ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 54】3人の絆

大きな困難を乗り越えるために必要なのは、綿密な奇策を用いることではなく

仲間と心を1つにして、信じあい助け合いながら共に立ち向かうこと。

 

アルファズルの言葉に目が覚めたおれは、今の気持ちをナナに伝えることにした。

 

 

教会の入口では、おれのことを心配したナナが待っているかもしれない。

おれはアルファズルに頼んで裏口から外へ出ると、ルーラでローレシアへ向かった。

 

そして、ローレシア売店で『あれ』を買い、またルーラで教会裏へと戻って来た。

裏口から再び教会に入り正面へ行くと、石段に腰かけているナナの姿が見えた。

 

 

ナナは花壇の花をぼんやりと眺めていたが、おれの姿を見つけてハッと顔をあげた。

おれは黙ってナナの隣に腰かけた。

 

「リーナは?」

 

「さっき、近くの子どもたちが誘いに来てね、一緒に遊びに行ったわ」

 

ナナの話では、ムーンペタにはリーナと同じような年頃の子どもがたくさんいて

最近、リーナはその子たちと仲良くなり、一緒に遊ぶことも増えたんだそうだ。

 

「そうか、リーナもこっちでたくさん友だちが出来たか。良かったな」

 

「ええ、そうね。本当に良かったわ」 ナナも嬉しそうに笑った。

 

しばらく、沈黙が訪れた。

 

 

「カイン… あの、大丈夫?」

 

ナナが不安そうに声をかけてくる。

 

おれは大きくひと息ついた。

 

「ごめんな、ナナ。おれにまかせとけなんて大見得を切ったけどよ、おれの策は

 失敗するかもしれねえんだ。今日はそれでアルファズルに相談に来たんだよ」

 

「…そう。… でも、たとえあなたの策が上手くいかなかったとしても、あなた1人が

 責任を感じることなんてないのよ。あたしは、これから先どんなことがあっても

 あなたや王子の味方だから」

 

ナナは優しくおれの手をとると、真っ直ぐにおれを見つめてきた。

 

心臓がビクンと跳ね上がる。

おれは反対の手でゆっくりナナの手を離した。指先が震えているのが自分でもわかる。

 

 

気をそらすため、おれは後ろ手をつき、上体を大きく伸ばして空を仰いだ。

 

「おれの策が失敗したらよ、王子は世界中からバケモノ扱いされるかもしれねえ。

 ローレシアは滅亡して、おれたちもバケモノの仲間として迫害されるかもな。

 それでも、おまえは変わらず王子の味方でいられるのか?」

 

「ふん、バケモノ扱いがなによ。あたしなんて、犬だったんだからね」

 

突然のナナの強烈な発言に驚いて、おれは思わずナナの顔を見た。

ナナはかすかに微笑んでいる。

 

「ここであなたを待っている間、いろんなことを考えたわ。そして、思い出したのよ。

 あの日のことを…

 

 

ナナは町の入口あたりを指さした。

 

「ちょうど… あのあたりだったかしら。あなたは、魔法で小犬にされていたあたしを

 抱きかかえて、マンドリルとスモークの群れから必死でかばってくれたわ。

 逃げきれる状況じゃないのに、それでもあたしを抱えて必死で走り続けてくれた。

 あのときのあなたの腕のぬくもり、あたしは今でもハッキリと覚えている…」

 

ナナの目から涙があふれた。ナナはとめどなくあふれる涙をぬぐいながら話し続けた。

 

「そして、あなたからあたしを託された王子も、あたしを抱えて必死にかばいながら

 最後まで勇敢に戦ってくれたのよ。絶対に勝てる相手じゃないとわかっていたのに…

 あなたの死を無駄にしないと必死に戦う王子の姿も、あたしは絶対に忘れないわ」

 

 

f:id:john0910:20170916023036j:plain ゲーム序盤での最大の難敵・マンドリル先生



あのとき… 後ろからどんどんせまってくる獣たちの息づかいと足音を聞きながら

おれは「とにかくナナだけは守らなければ!」という思いだけで走っていた。

 

もうダメだ、追いつかれる! と思ったとき、王子がこっちに走ってくるのが見えた。

おれは王子に向かって小犬を放り投げて... 次の瞬間、マンドリルに襟首をつかまれた。

そのまま地面にたたきつけられて踏みつけられて… その後の記憶はない。

 

だが、やっぱり王子も立ち向かってくれたんだな。あいつもおれの想いを汲んで

ナナを守りながら、あんな恐ろしい獣たちと最後まで戦い抜いてくれたってことか。

 

 

「あの日、あなたたちを見て、あたしは誓ったのよ。

 この先どんなことがあっても、あたしは絶対に2人の

 味方でいるんだって。王子とカインが命を懸けて

 あたしを守ってくれたように、これからはあたしが

 命を懸けて、2人を絶対に守ってみせるって!」

 

ナナは涙をボロボロこぼしながら、おれの瞳を見つめてハッキリと宣言した。

 

 

ナナの言葉に胸が熱くなる。

おれは潤みそうになった瞳をごまかすように、懐から『あれ』を取り出した。

 

ナナがおれの手元をのぞき込んでくる。

 

「それって、ロトの印のステッカー? なぜ、あなたがそんなもの持っているの?」

 

「おまえも持ってるよな? 誕生日に王子からプレゼントされてよ。それでなんか

 おれも持っておきたくなってな」

 

「でも、あなたバカにしてたじゃない。そんなものプレゼントするのかって」

 

「ああ。確かに、以前はバカにしてたよな。でもよ、今回おれの考えた作戦が

 失敗するかもしれねえってなったときにさ、おれも思い出したんだよ。

 これまでの旅のことを。絶望的な状況をおれたち3人で乗り越えてきたことを」

 

おれは自分の手の中にある「ロトの印のステッカー」を見つめた。

 

「本物のロトの印は王子が持っているからよ、おれたちにはこんなものしかねえけど

 でも、これを見て思ったんだ。おれたちはロトの印のもとに心は1つだって」

 

「… ロトの印のもとに、心は1つ…」

 

 

「ああ。だから、あの日おまえが誓ったように、おれも

 ここで誓おうと思う。この先、どんなことがあっても

 おれは絶対に、王子とナナの味方でいるってことをな。

 これから先も、おれは命を懸けて、おまえたち2人を

 絶対に守ってみせるってな。これは本物じゃねえけど

 おれは今ここで、この『ロトの印』に誓うよ」

 

 

 

「… カイン。 ちょっと待ってて!」

 

ナナは立ち上がり、教会の中へ飛び込んだ。

しばらくして戻って来たナナの手には「ロトの印のステッカー」が握られている。

 

「あたしも、あらためて誓うわ。この『ロトの印』に。

 これからもずっと、あたしたちの心は1つだって!」

 

おれとナナは見つめあい、しっかりとうなずきあった。

 

 

 

カインとナナは『ロトの印』のもとに、想いを確かめ合い誓いを新たにしました!

 

ただの「人気ナンバーワンのお土産」も、人によっては大切な誓いの品になる☆

「ロトの印のステッカー」の価値が急上昇していて、私自身もビックリしています。

(こんなことになるなら、誕生日にあんなにディスるんじゃなかったな… (;´∀`))

 

そして、ゲームブックで初めて読んだとき、子ども心にかなりのショックを受けた

ムーンペタでのマンドリル戦。

 

いつか、ナナの言葉で、このときのことを振り返ってもらいたいと思っていたので

ここで書いてみました (*´ω`*)

 

無力な犬だったナナが、あのマンドリル戦でなにを感じていたのか (´;ω;`)

 

2人が命懸けで自分を守ってくれたあの戦いを通して、ナナは感動したと思うんです。

そして、自分も2人を守れるような存在になりたいと思ったことでしょう。

 

その気持ちをカインに伝えて、王子も含めた3人の絆が強まりましたね (*´ω`*)

 

今回の話し合いが、カインが考えた策にどう生かされるのかはわかりませんが、

ここで、カインとナナが「心は1つ」だと誓いを立てたことで、王子の悪名に対しても

3人で乗り越えようという思いが固まり、これから良い方向へと転がる事でしょう☆

 

そして(ここまでグダグダとかなり長くかかりましたが (;´∀`))、いよいよ

ムーンブルク再建の日がやって来ます!

 

 

次回もお楽しみにヾ(*´∀`*)ノ