ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 128】 見せつけ

王子は、馬車で船着き場へ向かいルプガナに帰るミリアに挨拶しようとしていたが、

ムーンブルクの当番に向かう前に「見送りに来た」というサイラスにつかまった。

 

 

ミリアがいることを知られないように、なんとかサイラスだけを追い払いたい王子に

おれは無言で助けを求められ、とっさにサイラスを撤退させる策を思いついた。

 

遅刻したくないなら、王子の出発を待たずにムーンブルクに行くしかない状況をつくり

「まだ時間がある」と粘るサイラスには、王子の力まかせに腕を引っ張る攻撃に加え

「責任者として、ムーンブルクの進捗状況を見てきて」というナナの援護射撃もあり

おれたちは3人で見事に連携して、サイラスの撃退に成功した!

 

 

 

サイラスの腕をつかみながら、早足で町の入口へと引っ張っていく王子に、サイラスが

くどくど説教している様子が見えた。

 

王子はうんうんと素直にうなずきながら、サイラスをどんどん引っ張っていく。

ミリアが馬車の幌から顔を出して、そんな2人の様子を見守っていた。

 

 

町の入口に着いた王子とサイラスを、待っていた青の騎士団の護衛2人が直立不動で

出迎えているのが見える。

 

サイラスが2人の護衛になにやら指示を出すと、2人は胸に手を当ててうなずいた。

 

サイラスは護衛への指示が終わると、王子たちが乗って帰る馬の様子を観察した。

その後は王子を見て一礼し、少し離れたところに繋いでいた別の馬にまたがる。

 

 

馬に乗ってムーンブルク方面へ走り出したサイラスを見送ると、王子は2人の護衛に

なにやらひとこと声をかけてから、すぐに全速力でこちらに戻って来た。

 

 

「王子様~!」

 

走ってくる王子を見て、馬車から落ちそうなほど身を乗り出してミリアが叫ぶ。

 

 

「ミリア!」

 

王子は馬車の前まで来ると、今にも落ちそうなミリアをしっかりと抱きとめた。

 

 

2人はそのまま固く抱き締め合った。

 

 

おい、なんだこれ。

 

おれはこんなものを見せつけられるために、サイラスを追い返してやったというのか?

やってらんねえぜ、ちくしょう!

 

おれはペッと地面につばを吐いた。

 

 

ただ、抱き締め合っている王子とミリアを見て「やってらんねえな」と思ったのは

どうやらおれだけのようだ。

 

ナナ・ティア・リーナの3人は美しい物語を見ているような顔でうっとりと見つめ、

おっさんどもは我が子を見るような柔和な表情で微笑ましく眺めていた。

 

 

しばらく王子とミリアは2人だけの世界に入ってきつく抱きあっていたが、さすがに

出発時間が来たようだ。船員が王子の肩を叩き、申し訳なさそうに声をかけた。

 

「... 王子様、おじょうさん、すみません。そろそろ出発しないと船に間に合いません」

 

 

船員の言葉を受けて、王子とミリアはようやく身体を離すと、お互いに見つめ合い、

照れたように微笑みあった。

 

「ごめんなさい、ワガママ言って」

 

「すみません。お時間を取らせて」

 

 

ミリアと王子が船員たちに謝ると、船員の1人が「では、出発しますね」と言い

馬車はゆっくりと動き出した。

 

 

ムーンペタの町の中を歩いている町民たちに配慮したのか、王子とミリアのためなのか

馬車はゆっくりとした速度で進む。

 

 

幌から顔を出して王子を見つめるミリアを見ながら、王子も馬車と一緒に歩き出した。

 

 

ここで馬車を見送って別れるのではなく、王子が馬車について行ってしまったので

ナナ・ティア・リーナは「あたしたちはどうする?」といった感じで顔を見合わせた。

 

こいつらはどうする気かと眺めていると、3人は王子の後ろを歩いてついていく。

 

 

 

おいおい、まだ続くのかよ...

もう放っとけよな。

 

おれはすっかり呆れて、1人でこの場に残ろうと思った。なんせおれの足元には

ティアから押しつけられた荷物がある。

 

重い荷物を持たされながら、あの2人に見せつけられるなんてまっぴらごめんだぜ!

 

 

だが、町の入口には王子の護衛がいる。

あの様子だと、王子は町の入口まで馬車について歩いて行っちまうだろう。

 

馬車の見送りが終われば、もはや護衛たち2人を待たせる理由はない。

ミリアたちを見送ったあと、王子は戻って来ずに護衛たちと帰っちまうかもしれねえ。

 

 

もし、おれがこのまま1人でここに残っていたら、王子が帰っちまった後でナナに

「あんた、王子の見送りもしないなんて最低よ!」と罵られるだろうな。

 

「荷物があったから」と言い訳したところで「ふんっ、これぐらいの荷物がなによ」

ナナには一蹴されるだろう。

 

 

「どうせ、王子とミリアに嫉妬したんでしょ。あんたってホント、心が狭いわよね」

 

「おにいちゃん、男の嫉妬は見苦しいってお母様が言ってたわよ!」

 

「おにいちゃんとおねえちゃんが帰るのに、ちゃんとさよなら言わなきゃダメだよ!」

 

3人に責め立てられる未来が想像できた。

 

 

くそっ! おれは荷物まで持ってるのによ!

 

おれはティアのわけのわからねえ袋を肩にかけ、大きなバスケットを手に取ると

小走りで馬車を追いかけた。

 

 

王子とミリアは、馬鹿の一つ覚えのように相変わらず見つめ合っていた。

別れのときがせまっていて切ないのか、ミリアはうるうると瞳を潤ませている。

 

 

けっ! 胸糞悪いな。

なんで重い荷物を持って、こんなものを見せつけられなきゃならねえんだよ、くそっ!

 

おれは道端の小石を蹴飛ばしながら歩いた。

 

 

王子の後ろを歩く女たちは、歩きながらずっとニヤニヤして何かを話している。

 

ティアがナナに向かって何か言い、ナナは前の2人を見てコロコロと楽しそうに笑う。

その後、ティアはリーナにも何かを言って、リーナは大人びた表情で笑った。

 

 

おい、王子よ。おまえ、こいつらに馬鹿にされて笑い者にされてるぞ!

 

おれは王子の背中につぶやいた。女に夢中なあの馬鹿には聞こえるはずもねえがな。

 

 

町の入口が近づいてきて、王子を待つ護衛たちの顔も見えるようになってきた。

 

青の鎧に身を包み、精悍な顔立ちの青年2人は、馬車に続いてこちらに歩いてくる

君主を見て、戸惑いの表情を浮かべている。

 

 

そりゃあ、そうだろう。

サイラスには「国王は賢者様にご挨拶してからこちらに来るので、ここで待機せよ」

命じられていたに違いない。

 

 

アルファズルに挨拶してからゆっくり戻って来るはずの王子が、全速力で町に入り、

馬車に乗る女と熱い抱擁を交わして、さらに女が乗る馬車を追いかけて、今まさに

こっちにやって来るんだからな。

 

何が起こったんだと戸惑って当然だ。

おれは青の騎士団の2人に同情した。

 

 

もし、今回のことで王子に愛想を尽かせたのなら、おまえたちのことはサマルトリア

緑の騎士団が引き取ってやるぜ!

 

おれがそんなことを考えていると、護衛の2人と目が合った。

 

 

「おまえたちのことは、おれにまかせとけ」という意味を込めて2人に手を振ると、

兵士たちは戸惑った表情を浮かべ、ぎこちなく会釈を返してきた。

 

 

「町の外に出たら速度をあげますので、揺れにお気をつけください」

 

先頭で馬車を引いていた船員が、幌の中にいるオルムたち3人に声をかけた。

 

その声を合図に、今まで歩きながら馬を引いていた男たちが、馬と幌の間にある

空き場所に腰をかけて手綱を握った。

 

 

オルムとレオンは「了解」の意味で手を上げて応じたが、ミリアは船員の声を聞くと

悲しそうな表情を浮かべ、王子を見た。

 

だが、そんなミリアを励ますように、王子がミリアを見つめて力強くうなずくと、

ミリアは表情を和らげて笑みを浮かべた。

 

 

町の入口にある門を抜けると、予告していた通りに馬車は速度を上げて走り出した。

門の前に立つおれたちからどんどん離れていき、馬車の姿は小さくなっていった。

 

 

「王子様~!」

 

ミリアが泣きそうになりながら、幌から大きく身を乗り出して手を振っている。

 

 

「ミリア、また会おう!」

 

腕がちぎれそうなぐらいブンブンと振りながら、王子が馬車に向かって叫んだ。

 

青の騎士団の2人は口をポカーンと開けて、自分たちの君主を見つめている。

 

 

おれは同情しながら2人の横を通りすぎたが、そこでハタと気がついた。

 

 

おい、このままじゃやべえぞ!

 

こいつらがサイラスにありのままを報告しちまったら、おれたちがサイラスについた

噓がバレるじゃねえか!

 

くそっ! 王子の野郎め。てめえって奴は、本当につくづく世話の焼ける奴だな!

 

 

おれは町の入口にある門のそばにティアから持たされた荷物をドカッと降ろすと、

背後からゆっくりと護衛たちに近づいた。

 

 

 

カインとナナのイチャイチャは書いていてすごく楽しいのに、王子とミリアになると

書いたそばから「もうお腹いっぱい」になっちゃうのはなんでだろう (;´∀`)

 

王子のことは(カインほどじゃないけど)大好きだし、ミリアのことも嫌いじゃない。

(嫌いじゃないって意味深 ( *´艸`))

 

なのに、2人のイチャイチャは「もう、勝手にやっててくれ」という気分になる (;'∀')

 

 

抱き締め合う王子とミリアを見て「おい、なんだこれ」とカインが毒づく場面ですが

これ全部、私の心の声です ( *´艸`)

 

おい、なんだこれ。

おれはこんなものを書かされるために、サイラスを追い返してやったというのか?

やってらんねえぜ、ちくしょう!

 

 

教会の前で見せつけられて終わるかと思っていた王子とミリアの愛の世界は、なんと

町の入口まで継続~ (;´Д`)

 

 

自分たちが仕える君主様のイチャイチャを見せつけられてポカーンとしている護衛に

1度は同情していたカインですが、このままではサイラスに嘘がバレると気づきます!

 

さて、サイラスに噓がバレないようにとカインがとった奇策とは?!

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ