「……というわけだ」
声をかけたメンバーがおれのところに集まってきたところで
おれは今日の昼にデルコンダル王と交わしてきた会話を伝えた。
おれの隣に座っていた王子はポカンとした顔で目をぱちくりさせて
「カイン。君は一体いつの間にデルコンダルまで行ってたんだ?」と聞いてきた。
「いつ行ってたかって? こちらのご立派な王子様がメソメソ泣いてる間にさ」
宴のときには王子はもう泣きやんでいたが、おれがそうやってからかうと
周囲はどっと笑い、王子は耳まで真っ赤にして恥ずかしそうにうつむいた。
こりゃいいぞ、これから王子をからかう格好のネタが出来たな。
「ふむ。デルコンダルから力のある人物を集めてムーンブルクで働かせるか。
確かに妙案だ。ただ、どうやって戦士たちをムーンブルクに集めるかが問題だな」
おれの話を黙って聞いていたアルファズルがあごに手を当てて考え込む。
「デルコンダルへはルプガナから定期船が出ていて人々の往来は盛んだ。
まずはルプガナに集めて、それからムーンブルクへ運ぶという手もある。
定期船の数を増やしたり、なんだったら臨時便を出してもかまわねえぜ」
「急ぐのであれば、わしとカインと賢者殿が魔法を使って運ぶことも可能じゃ。
……ただ、大勢を運ぶのであれば、おのおのの役割をハッキリさせねばならん。
多くの者がいっぺんに集まっても、かえって効率が悪くなるだけじゃぞ」
「それに、純粋に人助けする奴ばかりだと良いんだけどな...。おれは雷神丸で
世界中の海を渡り歩いているが、世界にはろくでもねえ奴らもいるぜ。
善意の人助けに便乗して、気性の荒いごろつきどもが紛れ込むと厄介だぞ。
復興の手助けどころか、余計な問題を増やすことにもつながるからな」
「ところで、集めた人たちはどこで寝泊まりするんだい? 野営でもいいんだろうけど
長期になると不満も出るし、ムーンペタだけでは対応できないんじゃないかな。
ローレシアやサマルトリアでも宿屋を開放するなり何か協力しないとね」
アルファズルの意見を皮切りに、あちこちから次々と問題点が出てくる。
そう、武闘大会出場者をムーンブルクに集めるというおれの案はまだ穴だらけだ。
それぞれの役割を決めておかないと、ただ闇雲に人だけ集めてもどうにもならない。
まだまだ実行には課題が多いが、『ハーゴン討伐』という偉業を成し遂げて
なんとなく目標を見失っていたこいつらが、目を輝かせて熱く語り合っている。
みんなの様子を見ながら、おれは自分の策が必ず成功すると確信していた。
結局、おれたちの話し合いは夜更けまで続いた。
それぞれが意見を出し、大まかな骨組みのようなものは出来あがった。
・デルコンダル王が責任を持つと言ったので、参加者は事前に王様に謁見させ
王様が承認した者だけをムーンブルクへ連れてくること。
・参加者はグループ分けして、それぞれに統率者をおくこと。
統率者は
前回の武闘大会優勝者のガルダー
水門のカギを盗んで国際指名手配されていたラゴスを見事に捕まえたレオン
青の騎士団長サイラス
緑の騎士団長モルディウス
サマルトリアが誇る熟練した老騎士ティメラウス卿 ...など。
ラダトーム・ベラヌールにも船を出し、人々の渡航を活性化させること
・参加者の休養先として、ムーンペタのほかにリリザの町も開放すること
ここまで決まったところで、王子がローラの門について言及しだした。
ローラの門はハーゴン軍がサマルトリアに侵攻する際の通り道となり
メタルハンターが残した引っかきあとや、ドラゴンが炎を吐いたことで出来た
スス汚れなどが生々しく残されている。
今のままでも通れないわけではないが、大人数の往来には適さない状態だった。
その修繕をローレシアが主体でおこなうと王子は強硬に言い張った。
ハーゴン軍の侵攻をサマルトリアが止めてくれたおかげでローレシアは無傷だった。
サマルトリアは城の修繕も必要なため、ローラの門はローレシアが直すと言う。
王子の言い分もわからなくもないが、元はサマルトリアが原因で壊れたものだ。
それに、城の修繕ぐらいで財政が逼迫するほどサマルトリアは貧しくねえぞ。
おれが言い返しても、めずらしく王子は引かずに応戦してくる。
真夜中を過ぎた頃
おれと王子、自国の威信をかけた戦いが始まろうとしていた。
まだ夜は明けません(...長っ (;´∀`))
今はせっかくローレシア城にたくさんの人たちが集まっているので
私が思い出せる限りの人々を登場させてみました (;´∀`)
冒険の中で出会い、『ハーゴン討伐』に向けて協力してきた仲間たちが
ムーンブルク復興のために再び団結する
カインを中心に、男たちのイイ関係が築けていますよね (*´ω`*)
王子とカインがなにやらモメていますが
次回こそは日付が変わっていると思います!(...たぶん (;´∀`))
では、次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ