ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 77】質問攻め

リオスに投げ縄で奪われたベラヌールの花の種は、ティアから王妃の手に渡った。

王妃は種を植えるため、おれを従えて裏庭へとやって来た。

 

おれとナナの関係を知りたい王妃は、いつもの調子でおれにぐいぐい詰め寄ってきたが

そばにティアがいることを思い出し、チョコレートをエサにティアを追い払った。

 

ティアに小川まで水を汲みに行かせることに成功した王妃は、ティアを見送ると

くるりとおれの方を向いた。

 

 

「ねえ、カイン。根本的なことを聞くんだけどさ、あんたナナには告白したのかい?」

 

ティアが小川へと出かけて行き2人きりになったとたん、王妃はズバリ聞いてきた。

 

 

「ああ? そんなもんしてねえよ。してねえんだけどよ… まぁ、余計な奴らのせいで

 おれの気持ちはもうバレちゃってるというか... うん、そんなところだ」

 

「はぁ? どういうことだい?」

 

 

このババアは勘が鋭くて、適当なことを言ってごまかせるような相手じゃねえからな。

おれは仕方なくオルムとレオンが酔っぱらって気持ちをバラしたことを打ち明けた。

 

「それで、ナナの返事は?」

 

王妃は興奮した様子で聞いてくる。

 

 

「いや、別にそのことに関しては何も言われてねえよ。その日の夜はなんとなくおれを

 避けてる感じだったけどよ、翌朝にはいつものナナに戻っていて、前日のことには

 触れずに普通に話しただけだ」

 

「ナナは普通に接してくるんだね?」

 

「ああ。あの夜は何も聞かなかったみたいな様子で、今は普通に話してるよ」

 

おれの答えに王妃は「良かった、良かった」と満足そうに胸をなでおろした。

 

 

「ああ?なにが良かったんだよ?」

 

「ばっかだねえ、あんたは。ナナがもし、あんたのことを何とも思ってないとしたら

 好かれてるとわかったら避け続けるよ。それかハッキリその気はないって言うね!

 普段どおり接するってことは、あんたの気持ちは肯定的に受け入れてるし、なんなら

 あんたからの告白を待ってるだろうよ。あんたもさ、酔っぱらいのおっさんたちに

 気持ちをバラされてオロオロせずに、男ならビシッと告白してやりなさいよ!」

 

王妃はおれの背中をバンッと叩いた。

 

 

「痛ってーな。あんたのアドバイスはあんまり当てにならねえんだよ。余計な事すれば

 ナナに引っ叩かれるのがオチだぜ」

 

 

「やれやれ。弱いのは身体と力だけだと思ってたのに、うちの息子は気も弱いんだね。

 まあ、いいわ。ところであんた、ナナとは手をつないで歩いたりはしてないの?

 スキンシップを嫌がらないっていうのも、かなり好かれてるポイントが高いからね」

 

 

「手をつないで歩く?」

王妃の言葉に、おれはこれまでの旅での出来事を思い返してみた。 

 

 

手をつないだことは何度かある。

 

ロンダルキアの大地を歩いていてギガンテスとブリザードが現れたとき、ナナが唱えた

パルプンテは雪崩を呼び寄せた。敵味方関係なく、おれたちは雪崩から必死で逃げた。

 

雪崩に飲み込まれる瞬間、おれはナナの手を握った。雪に埋もれたおれは外に出た足を

バタつかせていたところを王子に助け出され、雪の中からナナを助け出したのだ。

 

 

手をつないで走ったこともある。

 

シドーを撃破し、外に出たときだ。

 

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おれが久しぶりにマジになって言った言葉をナナに茶化され、おれたちはその場で

笑いながら追いかけっこをしていた。

 

「おおい、いたずらぼうずども。いつまでもそうしていると、置いてきぼりを

 食らわすぞ」王子を乗せて飛び立とうとする竜王のおっさんに声をかけられて

おれとナナは慌てて飛んでいるおっさんの背中を追って全速力で走った。

 

ナナが置いてきぼりにならないようにおれはナナの手を握って走り、鞍に乗った王子が

走ってくるおれの手をつかんで、おれたちをおっさんの背中に引き上げてくれたのだ。

 

 

おれがそんな思い出話を語ると、王妃はわざとらしいほど大きなため息をついた。

 

「王子と3人でお手手つないでランランランって話を聞きたいわけじゃないんだよ。

 もっとロマンチックな話はないのかい? 17歳になる男の子がなっさけないねえ。

 立派な男になるように育てたつもりだったのに、育て方を間違えたのかしらねぇ」

 

 

「うるせーな。まず3人で旅をしてるのによ、おれとナナが2人だけで手をつないで

 歩くこともねえだろうが。ロマンチックではないかもしれねえけどよ、ナナから

 手を握られたことはあるぜ」

 

 

ドラゴンの角でおれと王子が死んだとき。

 

ナナをかばって転落死した王子に、ナナが泣きながら抱きついているのを見て、おれは

自分が情けなくなり愚痴をこぼした。

 

「けっ、何だよ。どうせおれは、戦闘でぶざまに負けましたよ、だ」

 

おれの言葉にナナははっと顔をあげて激しく首を横にふると、瞳を涙に濡らしながら

おれの手をとりおれの瞳を見つめた。

 

「そんなことないわよ……。気を悪くしたのね、ごめんなさい」

 

おれをうるんだ瞳で見つめるナナにいたたまれず、おれはナナの手をゆっくりと外して

「気にしてねえよ」と寝台を降りたのだ。

 

 

王妃は鼻の穴をふくらませて、食い入るようにおれの話を聞いている。

 

「戦闘でぶざまに負けたのは情けないけど、あんた、いい思いしてるじゃないか!

 まぁ、手をつなぐっていう点は合格だね」

 

王妃は満足げにうなずいた。

 

 

「おれの話はもういいだろ? 無駄話はやめにして、さっさと種を植えてくれよ!」

 

なんとか話題を変えたくて、おれは王妃に早く種を植えるよう促したが

 

「種? そんなもん、とっくに植えたよ。あとはティアが持ってくる水をまくだけさ」

 

王妃はしれっと言ってきた。

 

おれに詰め寄って質問攻めにしてきたくせに、いつの間にそんなことをしていたのか。

王妃の背後には、耕されて何かが植えられた土のかたまりが見えた。

 

 

「手をつなぐ点はまぁ、ギリギリ合格だよ。手をつないだとしたら、次はハグだね。

 あんたたち、ハグはしたのかい?」

 

王妃は再びおれに詰め寄って来た。

 

 

「そんなものしてねえよ」と言おうとして、おれは不意にあの満月の夜を思い出した。

満月の夜、姿を消したナナを捜しまわって海岸近くで見つけたあの夜のことだ。

 

 

「前に言っただろ。つらいことがあったら、無理しないで素直に泣けよ。背中ぐらい

 貸してやるからってさ。あのときの約束を、今ここで果たしてやるよ」

 

おれはナナに背中を向けてそう言った。

 

しばらくして、おれのわき腹のあたりにナナの腕がそっとまわされた。

腕がまわされるのと同時に、ナナの頭がおれの背中に押しつけられるのを感じた。

 

まわされたナナの腕に力が入り、おれのわき腹のあたりをやわらかく締めつける。

 

ナナの身体から甘い香水の香りがほのかに漂ってきて、おれの鼻腔をくすぐる。 

 

おれの背中に頭をあずけて、かすかに小刻みに震えながら泣いているナナの振動が

中越しに伝わってくる。

 

 

月に照らされ、波音を聞き、ただナナのぬくもりを背中に感じていた... あの夜の感動を

思い出して胸が熱くなった。

 

ふと視線を感じてそちらを見ると、王妃がおれの顔をまじまじとのぞき込んでいた。

 

 

「ちっ! なんだよ、気持ち悪いな。人の顔、じろじろ見てくんじゃねえよ!」

 

おれは王妃の顔を押しのけた。

王妃は少しもめげずに近寄ってくる。

 

 

「なんだい、なんだい。あんたがそんなうっとりした表情をするなんてさ。よっぽど

 いい思いをしたみたいじゃないか! いったいなにがあったのよ? 恥ずかしがらずに

 ぜーんぶ、あたしに話してごらん」

 

 

「うるせえ! 近寄ってくんな!」

 

おれは王妃から逃げ回った。

 

 

 

おれと王妃が追いかけっこをしていると

 

「ねえ~っ! 遊んでるんなら手伝ってよ~。重いよ~」

 

バケツを両手で持ち引きずるようにしながら、ティアがヨロヨロと帰って来た。

 

 

へっ、おれ様は運がいいぜ! ティアの奴、ベストタイミングで帰って来たな!

 

「おおっ! 可愛いわが妹よ。よく無事で戻ってきたな。

 重かっただろう、あとはおにいちゃんにまかせな」

 

おれは嬉々としてティアに近寄って行くと、ティアが持っていたバケツを受け取った。

 

 

「さすがはわが妹。よしよし、おまえ本当にえらいぞ!」

 

もう一方の手でティアの頭をなでてやった。

 

 

水を汲んで戻って来ただけで、なぜこんなに褒められるのかわからないのだろう

ティアはきょとんとした顔でおれを見た。

 

 

おれたちの後ろで、くやしそうな顔を浮かべる王妃の姿が見えた。

 

 

 

 

今回は(想定していなかったけど (;´∀`))旅の思い出が多めになりました。

 

カインが王妃に詰め寄られて、どうしようもなくなったところにティアが帰ってくる◎

 

この設定しか考えてなくてね (;´∀`)

いざ詰め寄る段階で、どんな質問にどう答えさせるのが良いかと考えちゃいました。

 

 

仲の良い高校生ぐらいの男の子に「好きな人がいる」とわかったら、私はどうするかを

想像しながら質問を考えてみました。

 

まず「告白したの?」と聞くよね ( *´艸`)

 

相手もまんざらでもないとわかったら「手つないだりしたの?」「それ以上は?」って

おせっかいおばちゃん発動で、アレコレ聞いちゃいそうですわ ( *´艸`)

 

 

カインとナナはいつも好きなことを言い合える仲良し♡ ですが、王子とミリアみたいに

会うたびにしょっちゅうキスするような2人じゃないのでね… (;´∀`)

2人が恋人のようにイチャイチャした話ってゲームブックにあまりないんですよね~。 

 

それでも「手をつないだシーン」はゲームブックからなんとか探し出してみましたよ☆

ああ、こんなシーンあったな~と懐かしんでもらえたなら嬉しいです (≧∇≦)

 

 

カインが思わずうっとりした「背中を貸したシーン」は私の完全創作です。

 

まだ読んでいない方はこちら ↓↓

 

【創作 27】 約束 - ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

 

 

カインが嫌がりながらも王妃の質問に素直に答えちゃうところは、普段からの母と息子

2人の仲の良さを表してみました (^_-)-☆

 

こんな風に嫌がりながらも、なんでも答えてくれる息子がいたら可愛いでしょうね♡

 

 

さて、余計な口出しはしているものの仕事は早く、種はすでに植え終わっていた王妃。

花が咲くまでは時間がかかるので、種の話はいったんここでおしまい☆

 

次回は新展開ですよ~ (^_-)-☆

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ