いて欲しい!

 

ただ、そうも言っていられない。

有事に備えておくことの大切さを、おれたちは今回の経験を通して学んだからな。

 

 

「攻撃力のある強力な呪文は今の世の中には必要ないわ。でも、考えたくはないけど

 この先、またハーゴンみたいな存在が現れるかもしれないでしょ? そうなったときは

 あたしたちの子孫がまた立ち上がることになると思うのよ。そのときのためにもね

 あたしたちが覚えた呪文は、なんらかの形で子孫たちに残しておきたいと思うわ」

 

 

「おれたちの子孫に残しておくにしても、どうやって残しておくかが問題だよな。

 強力な呪文はそれだけで狙われる対象になるからな。しかも、呪文を求める奴は

 邪悪な魔物だけじゃないぜ。呪文で人を操りたいとか、権力を手に入れたいとか

 一見、普通に見える奴らでも強力な呪文を前にすると豹変する可能性はあるからな」

 

 

「そうね… どうしたらいいかしら」

 

 

おれはしばらく考えて言った。

 

「呪文も、修行を受けた奴らが師匠から伝授される分には問題ねえと思うんだよ。

 そいつの資質をわかったうえで教えているわけだからな。そんな師弟間の伝授以外は

 口頭での伝授は避けて、やっぱり巻物にして厳重に管理するのがいいんじゃねえか?

 巻物はある程度の知識がねえと読めないものだしよ、邪な奴らに利用される可能性も

 少しは減らせると思うぜ。おれたちが覚えた呪文については、巻物にして残すのが

 最適な方法だとおれは思うな」

 

 

「ええ、そうね。巻物にして残すという点はあたしも賛成よ。ただ、その大切な巻物を

 どこで保管するの? サマルトリアムーンブルク? どっちが適しているかしら?」

 

 

ナナの質問を聞きながら、おれの頭には最適な保管場所が浮かんでいた。

 

「へへっ。呪文を保管するとしたらここしかないってぐらい最適な場所があるぜ」

 

「ん? いったいどこよ?」

 

 

「それはローレシアさ!」

 

 

「ええっ? ローレシアですって?! いったいどうして?

 ローレシア呪文とはまったく関係ない場所なのに」

 

よっぽど意外な答えだったのだろう。ナナは目を見開いて驚いている。

 

 

「へへっ。だからこそいいんだよ。そうだな、話は早い方がいい。よし、今から一緒に

 ローレシアへ行こうぜ。どうぜ紋章のことは王子にも相談しなきゃいけねえしよ」

 

善は急げだ。おれは勢いよく立ち上がると、そのまま教会の外へと向かった。

 

 

「えっ! ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

ナナは慌てておれの後を追いかけてきた。

 

 

 

ゲームしていたとき気になっていました。

サマルトリアの王子ムーンブルクの王女は普通の生活に戻っても呪文を使うの? と。

 

ホイミキアリー、ルーラぐらいは使っても良いけど、ザラキイオナズンを使える

王子や姫って怖いよね ( *´艸`)

 

サマルトリアの王子ムーンブルクの王女はレベルが高くて力もあるから良いけど、

次の世代に移る頃には、呪文を悪用しようとする輩もいるだろうな~というところから

今回の話が出来ました。

 

 

あと、ゲームでは最初から世界中に散らばっている設定ですが、ゲームブックでは

5つの紋章は当初ムーンブルク城で保管していたという設定なんですよね。

 

ロト3国から真っ先にムーンブルクが狙われたのは紋章を引きちぎるためだったと

カインがムーンブルク城を訪ねたときにハッキリと言及しています。

 

 

紋章を取り戻してハーゴンも倒したけど、その紋章をまたムーンブルクで保管する?

そしたら、何か起きたときはまたムーンブルクが狙われるんじゃないの?

 

 

平和になった今、魔物や邪悪な考えを持つ人たちに狙われるであろう呪文と紋章を

どのように守り、管理していけば良いのか? 3人への新たな課題ですね。

 

 

その問題に対して「呪文の巻物を保管するのはローレシア一択!」と言い切るカイン。

 

さて、カインはなぜ「ローレシアが良い!」と言っているのでしょうか?

 

ナナとの会話の中で「呪文とはまったく関係ない場所だから良い」と言っていますが

その真意は?!

 

みなさまは、いろいろ推理しながら次回をお待ちくださいね (^_-)-

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ