ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 87】理想の王妃

王子から「ミリアとの結婚の日取りが正式に決まった」と聞かされたおれたち。

 

『世継ぎ』についてノリノリで話すナナと大司教、2人とは対照的に真っ赤な顔で

モジモジしている王子を、おれは少し離れたところで微笑みながら見守っていた。

 

 

「ちょっと、あんた! さっきから、なに1人でにやけてんのよ! 気持ち悪いわね」

 

ナナと大司教がひとこと話すごとに、王子の表情がくるくる変わるのが面白くて

半笑いで王子の様子を見ていたら、いきなりナナのキツイ声が飛んできた。

 

 

「あぁ? おれはただ、王子の結婚を良かったなって微笑ましく思っていただけだろ」

 

「ウソおっしゃい! ここに鏡があったら、どんな変な顔してるか見せてやりたいわ。

 さっきからひとことも話さずに、ず~っとしまりのない顔でデレデレしちゃって。

 どうせ、いやらしいこと考えていたんでしょ! ホントにもう、エッチなんだから!」

 

「なに言ってんだ。いやらしいこと考えているのは、おれじゃなくて王子だろ!」

 

 

「えっ!?」

 

おれが王子を指差すと、急に名前を呼ばれた王子はその場でビクッと飛び上がった。

 

 

おれの言葉を受けてようやく王子の顔を見たナナは、赤面してモジモジしている王子に

つられたのか、顔を赤らめ恥ずかしそうな表情を浮かべ同じようにモジモジしだした。

 

 

そんな王子とナナの様子を見た大司教は、「はははっ」と軽やかに笑い声をあげた。

 

「いや~。すまない、すまない。我が国王には少し刺激の強すぎる話だったようだな。

 じゃあ、話題を変えることにしよう。みなさん。明日、サマルトリア王に紋章の件を

 報告しに行った後は、そのままラダトームまで行く予定なんだろう?」

 

 

「ああ。そのつもりだぜ」

 

王子とナナがモジモジしたまま答えないので、仕方なくおれが答えてやった。

2人は無言でこくりとうなずいた。

 

 

「せっかくラダトームまで行くのだから、そこからもう少し足をのばして、ルプガナ

 訪ねてみてはどうだろうか? カイン殿下とナナ様から結婚を祝福してもらえたら、

 ミリア様も喜ぶだろうからね」

 

「いいわね。ぜひ、そうしましょうよ! ミリアにも会いたいし、あたしからも直接

『おめでとう』って言いたいわ」

 

大司教の提案にナナが明るい声を出した。

 

 

「国王、安心してください。ルプガナ行きは、サイラスには黙っておきますから」

 

ナナの返事に満面の笑みを浮かべた大司教は、人差し指を立てて唇の前に置くと、

王子に向かってウインクして見せた。

 

 

「サイラス?! なんだよ。また、あいつが余計なことを言ってんのか?」

 

「あ… うん、まあね…」

 

話題がサイラスに移ってようやく落ち着いてきたのか、王子がポツリと口を開いた。

 

 

「あの野郎、今度はいったいどんなくだらねえことに難癖つけてごねてるんだよ?」

 

おれの言葉に王子と大司教は苦笑いした。

 

  くだらねえことに難癖つけてごねるローレシア青の騎士団長 ( *´艸`)



 

 

「婚儀までの間、ミリア様がどこで過ごすかについてね、意見が割れたんだよ」

 

大司教の話によると、婚儀の日取りを決めた際にサイラスは「日取りが決まった以上、

ミリア様にはローレシア後宮で過ごしてもらうべきだ」と言い出したらしい。

 

 

ローレシア王と結婚するとなれば、ミリア様は世間の『注目の的』になるからね。

 父上の仕事とはいえ、船乗りの男たちと親しくしたり、一緒に船に乗ってあちこち

 自由気ままに行き来する姿を見られるのは、体面が悪いとサイラスは言うんだよ」

 

「へっ。いかにも外ヅラや世間体を気にするサイラスが言いそうだぜ。ローレシア

 悪く言われるきっかけになるものは、すべて事前に摘んでおきたいってことだよな」

 

おれがそう言うと、大司教は苦笑いしながらこくりとうなずいた。

 

 

「もちろん、ぼくは反対したんだ。結婚するまでは、ミリアも住み慣れたルプガナ

 父上や母上と一緒に過ごしたいだろうし、結婚した後だって自由で良いと思うんだ。

 王妃になるからって、後宮に閉じ込めるようなマネはしたくないってね」

 

「あたしもそう思うわ。それで、あなたの反論にサイラスはなんて答えたの?」

 

 

『わが君は、素晴らしい王妃様だったお母様の生き方を

 否定するおつもりなのですか!』だって」

 

王子は投げやりにそう言うと、ふうぅ~と大きくため息をついた。

 

 

王子のおふくろは身体が丈夫ではないこともあって、めったに外に出ることはなく

1日の大半を後宮で静かに過ごしているらしい。そのため、前ローレシア王妃は

『神秘のベールに包まれた女神のような存在』として人々から崇められていた。

 

 

「母上の生き方を否定するつもりは毛頭ないよ。でも、ミリアが後宮で過ごすことに

 反対するってことは、母上の生き方を認めていないってことなのかって...」

 

「ははっ、敵ながらあっぱれだ。さすがサイラスはおまえのことを熟知しているよな。

 おふくろのことを出されたら、おまえが何も言えなくなることは想定内ってことだ」

 

王子は苦々しい顔でうなずいた。

 

 

「国王が黙ってしまったんでね、私が代わりに意見を言いました。元々、お身体の弱い

 前王妃様にとっては後宮でご静養されるのが幸せだが、活発なミリア様にとっては

 後宮で過ごすことが幸せとは限らない。若い2人にとっての幸せを考えるべきだと」

 

「そうだ、そうだ」と、大司教の言葉におれとナナは大きくうなずいた。

 

 

「でもね、サイラスにぴしゃりとやられちゃいましたよ。国王が黙っているのに、なぜ

 私が意見するのかってね。国王が黙っているのは、前王妃様ような過ごし方を国王も

 認めている証拠なんだから、私が余計なことを言うのはおかしいってね」

 

「ちっ!」 おれは思わず舌打ちした。

 

 

「それで? どうなったの?」

 

ナナの問いかけに、大司教は目を細めると誇らしげな顔で王子を見た。

王子は照れたように笑う。

 

 

「話し合いはまさにこの場所でしていたんだ。ぼくがサイラスの意見に反論したときは

 ちょうどこんな体勢だったんだ」

 

王子は両手をテーブルにバンッとついて、勢いよくその場に立ち上がった。

 

 

「でも、サイラスに母上の生き方を否定するつもりかと言われて、返す言葉を失くして

 そのままガックリと座り込んだ」

 

王子はそのときの様子を再現しながら、今度はガックリと肩を落として椅子に座った。

 

 

「そのとき、懐からこれが落ちたんだよ」

 

王子はそう言いながら、懐から『ロトの印のステッカー』を取り出した。

 

 

「このステッカーを見たとき、ハッとなったんだ。そしてサイラスに言ったんだよ。

 父上と母上は、誉れ高きローレシア王と女神のような王妃様として敬われている。

 でもぼくは、人々に崇められるような威厳のある王を目指しているわけじゃない。

 このステッカーで世界中の人と仲間になって、年齢や身分なんて関係なくみんなに

 親近感を持たれて慕われる王になりたいんだ。そんなぼくの王妃様も、やっぱり

 人々に親近感を持たれてみんなに慕われる王妃様が良いんじゃないかってね!」

 

 

「いいぞ! よく言った!」

おれはパチンと指を鳴らした。

 

 

「国王が望まれるような『みんなに慕われる王妃様』なら、船乗りにも慕われるのは

 当然だし、世界中をまわっていろんな人たちと交流してもいいだろう。いや、むしろ

 積極的にそうするべきだなってね、私からもサイラスに言ってやりましたよ」

 

大司教はそう言うと楽しげに笑った。

 

 

「それでサイラスはミリア様を後宮に招くことは諦めました。ただ、国王とミリア様が

 人前でも平気で接吻することには猛反発で、『私がミリア様を

 後宮に招くことを諦める代わりに、わが君もミリア様と

 2人で会うのは控えるように!』捨て台詞を残していきました」

 

大司教はニヤニヤしながら王子を見た。

王子は恥ずかしそうに肩をすくめた。

 

 

「まぁ、それに関してはおれもサイラスに賛成だな。毎回毎回、見せつけられるのは

 たまったもんじゃねえからな」

 

「あら? それは、ただの『あんたのねたみ』なんじゃないの?」

 

ナナがからかうようにおれを見て笑う。

 

 

「なんだと?! ねたんでなんかねえよ! おまえの方こそ、王子とミリアを見るときは

 いつも鬼のような怖~い顔して、ほっぺた膨らませてたじゃねえか!」

 

「なによ、失礼しちゃうわ! あんた、あたしがねたんでるとでも言う気?」

 

「ほらほら。それそれ、その顔だよ。おっかねえな。王子、おまえだってわかるだろ?

 おまえはいっつも、あの恐ろしい顔でナナに睨まれていたんだからよ!」

 

 

「え? ... いや、どうかな?」

 

王子はとぼけた顔でおれから目をそらした。

 

 

「てっめえ! おれを裏切る気か?」

 

おれが王子に詰め寄ろうとすると、王子は席を立ち、笑いながら逃げ出した。

 

 

「王子!! この裏切り者め。 おい、こら待て!」

 

「ちょっと! あんたこそ、待ちなさいよ!!」

 

立ち上がって王子を追いかけるおれを、後ろからナナが追いかけてくる。

 

 

そんなおれたちを見て、大司教は楽しそうな笑い声をあげた。

 

 

 

前半はナナを中心に書きました。

 

ナナはいつだってカインのことが気になるんです ( *´艸`)♡ 「王子の話をしていても

カインのことが気になっちゃう♡」そんな乙女心を書きました(自己満足 ( *´艸`))

 

あと、ナナにとって王子は『人畜無害』というか (;´∀`)、これまでは「異性」として

意識することもなかったので、「王子もいやらしいこと考えるの (◎_◎;)?!」って

ドギマギする様子も書きましたよ。

 

 

この創作物語で、サイラスは「くだらねえことに難癖つけて結局は言い負かされる奴」

いつの間にやら、すっかりそんな『負けキャラ』になっちゃいましたね ( *´艸`)

 

サイラスのこのキャラは想定していなかったんですが、まぁおもしろいので ( *´艸`)

このまま定着させようと思います☆

 

 

ラストは個人的にお気に入りです (*´ω`*)♡

 

王子はカインに同意したかったけど、同意すると『バギ』でも喰らいそうなので

ごまかして逃げました ( *´艸`)

 

笑いながら逃げる王子、王子を追いかけながらも笑っているカイン、2人の後を追う

ナナも楽しそうに笑っている (*´ω`*)

 

そんな可愛い子どもたち3人を、笑って見守る保護者のおじさん(←大司教

 

穏やかであたたかくて平和な光景を思い浮かべてもらえたら嬉しいです☆

 

 

さて、呪文と紋章の保管方法も決まったし、王子の結婚話も一件落着(?)したので

そろそろサマルトリアに向かいましょうか(ローレシア滞在が長すぎよね (;´∀`))

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ