ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 49】ポーカーフェイス

おれはデルコンダルへとやって来た。

ここへ来るのは何度目だろうか? 世界が平和になってからしょっちゅう来ているな。

ここのおっさんは疑い深いところはあるが、情には厚いし案外使える奴だからな。

今回も利用させてもらうとするか。

 

おれは王様への謁見を求めた。

 

「おぉ、なんじゃ? さては、1週間後の準備が出来ておるか確認しに来たのじゃな?

 安心せい。こっちの準備は万端じゃ! なんの心配もいらんぞ」

 

デルコンダル王は陽気におれを出迎えた。

 

f:id:john0910:20180105052610j:plain 準備はまかせておけ!



 

「閣下のやる事になんの不安もありませんよ。今回、おれがここへやって来たのは

 閣下に別のお願いがあるからです」

 

「ほう、別のお願いとな?」

 

首をかしげる王様を前に、おれは考えてきた提案を話してみた。

 

「1週間後、ムーンブルクにみんなが集結した際に、あとからの登場で構わないので

 閣下にもムーンブルクへ来ていただきたいんです。当日は、史書に記録を残すための

 書記官もやってくる予定なんでね。閣下のことも書いてもらおうと思うんですよ」

 

「ほほう。そりゃいいな。わしが、わざわざムーンブルクにまで足を運んだとなれば

 人情味あふれる王だと史書にも記録されるだろうからな。ただ、行くとなっても

 向こうに着くのは午後になるかと思うが、それでも構わんのか?」

 

おれの提案にデルコンダル王は身を乗り出してきた。よし、乗って来たな!

 

「もちろん、構いません。その頃には作業も進んでいると思うんでね。ご来訪の際には

 集まった作業員たちとおれとナナで閣下を盛大に歓迎いたしますよ」

 

「うんうん。そりゃいいぞ」

 

おれの話にデルコンダル王はかなり上機嫌で、ひげを触りながら満足げに笑った。

 

うん、良い感じだ。これならいける!

 

王の様子を見たおれは作戦を開始した。

 

「閣下のご来訪に合わせて、ローレシアの新国王も現地に呼ぶつもりでいます」

 

「ん? なんじゃと? 新ローレシア王も呼ぶじゃと?」

 

デルコンダル王の顔が一瞬で変わった。

 

 

どうやら、王子にまつわる良からぬ噂はデルコンダルにも届いているらしい。

もともと敵国同士だったこともあって、相手の国に関する情報網は他国よりも

発達しているのかもしれないが、まさかこんなところまで届いているなんてな。

 

それとも、おれが知らないだけで、サマルトリアにも情報は来ているのだろうか?

知らされていないだけで、実は世界中に王子の悪名は広まっているかもしれねえ。

 

デルコンダル王は眉をかすかにひそめて、おれの顔を覗き込んできた。

 

 

おれが噂を知っているのかを探っているのか? それとも、おれが王子の悪名を

払しょくするため、ここにやって来たんじゃねえかと疑っているのか?

 

国王のギラついた視線を感じたが、おれは平静を装って気づかないふりをした。

 

デルコンダルローレシアは、つい最近まで長く緊張状態が続いていました。

 閣下の寛大な御心のおかげで、今では大変友好的な関係を築いておりますが

 ここで改めて、両国の友好関係を史書に記録することで、全世界へ発信が出来ます。

 デルコンダル王の度量の大きさを全世界へ知らしめることが出来るのです。

 両国王にムーンブルクへ来てもらい、同盟関係を締結していただきたいのですが

 いかがでしょうか? 閣下にとって、決して悪い話ではないと思いますが」

 

おれは顔色を変えずに言った。こういうことは平然と言い切ることが大事だからな。

 

「おぬし... いや、なんでもない」

 

デルコンダル王は、なにか言いたそうな顔をしながら、おれの様子を探っている。

 

 

本来なら、すぐに飛びついてくる話だ。

 

世界に平和をもたらしたロト3国。

その3国の中でも、特にかつて敵国だったローレシアと現段階で同盟関係を結ぶのは、

デルコンダル王にとっても、この国にとっても最高の良策と言えるからな。

 

それに、ロト3国と言っているが、中心はやっぱりローレシアだ。そのローレシア

良好な関係を築くことは、サマルトリアムーンブルクとも良好である証となるし

ラダトームルプガナとのつながりにも発展する。まさに良いこと尽くしだ。

 

もし、王子の噂がデルコンダルまで届いていなければ、この話はもう完結している。

デルコンダル王は「1週間後に会おう!」と上機嫌のまま、おれを送り出したはずだ。

 

 

それなのに、デルコンダル王がためらいを見せているのは、やはりあの悪名のせいだ。

今、このおっさんの頭の中は思考がぐるぐる駆け巡っているに違いない。

 

果たして『破壊神を破壊した男』が治める国と、同盟関係を締結して良いものかと。

 

 

くそっ!

 

激しい怒りが湧いてきて、ひざを叩きたい衝動にかられたが、なんとかこらえた。

 

王子の悪名がデルコンダルにまで届いてしまっている以上、おれは王子の悪名など

知らぬ存ぜぬを装い、表情を変えずに王様を説得しなければならねえ。

 

声が怒りで震えることのないよう、おれは鼻からゆっくりと空気を吸い込み

小さく開いた口からゆっくりと息を吐き出すと、ことさら陽気に続けた。

 

「なにもためらうことはないでしょう、閣下! すごく良い話だと思うんですがね。

 それとも、なにか引っ掛かることがあるんでしょうか? もし、おれのこの提案に

 引っ掛かる点があるのなら、ぜひともお聞かせ願いたいのですが?」

 

おれはキョトンとした顔で、逆にデルコンダル王の顔を覗き込んでやった。

疑いのないキラキラした視線を受けて、王がたじろぐのを感じだ。

 

「... いや、別に... その… ためらっているわけではないのだがな…」

 

おれから目をそらし、デルコンダル王はもごもご言い出した。

 

王子につけられた異名を恐れて、ローレシアと同盟を結ぶのをためらっているなんて

プライドの高いこのおっさんが認めるわけねえからな。

 

おれは勝利を確信した。

 

「閣下、特に問題ないのであれば、予定通り1週間後の午後にムーンブルク

 ご来訪していただくということで構わないですよね? こちらとしては書記官への

 連絡などもありますので、今ここで了承のお返事いただきたいのですが」

 

「… あぁ、うん。わかった」

 

おれの圧力に押し切られる形で、デルコンダル王は小さくうなずいた。

 

 

よし、第一関門突破だ!

 

 

 

1週間後に、王子につけられた不名誉な異名を払しょくする。

 

そのためにカインが考えた作戦は、ローレシアデルコンダルの同盟関係の締結。

 

王子は恐れるような存在ではないから、デルコンダルローレシアと同盟を結ぶ。

 

デルコンダル王を使って、この流れに持っていこうという作戦です。

 

王子の悪名は、はるかデルコンダルにまで、すでに伝わっていたようですが

カインはなにも知らない風を装って、デルコンダル王に王子との対面を依頼し

さらに「変な噂を気にして、怖がっているなどと思われたくない!」という

デルコンダル王のプライドの高さも利用して、王様をやり込めましたヾ(*´∀`*)ノ

 

1番の難敵を撃破したカイン。

 

あとは、残ったザコ1(王子)と、ザコ2(ナナ)の説得です ( *´艸`)

ここまでくれば、あとの2人の説得なんてちょろいもんですね (^_-)-☆

次回はローレシアへ行きますよ~♪

 

 

両国の同盟締結のためには「王子は恐れるような存在ではない」ということを

同盟締結の場で改めて、デルコンダル王に示す必要があります。

 

そのために、王子とナナの力が必要になってくるわけなんですね ( *´艸`)

 

さて、カインは、王子とナナをどう使って「王子は恐れるような存在ではない」を

証明するつもりなんでしょうか?

 

想像してみてくださいね (^_-)-☆

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ