ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 167】 ローレシアで問題発生?!

おれとナナがあの事故で唇を重ねちまった件について、おれはサンチョを通じて

ナナの気持ちを聞くことが出来た。

 

サンチョの話だと、ナナは驚いただけで特に不快だとは思ってなかったらしい。

 

 

「不意の口づけを嫌がってないんだから、イイ雰囲気になれば本気のキスもできる!」

 

サンチョにそう言われたおれは半信半疑だったが、試す価値はあると思った。

 

 

どうせ失敗したって引っ叩かれるだけだ。

やってみてもいいだろう。

 

 

「王子殿がサマルトリアに来るまでの残された1日がキスする大チャンスですよ!」

 

サンチョにそう言われたおれは、どこでキスするべきか考えてみた。

 

 

今は国王の代理をまかされていて、おれがサマルトリア城を離れるわけにはいかない。

 

城の中で1番景色が美しく、ナナが喜びそうな場所としておれは裏庭を選んだ。

王妃が育てた数多くの花が咲き誇る裏庭はナナも気にいるに違いない。

 

 

おれは朝食の席で「花を見ようぜ」とナナを誘い出し、2人で裏庭へと向かった。

 

おれの予想通り、裏庭に着くとナナは咲き誇る数々の花に歓声をあげた。

 

美しい花々にうっとりするナナ...

キスする舞台は整った!

 

 

計画は完璧だとおれは確信していた。

 

だが....!

 

 

おれは肝心なことを見落としていた。

 

ナナの動向を知りたがり、ナナの姿を見ればあとを追っかけたくなるような連中が

このサマルトリア城にはうじゃうじゃいることをおれはすっかり忘れていたのだ。

 

 

王子とナナに憧れる見晴らし台の兵士

ナナのことが大好きな王妃の侍女たち

 

おれはこいつらにことごとくイイ雰囲気を邪魔される羽目になっちまった。

 

 

1度目は… まぁいい。

花を見ているナナの肩を抱こうとしたときに、兵士たちに覗かれただけだからな。

 

いきなり肩を抱いたりしたらナナに引っ叩かれたかもしれねえし、まぁ許そう。

 

 

だが2回目に邪魔されたのは許せねえ!

ただキスするだけじゃなく、おふくろのことを思い出して涙ぐんだナナを抱き締める

最大のチャンスもあったのによ!

 

 

くそっ、あのバカ女どもめ!

たとえ覗くとしても静かに覗け!

 

最後までバレねえようにしろ!

イイところで転んでんじゃねえぞ!

 

ナナをサマルトリア後宮に招きてえなら、なおさら邪魔するんじゃねーよ!

 

 

女どもを追っ払ったおれは、まだチャンスはあると再びナナを抱き締めようとしたが

先に追っ払った兵士たちがガヤガヤとデカい声でしゃべりながら戻って来やがった。

 

 

くそっ!

王子に会わせねえぞと脅して追っ払ったのに、のこのこ戻ってくんじゃねえ!

 

 

おふくろのことを思い出して涙目になったナナの肩におれが触れたとき、あいつは

抵抗せずにおとなしくしていた。

 

あのあとでもう一度おれが触れても、ナナは抵抗せずに受け入れたはずなのによ!

 

 

ナナは兵士たちが小声でしゃべってるつもりでまる聞こえの会話を聞きながら

面白そうにクスクス笑っている。

 

キスできる雰囲気は完全になくなった。

 

おれは深いため息をついて、男たちの声がする方向をにらみつけた。

 

 

兵士たちは、おれたちに気づかれてるとは思ってもない様子で近づいてくる。

 

「おい、ここからは本当に静かにしろよな」

「おまえこそ、ガミガミうるせえんだよ」

「バレたらおれたち王子様に会えなくなるんだからな、てめえ本当に気をつけろよな!」

「へっ、おれがいないときに見つかって叱られてるんだろ? 今、見つかってもおれのせいじゃねえよ!」

「なんだと? その言いっぷりだと、さっき見つかったのはおれのせいだとでも言いてえのかよ?」

「てめえら、静かにしろって言ってんだろ!」

 

 

こんなにガヤガヤ騒いでおいて、まだ見つからないと思ってる方がおかしいぜ!

 

おれが大げさに呆れた顔をすると、ナナはおれを見てさらに楽しそうに笑った。

 

 

おれはナナに人差し指を立てて静かにするよう伝えると、ゆっくり歩き出した。

 

 

「なぁ、どこから覗くんだ?」

「さっきは見つかっちまったけど、結局はあの花の影から見るのが1番いいんじゃねえか?」

「おれもそう思う。なんせ花がデカいもんな」

「カイン殿下も、まさかおれたちが2回も同じ場所に隠れてるなんて思わねえだろ?」

 

おれは兵士の話を聞きながら、背の高い花の前に先回りしてその場でしゃがんだ。

 

 

あいつらが隠れようとしているのはおれの胸ぐらいの高さまで育った立派な花で、

大ぶりの葉が四方八方に生い茂り、さらに小花が隙間を埋めるように咲いている。

 

身を隠すには最適な花だろう。

 

 

おれは花の脇で息をひそめて待った。

あいつらがおれたちを覗こうと顔を出したとき、まず目にするのはおれの顔だ。

 

仰天する兵士たちの顔を想像したら吹き出しそうになるが、なんとかこらえた。

 

 

「シーーッ!」

 

ローレシアから戻ってきた男が残りの2人に黙るよう命じて、生い茂った葉の陰から

ゆっくりと顔を出してきた。

 

おれは目の前でニンマリ笑ってやった。

 


「うぎゃー!」

 

兵士は叫んで腰を抜かす。

 

 

「なんだよ、うるせーな。おれたちにはさんざん静かにしろって言いながらよ...」

 

後ろの男がぶつぶつ言いながらこっちを見て「ひっ!」と尻もちをついた。

 


「なんだ? 2人ともどうしたんだよ?」

 

少し離れたところに隠れていた最後の1人が駆け寄ってきて「カ、カイン殿下!」

叫んで絶句する。

 


「てめえら! さっきから話はずっと聞こえてんだよ。うるせえ奴らだな、ったく!

 人の顔見て化け物を見たような反応するんじゃねえよ! さっさと立ちやがれ!」

 

おれはしゃがむときに手についた土をパンパンと払いながら立ち上がった。

 


「あ...あわわ...」

 

ローレシアから戻ってきたばかりの兵士はおれがすぐ近くにいてよほど驚いたのか、

大きく目を見開いたまま硬直している。


最後にやってきた男が、座り込んでいる2人に手を貸してようやく立たせた。

 


「あ... あの... えっと...」

 

1人はおれと目も合わせずうろたえている。

 


「おれたち、カイン殿下に言われたとおり部屋に戻ろうとしたんですよ。そしたら

 こいつが帰ってきて『おれもナナ姫に会わせろ!』ってしつこく言ってきて...」

 

「てめえ! 仲間を売りやがったな!」

 

「おれたちは断ったのに、おまえがしつこく案内しろって言ってきたんじゃねえか!」

 

「おれがローレシアに行ってる間におまえらが勝手に抜け駆けするからだろ!」

 

「おまえはローレシアで王子様に会ってきたくせに、ナナ姫にも会わせろだなんて

 贅沢なこと言うのが悪りいんだよ」

 

「なんだと?!」

 

兵士たちはお互いの服をつかみながらムキになってギャアギャア大騒ぎを始めた。

 

 

振り返るとナナはまだ笑っている。

 

 

「うるせえ! ケンカは後にしろ! おい、おまえ! ローレシアに行ってきたんだろ?

 まずはその報告をしろよな。帰って来るのがずいぶんと早いんじゃねえか?」

 

おれはうるせえ男どもを一喝した。

 


「... あ、はい。どうもすんませんでした。おれたちは以前から何度もサマルトリア

 ローレシアを行き来しているんで、青の騎士団の兵士たちとは顔なじみなんです。

 カイン殿下からローレシア王への伝言があって来たと伝えたら、すんなりと

 謁見の間に通してもらえました」

 

3人の中で1番声がデカいローレシアへ派遣した兵士は、おれに一喝されると急に

真面目な顔になって報告してきた。

 

報告が始まったのを確認して、ナナと2人の兵士もおれたちのそばに集まってくる。

 

 


伝令兵が謁見の間に通されると、玉座の近くにローレシア青の騎士団の正装をした

1人の兵士が立っていたんだという。

 

これまで何度もローレシアに行き、たくさんの兵士の顔を知っているこいつでも

今まで会ったことのない男だったらしい。

 


入口に門番が立っているのはわかるが、謁見の間の中に兵士がいることはめずらしく

見たところ玉座近くに立つ男は、普通の兵士とは明らかに違う高貴な印象があった。

 

高貴そうな男は人形かと見間違うほど表情も変えず微動だにせず立っている。

 

「いったい何者だ?」と思いながらチラチラと兵士に視線を送りつつ待っていると、

王子が笑顔で謁見の間に入って来た。

 


憧れの王子を目の前にして緊張しながらも伝令兵がおれからの伝言を伝えると、王子は

さらに明るく人懐っこい笑みを見せた。

 

 

「へぇ! カインもナナもサマルトリアにいるのかい? ぼくも久しぶりに会いたいな」

 

王子が嬉しそうに弾んだ声で言うと、そばに立っていた例の男が小さな声で言った。

 

 

「遊びにかまけて国政をおろそかにするようでは困りますぞ、国王」


男の言葉を聞くと王子は明らかに機嫌を損ね、ムッとした表情になった。

 

 

「この国のことは、ぼくなりに考えて精いっぱいやってるつもりなんだけどね。ぼくの

 そばで1番よく見てきたきみに『国政をおろそかにする』なんて言われたくないな、

 サイラス!」

 

 

 みなさまとっくにおわかりだと思いますが、やっぱりサイラスでした ( *´艸`)

 

 


王子の言葉に伝令兵は「あぁ!」と声を上げそうになり、かろうじてこらえた。

 


「高貴な感じがすると思っていたら、玉座のそばにいたのはローレシア青の騎士団長

 サイラス卿でしたよ! おれみたいな若造がお目にかかれる相手じゃないっすから!

 わかったときは興奮しちゃいましたよ」

 

あのサイラスに会えたとはしゃいだ声を上げる男の隣で、留守番になった2人の男が

「ちぇっ」「ずるい」と不平をもらした。

 

 


「けっ、サイラスなんてただの口うるさいおっさんだぜ? 説教くらうだけなんだから、

 別に会う価値なんてねえよ」

 

おれは残念がる2人の兵士を慰めた。

 

ナナはおれの隣で笑っている。

 


実際にサイラスに会ってみておれの言葉の意味がわかったのか、伝令に行った男は

ニヤリと同意の笑みを見せた。

 


王子がサイラスに文句を言ったのを皮切りに、しばらく2人の言い争いが続いた。

 

 

「私は国王のために言っているんです!」

 

「たとえぼくのためだとしても、小言ばかり言われるのはたまらないんだよ」

 

「立派な王になって欲しいからですよ」

 

「もう子ども扱いしないでくれよ!」

 

 

伝令兵がぽかんとして言い争いを聞いていると、サイラスがおもむろに口を開いた。

 

 

「私は別にサマルトリアに行くなとは言いませんけどね、今は国王にとって非常に

 大事な時期ですよ。だって...」

 

 

「サイラスッ!」

 

サイラスが何か言いかけたのを、王子は鋭い声をあげてさえぎった。

 

 


ローレシア王は話を止めた後でおれの顔をチラッと見て、王様の視線をたどって

 おれの顔を見たサイラス卿も、ハッとなって口をつぐみました」

 

そのまま2人は黙り込んだんだという。

 

 

おれとナナは顔を見合わせた。

 


王子が鋭い声で人の話(しかもサイラスの話)をさえぎるなんてめずらしい。

さらに、王子とサイラスの2人が伝令兵の顔を見て黙り込んだというのも気になる。

 

なんだ?

おれたちには聞かせたくないような何かがローレシアで起きているのか?

 

 

「それで? その後はどうなったんだ?」

 

おれは勢い込んで尋ねた。

 


王子とサイラスが黙り込んで沈黙がしばらく続いた後、謁見の間に誰かが入ってきた。

 


「ほほほ。なんだか賑やかですねぇ」

 

長いローブを身にまとった男が穏やかな笑みを浮かべながらゆっくり近づいてくると

「だ、大司教様っ!」と言ってサイラスは直立不動になって姿勢を正した。

 


「なにがあったんです?」

 

大司教に問いかけられて、王子がこれまでの経緯を話した。

 


「ほほう、今はサマルトリアでカイン殿下とナナ姫が王様をお待ちなんですね。では、

 明日の夕方までには我が国王をサマルトリアへと向かわせましょう」

 

大司教は伝令兵に向かって言ってきた。

 

 

「で、ですが...」

 

サイラスが反論しようとするのを、大司教は静かに片手をあげて制した。

 

 

ローレシア王、サイラス卿、大司教というローレシアでは超有名な最重要人物が

 一堂に会していたんでね、おれなんかは何も言えずただただうなずくだけでした」

 

伝令兵がこくりとうなずくと、大司教「もう話は終わり」とばかりに微笑んだ。

再び沈黙が謁見の間をつつむ。

 

 

「王子は明日の夕方にはサマルトリアに来る」という返事を聞いた伝令兵は

3人の威厳に圧倒されて、そそくさと謁見の間を出て戻って来たんだという。

 


ひととおり報告を聞き終えると、おれはすぐさま3人の兵士を帰すことにした。

 

王子が声を上げてサイラスの話をさえぎった件について、ナナと話し合いたいからな。

 


まぁ、こいつらが何度も覗きに来ておれたちの邪魔をしたことに腹は立っていたが

今はそれどころじゃねえぜ。

 

 


「よし。話はわかったから、おまえらはもう帰れよ。王子が無事にやって来たら

 約束通り、おまえらには王子とナナと話す機会を設けてやるからよ」

 

おれが明言すると、3人の兵士は大喜びでナナに手を振りながら帰って行った。

 

 


王子が鋭い声を上げてサイラスの話を途中でさえぎった... だと?

ローレシアでなにが起きてるんだ?

 

おれはさっき聞いた伝令兵の言葉がずっと心に引っ掛かっていた。

 

 

 

 

ガヤガヤと騒がしい見張り台の3人の兵士。実はそこそこ気に入ってまして ( *´艸`)

長く登場させちゃいました (;´∀`)

(男子高校生とか大学生みたいなノリでとても楽しく書きましたよ (≧∇≦)♪)

 

 

さて、久しぶりのローレシア久しぶりに登場した王子も元気そうですね (*´ω`*)

 

伝令兵は王子と無事に対面を果たし、カインの伝言も伝えることが出来ましたが

王子とサイラスの間でなにやら不穏な空気が漂っているみたいですよ (゚Д゚;)!

 

サイラスが小言を言って王子がムッとしたり、言い争いはよくありますが ( *´艸`)

王子が大きな声を出して人の話を途中でさえぎるなんてめずらしいこと... Σ(・ω・ノ)ノ!

 

ローレシアでなにが起きているのでしょう?

 

 

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ