ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

不朽の名作「ゲームブック ドラゴンクエストⅡ」(エニックス版)                                        完成度の高い作品をゲームと比較しながら熱く語ります。 Twitter もあります→ https://twitter.com/john_dq2_book

【創作 94】仲間モンスター

ラダトーム城に入城したおれたちは歓迎の宴に招かれ、その宴の席でラダトーム王と

今後も恒久的な協力関係を築くことを誓い合い、杯を交わした。

 

好きなだけ食って飲んで、言いたいことも言って、宴の後はそのまま城に泊めてもらい

翌朝、おれは大満足でラダトーム城を出た。

 

 

ルーラを唱えるため、人混みを避けて町のはずれまで歩いて来たところ、海の向こうに

「あるもの」が見えた。

 

 

うげっ! あいつ、なにしてやがる!?

 

めんどくせえことになりそうだと、見て見ぬふりをしようとしたがすでに遅かった。 

 

 

王子は「あっ!」と驚きの声をあげ、ナナは「まあっ!」と嬉しそうな声をあげた。

 

そりゃそうだろう。あのでかい図体が目に入らないなんて、まずありえねえからな。

 

 

おれが2人になにか言う前に、ナナは一目散に海岸へ向かって走り出した。

王子も走ってナナの後を追いかける。

 

「お~い!」

「お~い!」

 

ナナと王子は大声で叫びながら、イシュタル島に向かって大きく手を振った。

 

 

ちっ! おれは海岸に向かって走っていく王子とナナの後ろ姿を見ながら舌打ちした。

 

対岸で自身の城の周りをうろうろしている竜王のひまごは、おそらくおれたちが

ラダトームに来ていると事前に聞きつけて、ずっと待ち伏せしていたのだ。

 

待ち伏せしていることを知られないように、おれたちの方から声をかけられるように

竜王のひまごがこちらの動きにはいっさい気づいていない風を装いながら、わざわざ

ラダトームから1番目立つ場所を選んでうろついていたのは明白だった。

 

 

くそっ! ナナも王子も、あっさりとあのおっさんの術中にハマりやがって!

 

おれは地面にペッとつばを吐いた。

 

こうなってしまったからにはしょうがねえ。

おれは重い足取りで、向こう岸に大きく手を振っている王子とナナのもとへ向かった。

 

 

竜王のおっさんは、「お~い!」と自分を呼ぶナナと王子の声にピクッと反応すると、

大げさにきょろきょろとあたりを見まわすふりをして、ようやくこっちに目を向けた。

 

 

「おおっ! そこにいるのはおちびさんたちではないか!? いやぁ、偶然だなあ!」

 

おっさんはわざとらしく驚いた顔をして、スーッと低空飛行でこちらに飛んできた。

 

 

けっ! なに言ってんだ。おれたちが町から出て来るのをずっと待っていたくせによ!

 

 

「お久しぶりですね」

 

王子は近くに降り立った竜王のひまごを見て、嬉しそうに頭を下げた。

 

ナナはおっさんの首に抱きついていった。

 

 

「おお、本当に久しぶりじゃ。おちびさんたちも、変わらず元気そうじゃの」

 

竜王のおっさんは、首に抱きついてきたナナを嬉しそうに見つめた。

 

 

「こちらに戻っていたんですね。それで、今はなにをしていたんですか?」

 

 

「わしか? わしはムーンブルクで廃材を焼く大役を任されて忙しくしておったじゃろ?

 忙しくて忙しくて、しばらくは自分の城の様子を見ることも出来なかったからな。

 今日は朝から城の周りを歩いて、異常がないか入念に調べておったところじゃよ」

 

 

「へっ! おっさん。忙しいとか言ってるけどよ、ムーンブルクのがれきはとっくに

 取り除かれてるだろうが。おっさんは 相当前からヒマ だったはずだぜ?」

 

竜王のひまごに近づき、顔をのぞき込みながら言ってやると、ナナはキッとなって

おれの足を思いっきり踏みつけた。

 

 

「痛ってーな。なにしやがるんだ!」

 

「ふんっ! そうやってすぐ悪態つくクセ、止めなさいよ。本当に性格悪いんだから。

 ごめんなさいね。あなたが手伝ってくれて、あたしは本当に喜んでいるのよ」

 

 

おれはナナに踏まれてジンジンと強烈に痛む足をさすりながら言った。

 

「けっ! おまえこそ、そうやってすぐに暴力振るうクセ、なんとかしろよな!」

 

「なんですってぇ!」

 

 

「まあまあ、2人とも。そんなささいなことで喧嘩することないぞ」

 

竜王のおっさんはわざとらしく首を大きく振りながら、おれたちの仲裁に入った。

 

おっさんが首を振るのに合わせて、首からぶら下げている物がぶらぶら揺れた。

 

 

「あらっ? これって…」

ナナが気づいて、目の前でぶらぶらしている物を手に取った。

 

それは『ロトの印のステッカー』だった。

おっさんはステッカーにひもを通し、ペンダントのように首から下げていたのだ。

 

 

「かっかっかっか。これは、わしがおちびさんたちと『仲間』である証だからな。

 こうやって肌身離さず身に着けているんじゃよ。おおっ、そうじゃ! そうじゃ!

 うっかり忘れておったわい。実は、このステッカーのことでおちびさんたちに

 お願いしたいことがあったのじゃ!」

 

 

最初っから、それが目的だったんだろうが!

 

思わず口をついて出そうになった言葉を、おれはなんとかこらえてグッと飲み込んだ。

ナナに踏まれた足はまだ痛てえからな。

 

 

「あたしたちにお願い? なにかしら?」

 

 

「わしがこのステッカーを身に着けているのを見てな、わしの配下たちが羨ましがって

 同じようにステッカーを欲しがっているんじゃよ。そこで、わしの手下の連中にも

 ステッカーを渡して欲しいんじゃ」

 

 

「あぁ!? 冗談じゃねえぞ! このステッカーはおれたちの『仲間』である証だぜ。

 魔物なんかを仲間にしてたまるかよ!」

 

 

「カイン! そんな言い方はないわよ」

 

「そうだよ、カイン。竜王のひまごの手下たちは、以前ぼくたちに襲いかかったけど

 やめろと命令をしたら、すぐに退散したじゃないか。悪い奴らじゃないよ」

 

 

「へんっ! あいつら、魔法も使えねえような 下等動物 のハエと蛇じゃねえか! 

 あんなもの仲間にしてどうすんだよ」

 

 

   カインにとっては下等動物のハエと蛇 ( *´艸`)



 

「そう? ドラゴンフライもバシリスクも攻撃力は高いから、実際に仲間になったら

 かなりの戦力になると思うよ」

 

「うん、そうよ。ただ、一緒に歩くのはちょっと… だけどね。自分の好きな魔物を

 なんでも仲間に出来るんだとしたら、あたしはスライムとかを仲間にしたいわね。

 だって可愛いじゃない!」

 

 

「いいね。ぼくは、ホイミスライムが仲間になってくれたら嬉しいだろうな。見た目が

 可愛い上に、治療もしてくれるから」

 

「そうね。可愛くて役に立つなんて最高よ」

 


「最高といえば、キラーマシンが仲間になったらすごいよね! 戦力として頼りになるし

 剣術も教えてもらえるかも」

 

キラーマシンの剣術を学べたら、王子は本当に向かうところ敵なしになるわね!」

 

 

王子とナナは、くだらねえ妄想をしながら、はしゃいだ声をあげた。

 

 

「おまえら、なに夢みてえなこと言ってんだ? そんなことあるわけねえだろ!」

 

「あらっ、わからないわよ。ムーンペタであなたたちを襲ったマンドリルだって

 ただ、ハーゴンの魔術によって操られて襲ってきただけだもの。その証拠に、

 アルファズルがマンドリルの呪縛を解いたら、本来の性質に戻っておとなしく

 森に帰って行ったでしょ。同じように、呪縛が解けたら本当の性格が出てきて

 あたしたちの仲間になるっていう魔物が現れても、全然おかしくないわよ」

 

 

「まずは、その手始めに、わしの配下を仲間にしてみるというのはどうじゃ? ん?」

 

おっさんが首を伸ばして聞いてくると、王子とナナは目を輝かせてうなずいている。

 

 

「おいっ! おまえら、よく考えろよ。自分の好きな魔物を仲間にするなんて、そんなの

 無理に決まってんだろ! このおっさんに、簡単にそそのかされてんじゃねえぞ!」

 

「カイン、あなたって夢がないわね」

 

 

「うるさいっ! とにかく、おれは魔物にステッカーを渡すなんて絶対に反対だからな」

 

おれは王子とナナを怒鳴りつけると、ふんっと言って竜王のひまごに背を向けた。

 

 

次の瞬間、腰にパシッと衝撃が走った。

 

驚いて腰に目をやると、ナナが腰に付けた袋を器用に奪い取ったところだった。

 

「あっ! てめえ、なにしやがる!」

 

おれがナナを捕まえようとすると、ナナは王子に向けてその袋を投げた。

 

 

「王子、お願い!」

 

王子はナナから投げられた袋をつかむと、そのまま袋ごと竜王のひまごに渡した。

 

 

「別の人にもあげちゃったんで、残っている数はちょっと少ないかもしれませんが

 あなたの手下に渡してください」

 

竜王のおっさんは王子から渡された袋を器用に爪に引っ掛けると、満足そうに笑った。

 

 

「かっかっかっか。ありがとな、おちびさんたちよ。あとは、わしにまかせておけ!

 おちびさんたちがわしに預けたこのステッカーをきっかけに、そなたたちが望む

 スライムやキラーマシンを仲間にする未来が、きっとやって来ることじゃろう!

 その日が来るのを、楽しみに待っているといい。では、また会おう!」

 

竜王のひまごは、来たときと同じく低空飛行で対岸の島へと戻っていった。

 

 

「また会いましょうね~」と言って、ナナが笑顔で大きく手を振っている。

隣で王子も手を振って見送っていた。

 

 

イシュタル島に降り立ったおっさんの姿を確認して、ようやくこっちに向き直った

王子とナナに、おれは恐ろしい未来を予想して説教してやることにした。

 

「おまえたち、バカじゃねえのか? 好きな魔物が仲間になるなんてあるわけねえぞ。

 簡単に言いくるめられて竜王のおっさんにステッカーを渡しちまったけどよ、もし、

 あのステッカーをきっかけに、くさった死体とかが仲間になったらどうすんだよ?」

 

 

「え? ぼくは全然平気だけど」

 

くさった死体を仲間にするなんて絶対に嫌がるかと思いきや、平然とした涼しい顔で

簡単に了承する王子の言葉に、おれはひっくり返りそうになった。

 

 

「やけにあっさり認めるじゃねえか」

 

 

「うん。くさった死体が仲間になっても、ぼくは全然平気だよ。だって、ぼくは以前

 『リビングデッドになったきみ』旅をしたことがあるからね!」

 

この言葉に、おれは完全にひっくり返った。

 

 

 

ラダトームに向かう前に

『カインはロトの印のステッカーをどう使うつもりでしょう?』と質問したところ

竜王の城で手下に配る?」というコメントをいただき、この話が生まれました☆

(Aさん、ありがとうございます (*´ω`*))

 

 

竜王の城で手下に配るということは、『仲間モンスター』をつくるってことだよね!?

となると、『仲間モンスター』の始まりは『ロトの印のステッカー』だった!?

 

想像がどんどんふくらんで(前回の惰性で書いたラダトーム王の話とは大違いで)

とても楽しく書けましたヾ(*´∀`*)ノ

 

 

「もっとあわれなモンスター」で僅差の2位(当初は1位の予定)だった

ドラゴンフライ&バシリスク が、栄えある『仲間モンスター』の第1号に ( *´艸`)

 

もっとあわれなモンスター 第2位 - ゲームブック ドラゴンクエストⅡを熱く語る!

 

不遇な目に遭った彼らにも、ようやく光が当たって良かったですヾ(*´∀`*)ノ

 

 

『仲間モンスター』について、王子たちはどんな反応をするだろう? と考えたときに

ふと思い出したのが「カイン、あなたって夢がないわね」というナナの言葉。

 

 

竜王のひまごの竜変化もすんなり受け入れたナナは「魔物が仲間になるって素敵♡」

好意的に受け取り、カインが「くだらねえな」と反論する流れにしようと決めました。

 

最初に大まかな流れを決めておいて実際に書き始めたら、仲間モンスターに対しては

なぜか『王子が1番ノリノリ♪』という展開になりました ( *´艸`)

 

 

王子としては、後世(?)に出て来る「あの戦士」と同じように、1人旅の途中で

ホイミスライムを仲間に出来たら旅も楽になると考えるだろうし、戦士としては当然

キラーマシンに憧れますよね (≧∇≦)☆

 

普段はあまり自発的な行動を起こさない王子が、今回ばかりは率先して竜王のひまごに

ステッカーを託す展開になり、当初の想定より面白くなったと思います!(恒例の...)

 

 

そして、なんと最後のオチも王子がつけてくれましたよヾ(*´∀`*)ノ

リビングデッドのカインと旅をした王子なら、くさった死体との旅も平気よね ( *´艸`)

 

「カインは完全にひっくり返った」を再現できて大満足です (*´ω`*)♪

 

 

さぁ、竜王のおっさんに『仲間モンスター』の夢も託すことが出来たので、ご機嫌で

ルプガナへ行きましょう♪

 

 

次回もお楽しみに~ヾ(*´∀`*)ノ