ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 76】花に合う水

ベラヌールでもらってきた花の種が入った麻の小袋をリオスの投げ縄で奪われた。

奪われた小袋はティアの手に渡り、ティアは「お母様に頼んであげる!」と言って

小袋を持って外へ駆け出した。

 

 

出遅れたとはいえ、ティアの鈍足におれの俊足で追いつけないはずがない。

おれはあっという間にティアに追いついたが、ティアはくるりと方向転換して

またおれから逃げ出した。

 

「ええい、うっとおしい。ちょこまか動くんじゃねえ! さっさと捕まりやがれ!」

 

 

捕まりそうになるたびにくるくると向きを変え、おれの手から逃げ続けるティアに

いい加減イライラしているとティアはくすりと笑って、またサッと身をひるがえし

おれの脇を抜けて駆け出した。

 

あっ! と思ったときにはもう遅かった。

おれの脇を抜けたティアは、さっさと後宮の入口から中へと入っていってしまった。

 

 

後宮には親父以外の男は入れない。

 

くそっ、あと一歩だったのに!

おれは砂を噛むようなじりじりした思いで後宮の入口にたたずんでいた。

 

 

しばらく待っていると、ティアが王妃の手を引っ張りながら戻ってくるのが見えた。

王妃はまた昼寝でもしていたのか、あくびをしながら気怠そうに歩いてくる。

 

 

種は裏庭にでも植えるつもりなのだろう。

王妃はおれをチラッと一瞥した後、そのまま裏庭の方へと歩き続けていく。

 

「黙ってついてこい」ということだろう。ちっ。しょうがねえ。ついていくか。

 

おれはゆっくり歩いていく母娘から少し距離を開け、裏庭へと歩いていった。

 

 

「いつも城にいないでふらふらとほっつき歩いていると思ってたら、またどこか行って

 ヘンなものをもらって来たんだってね。これはいったいなんなのさ」

 

裏庭に到着すると、王妃は立ち止まりくるりとおれの方を向いた。気怠そうな表情で

おれに向けて麻の小袋を突き出してくる。

 

 

ベラヌールでもらった種だ」

 

「あんたね、くれるって言われたからって勝手にものをもらって来ちゃいけないよ。

 このことはあんたが小さいときから、ずっと口うるさく言ってきてるじゃないか。

 ほら、前にも同じことがあったろ。あんたが1人で勝手に城の外に遊びに行って、

 そこで知らないおじさんと仲良くなって、あげると言われたからって…」

 

「うるせーな。そんなガキの頃のこと、いちいち蒸し返すんじゃねえよ。それに今回

 もらったのは別に怪しいもんじゃねえだろ。ただの花の種じゃねえか」

 

王妃がおれのガキの頃の話を延々としそうになったので、おれは話の腰を折った。

 

 

「ただの花の種? あたしはいろんな種を見てきたけど、こんな種は見たことないよ。

 これが誰かの差し金で、いかがわしいものが咲いたらどうするんだい」

 

「それは絶対にねえよ。ベラヌールの湖畔に咲いている花の種だって聞いてるからな。

 それにこの種は勝手に渡されたんじゃなくて、おれ自身がもらいに行ったものだし。

 あんたは見てねえから勝手にギャーギャー言うけど、おれの人を見る目は確かだぜ。

 種をくれたあの婆さんは根っからの善人で、人を陥れたりするような奴じゃねえよ」

 

「へえ、あんたがわざわざもらいに行ったのかい? あんな遠いところまで花の種を。

 ふーん、そうかいそうかい」

 

王妃はおれの顔を見てニヤニヤしだした。

 

 

「気持ち悪りい顔すんじゃねえ!」

 

くそっ。だからこいつに頼むのは嫌なんだ。

 

 

「ふふっ。あたしにゃ、すべてお見通しだよ。ベラヌールの湖畔を歩いているときに

 ナナが『こんなに綺麗なお花、あたし初めて見たわ』とでも言ったんだろ?それで

 愛しいナナのために、ここでも花を咲かせてやろうって種をもらってきたんだね?」

 

王妃はニヤニヤした顔を近づけながら、おれに詰め寄ってくる。

 

 

「うるせえっ! 皺だらけのきったねえ顔を近づけんじゃねえよ。で、どうなんだよ?

 この種、植えてくれんのかよ?」

 

おれはニタニタと近寄ってくる王妃の肩を強くつかんで押しのけた。

 

 

王妃は平然とした顔でまた近寄ってくる。

 

「花のことならすべてあたしにまかせときな。綺麗な花を満開にさせてあげるからさ、  

 花が咲いたらナナを呼ぶといいよ。そして花を見て感激しているナナの肩を抱いて

『この花はすべてきみのものだよ』とか言って、キスでもしちゃえばいいのよ」

 

「キ、キスッ?!」

 

ババアがいきなり突拍子もないことを言うから、うろたえて変な声が出てしまった。

 

「ごほっ、えへんっ」

おれは慌てて咳払いしてごまかした。

 

 

王妃はさらにおれに詰め寄ろうとしたが、そこでようやくティアのことを思い出した。

ティアは好奇心で目をキラキラさせながら、おれと王妃の話を聞いている。

 

 

「ティア。今から種を植えるけど、この種を植えるのには水がたくさんいるんだよ。

 いい子だから、あんたはこのバケツを持って小川まで行って水を汲んできな」

 

王妃は近くにあった小さなバケツを手に取り、ティアに差し出した。

 

 

「えーっ、なんでよ。お水なら汲みに行かなくてもお城にだってあるじゃない」

 

「ダメだね。この種は異国からもらって来たものだから。まずはサマルトリアの水に

 慣らさないといけないんだよ。そのためにはあの小川の水が必要なのさ」

 

もっともらしいことを言っているが、王妃の話はティアを追い払うためのウソだ。

サマルトリアの水』でいいなら、別に川の水を汲んでくる必要なんてないからな。

 

 

王妃が指定した小川は、歩けば大人でも10分以上かかる場所にある。

ティアなら30分は戻ってこれないだろう。

 

汲まなくてもいい水を30分もかけて汲みに行かされるのはさすがに可哀想だが、

どうせ詰め寄られて質問攻めにされるのなら、詰め寄る人数は少ない方が良い。

 

ティアに聞かせる話でもねえしな。

 

おれは黙って戦況を見守ることにした。

 

 

ティアは「なんであたしが」とか「あたしはこんなにか弱いお姫様なのに」とか

「水なんて別にどれも同じじゃない」などとブーブー言ってしばらくごねていた。

 

だが、王妃はまったく譲る気はなく根気よく説得を続け、最終的には王妃の部屋にしか

置いていないめずらしくて高級なチョコレートを「ご褒美としてあげる」と言って

ティアの説得に成功した。

 

ティアは、王妃から渡されたバケツをズルズルと引きずりながら渋々出かけていった。

 

 

「さて、と」

ティアを追い払うことに成功した王妃は、手をパンパンと叩くとおれの方を向いた。

 

 

 

王妃様ご登場~ヾ(*´∀`*)ノ

サマルトリア王妃は、私が書いていて1番楽しいキャラクターです ( *´艸`)

 

カインの継母であるサマルトリア王妃は、ゲームブック本編ではほぼ登場しませんが

自由にのびのび育ったカインを見れば、愛情深くて相当いいお母さんなんでしょう☆

 

この創作物語では息子想いの気さくでさっぱりした人物として書いています (*´ω`*)

息子を想うあまり、息子の恋が成就するようにと一生懸命になりすぎですけど ( *´艸`)

 

 

序盤ではカインとティアの追いかけっこを書きましたが、実際にサマルトリアの王女が

パーティーに加わることを想定したら「すばやさ」がかなり高いと思ったんですね。

 

ドラクエシリーズの、あの姫様(ア〇ーナ様 ( *´艸`))のように、すばやく行動が出来て

おにいちゃんよりよっぽど使える主要キャラになるだろうなと思います (^_-)-☆

 

(この世界が後世のように5人以上のメンバーで悪の討伐に向かう世界だったなら、

 カインは馬車メンバーになるかな (;´∀`)? 私は大好きだから使いますけどね!)

 

なので、おにいちゃんより有能なティアは、カインを器用にかわして逃げ切るという

展開にしてみました ( *´艸`)

 

 

そんな小賢しいティアでも絶対に叶わない強敵・サマルトリア王妃 ( *´艸`)

チョコレートでティアを巧みに追い払い、カインにガンガン詰め寄りますよ ( *´艸`)

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ