ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 169】 おれたちの晴れ舞台?!

王子をサマルトリアへ呼び寄せるためローレシアへ派遣した兵士が帰ってきた。

 

兵士から「王子様はサイラス卿が何か言おうとしたのを鋭い声でさえぎった。その後

2人はこっちを見てから口をつぐんで黙り込んだ」と報告を受け、おれとナナは

ローレシアで知られたくないような問題が起きているんじゃねえかと案じた。

 

 

だが、大司教が謁見の間に来て「国王は明日のうちにサマルトリアへ向かわせる」

言ったとき、伝令兵の話によると大司教の言葉を聞いた王子はホッと安心した様子で

嬉しそうに笑っていたんだという。

 


もし本当に問題が起きていたら、あいつの性格上もっと思い悩んだ顔をするはずだ。


あいつが屈託なく笑っていたというのなら、またサイラスの野郎がくだらねえことで

ごちゃごちゃ言ってるだけに違いない。

 

 

王子が笑っていたと聞いて安心したおれとナナは、王子が明日サマルトリアに来たら

どんな方法であいつを驚かしてやろうかと2人で考えることにした。

 

 

なかなかいい案が思い浮かばないおれに対し、ナナは「良いこと思いついたわ!」

目を輝かせておれに耳打ちしてきた。

 


そ... それは...

たしかに、王子は驚くだろう。

言われたおれも驚いたんだからな。

 


おれの心の動揺はお構いなしに、ナナはウキウキしながら「良いでしょ? ダメ?」

小首をかしげて尋ねてくる。

 

おれが了承すると、ナナは瞳をキラキラさせ「あの子たちに協力してもらおう!」

飛び跳ねるような勢いで王妃の侍女たちのもとへ走って行ってしまった。

 


王子を驚かせたいだけ... だよな?

ただのまねごと… なんだよな?

なんでナナはこんなに嬉しそうなんだ?

 

もしかしてナナは…

おれとの未来を夢見てた... とか?

 

いや... まさか!

そんなことあるわけねえ!

 

 

おれはナナが走って行った後もしばらくその場に立ち尽くしていたが、気を取り直して

ナナが滞在している客間へ向かった。

 

 

客間の近くに来ると「きゃああ!」と女の歓声が廊下にまで響き渡ってきた。

ナナから明日の話を聞いた王妃の侍女たちがデカい声ではしゃいでいるのだろう。

 


客間の扉は開いたままになっており、ナナと女中たちの会話が聞こえてくる。

 

 

「急な話なので、とりあえずドレスは王妃様が着ていたものをご用意しましょうね。

 王妃様もナナ様もすらりとした美しい体形なので違和感はないと思いますわ」

 

「ブーケはどうしましょう? さっき見たお庭の花を組み合わせて作ればいいですか?

 ナナ様が好きな花を言ってくだされば、私が責任をもって作りますよ!」

 

「髪飾りは? ティアラもいいけど、ブーケに合わせたお花にしても素敵ですよね〜」

 

侍女は楽しげな様子で口々に話している。

 

 

「いいわね! あたしも髪に飾るのは生花がいいなとずっと思っていたのよ!」

 

ナナの嬉しそうな声も聞こえてくる。

 

 

 

へっ、やっぱりそうだ。

ナナはただ着飾れるのが嬉しいだけだ。

 

豪華な婚礼衣装が着られるからって、ナナはあんなに大はしゃぎしてるんだろう。

 

 

そう、さっきナナはこう耳打ちしてきた。

 

「ねえ。あたしたち、結婚することにしない? あたしたちが婚礼衣装で正装して、

 2人ならんで王子を出迎えるの! さすがの王子でもビックリするに違いないわ」

 


最初に言われたときは「ナナはおれと結婚したいのか?」と動揺したが、どうやら

あいつはめったに着る機会のない豪華な婚礼衣装を着てみたいだけのようだな。

 

 

そういや、ミリアの花嫁衣装のことでもナナは本人以上に張り切っていたからな。

お遊びとはいえ、自分も着るとなったら嬉しくなってこんな大騒ぎしているんだろう。

 

 

なんだ… そういうことか……

 


おれは小さくため息をついてそのまま客間を離れようとしたが、ナナが客間の扉から

ぴょこんと顔を出し「あ、カイン!」と笑顔でおれを呼び止めてきた。

 

 

「あんたも手を抜かないでちゃんと準備してよね! ただ王子を驚かすだけだからって

 適当でいいなんて思わないでよね! 明日はあたしたちの晴れ舞台なんだから」

 

ナナは幸せそうに笑っている。

 


ナナの笑顔を見て、頭がクラッとした。

 

 

「明日はあたしたちの晴れ舞台なのよ!」

 

ナナの言葉を聞いているうちに、おれたちが本当に結婚を明日に控えているような

おかしな気分になってきて、心臓がまたドコドコと音を立てて大いに暴れだす。

 

 


「殿下の衣装については私におまかせくださいね。明日は私がカイン殿下の準備を

 お手伝いしますのでご安心を」

 

背の高い女中がナナの後ろから現れて、おれに微笑みかけてきた。

 

 

「あぁ。おれはよくわからねえからよ、細かいことは全部おまえたちにまかせるぜ。

 くれぐれも ナナが文句を言わないように上手く取り計らってくれよな」

 

おれが茶化して言うと「もう、カインったら」とナナは再び輝くような笑顔を見せた。

 

 

「とりあえずおれは自室で休んでいるからよ、なにか用があれば呼んでくれや」

 

ナナと女中に告げておれは部屋に戻った。

 

 


当初は、伝令兵の報告を聞き終えた後はあいつらをさっさと追っ払い、花を愛でる

ナナに付き添いながら「あわよくばキスを!」と考えていたが、今のナナを見る限り

『明日の準備』とやらに夢中で「花を見よう」と誘っても、もうついて来ねえだろう。

 

 

ベッドに寝転んで天井を見上げる。

 

ついさっきまで、どうやってナナとキスするか画策していたはずなのに、いつの間にか

予想外の展開になったな。

 

 

ナナは「カインもしっかり準備してよね!」と言ってきたが、結局はナナが思う存分

好きなだけ着飾ればいいだけだ。

 

おれはナナの邪魔しないようにとりあえず正装してナナの隣でおとなしくしていれば

まぁ、あいつも満足するだろう。

 

 

ベッドに寝転んだままウトウトしていると、部屋の扉をノックする音が聞こえてくる。

目を開けてぼんやりした頭のまま扉を開けると、ナナが満面の笑みを浮かべながら

いそいそと部屋に入ってきた。

 

 

「ちょっとあんた、ここに座って」

 

目をこすりナナに言われるまま椅子に座ると、ナナはおれの髪に触れてきた。

 

 

「なんだよ、なにする気だ?」

 

いきなり髪を触られて、おれは抗議しながらナナの手を払いのけようとした。

 

 

「あんた、髪がボサボサじゃない? 普段はそれで良いかもしれないけど、正式な場では

 ちゃんと整えた方が良いと思うのよ」

 

ナナは微笑みながら甘ったるい香りのする油を手に取り、おれの髪に撫でつけてくる。

 

 

「おいおい、そこまでするか? おれのことなんてどうだっていいだろ? ただおまえが

 満足するだけ着飾れば済む話だろうが!」

 

おれは首を振ってナナの手から逃れようとした。頭から甘い香りが漂ってくる。

 

 

「ダメよ! せっかくの機会じゃないの。ちゃんと本当の結婚式のようにして欲しいの。

 ねえ、お願い。協力して?」

 

ナナは両手を合わせ拝むようにしながら、おれの顔をのぞき込むように見つめてくる。

 

 

「ちっ、しょうがねえなぁ」

 

おれがため息まじりに言うと、ナナはニッコリ笑って櫛を手におれの髪を梳いてきた。

 

 

「なぁ、おれはこんな頭のまま明日まですごさなきゃいけねえのか?」

 

頭が油でべたべたして気持ち悪りいし、甘ったるい匂いがするのもたまらねえ。

 


「今日はあくまでも練習だから、終わったら別に洗い流しちゃってもいいわ。でも、

 明日は本番よ! 朝にはまた整髪しに来るから、明日はずっとこのままでいてよね!

 整髪が終わったら、頭をかきむしったり寝転んでごろごろしたりしちゃダメよ」

 

ナナは髪を梳きながら答えてくる。

 


終始ずっと陽気で楽しそうなナナに加え、一緒に来た王妃の侍女たちもおれの頭を見て

にこにこ微笑んでいる。

 

 

「おい、変な感じになってねえだろうな? 笑い者にされるのはごめんだぜ」

 

おれは女中たちに視線を向けながら尋ねた。

 


「変じゃないですよ。凛々しいです」

 

「ナナ様が『カインは髪を整えたら別人のようにカッコ良くなるから見てなさい』

 言って私たちをここへ連れてきたんですが、ナナ様の意見は本当でしたね!」

 

女中たちが微笑みながら言ってくる。

 

 


「いやだ、もう変なこと言わないで」

 

ナナが照れたように頬を赤らめた。

 


「へへっ。まぁ、おれ様は髪型なんて関係なく普段から常にカッコイイからな!」

 

おれは照れ隠しで軽口をたたいた。

 

 

おれの言葉を聞いた瞬間、櫛で髪がグイッと強く引っ張られる。

 

 

「痛て! なにすんだよ」

 

おれは思わず叫んだ。

 


「あ~ら、ごめんなさい」

 

ナナが涼しい顔で言ってくる。

 


「てめえ! わざとだな!」

 

「なによ、言いがかりよ。あんたの髪がボサボサなのが悪いんでしょ!」

 

ナナはふんっとそっぽを向いた。

 

 

おれたちの話に女中たちは笑っている。

 


「ふぅ、今日のところはこれでいいわ」

 

ナナは最後にもう1度、髪に根元からグイッと櫛を通すとおれから離れた。

 

 


「うわぁぁ~!」

 

王妃の侍女たちがうっとりした声を上げる。

 


「とっても素敵~!」

 

「見違えるように凛々しくなりましたね」

 

「今のカイン殿下の凛々しい姿を見ただけで、ローレシア王はきっと驚くでしょうね」


髪はべたついて不快だが、女中たちから次々に褒められて悪い気はしねえな。

 

 

 

「ふふっ、これでバッチリね! 明日は朝から整髪に来るから、寝坊しないでよね」

 

ナナは嬉しそうに笑うと「さて、次はブーケにするお花を見に行きましょ」と言って

弾むように部屋を出て行く。

 


「ナナ様、お待ちください」

 

女中たちは慌ててナナの後を追いかけた。

 

 

 

「なんなんだよ、ったく!」

 

おれは女どもが嵐のように走り去って行った部屋の扉を見てつぶやいた。

 


まだ1人、背の高い女中が残っていた。

おれに一礼して部屋を出て行こうとする女中をおれは呼び止めた。

 


「なぁ、女って奴は花嫁衣装を着るってだけで、あんなに陽気に浮かれるものなのか?

 おれにはまったく理解できねえぜ」

 

おれがあきれた声で言うと、女中は「ふふふっ」と笑った。

 


「女の子が綺麗な服を着ると嬉しくなるのは間違いないですが、ナナ様がさっきから

 ずっとあんなにも幸せそうなのは、服だけが理由じゃないと思いますよ」

 

女中は意味ありげな視線を投げてくる。

 

 

「あん? 他の理由ってなんだ?」

 

おれが尋ねると、女中はしばらく黙っておれの顔をジッと見つめてきた。

 

 

「王妃様がいつも『カインは女心に疎くて困るの』とおっしゃられてて、私はずっと

 ただの王妃様の謙遜だと思っていたんですが、カイン殿下は本当に鈍いんですね」

 

女中は楽しそうに笑う。

 

 

「うっせえ! でも、悔しいが確かによくわからねえぜ。豪華な婚礼衣装を着る以外で、

 ナナがずっとあんなに嬉しそうに大はしゃぎしている理由はなんなんだ?」

 

おれは首をかしげた。

 

 

「私にはわかりますよ。ナナ様はたとえまねごとだったとしても、誰かさんと

 結婚できて嬉しい んですよ」

 

女中はクスッと笑った後、手を後ろに組んでスキップしながら部屋を出て行った。

 

 

 

頭がぼうっとする。

しばらくぼんやりした後、おれがハッとなって首を振ると甘い香りが立ちのぼった。

 

 

 

 

 

今は王子を驚かせるための芝居ですが、実際の結婚式もこんな感じだろうな~と

ニヤニヤしながら書きました ( *´艸`)

 

 

ナナが「あれもしたい」「これもしたい」といっぱい注文を出して、カインは最初

「めんどくせえなぁ」と嫌がるんだけど、ナナから「お願〜い、いいでしょ?」

可愛くお願いされると「ちっ、しょうがねえなぁ」と(カイン、チョロいな ( *´艸`))

 

顔をしかめたり文句を言ったりウザそうにしながらも、カインは結局ナナの希望を

すべて叶えちゃうんでしょうね (≧∇≦)♡

 

 

そして「結婚式に向けカインの髪を整えよう!」は私の個人的な願望です ( *´艸`)

(きっちり横分けが好きなわけではありませんが) 男性も女性も髪型が変わると

印象がガラッと変わりますからね (^_-)-☆

 

普段のカジュアルな雰囲気のカインも好きだけど、髪をピシッと整えたカインは

王族の雰囲気が漂ってさぞかし凛々しいだろうな~と妄想しつつ書きました (*´ω`*)

 

 

さて、王子を驚かせるためのただのドッキリなのに、さっきからずっと大はしゃぎの

ナナを見て不思議に思うカイン。

 

「オシャレが出来るから嬉しいんだろうな~」とカインは自分の中で結論を出しますが

王妃の侍女から「カインと結婚できるのが嬉しいんじゃね? 知らんけど」と言われ

思わず呆けてしまいました ( *´艸`)

 

 

次回はいよいよ本番(?)

カインとナナの結婚式(仮)ですよ!

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ